束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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1回奈落に逝って来いよ、地球のゴミ共

 

 

 

「……如何して高級車ばかり並んでいるのかな?」

 

 束が走らせる車は会議会場となるホテルの地下駐車場へと入場する。その駐車場を見やると各国の有名所の高級車ばかりがズラリと並んでいるのが見えた。如何にも各国要人が乗って居そうな車ばかりだ。

 束や伽羅が運転する車ではかの高級車の群が相手では大きく見劣りする様な大衆車だ。少なくともこの場においては場違い感が拭えぬだろう。

 

「……箔付け。なのかも知れません。権力者は相応の身成をしなくてはならない、と言う事でしょう」

 

「ふーん……。つまらない脅迫観念だ」

 

 見てくれだけ着飾った所で内面の醜悪な貌は覆い切れない。それは女尊男卑やら女性権利団体の連中が無駄に毳毳(けばけば)しい化粧をする姿と変わらない。

 クロエの言葉に束はそう切り捨てる。成金趣味とでも言えば良かろうか。此処に若菜が居れば人の事言えるのか?と言われてしまいそうだ。

 

「……ん?」

 

 他に誰も居ない地下駐車場。剥き出しの電灯が照らす薄暗い空間の中、束は歩く足を途中で止める。この場には束と付き従うクロエしか居ない。見てくれ(・・・・)だけは。

 

「流石は我が母。この程度の欺瞞、見抜くのに造作も無いか」

 

 背後から声が聞こえてくる。そして、落ち着いては居るが何処か底冷えする様な声音が聞こえて来た。

 

「うん? ああ、君かぁ〜」

 

 束は振り向く。薄暗い地下駐車場。高級ホテルと言えど人の目に付かない場所の整備は覚束なくなる。声を掛けて来た者の立つ場所を照らすべき電灯は切れてしまっており、深淵の様に暗くなってしまっている。だが、その暗闇には赫い双眸が浮かんでいるのが見えた。

 

「……お久しぶりですね。よもや地球に来星しているとは」

 

「うむ。姉上もご壮健そうで何より。暫し、気儘な旅をしていた。此処に立ち寄ったのも、我が母と会ったのもただの偶然故に。して、兄上や他の姉上達も壮健であろうか?」

 

「わーくんも、しぃーちゃん達も元気だよ〜。元気を通り越してるかも」

 

 声の主に対してクロエと束は言葉を交わす。声の主は抑揚が無く無機質さを感じられるが特に気にする事は無い。コレが彼女の素の態度であるからだ。

 

「……変わりない様で安心した。1つ問いたい、我が母。この様な場所で何を?」

 

「……つまんない会議だよ〜。聞くだけ話すだけ無駄な時間」

 

「ならば、私がその要因を全て屠ろう。何、然程時間はかからぬ」

 

 暗がりに浮かぶ赫い双眸が揺らぐ。その言葉と同時に光に反射して白い歯がカタカタと打ち鳴らされる。

 

「ううん。君が態々、手を煩わせる必要は無いよ〜。だって、夢は何時の日かは醒めるモノだからさ。この惑星の人間達が創り上げた女尊男卑やIS不敗神話と言う『夢』がさ」

 

 束の『夢』は現実となった。現実となった瞬間、それは夢では無く現実となる。

 

「……兵どもが夢の跡、か。我が母がそう言うのであれば、止めておこう」

 

 声の主は肩を竦めた。その身体の動かし方で赫い目の動き方と口の動き方が一致して居ない様に見えたが、そう言うモノだと束は知っている為に気にはならない。……理解出来ぬ者がその姿を見た時、恐怖を抱くやも知れぬが。

 

「……では、私はもう行こう。久方振りに話が出来て楽しかった。また、時間がある時にお逢いしよう」

 

「うん、またね〜。閣下に宜しく〜」

 

「……閣下。うむ、そろそろ帰らねば……姉上達や妹達に土産話を聞かせてやらねば、な」

 

 声の主はそう言い残して暗がりの中から消えた。

 

「さてと……こんな所であの子に会うとは思って居なかったなぁ」

 

「元気そうで何よりですね」

 

「……だからこそ、地球に居るコア達の悲惨さが際立って来るよ。……出来るだけ多くの子を連れて行きたいな」

 

「流石に全ては難しいかも知れませんね……。世界中からコアが無くなれば無くなる程、この惑星の国家群は荒れて行きます」

 

 そして少なくなって行くコアの確保に躍起となって要らぬ火種が燻り、爆ぜる事になるだろう。

 

「……う〜〜〜〜ん。そうなるとコア意識だけ、移す……。かと言って意識同士の同調は出来るけど、コア意識を移植、無いし移動は今は難しいし……それに1箇所に複数の意識があると、何が起こるかは流石の束さんでも予想出来ないなぁ。

 だからと言って手を拱いている訳にも行かないな。こんなくだらない会議をさっさと終わらせて、その手段の確立を急がなきゃ」

 

 束は今後の予定を立てながら地下駐車場を出てホテル内へと移動する。

 整備等が後回しにされ寂れた印象のある地下駐車場と打って変わり地下駐車場からメインエントランスへと通ずるホテル内の廊下は絨毯が敷かれ暖色系の照明に照らされていた。

 其の儘、廊下を抜けてメインエントランスの受付前に行くと、受付担当の職員から8階の多目的室へと案内を受けた。どうやらその場所が件のつまらない会議場となる様である。

 職員に案内されエレベーターに乗り込んだ。

 

「客足が遠そうだよね」

 

「今や、東京は富裕層か貧困層の街となっています。女尊男卑の影響が最も深刻化した街となって居ますので、中間層は根絶の一途を辿っています」

 

「……勘違いしたバカが自滅。そしてドロップアウトしたバカが途方に暮れた末路、か」

 

 利益のみ追求した社会。それ以外の概念は排斥された社会。だからこそ、分からないのだ。

 この点、大人になっても理解出来ないのだろう。関係構築と言う名の壁が。

 

「同情する気は無い。屋台骨を失って転落するのも帰路に過ぎないから。正に兵どもの夢の跡って奴だ」

 

 ピンポーンと到着を知らせる小気味良い音が鳴りエレベーターが開かれる。職員の説明だと1番奥の部屋が件の会議場として使用されるそうである。高級ホテルの名に違わぬ内装の廊下を歩きながら最悪の両開きの扉を、束は勢いよく、殴り飛ばすかの様に開け放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多目的室。

 その用途に応える為、大きめの大広間となっており今日、かのISの開発者である篠ノ之 束を招いての会議(と言う名の各種交渉)が行われる。

 円卓を描く様にテーブルが並べられ日本政府の人間を取り繕う猿共や来日していた今会議に出席する盆暗共が雁首を揃えて着席していた。その時、突如として多目的室の扉を破壊するかの様な勢いで開け放たれた音に釣られて皆、一様にその方向へと視線を向ける。

 

 多目的室の入り口。

 一目見ればその印象が裏付ける『時計ウサギ』を彷彿させる衣装と、機械式のウサ耳のカチューシャを付けた、奇抜な身形の女性。篠ノ之 束が其処に現れた。その後ろに暝目した少女が従者の如く控えていた。

 

「……5年、いいや10年経っても変わらないな。高々、猿の首を挿げ替えた程度で何が変わると言うんだよ、猿共が」

 

 開口一番。束は各国代表や日本政府の人間(さる)共にそう吐き捨てた。交渉に臨むつもりがいきなり出鼻を挫かれる形となっていた。

 

「……篠ノ之博士。先ずは我々の話を」

 

「話って何? 人間の言葉を理解出来る程に進化出来たのか?」

 

 日本政府の若手の者が勇気を出してそう促すも束は不機嫌さを隠さずにそう突き付ける。会話が成立出来る程の知性を獲得出来る程に進化出来たのか、と。

 

「……フン」

 

 返答を待たずに束は空いている席に腰を降ろす。会議に出席した政府要職や各国代表は一先ずは『話し合いの席』に着いてくれた事に安堵する。だが、束の表情は険しいままであった。

 

「今迄、散々好き放題扱って(・・・)くれたな。ニュースのマスメディアも好き勝手報道してよ。何が『ライセンス制度の緩和及び改革の働きかけ』だ」

 

 議題を打ち出す前に束が先制する。

 会議の大凡の内容は把握している。話の主導権を相手に渡してもくだらない言い訳で時間を消費するだけだ。誰が好き好んで人間のフリをした猿の相手なぞするか。

 主導権を力尽くで握り、そしてこの場に居る人間共の拙いその努力を踏み躙る。束はその為だけにこの会議に姿を現した。

 

「……その、試験内容は兎も角、合否判定が些か厳し過ぎるとの声が多く出ています。毎年1回のみかつ、合格者は多く見積もっても1人出るか、どうかの割合です」

 

 束が主導権を握った状態で議題に上がった『ISライセンスの試験』に関する内容で日本政府の者がそう発言する。

 当初は行き過ぎた女尊男卑を抑制する為にその制度に対して前向きに捉えていたのだが、想像以上に合格者が少なく尚且つ、個人情報保護の為に合格者の身元が分からない為、日本政府としてはライセンス保持者の操縦者の確保が非常に難しくなっていた。そして、試験に合格出来ない不満から女尊男卑思考の悪化の一途を辿っている事も懸念材料となっていた。

 

「筆記試験や実技試験は問題なく通過している筈だ。……最後の面接で落とされていると、私は考えている。人格面も問題は無いと考えられるにも関わらずにだ」

 

 次にアメリカからの代表がそう指摘する。何の根拠があってそんな発言が出来るのか、お前の頭には脳味噌の代わりに麦粉が詰まってんのか?

 

「は?」

 

 そして、案の定……束の琴線に触れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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