束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
端末に残されていた戦場一帯の衛星写真。マーキングが付けられた箇所は弾道ミサイルの攻撃地点と思われる。マーキングの位置はかなりバラけており、その付近に敵対勢力の兵器や部隊の前線拠点があったものと考えられる。
「……輸送機のランディングポイントの位置になりそうなのは……と」
「……この近辺がある程度、開けていますね」
「いや、其処は無いだろう。弾道ミサイルを持ち込んでいるんだ。敵対勢力も弾道ミサイルで攻撃して来ても可笑しく無い」
「ですね。荒野が広がっていて幾ら離着陸が可能と言えど危険すぎます」
離着陸可能な場所とは言うが遮蔽物が少な過ぎる場所だと返って格好の的になりかねない。其処は何方の勢力も把握して然るべきだろう。
「……で、此処を制圧して何分経過した?俺の計算だと8分くらいだと思うが」
「うん、私もその位だと思う」
「……本部が異変を察知して確認の為に予備の斥候辺りの戦闘員を差し向けて来ますよね。放棄は二の次にする筈です」
前線拠点が落ちたのだ。異変を察知するのは当然。
「若菜君。ある程度、候補を絞り込んだよ‼︎」
「別に俺達は戦争しに来た訳じゃねぇしな。此処から離脱するぞ‼︎」
前線拠点から離脱するに合わせて弾薬や火器等、失敬出来る物を頂戴して地上へと離脱して、直ぐに遮蔽物がある場所へと身を潜める。直ぐに離脱とは言うがそう上手くとは考えない。何らかのタイミングで戦闘になるならば有利な状態で始めたい意図がある。
普通ならばIS完全展開と言わずともシールドバリアのみ展開する事も可能で態々、そんな真似をしなくても良いのだがオリエンテーションと言う体裁上、他の生徒と同じ条件に合わせた方が良いと言う判断である。それではオリエンテーションの意味が喪失する。
「……其方から見えるか?」
「いえ、此方からは誰も確認出来ません」
「私も」
3人とも別々の方角を見ており、シノアとフィウの見ている方角からは敵影は確認されていない模様。若菜の見ている方角からも確認はされなかった。
「……警戒を怠らずに、シノアが見つけた候補地点に向かおう」
3人とも、殺害した戦闘員や前線拠点から失敬した銃火器を片手に移動を開始。輸送機が着陸し兵力を戦場に降下させそうなポイントへ向かう。
即ち、紛争地域に展開されている武装勢力のど真ん中に突っ込むと言う正気の沙汰では無い行動でもある。
「わ、私は何も持っていませんっ‼︎ 」
建物の壁や、崩れた残骸の後ろを伝いながら移動していると突然、命乞いにも等しい悲鳴が響き渡っていた。
「誰か居るな……」
残骸の遮蔽物の後ろから声の聞こえる方向へと覗き込む。視界の先では防弾ベストと言った戦闘用の服装に身を包み銃火器で武装した兵士達が見えた。
様相から物々しい雰囲気の最中、先程の声の主と思われる砂で汚れているが特徴的な白色のIS学園の制服を身に包んだ金髪ツインテールの少女が片膝立ちの状態で両手を後頭部に回され、アサルトライフルの銃口を後頭部に突き付けられている光景が目に飛び込んできた。
その少女の周りに兵士達が包囲する形で取り囲んでおり、丸腰同然の彼女には投降する以外の道は無いだろう。
「見た目通り……想定内の光景が目の前で発生していますね」
「このご時世で即射殺されていないだけ、マシ……いや、状況的に即殺されていた方がマシだったかも」
ストレス過多の戦場だと無力な娘が放置されていると、どんな目に遭うのか火を見るよりも明らかと言える。それが女尊男卑の弊害によりどんな相乗効果が見込まれるか計り知れない。
「…………見殺しにすると夢見が悪いな。フィウ、その背負ってるSVchを貸してくれ」
「若菜さん、助けるのは良いのですが、兵士の数が多いです。場合によっては流れ弾で彼女に当たる可能性もあります」
軽く見ても20人前後の兵士がその生徒の周りを包囲している。
「その時はその時だ。生きる道の選択くらい、本人に選ばせろよ」
若菜はフィウからSVchを受け取り、衝撃により上部が崩れた隙間から銃口を乗せて銃架の代わりにする。
「フィウ、シノア。俺があの娘に銃を突き付けている奴を殺る。その直後にそれ以外を撃て。俺はその後、撃ち漏らしを殺る」
「了解しました」
「了解、速やかに排除します」
シノアとフィウも前線拠点から失敬して来た銃火器を構えてその時に備える。
刹那、銃声が響き渡りその生徒に銃口を向けていた兵士の頭部が破壊された。包囲していた兵士と兵士の間を通過して的確にその兵士の頭部を撃ち抜いた。
その光景を目の当たりにした兵士達は襲撃だと察して戦闘態勢に移行するも次々と撃ち殺されて行く。構える暇を与えない、不意を突かれれば為す術もなく崩壊する。
「え⁉︎ な、何が……⁉︎」
「死にたくなきゃ、伏せろ‼︎」
若菜はそう叫ぶ。敵兵の数は半分を切っている。居場所を敵に知らせるは悪手ではあるが、この際は致し方なし。
「若菜君。確認出来た敵影は全て排除出来た……」
「他に敵対勢力が居るかも知れないが……彼女の放置は出来ないな。警戒しつつ、移動しよう」
遮蔽物を乗り越え周囲を警戒しつ、その生徒の近くに向かう。彼女の周りには兵士の死体が積み重なっており、無辜の人間から見れば血の気が引きそうな光景だ。
「君、大丈夫?」
「は、はい……‼︎」
近くで見ると一層、壊れそうな程に細く小柄な体躯であると分かる。銃創による返り血も浴びており制服に血が幾つか付着していた。
「此処は危険です。身を隠せる場所に移動してからにしましょう」
「こっちだ。死体に躓くなよ」
その生徒は金子 燐芽と名乗った。
そう言えば初日で自己紹介は適当に済ませろとの事だった為、先ずはお互いの名前を教える所からであった。
「あ、あの。危ない所、助けて頂いてありがとうございました」
紛争地域と化して家主を失った荒れ果てた民家のリビングにて、一息つける事となった。
「流石に見て見ぬフリってのは夢見が悪かったからな」
若菜は割れた窓から外の様子を窺いながら燐芽に答える。正直な所、紛争地域の何処にも安全な場所は無い。誰か1人くらいは外の様子の警戒をしておかないと危険だ。
「それで、他の人達は?」
「……貴方達が一足先に移動を開始した後、近くに弾道ミサイルが落下したのか、爆発音が聞こえて来て……皆、気が動転し逃げ出すように飛び出しました」
「……ミサイルが飛び交う環境で1箇所に長居は危険と察したんだろうな。無理も無いだろう」
「それで、皆さんはそれらは何処から……?」
燐芽は若菜達が銃火器や防弾ベストと言った装備を持ち歩いている事に疑問符を浮かべていた。
「……紛争地域ですので、戦闘配備された兵士から奪いました」
「流石に丸腰で行動する程、命知らずじゃ無いからね。向こうは殺すつもりで来ているから殺し返すくらいの気持ちで行かないと、生還する事は出来ない」
「…………」
フィウとシノアを説明を聞いて燐芽は絶句、その様子を見た若菜は2人は相変わらずのズレていると呆れていた。