束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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何人死のうが《世界》と言うモノは廻りますよ

 

 

 

 叔母に対して挨拶を済ませた(その後の損害は一切考慮しないモノとする)若菜一行は、其の儘、ケーニヒスベルクが研究室を構えている第6アリーナの整備室へと向かう。

 フィウが申告した通り、1人でケーニヒスベルクと言った倫理観を研究材料として消費している連中と相対するのは危険極まりない。必ず2人以上で遭遇する事が推奨される。

 

「ケーニヒスベルク〜。居るか〜?」

 

「あ、済みません。ちょっと今、手が離せないんですよ〜。少し待っててくれませんか?」

 

「え⁉︎ 誰か来たの⁉︎ 誰でも良いから助けなさいよ‼︎」

 

 整備室に入るなり清々しいまでの悲鳴が聞こえて来た。

 

「本当に五月蝿いですね。サンプル如きに言語は必要ありませんよ」

 

 ケーニヒスベルクの舌打ち混じりの声の直後、喧しい声は遮断されたかの様に聞こえなくなった。

 

「……うわ、趣味が悪いな」

 

「まさか⁉︎ この私のサンプルコレクションにケチ付けるおつもりですかッ⁉︎」

 

 整備室内を歩き、遮蔽カーテンで区切られた場所に立ち入ると視界の先、持ち込まれた棚の上には幾つかの培養槽が置かれていた。一斗缶くらいの大きさ培養槽の中に、人間の頭部が其の儘、生体サンプルとして保管されていた。

 しかも恐ろしい事に培養槽に格納されている頭部だけの状態でまだ生きていると言う事だ。首から下は生命維持装置に繋がれているのだろう。防音機能が作動しているのか、ケーニヒスベルクに生体サンプルにされたその女性の頭部の声は一切、外に出て来ない。

 

「……せめて保管するなら脳味噌だけにしておけよ。気味が悪いな……」

 

「若菜君、ツッコむ所は其処じゃないと思うよ……‼︎」

 

「何を言っているのですか⁉︎ 地球人の、髪の毛も、眼球も、渦巻き管も、歯も、頭蓋骨も、皮膚も、筋肉も、全てが貴重なサンプルなんですよ‼︎ 今、エストレヤは研究機関国家では空前絶後の地球人の研究ブームなんですよ⁉︎」

 

「そんなブーム、とっとと廃れてしまえ」

 

 多分、50年位は続きそうな気がする。確証は無いが。

 

「脆弱極まりない肉体構造は、研究のしがいがありますよ‼︎ そして、今……此処が地球人研究の最先端なのです‼︎ 現在、私だけが生体サンプルを確保して研究に勤しめているのです‼︎

 しかし‼︎ 悠長にしていたら、Dr.レーキュやその他大勢の方に研究の先を越されてしまいます‼︎ 第一人者……その称号を抱き続けるのは凄まじく難しいんですよ‼︎ 分かりますか⁉︎」

 

「何が何でも分かりたくねぇよ……」

 

 サラッと若菜達は地球人扱いされていないようである。……否定出来なくなってしまったが、其処は仕方ない。

 

「肌の色の違い、目の色、髪の毛、さらに肌の質……ああ、比較対象が多い……‼︎ 研究を進める為にはまだまだサンプルが必要ですね……」

 

「……行方不明事件の一部は貴方が原因になりそうだな」

 

 と言うか既に何人か拉致した挙句にバラしているだろ。幾つかの培養槽の頭は完全に大人の女性の首じゃないか。アレを学生と見做すには無理がある。

 

「何を言っているんですか? 高々100人や1000人位、研究材料として使い潰した所で、社会基盤に対しては何の問題もありませんよ」

 

 1日で4、5桁単位が死亡しようと、世界は平然と回る。……新たな生命が作られるプロセスが保障されていれば。

 

「理解はするが納得しかねるな……。生命の循環の一種だと言われればそれまでではあるんだがな」

 

「……若菜さん、ケーニヒスベルクさん。話がドンドン脱線しています」

 

 その時、フィウが本来の目的の為に軌道修正する様に割り込んだ。どうやらケーニヒスベルクの話に引き摺り込まれていた様だ。

 

「ああ、そうだった。ケーニヒスベルク、件の機体の進捗は如何だろうか?」

 

 本来、ケーニヒスベルクを訪ねた目的。それは若菜が地球上(厳密にIS学園で表向き)で扱う機体のアセンブルの進捗具合の確認に来たのである。

 

「ああ、その件で来たのですか?ええ、準備は進めていますよ。……ですが本当に大丈夫でしょうかね〜?」

 

「どう言う意味だ?」

 

「貴方の素晴らしい暴力染みた戦闘方法だと、機体の各種装甲が持ちません。いやはや本当に驚きましたよ、この惑星の鍛冶や製造技術は随分と杜撰極まりないですね‼︎ 素材が泣き叫んで居ますよ‼︎」

 

「……エストレヤとかと比べてやるなよ。どれだけ技術力に差があると思っているんだ」

 

「まぁ、束閣下がこの惑星においての突然変異からの突然変異に加えて突然変異みたいなモノですから、如何し難いと言ってしまえば其れ迄ですね。

 束閣下だけが、エストレヤや惑星国家の水準に達していると言っても良いでしょう。縋る……では無く、擦り寄っている時点で程度が知れましょう」

 

「…………そうか」

 

「話を戻しましょう。予備パーツや備品の殆どを一回、ぶっ壊して最適な構造になる様に作り直しました。もう1からです‼︎ 何なんですか、あんな杜撰な構造‼︎ 絶対、素人が開発したんじゃないんですか⁉︎ アレで技術者を名乗るなど烏滸がましいですね」

 

「君らと比較するなよ……。彼らも充分、努力してやって来ているんだ」

 

「……最も1番の問題は貴方自身。先も言った通り、貴方の場合だとまず機体が持ちません。

 そもそも『フォーマルハウト』は強力かつ高出力の膨大なエネルギーに耐えられるよう設計されています。まぁ、その性能から飛翔する火葬場と良く言ったモノです。貴方がそんなノリなので機体の方が先に瓦解します」

 

「随分とヒデェ言われようだな……」

 

「とまぁ、そんな訳で……当初では大丈夫かと思っていたのですが、想像以上にこの学園にある予備パーツの大元が酷過ぎて製作に遅延が発生してしまっています。何せ1から造る羽目になったモノですからね」

 

「……成程、分かった。つまり、貴方はこうも言いたい訳だ。俺がこの学園の量産機に搭乗すれば」

 

「1分、形状維持が出来ればその機体は良く頑張ったと賞賛が贈られるべきです」

 

「敢えて聞いたが本当に言いたい放題、言ってくれるな……‼︎」

 

「……ですが、ご安心下さい。コア達も納得出来るような機体を造りあげてご覧に入れましょう。ええ、決して後悔はさせませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……やぁ、我が息子。オリエンテーションの前日以来だな』

 

 整備室を後にした時、ガイアの声が聞こえて来た。オリエンテーションの最中ではフェアでは無いとの事でガイアとの通話は途切れていた。

 

『キミがオリエンテーションに巻き込まれている間、ボクは他のコア達と色々話をして来て情報を集めて来たぞ♪ 喜びたまえよ』

 

 コア・ネットワークを介して情報の相互受信。原初であり上位存在であるガイア。コアから発信する情報を集約する事は容易い。

 

『……ブルー・ティアーズと言う名前の機体のコアから聞いた話だと、キミ達がオリエンテーションに夢中になっている間、決闘騒ぎに発展したらしいぞ?』

 

『事の経緯を聞けば、本当に笑える話だったぞ?』

 

 

 

 

 

 

 

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