束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
バスに乗り、途中で降りて業務スーパーで野菜の類を購入して会計を済ませる。レジ袋の類は有料化している為に、持ち込んだ袋に放り込んだ後、業務スーパーを後にする。
「待って居たわよ。若菜。そろそろ来るかな〜って思っていた通りだ」
業務スーパーの前の駐車場の一角。その車の前で1人の女性が若菜に声を掛けて来た。
伽羅色の髪の女性だった。キャラメルを思わせる髪の女性だ。笑みを浮かべているが、見る者が違えば違った印象を抱く事だろう。
「わざわざ、迎えに来てくれたんですか? 伽羅さん」
伽羅色の女性。印象通り伽羅と言う女性。若菜達にとっては親代わりと呼べる人物の1人であった。
「うん。何でも博士が頼みたい事があるんだって」
あの人の頼み事。
あの人の頼み事は大体が碌な内容じゃない。大して長生きした訳では無いがそれだけは分かり切った現実だと、若菜は知って居た。
「また無茶を言うんじゃなかろうか……?」
車の後部座席の足元の方に買い物袋を置き、助手席に乗り込みつつ、若菜はそう愚痴る。
「そう言いつつ、何だかんだでやり遂げているじゃん」
運転席の方に伽羅が座り車のエンジンを掛けつつ、茶化す様に言いながら車を発進させる。駐車場を出て国道の方へと出て、信号機の前で一旦停止する。
「半ば脅しに近いんですよ。母上の頼み方は。この前なんか、大型の絶対天敵の動力機関を取って来いとか言って、封鎖宙域へ飛ばされましたし」
お願いでは無く強制に近い。最も、その時は八つ当たり気味に粉砕してやった。
「別に良いんじゃない? 君も私も、地球上じゃISを扱うには出力が高過ぎる〜って、喧しい連中を殺したくなるじゃない。御託ばっか並べてさ、自分では何も出来ないくせに」
伽羅は呆気からんとそう告げる。彼女の場合は忍耐力が低過ぎるという、結構致命的な欠点があるので冗談に聞こえない。……人の事は言えた義理では無いが。
「それは伽羅さんだけ……いや、他の面子もあり得そうで怖かった」
信号が青になり車が走り出す。国道から逸れて民家の数が極端に少なくなる田舎道を行く。人の気配が薄く、舗装されていない畦道の鬱蒼とした森林地帯を抜けた先にその建物は立って居た。
『ラビット・ラボラトリー』
広い敷地内を誇り周辺地域の雰囲気とは場違いにも思える近未来的な建物。
5年前、インフィニット・ストラトスの開発者、篠ノ之 束が建設した宇宙進出及び探査を目的とした活動拠点となる場所。
その建物こそが若菜が暮らしている家であり実家とも言える建物であった。敷地内へ入りガレージの中へと車を停めて、買い物袋を片手に降りる。
「取り敢えず、冷蔵庫に食べ物を放り込んで置きますよ」
「うん、お願いするわね」
一足先に車から降りた若菜はガレージから研究所内へと繋がる扉を開けて中へと入る。
ラボラトリーの名の通り、清潔感のある白い廊下が伸びている。この研究所は複数の区画に分かれており、居住区や研究区、開発区など一纏めにされている。
一先ず、業務スーパーで買って来た食料品をキッチンの冷蔵庫に放り込んだ後、件の要件人間の居るであろう場所へ……行きたいのだが、突拍子も無い人なのでぶっちゃけ予想出来ない。この研究所は無駄に広い為、余計に。
「……入れ違いは嫌だしな」
「若菜さん。お帰りなさい」
冷蔵庫の扉を閉じたタイミングで後ろから声を掛けられた。振り向くと常に目を閉じた銀髪の少女がいつの間にか立って居た。彼女はクロエ・クロニクル。若菜や他の面々にとっては義理ではあるが姉に当たる人物である。
「あ、姉上。母」
「束様は、研究区の第5研究室にてお待ちしています」
聞く前に要件を答えられてしまった。……何とも言えない気持ちになってしまう。取り敢えず場所が
「あ、はい。分かった……。ああ、夕飯は肉野菜炒めの予定だから、それじゃあ、俺は母上に呼ばれてるから、じゃ‼︎」
「はい。では行ってらっしゃいませ」
クロエに見送られ、やや早足で研究区の第5研究室へと足を運ぶ。
「母上‼︎ 来ました……って、またですかッ‼︎」
第5研究室の扉を開けたその先の光景を見て若菜はまたかと、叫んだ。部屋中の彼方此方に機械類の残骸が所狭しと山積み状態となっており、酷く散らかっていると言っても過言では無い、ゴミ屋敷同然の状態になっていた。
「ああ、もう‼︎ 研究室は倉庫じゃないと何度言えば……ええい、母上、今何処ですか⁉︎」
断線した配線、露出した基盤面、砕かれた爪やら牙みたいな物体やら、明らかに内溶液が漏れ出ているアンプル、もう見て居られない状態と言える中、足の踏み場が無いので残骸を乗り越えて研究室内の奥へと進む。
「へ、へるぷみー……‼︎」
その時、部屋の奥。
明らかに倒壊した後で出来たであろう歪な形で形成された残骸の山に埋もれる形で人間の片腕が生えているのが見えた。
「母上、何やってんスか?」
いや、本当に何やってんのだろうか、この人は。
「あ、その声はわーくん⁉︎ ゴメン、助けて‼︎ 束さんの腕力ならコレらを吹っ飛ばすのは簡単だけど、此処に置いてあるの結構、貴重な奴だから変な形で壊したくないの‼︎」
「母上、その前に適当に研究室内に絶対天敵の外殻やら動力機関やら中枢機関やらを山積みするような置き方、止めましょうよ。
エストレヤから搬送されて来たコンテナに包装済みのまま放置するなら兎も角、中身を取り出して彼方此方にばら撒くのは止めて下さい。紛失の元です。
保管するならちゃんと分別して、然るべき保管方法でやってください。後、誰が片付けると思っているんですか?それに片付けるのも面倒臭いんですよ」
「わーわー‼︎ わーくん、お母さんみたい‼︎」
「立場的に貴方が俺の義理の母親なんですよ‼︎」
若菜は半ばヤケになって残骸の山から生えている腕を掴み、力任せに引き抜いた。
「わーくん、力任せ過ぎだよ〜‼︎」
残骸の山から飛び出して来たのは、紫色の髪の上に兎の様な機械式のヘアバンドを付け、エプロンドレスに大型の懐中時計を下げた女性。
彼女こそが、『インフィニット・ストラトス』をこの世に生み出した世紀の大天才、篠ノ之 束その人であった。
「……あ、マズいかも」
引き抜いた衝撃が不安定な形で形状を維持して居た残骸の山が揺れながら崩れ始めようとしていた。
「ええい、ままよ‼︎」
「わー‼︎ わーくん、乱暴過ぎー‼︎」
若菜は咄嗟に束を床が見える場所へと放り投げ(本人は文句を言いながらも、華麗に受け身を取って着地した)、自身は天井近くに配管されているパイプへ跳躍して掴んでぶら下がる。
その直後に埃を舞い上げながら残骸の山が音を立て崩れ落ちた。
「あー、結構な数、破損しちゃったかな〜」
眼下の方で束がうわー、見たいな顔で崩れた残骸の山を見てそうぼやいていた。先程の倒壊で色々な物がぶつかりあって打痕傷やら圧壊してしまったのであろう。
「母上の管理方法が杜撰な結果ですよ。後日、同型の奴をシバいて採取してきますから、それで我慢して下さい」
若菜は呆れ果てながら、配管を掴んでいた手を離して残骸の山へ降り立った後、束の前へと残骸の山から降りて来てそう告げる。全く、この人はIS関連以外はどうしてこう、適当なのだろーか。
「取り敢えず、片付けますよ。拡張領域内に放り込むのは良いですけど、また別の研究室へ吐き出すなんて真似は禁止ですからね? 母上の頭なら何処に何があるのか把握しているのでしょうけど、片付ける側としては訳分からん状態になるんですよ」
「何で分かったの⁉︎」