束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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厳しさと優しさは紙一重、なのでしょうか

 

 

 

 午後4時頃。日が暮れ始める時間帯。まだ明るいとは言え、此処は紛争地帯。夕暮れ時、夜間の中で行動するのはリスクか或いは好機と捉えるかは人によりけりだろう。

 

「……今日は此の儘、此処で休息しよう」

 

「うん、流石に夜間に動くのは難しいかも」

 

 オリエンテーションは7日間に及ぶ。必ず何処かで睡眠を摂る事になる。流石にぶっ通しで行動するのは危険過ぎる。

 

「若菜さん。見張り役の交代しましょう」

 

「ああ、異変があったら教えてくれ」

 

 外の様子を窺っていた若菜とフィウが交代する。近くに敵対勢力が居ないとは言え、警戒するに越した事は無いだろう。

 

 荒れ果てたリビングの机を囲って座っていたシノアとやや緊張気味の燐芽に交ざる形で軋んだ椅子に若菜も座った。

 

「さてと、金子……だったか?」

 

「は、はい‼︎」

 

「取り敢えず、現状の説明からしよう」

 

 シノアとフィウは計画は知っているが、彼女の場合は状況が分からない。先ずはその辺りの説明をしておいた方が良いだろう。

 取り敢えず自分達が立てた帰還計画の内容を説明した。

 

「輸送ヘリを確保して……空路からこの地帯を脱出、ですか」

 

「ああ。前線拠点にあった衛星情報の端末から、此処らは中東地域にある事が判明したからな。

 陸路から紛争地帯(レッドゾーン)を脱すると言う手もあるが、その場合、その後に致命的な問題が発生してくる」

 

「問題……?」

 

 このオリエンテーションの手段として1番最初に思い浮かぶのは陸路……つまり、徒歩なり何なりで紛争地帯を抜けると言う事。最も単純で分かりやすい脱出方法だ。

 

「日本は島国だ。となれば陸路で移動しようが必然的に飛行機や船が必要になる。それ以前に中東地域なんて不安定な情勢だ。

 10代の小娘がその地域を歩いていたらどうぞ攫ってくれと言っているようなモノだ。つーか、紛争が起こるくらい治安が悪いからその地帯を脱したとしても銃撃戦やらギャングの抗争にカチ合う羽目になるだろ」

 

「…………」

 

 若菜の釣れない言葉に燐芽は沈黙で返すしか無い。その光景を想像して顔が青くなった。

 

「……トドメにオリエンテーションは7日間とは言うが、水と食糧も無しの状態で紛争地帯に放り込まれたからな」

 

 今回、8組の生徒達は文字通り丸腰の状態でこの渇いた大地が広がる紛争地帯へ放り出されている。当然、飢えを凌ぐ為の飲料水や食糧の類も無い。

 

「人間が飲まず食わずで生きられる限界は凡そ3日。それに加えて中東地域は基本的に高温になりがちで、体内の水分が失われやすいから、もっと短いかもな。

 砂原や荒地が広がるこの地域で最も手っ取り早く入手するには紛争地帯でドンパチやってる兵士から強奪するしか無い」

 

 それが出来なければ3日で全滅だ。若菜はそう言い切った。

 

「…………。あの、1つ質問宜しいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの、天瓦先生は、どうしてこの様なオリエンテーションを組んだのでしょうか?」

 

 それは若菜達ともし生きて合流出来たら聞いてみたい事であった。

 いや、こんな状況で聞くのどうかと思うが、此処で聞かねばタイミングを逃しそうであったからだ。色々な意味で理不尽極まりない内容、オリエンテーションと名乗るには烏滸がましい内容。

 

「そうだな……。理由は色々あると思うが強いて挙げれば契約だな」

 

「契約、ですか?」

 

 思わぬ答えが返って来た。

 契約とは、一体……?

 

「……コレ、言っても良かったか?」

 

「うーん、良いんじゃない?お母様から口止めはされていなかったし……」

 

 母。そう言えば、苗字は異なるがこの2人は戸籍上ではISの開発者である篠ノ之 束の養子と養女と言う関係だった。この2人が母と呼ぶ人物は言うまでもなく篠ノ之 束その人以外、あり得ない。

 

「まぁ、どの道何処かで知る事になるだろうからもう言っちまおうか。実はIS学園は今年度中に実績を示す事が出来なきゃ廃校になるんだよ」

 

「え? は、廃校ですか?」

 

「うん。貴方は今まで実施されたISライセンス試験の合格者の内訳について知っているかな? 特にIS学園の在校生、OBの内訳」

 

 確か、昨年度は3人程。今年は1人だった筈……。その試験の合格率は異常なまでに低いのは有名だ。5桁単位の人間が受験して1人合格出来れば上出来だと言える程に。それを加味すると……。

 

「……えっと、2、3人、でしょうか?」

 

「……その認識は無理も無かろう。合格者の情報は守秘義務に則り本人以外、通達されないからな。

 そして答えは0だ。ライセンス制度が導入されて以降、昨年度までのIS学園の卒業生を含んだ上でIS学園の生徒の内、ライセンス試験で合格した者は1人として居ない。教師に至ってはたった1人しか合格出来なかった。挙句の果てにIS業界全般の連中も殆ど合格出来なかったと言う有様だから笑える話だ」

 

 在校生、卒業生、OB問わず1人としてライセンス試験と言う大いなる壁を破る事が出来た者は居ない。ある種の例外枠たるIS学園教員でさえたった1人しか合格者は出なかった。

 それに視野を更に広げIS企業やIS関連の組織体の人間を含めても1人か2人しか合格出来ていないと言う為体。

 

「合格してからIS学園に入学した者は1人居るみたいだが……まぁ、其奴は如何でも良い(・・・・・・)

 

 ライセンス所持者が入学したケースに関しては考慮はしないそうである。

 

「寧ろ逆にIS学園やIS業界に無関係な人の方が事実上、合格率が高いの」

 

 数が少ないとは言え比率で言えばその様な形になる。

 

「……! IS学園の必要性が問われた、と言う事でしょうか?」

 

 流石に此処まで情報を提示すれざ理解はする。無駄に難関校を名乗っているIS学園に入学出来た以上、相応の地頭を持つのは当然。

 

「その通りだ。IS学園を卒業しようが、幾ら適性値があろうとな。畢竟、ライセンスが無くば無意味。

 IS操縦者の養成を標榜に掲げ、その標榜の名の下に運営されている以上、学園として実績を示さねばならない。ライセンス制度が導入されて以降、IS学園の卒業生の誰1人としてライセンスを取得する事が叶わなかった」

 

「……そう言う状況の中、遂に日本政府からIS学園の助成金の打ち切りを通告されました。IS学園は国立でありその設備の維持の為に政府の助成金で賄われていた。……助成金が打ち切られれば学生納付金だけでは到底足りないと思われます」

 

「……政府から通告されたIS学園への助成金継続の条件が、来年の3月に行われるISライセンス試験の合否発表日当日までにIS学園の在校生、卒業生が合わせて15人以上、ISライセンスを所持している事」

 

 シノアと若菜がそう告げた。早い話がIS学園の生徒で15人以上、ライセンスを所持出来なければIS学園は廃校を余儀無くされると言う事。

 

「此処で、君の質問に戻る。

 つまり、伽羅さんは8組の生徒達に対してライセンス試験への対策授業(・・・・)を行っていると言う事だ。このオリエンテーション自体が、ライセンス試験への対策授業の一環であるとも言える。母上と織斑千冬が交わした契約に則ってな」

 

「……!」

 

 それは、逆を言えば此処までしなければライセンス試験への合格は望めまいと言う事にも繋がる。そして、IS学園の教員によるやり方では到底不可能であると言う証明でもある。

 

「……篠崎さんは、このオリエンテーションが試験への合格に繋がる、と思うのですか?」

 

「さぁな。其処はご想像にお任せする(・・・・・・・・・)よ。このオリエンテーションを通じて何を感じ、何を知り、何を得るか……それは君達次第だ」

 

 若菜は敢えて燐芽を試すかの様な言動をした。まるで伽羅の様に。

 

「……………」

 

「若菜君。流石に情報量が多過ぎる気がするよ、確かに伽羅さんのやり方は何時も無茶苦茶だし、少し位考える時間が必要だと思うよ?」

 

「……それもそうだな。先も言った通り、今日は此処で休む予定だ。明日、行動を開始する。

 シノア、味の保証は出来ないが掻っ払って来たレーションを広げてやってくれ。俺は後で良い。……では、フィウと見張りの交代してくる」

 

「うん……。分かった」

 

 

 

 

 

 

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