束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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輸送機を頂戴する‼︎

 

 

 

 翌日。オリエンテーション2日目。

 若菜達は兵士達から物資を収奪した事により食糧の確保は出来たが、そうでは無い者は高温のこの地帯では急速に消耗する状況。若菜の予想が正しければ今日、力尽きる者が現れ始める頃だ。

 

「金子。良く眠れたか?」

 

「あ、はい。……その、私だけ何もしていないのですが……」

 

「気にするな。ただの凡人に期待する理由が無い」

 

 心にグサリと刺さる言葉が送られた。しかし、事実でもある。何も分かっていないのに変な行動を取るのは組織体としては不利益を被る。故に間違いでは無い。

 

「それと、流石に丸腰と言うのは拙かろう。コイツを渡しておく」

 

 そう言い若菜は金子に一挺の拳銃とホルスターを渡した。

 

「え、こ、これって……拳銃、ですよね?」

 

 銃の名称までは分からないがIS操縦者を目指すならば銃の扱いは心得ておくべきだ。かく言う金子の場合、実際に実銃を手にするのは初めてだった。

 

「ジェリコ941だ。比較的耐久性のある拳銃だ。まぁ、見た目はデザートイーグルに似ているが構造上、大分異なる」

 

「若菜君。そう言う事を聞きたいんじゃ無いと思うよ?」

 

「…………。君も昨日、体感した通り此処は戦場で丸腰で暴力の世界と渡り合えるのは本物の狂人だけだ。護身用として銃の一挺くらいは携帯しておいた方が良い」

 

 IS操縦者同士の試合では拳銃のみならず実弾を用いたサブマシンガンやミサイルも飛び交っている。だが、それはISに備わっているシールドバリアや絶対防御がある為に死亡に至らしめる可能性が限りなく低いから実弾の銃火器で撃ち合い、エネルギー兵装で破壊し合い、抜き身の刃で斬り結ぶ事が出来る。

 生身での銃撃戦となれば落命の可能性も常に視野に入れねばならない。

 

「もし危険が迫ったら躊躇わず撃て。躊躇すれば君が死ぬ事になるだろう。

 だが、心得て欲しい事が1つある。その引き金を引くと言う事は君自身、本来の君とは訣別せねばならないと言う事を決して忘れないで欲しい。たかが小さな拳銃と言えど『その力』は力である事に変わりは無いのだから」

 

 もし、誰かを射殺すれば覚悟を伴う者か破綻者や狂人では無い限り、後日その精神を苛み続ける傷となるだろう。常人と呼ばれる者ならば、尚更だ。

 

「……難しいんですね」

 

「……可能ならば弾を1発足りとも吐かずにこのオリエンテーションが終了すれば、君は平常の世界に心置きなく還れるだろう」

 

「…………いいえ、私には目的があります。この手段が間違っていると言われても構いません。その為にIS操縦者を目指します」

 

 燐芽は遠回しに若菜が『ISの世界は危険だから帰った方が良い』と暗に告げている事は薄々、気付いていた。

 伽羅とは家庭教師との関係、更に篠ノ之博士とも繋がりがあり、篠ノ之博士のその子供と言う関係性から若菜も伽羅と同じ様な考えなのだろう。邪推にはなるが、若菜は伽羅の代わりに現場で直接、私達を見定める監督官の役割があるのかも知れない。

 

 ただ、それでも燐芽は真っ直ぐ、若菜にそう宣言した。確かに今の自分は無力でちっぽけな存在かも知れない。銃火器を持った兵士達に成す術が無かった。だが、怖気る必要は無い。

 

「………………………。そうか。ならば、これ以上、とやかく言うまい」

 

 彼女は間違いかも、と言った。そんな事は無い。そんな事は言わない。無数の選択肢はあるが、何にも正解だと言われる選択肢は本来、存在していないからだ。

 

「若菜さん。準備は済みましたでしょうか?」

 

 そのタイミングで外の見張りをしていたフィウが戻って来た。行動するならば早めの方が良いからだ。

 

「俺は問題ない。金子にホルスターの付け方を教えてやってくれ。あー、念の為、防弾ベストもやってやってくれ。サイズが合うか分からんが無いよりマシだ」

 

 流石に防弾ベストはサイズが合わなかった為に断念する事になった。

 

「さてと、予定の確認だ。第一目標は兵員輸送機の奪取だ。シノア、候補は絞り込めているな?」

 

「うん。今日中で回れそうなのは3箇所かな」

 

「その道中で8組の連中を拾えるだけ拾っていくぞ。伽羅さんの事だ、死んだ連中の事など如何でも良いと考えているが後々の事を考えるとこのオリエンテーションは色んな意味でアウト過ぎるからな」

 

「若菜さん。人数が増えるとその分、危険性が増します。その辺は考えていますか?」

 

「いや、全く。ガチで最悪の場合は装甲車なり奪ってどっかの飛行場で飛行機ハイジャックするサブプランも考えていた」

 

 どの道、海路か空路を経由しなければ日本に帰れないし。

 

「いえ、そちらの方が色々と危なくありませんか⁉︎」

 

 若菜の素っ頓狂極まりないサブプランに燐芽は思わず突っ込んだ。

 

「その場合、後の事は母上に丸投げする。ぶっちゃけ俺達の手に余るだろ、この状況。

 さて、雑談はしまいだ。時間が限られているからな、行動を開始しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノアが候補として見定めた場所へと向かう。衛星映像で確認した所、其処は空港跡地である事が判明している。

 

「若菜君……。兵員輸送に使われそうな輸送機が着陸しているよ‼︎」

 

「1回目で発見できたのは僥倖だ。アレを頂戴しよう。フィウ、対空兵器の類は?」

 

「この場所からではちょっと確認出来ませんね。弾道ミサイルの存在から迎撃拠点に移動させたのかも知れませんが、無いと断言するのは早計かと」

 

 空港跡地から南にある丘の上で空港跡地の全貌が見渡せた。兵員輸送が可能な輸送機が滑走路の上で待機状態で停め置かれていた。

 

「あの、皆さん。今更なのですが手慣れ過ぎて居ませんか?」

 

 若菜達がそう話す中、後ろにいた燐芽が引き攣った顔でそう訊ねて来た。

 

「まぁ、母上の環境柄ってしか言えないな」

 

 若菜は適当にそう返す事にしておいた。流石に戦争地帯に何回も放り込まれているとは言いたくは無かった。絶対に引かれるから。

 

「職業柄です」

 

 其処、変な事を言わない。

 

「さてと、裏手に回り込んで空港跡地に屯している連中を無力化しちまうか。離陸時に邪魔されるのは面倒だ」

 

「金子さんは、此処に残ってても良いよ。制圧したら信号弾を出すから」

 

 若菜達は兎も角、意志があるとは言え素人同然の彼女を連れて行くのは流石に気が引けた。

 

「いいえ! 私も一緒に行きます。『手段は問わない』と天瓦先生が、『何を得るか』と、貴方は言いました」

 

「……良いだろう。シノア、フィウ、用意は良いな?」

 

「いつでも行けるよ」

「問題ありません」

 

「金子も、良いな?」

 

「はい‼︎」

 

 燐芽は制服のスカート下に隠れた太ももに巻いたホルスターに納めた拳銃にスカート越しに手を触れつつそう答えた。

 

「今から空港跡地を制圧し、輸送機を確保する‼︎」

 

 立地の裏側から空港跡地の建物のロビーへと無事に侵入する。

 

「兵士は3人……」

 

頭部射殺(ヘッショ)で決める……フィウは右、シノアは左、俺は中央を殺る。3人同時に殺る、増援を呼ばせるな」

 

「「了解」」

 

 ロビー内。受付のカウンターに隠れながら屯している兵士の姿を目視し、同時に無力化する案を出した。こう言った閉所ではやはり拳銃の方が頼りになる。

 

「カウント宜しく」

 

「3、2、1。殺れ‼︎」

 

 3人同時に上半身を出し、ロビー内に居た3人の兵士に頭部に鉛玉をプレゼント。ちゃんと受け取ってくれたらしいようで感激して倒れた事を確認した。

 

「皆さん、息ピッタリじゃないですか……」

 

「付き合いが長いからな。ノンビリしている余裕は無い、直ぐに移動するぞ」

 

 受付のカウンターを乗り越えて射殺した兵士の屍を乗り越えて横断する。

 

「ッ‼︎」

 

 燐芽もジェリコ941を両手に握り締めつつ若菜達の後に続く。必要とあれば自分も応戦する気持ちで着いて行く。だが、参加するタイミングがズレてしまえば危険を晒す事になる。

 

「対空兵器の車両の類は無さそうだな。連絡要員だけか?」

 

「……虱潰しに探しますか?」

 

「此処まで数が少ないと返って探すのも面倒な気もするな」

 

 警戒しつつロビー内を横断し、今では機能して居ない金属探知機ゲートを抜けて、出発ロビーへと進む。

 滑走路を見渡せる大型の窓ガラスが壁面全体を覆い、休憩用の長椅子が置かれているだけの遮蔽物が殆ど無い場所だ。

 

「ッ‼︎」

 

 その時、燐芽は出発ロビーの金属ゲート向こう側の壁の裏柄から歩いて来た空港跡地内に滞在して居た他の兵士の姿を見てしまう。相手は既に銃を構えており、尚且つ若菜達の位置からは完全に死角。今、この瞬間動けるのは自分しか居ない。

 

「ッ‼︎」

 

 世界が遅く感じられた、ジェリコ941を正面に構えて引き金を引いた。

 銃声が響くと共に自身が感じて居た時間が元に戻った。気付けば、兵士が向こう側で倒れているのが見えた。動く気配が無く、赤い色が床に広がっているのが見えた。

 

「……‼︎」

 

「初めてでヘッドショットを決めましたか……無意識化の内で決めたのはお見事です」

 

 しゃがんでいたフィウがそう賛辞を送った。若菜とシノアも身を低くしていた事から、自分が気付いた時には彼らも気付いていたのか。

 

「えっと、気付いていたのですか?」

 

「まぁな。悪いな、少し試す様な真似をして。だが実感した筈だ。ソレに限らず君がコレから手にするであろう物は『そう言う力』である事を忘れないで欲しい。例え誰が相手(・・・・)であろうとな」

 

「……はい‼︎」

 

 出発ロビーを抜けて滑走路へと飛び出し、滑走路に佇む輸送機への元へと駆けて行く。

 

「篠崎さん、輸送機の中に敵が居る可能性は⁉︎」

 

「可能性は低い‼︎ 居たら、殺せ‼︎」

 

 若菜は駆けながらIS学園の白い制服の上着を脱ぎ、輸送機の一部にその上着をキツく縛り付けておいた後、先行させたシノア達の後を追い、開かれた側部の搭乗扉から内部へと飛び込む。

 

「若菜さん、輸送機内に敵影はありません‼︎」

 

「幾つかの銃火器がありますね。RPGもあるけど」

 

「飛行中に揺れて誘爆なんて真似されちゃ困るから固定された状態にしておけ、直ぐに出すぞ」

 

 輸送機の前方、操縦席の方へと向かう。操縦士は離席中の様だ。操縦席に座り、操縦桿を握る。

 

「若菜君、輸送機の操縦出来るの?」

 

「パソコンとかよりは簡単だろ。後は勘だ‼︎」

 

「……」

 

 その返し方に何とも言えないシノア。まぁ、フィウが居るから何とかなるか。いや、なって貰わなくては困るのだが?

 

「若菜さん、完全に気付かれた様です‼︎」

 

 そのタイミングで空港全域にサイレンが鳴り響き始める。兵士の数が少ないと思っては居たが別の場所に居たのか或いは地下に拠点を作っていたのか分からないが、たった今発覚した事だけは確かだ。

 

「こうなっては仕方ない。此の儘、離陸すっぞ‼︎ 揺れるから掴まっとけ‼︎」

 

 半ば強引な形での離陸を敢行。滑走路に銃火器を構えた兵士達が湧いてくる。操縦席から見える限りは対空兵器の類は見受けられない。小銃程度じゃ輸送機の装甲は貫かれないがそれでも油断は出来ない。

 発進を急いだ若菜が操縦する輸送機は滑走路を走り其の儘、地上を離れて上昇を開始、空港跡地から飛び去り逃亡する事に成功した。

 

 

 

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