束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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こう見えて結構、悪ガキなもんでね

 

 

 

『……ブルー・ティアーズと言う名前の機体のコアから聞いた話だと、キミ達がオリエンテーションに夢中になっている間、決闘騒ぎに発展したらしいぞ?』

 

『事の経緯を聞けば、本当に笑える話だったぞ?』

 

 決闘。

 それは物事を決める手段の1つ。対立する者達が相手の未来を打ち砕くまで終わらない闘争を指す言葉だ。随分と穏やかでは無い雰囲気と言える。

 

『……ん? どうやら知らない間にまた女の子を引っ掛けたのか? エストレヤは重婚は合法と言えど程々にしておかないと、後が大変だぞ?』

 

 話題を吹っ掛けて来たと思ったら引っ込んで行った。また、後でその話になるだろうか?

 

「あ、お三方。どもです」

 

 第6アリーナの外に出て近くの庭園へと歩いていると、正面から黒糖 久里が歩いて来た。輸送機に見た時は良く見る余裕は無かったが改めて見ると黒髪に不良染みた風貌と白いIS学園の制服は驚く程に似合っていない。……口には出さないが。

 成程、彼女が声を掛けて来る事を見越してガイアは一旦、引っ込んだ様だ。

 

「黒糖、だったか。こんな所で何をしてんだ?」

 

「……単純な話、暇を持て余しているんですよ。ある意味、命懸けのオリエンテーションが終わればいきなり自由時間と言われましても正直な話、何をすれば良いのか分からないと言うのが本音ですね。

 仮に自習しろと言われても……自分だけじゃ限界がありますしね……参考書とか読んでも珍紛漢紛と行った所でして」

 

 彼女の場合、自由時間と言う喜びよりも困惑の色の方が強い様だ。最初のインパクトが余りにも強過ぎて返って疑念が浮かぶのも無理は無いだろう。

 

「若菜君。立ち話も何だし……」

 

 シノアは若菜の袖をくいくいと引っ張る。釣られて視線を其方へ向けると庭園の中にある円形の池(以前、若菜が派手なスカイダイビングした場所)に浮かぶガゼボが見えた。

 

「其処のガゼボで茶でも飲みながら話すか」

 

 ガゼボの屋根の下。学園の敷地では僻地と言える場所かつ屋外の調度品だと言うのにコレまた金を掛けた意匠が伺える椅子とテーブル。

 そのテーブルを囲う形で若菜達は座る。

 

「さてと、紅茶で良いか?」

 

「はい」

 

「うん、黒糖さんは?」

 

「え……あー……紅茶とか初めてですね」

 

 久里はややぎこちない顔でそう答えると、テーブルの上に光の量子が集束されて行きカップやポッドと言ったティーセット。他にも湯を沸かす為のカセットコンロが顕現された。

 

「……それって、量子変換……って奴じゃないですか⁉︎」

 

 その光景を見て久里は目を見開き、思わず席を立った。

 ISが標準搭載として有する拡張領域と、その領域から量子変換を介しての具現化。その現象、行為に関してはテレビとかで広く知られてはいる。

 

「……機体の完全展開は原則禁止だが、拡張領域の使用は特に禁じられている訳じゃねぇからな。あと、インスタントで悪いな」

 

 そう言い若菜は慣れた手付きでカセットコンロの電源を入れて上に置いた薬缶に水を入れてティーパックを突っ込む。

 

「……そう言えば篠崎さんはかの篠ノ之博士の息子さんでしたね。専用機……持っていても不思議ではありませんね」

 

 久里は自己の内に納得して席に着く。若菜とシノアはかの篠ノ之 束の子供。専用機を持っていても不思議では無いだろう。何故、その機体の使用が禁じられているのかは分からないが。

 紅茶を淹れて、各人の前にカップを置いてから話の続きをする事にした。

 

「さてと……話を戻しますと伽羅さんは、無事、生還した生徒達に『報酬』として自由時間を与えたんです」

 

「『報酬』、ですか。まだ天瓦先生の事は良く知らないのですが、とても想像出来ませんね……」

 

 伽羅の行動の真意にフィウはそう答えた。そう答えられても久里はやはり疑問は解氷しない。優しそうな顔していきなり戦場に丸腰で放り込む教師……人は見掛けに依らないとは言うが余りにもインパクトが強過ぎる。

 

「『自身の命を大切にする事』と『苦労した者は報酬と賞賛を受けるべき』、と言う理念が伽羅さんにはあります。この点は私達のお母様と同様ですが」

 

 と言うよりもエストレヤ学院の校風がソレである。絶対天敵と言う存在と日夜、闘争を繰り広げているからこそそう言う理念が標榜として掲げられている。

 

「後半は分かりますが、前半がちょっと理解出来ませんね……。あの、オリエンテーションの後だと……」

 

 命を大切にとは言うが、真逆の命の冒涜を行使する様なやり方だと久里は言う。

 

「だからこそなのだろう。危険な状況下であっても自身の命を顧みない奴に明日は無い……ってな」

 

「……若菜さん。キミが言うと説得力が全く感じられませんね。日頃から無茶していますし」

 

『言われているぞ、我が息子』

 

 フィウからそう言われガイアからも言われる。余計なお世話だ。

 

「…………何となくですが、貴方達や天瓦先生と、私達とは何か決定的な差がある様に思えますね。オリエンテーションの時も最初からかなり慣れた様子でしたし」

 

「ま、君達よりかは慣れているさ。ISが本来望む世界の意味でな」

 

「本来望む世界の意味……ですか?」

 

『……我が息子よ。如何やらこの星の人類は相当、愚かな真似を続けているようだ』

 

 ガイアは気付いた様だ。かく言うシノア達も気付いたであろう。

 

「……此処で話しても良いが、やはり一度、皆に今一度問う(・・)べきだな。

 伽羅さんは……君達が理解(・・)している事前提かつ、受け取り手と抱く意味合いが異なるから話がイマイチ噛み合っていないんだろうな」

 

「……あの、篠崎さん。何を言っているんです?」

 

「確か君は8組の皆と面識はあるだろう。君から皆へ通達して欲しい。明日、俺から話がある、と。場所は8組の教室だ。伽羅さんが提示した自由時間はまだ残ってるしな。そもそも伽羅さんよりかは聞き易い筈だ」

 

「……そう、ですな。言っちゃあ悪いですが、天瓦先生は何処となく怖いスからね。その点、篠崎さんの方がまだ親しみ易いですし」

 

 伽羅は常に笑みを浮かべているが、底知れぬ怖さを内包している。それが威圧感となっている。それに引き換え同じ説明内容でも若菜の方がかなりマシと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「IS学園に来る連中は恐らく、ISの本来の目的を把握していないだろうな」

 

「……IS学園が使用している『参考書』を拝見しましたが、一文だけでしたね。『元は宇宙での活動を目的とした』と、まるで過去形でした。それ以外は戦闘や戦術……要所は役に立ちますが、それ以外は何とも、と言った所です」

 

「そりゃお母様も怒るよ。まるで活用する気が無いと言われたら、臍曲げたくなるわ」

 

 久里と別れた後、若菜達はそう話をしながら歩みを進めていた。

 

「さて……伽羅さんに結構な頻度で無茶振りされてんだ。偶には反抗期や癇癪を起こしてプランをブチ壊してやろうかね」

 

 そうでなくても若菜は日頃から周りの面々から無茶振りや面倒事、トラブルに巻き込まれているのだ。偶にはやり返したくもなる。

 

「偶にはヤンチャしたくなるもんね」

 

「……規律を乱す行為は褒められたモノではありませんが……楽しそうですね」

 

『やれやれ……何時迄も子供だな、キミ達は』

 

 伽羅が組んだ初回オリエンテーションでアレだったのだ、今後のイベント絡みで8組の面々に対してサイアクな目に遭わせに来るに違いないだろう。いや、する。何故なら本職はエストレヤ学院の教員なのだから。

 

 若菜は伽羅が自分達の家庭教師だからこそ、分かる。

 

 今回のオリエンテーションでは、自分達(・・・)と言う変数があったからこそ全員生還と言う事なきを得たが、次回以降はそうとは限らないし、伽羅がそれを許すとは思えない。

 今後は高確率で死者が出かねない『授業』を実施する事だろう。誰の助けも得られない中、挑まなければならない出題を出される時が必ず来る。何も理解していないまま、無惨に死に絶える姿は余りにも哀れである。

 

 なればこそ、己の道は己で決めて貰う他に無い。後悔しない、と言う意志を抱いた上で。

 

 

 

 

 

 

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