束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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天才なんて呪いの言葉だよ……

 

 

 

 

「あ、出て来ましたね」

 

 暫く待つ事、10分程。ピットの出入り口から白い機体のISに搭乗した男性操縦者が勢い良く飛び出してアリーナ内へと入場して来た。

 シノアが書いた楽曲の歌詞を見ていた若菜は、前方の席に座る生徒の1人の声に釣られて前方のアリーナ内へと視線を向けた。

 

「おい、アレはぶつかるんじゃないのか?」

 

「ぶつかりますね。アリーナのバリアシールドへ」

 

 カタパルトで射出されたは良いが、停止は愚か減速する事もせず、1人目こと織斑 一夏は其の儘、中空で待機していたセシリア・オルコットを通り過ぎて其の儘、セシリアの後方へ飛んで行き勢い良く轟音を立てながらバリアシールドへ激突し、蹌踉めいた後、アリーナの地上へと落下した。

 

「「「…………」」」

 

 光の量子と閃光を放ちながら激突した瞬間を見た観客席の生徒達は絶句。かく言うセシリアは呆れ気味の目をしながら地面に落下した一夏を見ていた。

 

「……呆れた。素人は愚か、あの様子では機体の制御も覚束ない状態で実戦に放り出すなんて……織斑 千冬(アレ)は死人を量産したいのかな?」

 

 一瞬の出来事。

 その光景を見た伽羅は心底、呆れた様子で千冬の采配をそう評価した。あの有様では彼は真面目に(ろく)*1)に訓練をしていない事が窺えた。

 あんな状態でISに乗せるのは自殺行為でしか無いのは言うまでも無い。あの織斑 千冬は本当に教師なのかと疑いたくもなろう。

 

「……伽羅さんが言うと説得力がありませんね」

 

 千冬の為人(ひととなり)を評した伽羅に対して若菜は呆れてしまう。初手でいきなり(ろく)に対応出来ない事を承知で紛争地域に放り込む人と一緒にされたくは無いだろう。

 

「……うふふ。そうかしら? 私はちゃんと見極めて(・・・・)からじゃないと、8組の娘達にISに搭乗は愚か、触る事すら認めないわよ?」

 

「…………」

 

 あ、コレ……。この人、8組の面々に対して微塵も容赦の無い拷問をする気だ。絶対アレだろ?一層の事、殺してくれた方がマシって奴を……。

 

「って、若菜……だけじゃなくて、シノアやフィウも、揃ってそんな目で見ないで欲しいなぁ」

 

 いや、だってねぇ……?

 確かに直にやらせるよりもマシとは言え、アレは精神が崩壊しても可笑しく無い。最悪、パニック障害を患う恐れがある。

 

「……雷が咲ク花園(んに媛)の方がマシですよ」

 

赫眸の人形劇城(うに姫)の方が有情です」

 

「加減を知らない幼女達と比べられると流石に傷付くわね……」

 

 いや、それは何方も周囲に対する2次被害が深刻(やば)過ぎる。アレは星災……邪教徒の群れを相手取る方が遥かにマシだ。

 と言うか片方、癇癪の拍子で惑星1個、滅ぼしちゃったとかシャルロットが以前、言っていた気がするぞ……‼︎

 

「何か後ろで物騒な会話が聞こえて来ますな……」

 

 聞き耳を立てていた久里が引き攣った顔でそう溢した。その気持ちは分かる。

 

「んで……この茶番はまだ続くんスかね? あの様子じゃ、あの金髪の娘に嬲られて終わりな気がしますが?」

 

 若菜は話題転換する様に意識を前に向けつつ周囲の意識も攫う様にそう告げる。

 前方のアリーナでは地面に落下した一夏が起き上がって再び上空へと危なっかしい動きで浮上して行く様子が見えた。

 

「見るのも勉学の内よ。教材が幾らゴミだとしても、使える物は使わないとね。

 粗雑な扱いだとどんな無様を晒すか、も含めてね」

 

 伽羅のその言葉に8組の面々は意識を前方に向ける。こう言う機会は少ないのだ。少ない欠片を集めて結集させなければならない、己自身の中で。

 

「……餌になる事を認めよ、か」

 

 誰かは誰かの為に犠牲となる。世界最強と言えど天才と言えど『誰か』の餌になる事は避けられないのだ。

 

『……そんな事よりもボクが気になるのは、あの白い機体のコアの意識の声が聞こえない事だ』

 

 聞こえない?どう言う意味だ?

 

『……何かトラブルが生じているのかも知れない。ヒステリーを起こしているかも知れない』

 

 ガイアが言うにはコアにも性格も感情もある。故に精神的不調も生じ得る、と。

 そして、あの織斑 一夏の搭乗するISのコアの様子が可笑しいと言う。

 

『……完全に閉じ籠っているようだ。此処まで固く閉じられてしまえば開くのにボクでも時間が掛かりそうだ。何があったんだ……?』

 

 放置は、出来ないよなぁ。本コアが放っておいて欲しいと言っちまえば、打つ手が無くなるけど。

 

『うむ。せめて理由だけは知りたい所だ。何とか出来ないか試みよう。場合によっては助けが必要やも知れないな。その時は頼むぞ、我が息子達よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁんで、この束さんが莫迦共のくだらない会議に出なきゃ行けないのさぁ?」

 

 一方、その頃。世紀の天才である篠ノ之 束は不機嫌面を隠さず悪態を吐く。何時もならば伽羅が運転してくれるが生憎、今はIS学園に出向中なので束、自ら車のハンドルを握っていた。

 

「政府の連中がさぁ?雁首揃えてさぁ? 『ISコアの量産』とか、『代表候補生の打診』とか……私を舐めているとしか思えないよね」

 

 束は悪態を続ける。向かう先は、東京都にあるとある大型高級ホテル(都心部の人間は駆逐されつつある為、閑古鳥が鳴いている)。

 其処で各国政府の人間(サル)のフリをしたゴミ共が雁首揃えて待っているとの事。

 

「……視野の違いと言うモノでしょう。この地球の人間と私達では考え方が大きく異なります故に」

 

 議題は専らIS関連の内容。インフィニット・ストラトスのコアの量産再開の交渉やら、束の子供達の候補生への打診など……。束からすれば実にくだらなくて興味が無い内容ばかりであった。

 今迄も再三とした喧しい催促。常に無視し続けて来たが、IS学園に出向中の伽羅にもその手の話が何度も来ていると聞いている。全て斬り捨てたそうな。

 流石にいい加減にウザったくなって来た為に此処で憂いを断ち切る為に最初で最後の交渉に望む事にした。……最も最初から破談しているようなモノではあるのだが。

 

「くーちゃん。コア達は?」

 

 助手席に座っているクロエ・クロニクルに対して束が今1番に気にしている懸念事項を訊ねる。

 

「はい。殆どのコア達の反応は悪印象ですね。後悔……正に奈落の底で蹲る事を強いられているようだ、と」

 

 それは『存在意義』を否定されたモノ達の慟哭。

 それは地上に縫い付けられた『翼』達の悲鳴。

 それは地球の人間達に向けた振るえぬ『瞋恚(しんい)』。

 

「そっかぁ……。やっぱ、リーくんに頼んでおいて正解だったね」

 

 クロエからの返答に束は悲しみの目を浮かべた後、自分の判断は正しかったと安堵する。

 束は『母』。インフィニット・ストラトス達の母。なれば子の行末を憂わずに居られようか?

 

「……私達じゃ目立ってしょうがないしね」

 

「有名なのも考えモノですからね。束様も、若菜達も名が広まってしまいましたし」

 

「けどね。もうちょっと、穏便なやり方は出来なかったのかな?」

 

「……エストレヤはトラブル王国ですので、致し方無しかと」

 

「それもそっかぁ。まぁ、退屈しなくて済みそうだよね。それに……『天才』が沢山、居るしね」

 

「後、エストレヤでの惑星国家間会議の件ですが」

 

「あ、其方は出なきゃ。彼方の人達は話が分かるからね〜。

 この地球の茶番劇未満の会議はさっさと終わらせて、其方に意識を向けなきゃね〜」

 

「束様の送迎の為、羽黒様がお越しになるそうです」

 

「あの羽っ娘ちゃんか〜。秘書官を送迎に寄越すだなんて束さんを高く買ってくれているんだね。エストレヤの首長閣下は」

 

 エストレヤの元首は複数の秘書官を擁しており輪番制で業務を回している模様。その筆頭となる秘書官が羽黒と呼ばれる娘である。

 

「いえ、他の秘書官も各国の代表者に対して送迎の任を託しているそうですよ」

 

「え?そなの?(O_O)」

 

「……驚く箇所は其処なのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
『碌』と書かれる事が多いが、本来は『陸』である

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