束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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今、一度問おう。此処が分岐点だ。覚悟を抱き進むか、それとも引き退るか。ソレを選択するのは君達自身だ

 

 

「インフィニット・ストラトス。

 その本来の目的は篠ノ之 束の夢。『無限の成層圏』……即ち、宇宙への進出を託す為の『』だ。宇宙空間での活動を主目的とした存在。その用途の都合上、大気圏や水中や宇宙空間でも活動可能な機能を搭載している。

 つまり、地球の地上だけで国家の防衛力の要だのくだらない自尊心を満たすだのアクセサリーだのファッションだの、女尊男卑の象徴だの女性権利団体(カスども)の玩具でも何でも無いんだよ。名前負けも良い所だ」

 

 

 若菜はそう告げた。

 インフィニット・ストラトス、即ち『宇宙』と言う地球の外での活動を主目的とした存在であると。

 

「宇宙、での活動……」

 

 生徒の1人がそう反芻する。その声を聞いた若菜は続ける、こう切り出した以上は堤が切れた洪水の如く叩き出すのみ。

 

「ハイパーセンサーは何の為にある?360度、全方位の視野を確保したセンサー。それは何の為にあるかな?」

 

 シノアが質問を投げ掛ける。

 

「……ええっと、宇宙空間では酸素が無いから音が伝わらない、からでしょうか?」

 

「部分的正解だ。宇宙空間では音が伝わらない。尚且つ、例え小さな小石のような粒でも脅威と化す。故に聴覚は全くアテにならない。後、IS同士の位置確認と言う目的もある。

 後、ついでに言うが幾ら視界を広げようと結局、人間の脳で電子信号の処理には限界がある事を忘れない事だ」

 

「束博士はISに各種武装を搭載し、兵器運用を容認しました。それは何故ですか?」

 

 次にフィウがそのような質問を投げ掛けた。

 

「……外敵の存在?」

 

「端的に言えばその『可能性』だな。宇宙空間では文字通り、何が起こるのか予測不可能だ。何世紀も前から『宇宙人』だの未開の文明だのUFOやら未確認飛行物体とかの話は幾らでも囁かれていた。仮に実在したとしよう。

 果たして彼らは友好的と言えるだろうか?そもそも意思疎通が可能かどうかすら不明と言えるだろう。接近した瞬間、敵対……戦闘ないし戦争へと発展する事も否定は出来ない。そう言う条件は向こうも同じなのだから」

 

 宇宙空間では地球上で外宇宙での天体観測出来た情報が全てとは限らない。

 

「無論、宇宙空間での活動に関しては命の保障は出来ない。宇宙外存在との戦闘、宇宙環境による精神崩壊、その他諸々……。

 寧ろ、生きて五体満足で生還出来る見込みも薄いと言えるだろう」

 

「そ、それじゃあ……」

 

 生徒の1人……いいや、燐芽はある事に気付いた。間違っているかも知れないが口にせずには居られなかった。

 

「……ライセンス試験、それにオリエンテーションの時に話してくれた対策授業の話の真意と言うのは……まさか、そう言う意味(・・・・・・)なのですか⁉︎」

 

 燐芽は立ち上がりながらそう叫ぶ。

 

「そう言う意味も何も初めから(・・・・)そう言う意味だよ。母上は初めからそう言うつもりでしかライセンス試験内容を作っていないし伽羅さんは初めからそのつもりでカリキュラムを組んでいるからな。

 それにライセンス試験じゃ操縦技術とか筆記試験は触り(・・)程度だ。真に求められているのはその心構えだ。ISに乗る為の覚悟や心構えとも言えるな。

 最もライセンスを取得したからと言って必ずしも宇宙へ出る訳じゃないがな。流石に其処まで強制するつもりは母上には無いようだが」

 

 だからこそ厳しく選別しなければならない。今の地球人の様に軽く考えている者が多過ぎて生半可な覚悟では耐えられないからだ。

 女性権利団体や女尊男卑至上主義者は試験内容やその結果に多大な不服を立てて居るが、若菜から言わせてみれば束は物凄く温情を掛けていると言って良いだろう。

 

「「「…………」」」

 

「その上で正直に言わせて貰うと、IS学園の従来の教育カリキュラムじゃあ母上を認めさせるのは無理だ。『宇宙へ飛び立つには未熟な精神性、醜いエゴ同士が擦り寄っている汚物』……とな。

 そもそも母上は各国政府が決めた『代表候補生』やら『国家代表』やらアラスカ条約やら認めていない」

 

 第一、その条約締結に束が同席していない‼︎

 他にもISによる経済効果の利潤関係? そんなモノ初めから知った事では無い。

 

「本来ならば全てのISコアを永劫停止させて地球上から『インフィニット・ストラトス』に纏わる概念を抹消するつもりだった。それでも尚、可能性を信じてライセンス制度と言う形で今日に至っている」

 

 武装を搭載し闘争する分には構わない。それは生命であるが故の業であり、切り離す事は難しい観念だ。……現に絶対天敵の存在から、尚更である。

 

「……故に、此処が分岐点だ」

 

 若菜は教卓の上から飛び降りて床に着地すると同時にあるモノを教室の床に突き立てる。量子展開され顕現されたそれは余りにも大きな『鋏』であった。

 黒い本体、桜色の刀身を持つ両刃の鋏。それは若菜の近接武装として愛用している『宵咲』と言う銘の大鋏であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、一度問おう。此処が分岐点だ」

 

 

 

 インフィニット・ストラトスをその身に纏うその覚悟を問う。

 

 

「覚悟を抱き進むか、それとも引き退るか。……伽羅さんの事ですから今後も容赦無い授業を画策していると思うよ」

 

「選択するのはキミ達自身です。此の儘、在籍を続けると言うのならば後悔しない事を覚悟してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 若菜に続く形でシノアとフィウがそう続けた。この話が受け入れられないのならばそれでも構わない。無理強いする必要は無い……嫌なら嫌で構わない。千冬と束との間で交わされた契約の上での8組はそう言う教室だからだ。

 

「……インフィニット・ストラトスは本来、宇宙での活動を目的としていた……。でも、その環境にて活動するには相当な覚悟が必要、そして……命懸けの戦闘の覚悟も必要……との事なんですね」

 

「簡単に纏めればそう言う認識で大丈夫だ。最終的にどうなるかは分からないが、少なくとも伽羅さんは『そのつもり』での授業を行うだろう。

 他のクラスの様なのほほんとした授業や訓練でISに搭乗して『わー、凄〜い』、『楽しかった〜』みたいなノリは絶対に期待しない方が良い。面白半分で扱われるのも癪なんでな。

 この際もうハッキリと言っちまおうか、他のクラスの連中は100%の確率でライセンス試験に落ちる(・・・)。そんな連中に母上はISを託すつもりは断じて無い」

 

 金子の纏めに若菜は肯定の意を返した。そして、現実を改めて叩きつける。

 

「「「……………」」」

 

「『自由時間』はまだある。君達自身の人生だ、良く考えて決めて欲しい。……如何なる決断でも俺は尊重するし、伽羅さんも尊重するだろう」

 

 若菜は量子展開された宵咲を量子化させて消滅させた。話は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、若菜ったら。ネタバラシしちゃあ、興醒めだ。……悪い子だなぁ」

 

 8組の外で経緯を見守っていた伽羅はそう評していた。『IS学園の教師』と『自分と束』の方針は全く異なっている。

 IS学園や各国政府のISの考え方は『地上に縫い付けた翅』、対して伽羅や束、若菜達の考え方は『宇宙を飛翔する翼』。

 8組に集められた者達はほんの僅かなながら見込みがあるかも知れない者達だ。ほんの僅かであるが故に見込み違いの者も含まれているだろうが。

 

「……でもまぁ、説明の手間が省けたのは僥倖、かな?」

 

 若菜が勝手にやってくれた以上、余計な時間を省く事が出来た。そう言う意味では良い子と言えるか。

 

「それじゃあ、次の『授業』や『校外学習』の準備を行おうかな」

 

 8組から離れる様に廊下を歩きながら伽羅は人差し指を唇に当てながら次なる授業の構想と準備を進める。

 

「……もしもし、夕張? ちょっと頼みたい事があるのだけど良いかしら?」

 

『アレェ? そっちにゃ、サンプル狂いのケーニヒスベルクが行ったんじゃないの?くひひ』

 

「彼方は若菜の地球用機体アセンブルで手が離せないのよ。そうね、手伝ってくれたお礼に……モルモットを融通してあげるわね」

 

『地球産のモルモット⁉︎ その話、乗ったわ‼︎ 丁度、新しい実験がしたかった所よ』

 

「取引、成立で良いかしら?」

 

『くふふ、ええ、裏取引成立よ。任せなさいな』

 

 

 

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