束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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生き残る為にできる事 

 

 

 

 

 金子 燐芽は半壊した建物で息を整えていた。

 

 

 

 若菜達が一足先に離脱した後、放置された8組生徒達は生き延びる為にはどうすれば良いか自分で考えねばならない。そんな折に建物のすぐ近くに弾道ミサイルが直撃、その余波で『この建物も安全ではない』事を悟った生徒は半ば恐慌に等しい状態で建物から飛び出した。

 

「はぁ……はぁ……。此処まで、来れば大丈夫でしょうか……?」

 

 彼女はお世辞にも体力があるとは言い難い体躯だ。高校生と呼ぶには余りにも小柄で全体的に細い、骨と皮しか無さそうな指や四肢、力を込めれば容易く砕けてしまいそうな肉体。

 黄金に煌めく髪をツインテールに纏めてた髪型、幼さ残る顔立ちは丹精な人形を彷彿させた。

 

 だが、彼女は正に命辛々と言った体であった。身に纏っていた白を基調としたIS学園の制服は砂で汚れてしまっていた。

 腕に着けられている腕時計の数字の色は黄色。恐慌に煽られる形で建物から飛び出した為、同じチームメンバーとは完全に逸れた形となってしまった。

 

「…………」

 

 このオリエンテーションのルールを説明した時の伽羅の理論はもはや、無茶苦茶其の物と言えた。どんな思考回路を持てばその理論に到達出来るのか燐芽は理解出来なかった。

 普通、常人であれば到底、信じられない状況で、文句や悲鳴を囂々と上げたくなるだろう。何処の世界にただ(・・)の小娘を丸腰で銃弾は愚かミサイルが飛び交う紛争地域に放り込もうと考えようか。IS操縦者を養成する学園の教育カリキュラムとしては常軌を逸する内容だ。

 然も8組は他のクラスと違い完全に教育内容は伽羅に全ての裁量が委ねられていると言う異常光景。相当な覚悟を伴う者以外は、根を上げてしまうだろう。しかしながら、燐芽には引き退る訳には行かない事情を抱えている。

 

「……あの、篠崎さん達は、こうなる事を予見していたのでしょうか?」

 

 8組の男性操縦者、篠崎 若菜。その為人は事前の情報からは全く見当は付かなかった。コレはIS学園の誰もがそう思っていた事だろう。

 まだ、その姿と言動を見て日が浅い為にまだ何とも言えない。初日で分かった事は伽羅とは知己であり尚且つ家庭教師とその生徒の関係だった。

 だからこそ、ある程度予想は出来ていたのだろう。……逆を言えば普段からあんな感性で物事を判断しているのであれば家庭教師相手として見るとかなり問題しか感じられない相手だ。

 そして、先程の一言で黙らされてしまったが、余りにも無茶苦茶な内容である今回のオリエンテーションに対して真正面から異議を唱えた。この事から女尊男卑の影響に惑わされない感性の持主だと燐芽は見ていた。

 そして、ある種の確信を抱いた。

 

「……篠崎さん、達と行動すれば生還出来る確率は高くなる筈です……‼︎」

 

 伽羅は『手段は問わない』と言った。ならばこの状況を打破出来る人物達に便乗する事もなんら問題は無い筈だ。

 燐芽には目的がある。その為には何が何でもIS操縦者、最低でも代表候補生レベルにならなければならない。だから此処で死ぬ訳には行かないし、生還出来たとしても臆して自主退学する訳には行かない。

 

 燐芽は決意を改めて荒屋から外の様子を窺った。太陽もかなり高くなって来ている。日差しが差し込む事により見晴らしが良くなってくる。紛争とか戦争とかの題材の文学や電子ゲームは然程、嗜んで来なかったが……恐らくは見晴らしの良い場所を出歩くのは危険だと、何となく理解は出来た。

 

「建物の隙間を縫う感覚で移動するのが吉、でしょうね」

 

 そもそもこの方角で合っていると言う保証も無い。もしかしたら反対方向に進んでいると言う可能性もあるのだが、引き返す余裕は無いだろう。自分の向かう先に彼らが居る事を信じて進むしか無かった。

 弾痕や火災の跡が生々しく残る建物の壁に隠れながら、時には開けた砂地の道を意を決して横断しながら直進する形で進んで行く。相変わらず発射音が紛争地帯全域に鳴り響いているのか、耳鳴りが収まらない。

 

「…………ぅ」

 

 ソレを燐芽は思わず呻いた。悲鳴を上げれば自分もああなると本能的に悟ったからだ。

 ソレは壁に凭れる形で倒れた兵士の死体だった。腹部には複数の銃弾による出血痕が残されていた。間違いなく本物の肉眼で捉える死体だ。戦闘行為による戦死。

 銃火器の知識は中学校におけるIS学である程度の知識はあったが、生身で撃ち合うと言う行為には抵抗があった。あくまでISのシールドバリアがあるからこそ、引き金が引けるのだ。

 

「……此処で、銃撃戦があったのですね」

 

 見渡すと壁やらは壊れているが辛うじて民家の敷地内である事が分かる。他にも斃れ物言わぬ死体となった兵士達の姿が野に晒されている。此処で銃撃戦が起こり敵味方問わず多数の死傷者を出したのだろう。此処で発生した戦闘は古いのか一部の骸は白骨化していた。

 

「……ぅ。コレが……死臭、ですか。余り長居はしたくはありませんね」

 

 花の女子高生に陰惨な死骸の山の中で過ごすのは耐え切れない為、足早にその場を後にして先に進んだ。

 

「……やっぱり、紛争。なんですね」

 

 進めば進む程、酷い様相が貌を見せて来る。そもそも損壊具合が著しい死体も増えて来た。手足の何処かを失っている死体もあれば、頭部すらも残っていない死体も転がっている。

 限りない死の山が其処彼処に築かれそして、其の儘放置されている。

 

「…………。進みましょう」

 

 足は止めなかった。いや、止めれなかった。足を止めれば其の儘、引き摺り込まれそうな感覚がしたからだ。ナニカとは言わない。ただ、恐怖と言う名のナニカが背後にしがみつこうとしている感覚が燐芽はしたからだ。

 

 早く此処から離れたい。

 何故かその様な衝動が燐芽の足を突き動かしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある民家の地下に設けられた小型の前線中継基地内部。若菜達はその基地内部の兵士達を全滅させる。しかし、基地内部の物色するとかなり心許無い状況であった事が予想された。

 

「敵影、無し。悪いな、部外者が割り込んでよ……。シノア、頼めるか?」

 

「ええ。任せて」

 

 基地内部の通信室。其処には本部との通信に使われている端末があった。ソレを使えば少なくともこの地域周辺の地形を撮影する衛星映像が見られる筈だった。

 

「……若菜さん。キミもそろそろ、その機械音痴を直した方が良いですよ? エストレヤじゃ、変な所で不便を強いられるかも知れません」

 

「俺はああ言うのは余り得意じゃないんだよ……」

 

 絶対天敵とかの時の作戦中、そう言うのはガイア頼みだったし。

 

「……若菜君。この紛争地帯周辺の地形情報を見つけたよ。此の儘、東に向かえば日本に辿り着けそう」

 

「多少の誤差は許容範囲としよう。最悪、太平洋に墜落して泳いで帰るか」

 

 若菜も若菜で結構、無茶苦茶な事を言っている気がするが、今更なので2人は突っ込まない。

 

「少なくとも、此処は北半球に位置しているだけでも良しとしよう。中東が嘘情報の可能性もあったからな」

 

「……となれば後は脱出用の兵員輸送機の奪取ですね」

 

「最低でもある程度の広さがある場所が必要だな。そもそも輸送機を導入しているかどうかの不安もあるが、其処はもう賭けだな」

 

 

 

 

 

 

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