束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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この程度、簡単でしょう?

 

 

 

 

「結論から言おう。早い話、俺達がしなければならない事は『7日間以内にIS学園へ帰還しろ』、それだけだ。紛争か内戦が大絶賛勃発中のこの地域から、な」

 

 若菜がそう告げた瞬間、爆轟と思わしき轟音がこの建物の近くで轟き渡り、その轟音に恐怖心が膨らんだのか次々と悲鳴が上がった。

 距離にしては遠からず近からずと言った所だ。少なくとも楽観視出来る距離とは言い難いか。

 

「……内戦、ですか」

 

 生徒の1人が反芻する様にそう呟いた。

 内戦、それは争いの種類はあれど凄惨なる争いの中でも一際酷い部類に入る争いだ。

 理由は如何あれど双方が敵対しその生命を潰そうと言う意思だけは確実に存在している。

 

「……厳密には内戦か紛争が行われているであろう、と言う憶測になるね。実際の所は単純な話ではなく第三勢力が混入しての混戦地帯と言う可能性も捨て切れません」

 

 若菜の言葉を繋げる形でシノアがそう告げる。現段階ではその程度にしか言えないのも事実。

 

「いや、その線は薄い。第三勢力込みの紛争ならば、俺達を此処に持ってくる隙はほぼ無い。争っている勢力は2つと考えるべきだろう」

 

 シノアの意見に若菜は否定しつつ、勢力は2つとであると見ていた。2つの勢力ならばこの場所……双方にとって最前線である地域に持ってくる隙は起こり得るからだ。

 

「……ど、ドッキリだよね?」

 

 また別の生徒が震えながらその様な声をあげた。その反応はさもありなん。

 

「貴方達、如何して其処まで冷静で居られるの? さっきオリエンテーションって言っていたけど、仕掛け人だったりしない? その……天瓦先生が貴方達の家庭教師だとか言っていたし……‼︎ さっきの爆発もただの演出、とか……」

 

 仕方ない部分だった。そもそも伽羅の性格を把握しているのは自分達だけだ。

 右も左も分かっていない目の前の娘達からすれば、この状況を理解と納得をさせるのは難しいだろう。

 そもそも8組の生徒は女尊男卑の世情と言えど内戦や戦争、紛争の類とは無縁の日本人ばかりだ。IS学園、ひいてはIS操縦者を目指しているのだから銃と言った武器の知識はあれど、本当の意味で『暴力の世界』に触れた者は何人いよう?

 かく言う逆の立場であれば若菜もそう簡単に信じはしなかった。彼女の疑念の態度は認めよう。

 

「……残念ですが、私達も『何かする』とは察しては居ましたが、この様な状況に放り込まれたのは予想の範囲内ではありましたが、こう来るとは思っては居ませんでした」

 

「俺としちゃあ、米国の最強クラスの特殊部隊の体力テストをやらせるのかと思っては居たんだがな……。数段階すっ飛ばして『コレ』たぁな……」

 

 フィウも若菜も『この状況』は流石に予想はして居なかった。

 

 

 

 

 

 

『フフフ、若菜とシノア、それとフィウ。中々、良い線を言っているよ』

 

 

 

 

 

 

 その時、場の空気をぶち壊す形で間の抜けた声が響いたかと思うと8組の面々の前に黒一色の空間投影ウィンドウが展開された。其処から音声が流れている。つまる所、音声のみの通信ウィンドウだ。

 

「はぁ……。伽羅さん。流石にやり過ぎじゃあないですか? こう言うのは、ばかもの共相手に仕掛けて下さい」

 

 その空間投影ウィンドウの先に居る伽羅へ向けて若菜は心にも無い批難の声を伝えた。戦闘をロクに知らない小娘を内戦地帯に放り込むのはやり過ぎだ。

 エストレヤ学院の生徒ならば『万歳突撃戦争上等‼︎』みたいな連中しか居ないので好きなだけ仕掛けてくれても構わないのだが、流石に気の毒になって来る。

 

『ん〜? 若菜、何を言っているのかな?

 今の世の中、女尊男卑(・・・・)だよ。女性が強くて男が弱いって四六時中叫んでいる時代だよ。今は黙っててくれないかな?』

 

 あ、オワタ。

 若菜は伽羅がコレから並べ立てる言葉の羅列を予感して心の中で呻いた。

 女尊男卑思想に対する強烈な皮肉と意趣返しを此処でやるつもりだ。ともあれ、黙れと言われた以上は口を噤むほかあるまい。

 

『良い?女尊男卑……つーまーりーはぁ……女性権利団体とか女尊男卑を傾倒する女性は男性と違って尊くて強い(・・)存在と名乗っているんだよね?それってさぁ、男性に必要不可欠なモノは、その女性には不要(・・)って意味だよね?』

 

 伽羅は何時もの口調で無慈悲な論理を展開すふ。

 

『男性は弱い(・・)から空腹になる。だから食事が必要だ。でも、君達は強いからわざわざ食事を摂る必要は無いよね。

 男性は睡眠が必要だけど、君達は必要無いよね? 強いから睡眠の概念は不要だろ?

 疲れる事も無い。IS操縦者を目指すならば疲労など忘れてしまえば良いさ。

 そして、女性が強いと宣うならばどんな兵器相手でも生身で圧勝出来るだろ? それこそISが相手でも生身で勝てるよな?』

 

 早い話がお前ら女尊男卑思想は食事も睡眠も不要。疲労の概念が無いから24時間休まず働ける。それが女尊男卑思想の根本的概念だと伽羅は突き付ける。

 IS学園に入学して来る連中はどいつもこいつも女尊男卑思想に染まった愚か者ばかりだ。

 

「「「…………」」」

 

『沈黙は納得だ。話を進めようか。ルールはさっき、若菜の言った通り『1週間以内にIS学園へ帰還する事』。

 手段は問わない、1週間以内にIS学園に帰還出来た者が合格だよ』

 

 伽羅は話を切り上げて、本題へと移行する。どんな手を使ってでも構わないのでIS学園に帰って来い……それが今回のオリエンテーションのルールだ。

 

『君達の腕時計に表示された数字が残り時間。色が同じチームだ。帰還時の人数によって成績の評点を付けるからそのつもりでいるように。

 残り時間が0……つまり、1週間経過時にIS学園に辿り着けなかったモノは……まぁ、その時のお楽しみだね』

 

 恐らく爆弾かその辺りだろう。或いは……考えるのは止めた方が精神衛生上有益だ。

 

『さて、気になるオリエンテーションの舞台だけど、若菜達がさっき考察していたけど、中東の紛争地域だよ。長期化、激化の一途を辿っている地域だ。君達が大嫌いな男達が無様に死に続けている場所だよ』

 

 其処で皮肉も織り交ぜて来る。一歩間違えれば自分もその死骸の仲間入りだ。

 

「……そして、この場所は対立する武装勢力同士の最前線……と言う訳ですね?」

 

『そうだよ〜。君達ならば弾道ミサイルが直撃しても、地雷で吹っ飛ばされようと、機関銃に蜂の巣にされようと、無傷で居られるから問題無いでしょう?』

 

 伽羅は至極当たり前のようにそう言い放つ。世界最強のISに選ばれた女性ならばその程度の火器を使われようと大した問題では無い。

 若菜達の場合は、皮肉に聞こえないのが何とも言えない限りだ。

 

「そんな……‼︎」

 

 誰かの落胆に近い声が聞こえた。今まで聞いた事のない理不尽過ぎる言葉の数々。女尊男卑の甘露を啜って来た者達に対する痛烈な皮肉の数々だ。

 

『何方かの武装勢力に降伏するのも1つの手だけど……女尊男卑の台頭で、人間扱い(・・・・)されるとは思わない方が良いよ? そもそも日本に帰って来られる保証は無い……いや、生きている保証も無いな』

 

 退路はほぼ潰されている。

 

「じ、自衛隊‼︎ 日本の自衛隊なら……」

 

『自衛隊による救助活動? あはは、傑作だよね。そんな言葉を信じているだなんてさ。女尊男卑やISの台頭で自衛隊がどうなったのか、理解しているの?

 大半の兵器はお役御免になって処分されるわ、男性隊員は殆ど解雇されるわ、ISライセンスの導入で政府お抱えのISはほぼ全てが等身大プラモデルになりました。

 そもそも、女尊男卑予備軍のIS学園の生徒を助けようとは思わないな。女尊男卑思想の連中は何かと難癖を付けて社会的に殺す真似を何度も何度も繰り返して来た。自衛隊も流石に愛想を尽かしているよ? そもそも外部連絡する手段を君達に与えてはいないし、日本のマスメディアはISばかり報道していて海外の紛争地域の報道はしていない』

 

「…………」

 

 その言葉に声をあげた生徒は何も言えなかった。女尊男卑の影響で恩を仇で返す真似をする女性が急増した。助けても助けずとも被害を被るならば初めから知覚しなければ良い。日本人の有名な事なかれ主義だ。

 

『さてと、かなり脱線したかな。オリエンテーションのルール説明は以上だよ。

 既に……もう行動をしている子も居るみたいだしね』

 

 生徒達は周囲を見渡す、気付けば椅子に座って居た若菜とその傍にいたシノアとフィウの3人の姿は其処には無かった。

 別に若菜は8組のリーダーでも纏め役でも何でも無い。更に言うならば仲間でも無い。言うなればただのクラスメイトで赤の他人、その程度の関係だ。

 

『それじゃあ、オリエンテーションスタート。全員、無事にIS学園へ帰還出来る事を願っているよ。IS操縦者を目指すならばこの程度の困難、無事に乗り越えてみせなよ?』

 

 その言葉を最後に漆黒の空間投影ウィンドウは消滅した。同時に各生徒の腕時計の数字が減り始めるのだった。

 

 

 

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