束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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反応に困るのだが?

 

 

 

 

 遠くで爆音が響き渡る紛争地域。中東地域らしく荒れ果てた荒地と砂の上に建物が点々と立ち並んでいる。長期化している影響で建物の一部は破壊され放置されている。

 

「全く……。伽羅さん、初っ端から飛ばしてくるな。高い確率で俺達以外、壊滅するぞ」

 

 更についでに言わせて貰うと仮に無事、乗り切れたとしても精神が圧し折れる事は想像に難くは無い。

 彼女達新一年生の想定では憧れのIS学園に入学+噂の男性操縦者とお近づきになっての、学園生活を送る……だと思われたが、悲しいかな現実は本気の戦場で生存を賭けたオリエンテーションと言う地獄が待って居た。

 

「本来のIS運用の状況を踏まえると、初動の行動の確認を兼ねているのであれば正当かと」

 

「エストレヤのストライカー基準なら、まぁ……そうなるよな。って事になるがな」

 

 絶対天敵の脅威に晒されているエストレヤ他の惑星国家と女尊男卑に傾倒している地球ではそもそもの認識の時点で大きな隔たりがある。伽羅はエストレヤ側の人間だから、ある意味この仕掛け方は当然と言えば当然か。

 

 考え方の違い。

 そのギャップに尽きると言う訳である。そもそものISライセンス試験でも夥しい人数の不合格通知が突き付けられるのも、根本的に『ミスマッチ』が多発しているからだ。人格が要因で落とされる事も多いのだが、突き詰めると要因は『そこ』にある。

 

「伽羅先生は地球人に於ける『就職先』を分かりやすく提示したに過ぎないんだよね。地球上で1番分かりやすくした結果……この形になった」

 

「……まぁ、地球上での認識が『人間同士の戦争の兵器』って認知じゃあ、そうなるか。エストレヤとかだと立場が大分、異なるからな」

 

「……あくまで伽羅先生の行動は地球上での思想に準拠した結果ですね」

 

 地球とエストレヤ他ではISがどう言う認知で運用されるかは異なる。何方も『兵器』と言う認識ではあるが地球ならば言うまでも軍事力や戦争の兵器の主力と言う認識。

 アラスカ条約等では『スポーツ』的な扱いと見做しているがほぼ形骸化しており、軍事力、防衛力に据えられている。(最もライセンス制度により強烈な抑制が掛かり、各国政府は軍事力維持の為にライセンス保持者の確保に苦心している)。

 

 対するエストレヤ側だと、汎宇宙的に脅威と言える絶対天敵に対する兵装だ。然し乍ら、エストレヤを始めとした惑星国家群ではインフィニット・ストラトスの対絶対天敵戦以外での軍事利用は基本的には禁じられている。

 

「……さてと、その辺りの考察はこの程度にしておこう。正直な所、余り興味の無い話だからな」

 

 場所は両勢力にとって最前線。双方が攻撃を行っている危険地帯だ。故に建物の外を迂闊に出歩くのは危険であり、直ぐに近くの荒屋同然の建物に身を潜めた。

 

「……取り敢えず、今1番必要なのは座標情報だな。弾道ミサイルを飛ばしてんだから衛星受信出来る装備を前線地域に持ち込んでいる筈だ。単純に方角が分かれば良いと言う訳じゃない」

 

「中東地域ですから、それに1週間の期限から考慮すると陸路は現実的じゃないよね」

 

「……となれば、輸送ヘリ等が必要になりますね」

 

「統合すりゃ、どっちかの勢力から座標データと輸送ヘリを奪えれば王手と言えるな」

 

 伽羅からのルール説明、そして現実的な脱出ルートを構築した結果。

 脱出に必要なのは輸送ヘリ本機と現在地及び周辺地域の対空兵器の有無の情報(輸送ヘリで移動する都合上、対空兵器で撃墜されかねない為)であると定めた。

 

「……本来であればISで移動するのが最も即決ですが」

 

 若菜達はこの地球で俗に言う『専用機』と呼ばれるISを所有している。普通であればその飛行能力(若菜の場合はものの数分以内に)でIS学園へ帰還は可能だ。だが、束からは『基本的に地球上では完全展開による使用は禁止』であると厳命されている。

 

「コレは非常時に該当しないだろうからな」

 

 紛争地帯に放り込まれる事が非常事態に該当しないとはとんだ戦闘民族思考と言えた。しかし、それ以外にもちゃんと理由があった。

 

「そもそも迂闊に露出させる訳には行かないだろ?その星が許容出来る水準を超過する技術を乱用すると、情報汚染が広がる。

 俺達のISは正にこの地球が許容出来る技術水準を遥かに超過してしまっているからな。1段階通り越して2、3段階すっ飛ばすレベルだ」

 

 それはエストレヤを含む(そもそもエストレヤはかなり特殊な立ち位置だが)惑星国家が加盟している絶対天敵の襲来を発端として発足した次元間連盟が規定による惑星環境に則る法律だ。

 早い話が未開の惑星にその惑星の技術水準を超過するテクノロジー技術の持ち込みを禁止する法律である。

 

 コレはその惑星にはその惑星に準じた進化速度があると言う理論に則り、急進的な技術進化は却ってその惑星の文明の早期崩壊に至らしめると言う理由が付随している(ラビット・ラボやコロニーは束達の次元間移動に必要な為、最低限の規模、非公開措置の実施の許可の下、黙認されている)。

 

 若菜達や束は半ば既にエストレヤに住民権等は移管した後の様な状態の為に適応される。故に連盟が定める法律遵守の行動をしているに過ぎない。

 

「……まぁ、仮に可能だとしてもそれじゃあ折角のオリエンテーションにならないしね」

 

 それを認めてしまえば参加させた意味が無くなる。此処は仕組んだ伽羅の思惑に其の儘、乗るのがベスト。……と言うのも後が怖いと言う理由もある。

 

「良し。方針は決まった。……先ず最初にやるべき事は」

 

「武装の調達ですね。手短な歩兵から強奪しましょう」

 

「食糧確保も急務だよね。戦闘糧食は……その辺の兵士から頂いちゃいましょう‼︎」

 

 何とも物騒極まりない発想を好む娘達であった。紛争地帯である為に物資を持つ推定敵対的勢力は各地に分散している。適当に襲撃して強奪してしまえば良いと言う発想だ。戦場であるが故に戦闘員が死ぬと言うのは普遍的な光景だ。

 その発想は間違っては居ないのだが……それを彼女達が率先として言い出す光景はちょっと反応に困る。

 いやまぁ、女尊男卑だから良いのか? うん、問題無いな。多分……複雑だけど。

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドーモ、Mr.ソルジャー。特に理由はあるけど、くたばってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、IS学園。

 

「……さぁてと、何人生存出来るかな?」

 

 8組の生徒達にオリエンテーションの説明を終えた伽羅。彼女達から見れば理不尽極まりない状況に放り込んだとしか思われないのだが、別に構いはしない。

 女尊男卑思想と言うのは外観だけで判別する事は難しい。女尊男卑の蔓延から日本国内に限定して見れば情勢不安定化により、恩恵に与ろうとして当初は猫を被り常人を粧っている者も少なからず存在しているからだ。

 

 本性と言うモノは極限や危機的状況で初めて現出する。このオリエンテーションは隠れた女尊男卑主義者を炙り出す目的が多分に含まれている。

 他にもISが起動出来ない状況でどの様な行動が取れるかどうかを見極める場でもある。

 IS操縦者とは未知との戦いだ。だからこそ何よりも『行動力』が求められるのである。

 

「若菜達は当然、帰って来れるね。あの子達にとっちゃ温い環境だろうし、偶には息抜きも必要だしねぇ。地球じゃあ……発散も難しいだろうから」

 

 オリエンテーションへ放り込んだが故に誰も居ない8組の教室で伽羅はそう微笑む。

 

「ん〜?」

 

 足音が聞こえてきた。忙しない足取り、伽羅はその歩き方から誰が此方に向かって来ているか理解していた。8組の教室の扉が開かれ現れたのは織斑 千冬だった。

 

「……天瓦先生。8組の生徒達はどうしたのですか? 朝から姿が見えないのですが?」

 

「ん〜? 8組は全て私の裁量に委ねられているって話をしたでしょう? 貴方の指図を受ける謂れは無いと思いますよ〜?」

 

 微笑みを崩さず、伽羅は千冬の質問にそう答えた。あくまで内容を語るつもりは無かった。

 

「……生徒全員の姿が見えないのは明らかに可笑しい。男性操縦者である篠崎すらも見掛けられない。一体、何処へやったのですか?」

 

 恐らく昨日から騒がしい頭の中でラフレシアが咲き誇っている女子生徒の行動を加味しての質問だろう。養殖人間が、集る先を求めて騒いでおりその集り先が見つからない事に疑問符を浮かべていたのを伽羅は目撃している。

 故に敢えて、こう答えた。

 

「ISライセンス試験の対策授業(・・・・)ですよ? 束博士から説明されませんでした?『廃校確率を0%から1%程度に引き上げる』と」

 

 オリエンテーションは炙り出しの目的もあるが、束が求めるIS操縦者の素質の見極めの場としてもある意味機能しているとも言える。

 ある意味、8組では既にISライセンス試験が始まっていると言っても過言では無かった。

 

「…………。当人の貴方がその授業に同席していないのは何故ですか?」

 

 IS学園でもISライセンス試験に於ける対策授業は全学年別で行ってはいる。それが結実に至ってはいないが。

 対して8組は1学期から対策授業を始めていると千冬は考えた。やはり外部かつ束の息が掛かっているとなると考え方が異なるようだ。

 

「コレも必要な行動だからだよ〜。既に15、16でしょ?ならば、参加者の判断に任せるべきです。それでダメなら……その程度の存在でしか無かっただけです」

 

 訝しむ千冬に対して伽羅は言葉を濁してそう伝える。オリエンテーションのルールの都合上、ゴールに事情を知る者が居なければ破綻するからだ。

 

「…………各企業や各国政府から問い合わせが多数来ている。やはり束の息子と言う事もあってか、私の弟以上の反応だ」

 

「全部、却下ですよ。事前条件を確認済みの筈です。そんな事も抜け落ちている程に痴呆が進んでいるの? もしかして……人類は衰退したのですか?」

 

 千冬が8組に訊ねて来た理由を告げると素気無く伽羅は斬り捨てた。そもそも千冬に話が行ったのは8組担当の伽羅が各国政府やらIS企業からの問い合わせを会話する事なく悉く蹴り飛ばしているからだ。

 

「……確かに、そうですが。何分、非常に多くて教師陣の業務にも支障が出始めているのですよ」

 

「ふぅ〜ん。それは悪い事をしちゃったかな。話だけ聞いて断りを入れましょう」

 

 伽羅自身としても他の教員の邪魔になる様な行為は本望では無い。降り掛かる火の粉は払うのみ。どの道、2、3日程度で帰って来れるとは思っては居ない為、その間に邪魔なムシケラには末葉に至るまで御退場頂くとしよう。

 

 

 

 

 

 

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