束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
第2アリーナ。
IS学園に6つあるISの実技訓練や模擬戦が行われるアリーナ。当然ながら不測の事態を考慮してかなり広く場所は取られており、観客席との間に大型のバリアシールドが展開され内部の各種衝撃や攻撃の余波から観客席へ攻撃が届く事を未然に防いでいる。
そのアリーナのほぼ中央の中空にて1機のISが浮遊して待機していた。蒼いカラーリングが特徴的な機体装甲をその身に纏うは金色の髪を靡かせたイングランドの暫定代表候補生であるセシリア・オルコットであった。
彼女がアリーナ中空に待機して既に10分が経過していた。観客席では今か今かと、その時を待ち侘びている。
『……人間達は何時までも愚かだな。インフィニット・ストラトスは宇宙と言う海原を征く翼だと言うのに……閉じた空間内で見世物の様に扱う事しか出来ないのか』
その観客席の一角。全く別の意味で目立っていた。何故ならば、その観客席はIS学園にとっては異端になりつつある1年8組の生徒達が集っていた。……そう、史上2人目の男性操縦者が在籍するクラスである。
他の観客席に集う生徒達は1人目も興味があったが2人目にも興味が無いとは言ってはいない。そして、その2人目が従来のIS学園の白い制服ではなく黒いフード付きのジャケットを羽織っているのだから余計に目立ってしまっている。
観客席は階段上であり若菜達の席は最後列、最上段に位置している。右にはシノア、左にはフィウが座りその中央に若菜が座って事の経緯を見守る。
「……片方が現れてからもう片方に動きがありませんね。何かのトラブルでしょうか?」
動きが全く見られないアリーナの様子を見かねて若菜の前の席に座っていた8組のクラス代表に抜擢された黒糖 久里がそう呟いた。
「トラブル、か」
エストレヤだと何かしらの遅延は日常茶飯事だ。居住区だと日夜どっかしらぶっ壊れて修理や工事で封鎖される事はもはや日常。配達や配送など1週間もズレる事もザラ。故に平時において遅刻の概念に対してかなり寛容だ。
だが、地球だと1時間の遅れでもクレームを差し込む程に敏感に反応する。
『コア達の情報によれば、1人目に『専用機』を宛てがうらしい。んで、その機体自体がまだ学園に到着していないとの事だ』
ガイアからそう説明される。女尊男卑や女性権利団体からは良い顔はすまい。何らかの形で妨害行為にでも遭っているか?
『いや……それ以外にもボク達の存在を許せない者達が居る。その者達は恐れを拒絶した。其処に分かり易い
「…………」
ガイアの言葉に若菜は答えない。否、答えと推測は出来ている。それはある意味、非常に厄介な存在だ。そして……若菜は
「……織斑先生。冗談にしてはもう少し花のある内容を語ったらどうでしょう?」
若菜の後ろで立って観戦する事にしていた伽羅が学園内無線にて、冷たい顔である人物と通話している声が聞こえてきた。
「……貴方の弟さんの専用機がまだ届かないからと言って無関係な子を使って時間稼ぎ……いいえ、戦術の事前習得させる行為は、相手の娘に対して侮辱に当たるんじゃないですか?」
『……脳味噌が単純な細胞になっているのか?人間の猿真似は』
「それに束博士から言われた事をもう忘れたのかしら? 若菜の専用機に関する情報は一切非公開と。
到着の遅れは貴方方の段取りが悪いのが要因では? それから、この状況は特別な状況に該当しませんよ。そもそも名指しで警告されたでしょう?」
どうやら織斑 千冬は弟の専用機が来ない為、これ以上長引かせる訳には行かない事を理由に全くの部外者である2人目を巻き込もうとしている様だ。
未だに始まる気配の無い模擬戦にセシリアや観客席のフラストレーションを解消出来る上に、情報が非公開の2人目の専用機の情報も得られる。更に本来の対戦相手の戦術の確認させる事が出来る上に1人目の専用機到着の時間稼ぎが出来る。
その交渉は千冬にとってメリットが多いが巻き込まれる側の2人目にとってメリットが無い。
「……若菜君。コレなんかどう?」
「ゴシックかつ、ダークっぽい衣装案だな」
「藍里さんからアドバイス貰って考えてみたの。次の配信の時、若菜君も参加して欲しいな♪」
「この数ヶ月はドタバタだったしな。んで、歌詞はどうなってんだ?」
「こんな感じでどう?」
「……うわぁ、コーラス付きと来たか」
「私も参加して良いですか? この箇所ならば私にも出来そうです」
「うん♪大歓迎、折角だしユリエやフィーリリアも巻き込もう♪」
「呼べば来るだろうしな。衣装案に関しては藍里と協議して更に細部とかを進めようか。小道具辺りはケーニヒスベルクを巻き込んじまえ。偶には此方の都合に巻き込ませろ。この歌詞ならば都合の良い小道具あるだろ」
かく言う巻き込まれ掛けて居る若菜はと言うと肩に凭れ掛かって来たシノアと楽しく談笑中。完全にクラス代表の模擬戦の事など興味を失くしており、シノアの趣味と実益の話に入っていた。
「……。生憎だけど、若菜はやる気ゼロね。模擬戦の事、眼中に無くて趣味の方の話題で家族と盛り上がっているわ」
伽羅はその様子を見てすぐさまに千冬に対して要請拒否と答えたのだった。
考えた結果、千冬は時間稼ぎ+一夏に対して少しでも善戦出来る様にセシリアの動きを見学させる+2人目である若菜の機体の確認を兼ねて、本人には悪いが部外者であるが話題性として若菜を今回のクラス代表の模擬戦に巻き込む事にした。
『……。生憎だけど、若菜はやる気ゼロね。模擬戦の事、眼中に無くて趣味の方の話題で家族と盛り上がっているわ』
幾つかキツい言葉を投げられた後、そう言われて要請を断われてしまった。観客席に来たと言うのにISの事など興味を持たずに趣味の方の話題に意識を割くなどあり得るのか?
「織斑先生‼︎ 織斑君‼︎、たった今、専用機が到着しました‼︎」
そんな疑問を抱いた矢先、副担任である山田 真耶が急いでピット内に入って来てそう叫んだ。どうやら漸く、一夏の専用機が到着したらしい。全く、何処で時間が掛かったと言うんだ。兎も角、これ以上の時間は無い。
「織斑、直ぐに初期化及び最適化を行う‼︎」
「は、はい‼︎」
「終わり次第、アリーナへ行って貰う。流石にこれ以上、オルコットを待たせる訳には行かん。一次移行は戦闘中にやれ、良いな?」
「お、おう‼︎」
「返事は、はいだ‼︎」
「イ゛ッデェ⁉︎」
全く、何時になったら覚えるんだ。この愚弟は。
「一夏‼︎」
初期化及び最適化の最中、箒は一夏に声を掛ける。
「あのイギリス女に勝って来い」
「……っ。ああ‼︎」
「織斑先生、初期化及び最適化完了しました‼︎」
一夏が箒の応援に対して勇みよく返事を返すと同時に最低限の作業は完了した。
「良し、では織斑。カタパルトから射出してアリーナへ飛んで行け」
一夏の専用機『白式』の脚部装甲がカタパルトに設置され、カウントの後に勢い良く前方へと射出されアリーナへと放り出されて行った。