束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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親の顔より見た事のある光景、いや集団幻覚かな?

 

 

 

「皆、急いで下さい。この輸送機はまもなく燃料切れにより制御不能となり墜落します‼︎ 墜落する前に各自、パラシュートを装備。自由降下を敢行してIS学園へと生還を目指します‼︎」

 

 IS学園がある東京湾付近の上空。

 その上空をギリギリの状態で飛行する輸送機の中でシノア達は8組の生徒達にパラシュートを装備させて降下態勢を整えさせていた。

 

「っ。風が強いですね……‼︎」

 

 側面の扉を開け放つと、突風が貨物室内に吹き込んでいた。天候は少し曇ってはいるが崩れていると言う状態とは言えない。

 眼下を見渡せば、沖合に浮かぶIS学園の姿が見えているが、まだ距離があると言えた。

 

「パラシュートを開く時は2人以上、固まった状態で開かないで‼︎ パラシュートが絡まってしまい開かなくなって叩き付けられる事になるから‼︎」

 

「若菜さん‼︎ まだ距離があります‼︎ 今のままでは海面に着水する事になります‼︎」

 

『やっべ。制御が覚束なくなって来やがった……‼︎』

 

 燃料も尽きかけている中、無理矢理動かしてIS学園の上空へと移動する。その最中、機体の揺れが徐々に大きくなって行く。

 

『これ以上は、安定して飛び降りるのは難しくなる‼︎ 行け‼︎』

 

「皆‼︎ 怖いかも知れないけど、飛び出して‼︎ 揺れが激しくなると飛び出すのも難しくなるから‼︎」

 

 シノアの発破により意を決して生徒達は次々と貨物室から大空へと飛び出して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、IS学園。本校舎の屋上。その場所は芝生が植えられ、ちょっとした庭園の様な様相を成しており昼休みに弁当を持ち寄って昼食を摂る生徒達で賑わう場所にて、8組の担任である天瓦 伽羅が微笑みを絶やさず上空、ある一点の方を注視していた。其処には底部が損傷している輸送機が此方へ飛行して来る光景が見えた。

 

「ふふ、来たみたいだね〜」

 

 今朝、束から日本の排他的経済水域の上空を未確認飛行機が飛行していると伽羅に連絡が寄せられた。恐らくオリエンテーションで中東地域に放り込んだ若菜達が乗ったモノであろうと当たりを付けていたのだ。確認も兼ねて校舎の上でその様子を見守っている。

 

「……はてさて、何人生き残っているのかな?」

 

 IS学園の頭上を横切ろうとしているその輸送機から複数人の人影が飛び降りて来る光景が見えた。どうやらIS学園へ着陸する事なくスカイダイビングで帰還を目指す事にしたらしい。

 次々と落下して来る人影の群、20人以上は居ようか。伽羅の予想よりも多く生き残って居そうである。そして、ある程度落下したらタイミングはバラバラだが次々とパラシュートを開いて減速して行くのが見えた。

 伽羅は其方よりも輸送機の方に視線を向けて居た。他の者達よりもかなり遅れて1人の人影が輸送機から飛び出したのが見える。

 

「……お〜?」

 

 その人影はパラシュートを開く素振りを見せず見る見る落下して行く。地上へ近付いて行く最中、伽羅は見えた。その人影の正体が若菜である事に。両手には長身の銃火器。そして両足にも同様の銃火器を着けているのも見えた。

 

「射撃の反動で、減速するつもりかな? 相変わらず無茶な事をするなぁ。嫌いじゃないよ、そう言うの」

 

 伽羅の予想通り、若菜はある程度の高度になると右手に持って居たウィンチェスターM1887を真下へ向けて発砲し、射撃の反動で落下時の加速を減衰させる。しかし、体勢を崩した為にもう片方を用いてバランスの制御を取り、学園の敷地内の庭園に設けられたガゼボがある池へと着水し水飛沫をあげた。

 その後、次々とパラシュートを広げてゆっくりと降下して来た8組の生徒達がIS学園の各地に無事、着地して行く光景も見て取れた。

 

「……先ずは合格、かな?」

 

 その光景を見て伽羅はそう微笑みながら、8組の教室へと一足先に戻る事にした。

 因みに乗り捨てられた輸送機は東京湾へ墜落し其の儘、海中に没した。

 

 

 

 

 

 

 

「先ずは皆。オリエンテーションお疲れ様。私としてはまさか全員が生還する事が出来た事に驚きかな」

 

 8組教室にて、伽羅は誰1人として欠ける事なく生還して来た生徒達に向けてそう告げた。その言い方から伽羅としても誰かは生還出来ず紛争地域で命を散らす事も想定の範囲内だったと思われる。

 

「「「…………」」」

 

 その言葉に誰も返答はしなかった。

 

「さて、1週間の予定だったけど、予想以上に早く終わっちゃったわね。だから、特別に残りの期間は自由時間にします。自習するのも良し、遊ぶのも良し。その間……って、若菜。何その、目は?」

 

「……今回みたいなオリエンテーションはもう勘弁して下さいよ。最終試験として充てるのならばまだ理解は出来ましたが、初手でコレを持って来るのはやり過ぎです」

 

「訓練なんかよりも実戦で生き残った方が身になるよ。それに最初にキツいのを経験すれば後はどんなモノが来ても問題無い。君が1番、分かっている事でしょう?」

 

「はぁ。今回は何とかなったから良いモノを……。次回から極力、IS学園内で収まる様にして下さい。俺の胃が持ちません」

 

「胃薬を注文しておきなよ」

 

 それで済めばどんだけ良かった事か。

 

 





 本当は乗り捨てた輸送機は国会議事堂にぶつけるつもりだった(何番煎じ)。
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