束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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つまらない会議は早めに終わらせるに限るね

 

 

「は?」

 

 明らかに毛色の異なる声音。

 その反応から発言した者は悪手を打ってしまったと後悔するが既に遅かった。

 

「難しい?落とされた?問題は無い筈? まるで負け犬の遠吠えにしか聞こえねぇな。試験相手に負け惜しみか? 規定の条件に満たなかったら、落とされるのは当たり前だろうが‼︎ そんな簡単な事も分からねぇのなら、とっとと政治から足を洗えよ‼︎」

 

 負け犬の遠吠え。上手く行かなかったから『ある』者達を妬む感情。IS操縦者が居なければ、ISはただの実物大のプラモデルに過ぎない。幾ら国が総力を挙げて機体を造り上げても、ライセンスを取得した操縦者が居なければ無意味だ。

 

「難易度緩和?あー、アホくさ。コレでもかなり難易度を緩和しているんだよ?」

 

「……コレでも、かなり……ですと⁉︎」

 

 束の発言に騒めく。合格者が殆ど出ないライセンス試験は束の中ではかなり簡単にしていると言われれば、動揺するのも無理は無い。

 

「最初の草案なんか、わーくんに『誰が死体処理するとお考えか?』って、怒られたし」

 

 わーくんなる単語。その言葉から恐らくは束の子供の1人である篠崎 若菜であると考えられた。篠ノ之 束は親しい相手にはその様な特徴的な呼び方をするらしい。

 この事から本来ならばもっと難しかった模様。然も死人が出る事が厭わないレベル。そう考えるとかなり難易度が緩和されていた。

 

「……にも関わらず、『まだ難しい』だの『厳し過ぎる』だの、どんだけ甘えたがりなんだ。お前らは?これ以上、どう簡単にしろと? 現実を体験してからホザけや、ゴミ共」

 

 因みにエストレヤで地球版ライセンス試験を実施した所、99%の合格率(因みに不合格の1%の内訳は単純に途中退席、戦争に巻き込まれる、邪教徒共の乱入、姉を名乗るナニカに捕まる)であった。

 いや、彼方は戦闘民族だったから比較しようが無いわ。そう言う意味ではエストレヤでの試験の方が難しいかも知れない(殆ど合格すると言われているが)。

 

「……寧ろさ、何でこんなにも合格者が少ないのか、其処の点が1番気になるんだよね?」

 

 寧ろ逆に束から見れば何故、此処まで合格者が少な過ぎるのかその問題こそが疑問点である。

 既に……と言うか堂々と『本来の用途』は宣言している。にも関わらずその目的を見ていないからこそ、この結果とも言える。冷静に考えて見れば分かる筈である。

 

「……試験を簡単にしろとか言うけどさ。低レベル止まりのそんな連中(・・・・・)に私の可愛い子を預けられないな」

 

「搭乗して訓練すれば技能は向上する‼︎ 乗る事すら出来ないのに、上達なぞ出来る筈が無いだろう⁉︎」

 

 中国からの代表が握り拳でテーブルを叩き付けながらそう叫ぶ。あの束を相手に見事な胆力である。幾らシミュレーション訓練でも限界がある上に現実では役に立たないからだ。

 

「……その結果、くだらない権力闘争にISを巻き込む事に腐心する事を繰り返すのか? お前らの様な連中の玩具(・・)の為にISを造った覚えは無い」

 

 束はそう切り捨てた。どう言う訳か、本来ならば無関係である筈なのに政治家共の権力や外交にISが巻き込まれている。その点に関しても束としては気に入らない事であった。

 

「……根本的な問題としてお前ら人類はコアの意識から嫌われている事を自覚していないよな? あんな扱われ方をされりゃ、誰でも嫌気がする」

 

 ISコアには人格、意識、感情があると言われている。コアの1つ1つに意識が宿っており其々、好き嫌いがあるとされている。

 だが、その意識に接続出来た者はコレまでは数える程……しかも朧げな内容であり、空耳や幻聴として受け流されており確実な形で対話出来た者は居ないのである。あの世界最強の織斑 千冬でさえ現役時代の自身の専用機の声を終ぞ聴く事は無かった。

 仮に出来たとしても、資格無き第三者がその事象を認識する事は難しく結局は眉唾な話として切り捨てられるに至る。

 

「我々、人類がコアから嫌われている? 科学者とあろう貴方がオカルトを信じているのか?」

 

 束の言葉に対してアメリカの代表が笑い飛ばす。ISのコアに自我があるなど考えた事が無い。機械は機械、AIが搭載されている訳でも無いし、仮に搭載されたと言えど人類の指示に従うのが至極当然と言う考え方であった。

 

「……分からないのならば分からないまま、沈めば良いさ。こうしている間にもお前らが定義した概念の『IS適性値』……その数値が徐々に減少(・・)しているのだからな」

 

「「「……⁉︎」」」

 

 IS適性値とはこの数値の値によりどれだけISを動かせるかの目安となる数値である。具体的に言えばこの適性値が高ければ高い程、ISを上手く扱えるとされている。それは裏を返せばどれだけISコアの意識と同調出来るかとも言える。

 

 だが、現在進行形で全人類(主に女性)のIS適性値が減少して行っている。つまる所、コア達が地球人に対して悪感情を抱き、その情報や感情がISコア・ネットワークを介して拡散されコア達が人類に対して見切りを付け始めている事に他ならない。

 適性値が理論上の最低値に達した時、その個体はISに搭乗したとしても満足に動かす事は出来なくなると予想される。或いは搭乗する事すら叶わなくなるかも知れない。

 

「な、何故……それが分かるんだ⁉︎」

 

 今度はイングランドの代表がそう焦燥を浮かべた顔で問い掛ける。

 

「少し考えれば分かる事だ。誰でも嫌いな奴の相手なぞ極力したくは無いだろう? 束さんは今、相手なぞしたくない。こんな連中相手に時間を消費したくない。と言う心境でこの場に居るが?」

 

 束は目の前に雁首揃えている連中の相手なぞして居られるかと言う心境だ。

 

「適性値は先天性……。変動する事はあっても減り続けて無くなる事はあり得ない」

 

 ロシアの代表が断固たる口調でそう断言する。誰を相手にそんな言葉を言える?

 

「その自信は何処から出て来るかは知らないが、好きにするが良い。これ以上、お前達と会話してやっても何の生産性が無いな」

 

 束はそう言い席を立つ。その動きに場の人間(サル)共は目を見開く。まだ、全ての議題は終わっては居ないと言うのに、中心人物たる束が打ち切ろうとしている。

 

「ま、待って頂きたい‼︎ まだ」

 

「これ以上、何を話し合うと? わーくん達は『代表候補生』なぞに全く興味は無い。『代表候補生』の概念に対して何のメリットが無い。無価値な存在に過ぎない。大方、専用機が目的だろうが……お前らが御せる代物では無い」

 

 更に先制。これ以上、こんな現実から目を背けている連中に口を開かす事すら烏滸がましい。束は『代表候補生』の件も拒否すると断言した。既にエストレヤや移住する事を決定している為に今更、何の面白味の無い役職なぞ必要が無い。

 政府側からすれば今回の議題である根本である三本の柱である『ライセンス制度の改革』、『代表候補生誘致』、そして『ISコアの量産の再開』の内、2本が圧し折られたと言っても良い。

 

「……それにISコアの量産?」

 

 束は席を立ち扉の先へ向かいつつ背中を見せながら最後の議題を挙げる。それは数あるISの欠点である『数に限りがある』と言う根本的な問題。

 

「笑わせるな。お前達に人類には過ぎたモノだった。それ以上の理由が必要か?愚か者共」

 

 束はそう言い残し、何の生産性も無く無意味かつ無駄な時間を過ごす事となった多目的室を後にした。

 その場に残されたのは進展が何一つ無く生産性の欠片も無く、交渉以前に対話すらもさせて貰えず、ただただ『最後通牒』を叩き付けられた政治要職の人間達だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、クッダラなかった‼︎」

 

 多目的室を後にした後、足早にホテル内を移動して直ぐに地下駐車場に戻り車に乗り早々に高級ホテルから出た。

 この時間を無駄にしたのは世界にとって大きな損失である事に間違いは無いだろう。

 

「お疲れ様です、束様。しかし、先程の件は本当なのでしょうか?」

 

「ん?」

 

 車を走らせながらクロエの言葉に耳を傾ける。先程の件と言うのは『IS適性値』の事だろう。変動する事があっても、減少の一途を辿り(やが)て喪われる。そんな事が実現し得るのか、と。

 

「……全てが思い通りに動くと思わない事だって意味だよ。そんな事よりも、政治家共は次はわーくん達に白羽の矢を立てて来るだろうね」

 

「束様と交渉が不可能であると考えた以上、その様な流れになるのは必然かと」

 

 親がダメならばその子供と交渉して働き掛ける。如何にも愚かな思想が考えそうなやり口だ。

 もう現時点で、IS学園宛に各国政府から問い合わせが殺到しているも伽羅が『黙れ小僧』の一言で切り捨てている模様。

 

「……と言うかわーくんやしぃちゃん。興味が無い人の話、基本的にあんまり聞かないけどね」

 

 親が親なら子供も子供だ。束の子供達の中で若菜が1番、束に似ているんじゃないか。と、周りの存在から言われている。伽羅も居るし、護衛役としてフィウも付いている。余程の事が無い限り問題無いと言えるだろう。

 

「……さてさて、気分が悪くなるニュースよりも楽しい事を考えようよ」

 

「……そう言えば惑星国家ブリテンでは、『ワルプルギス』が行われる模様ですね。かの国から招待状が届いています」

 

 ブリテンと一言で言えば地球で言うグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の略称だが、この地球から遥か数億光年の先の惑星国家の1つに『ブリテン』と言う名称の惑星国家が存在している。領土ならぬ領星を本星を含めて4つ有している惑星国家である。

 

 まぁ、一言で説明するならば『第一王女(ウィキ姫)を愛でる会』の『総本山』と言えば良かろうか。単に邪教徒の国とも言われている。

 国民全体がその邪教徒と言っても過言ではないし、何なら汎宇宙的な脅威と位置付けられている()の絶対天敵よりも危険、その絶対天敵も戦闘を回避しようとする等、冗談抜きで揶揄されていると言えばそのヤバさが分かる。

 

「あー、もうそんな時期かぁ。でもね、エストレヤで開催される惑星国家館会議と時期がモロ被りしちゃってるんだよね。束さんはパスするしか無いね〜。多分、わーくん達宛だろうし」

 

「引越し先の地球での使い捨て拠点の片付けも完了していますし、本日、伽羅様が皆さんをお連れして帰宅する手筈です。その時に通達すれば宜しいかと」

 

 束は鹿児島県に本拠を置いていたが、若菜達のIS学園への編入を期に計画の一部を幾つか前倒しにした。先ず、主要設備を航宙艦に移設して東京湾海底に滞在させた。当初は此処だけで充分かと考えたが、政府や学園の連中の干渉が鬱陶しく感じられた為、急遽千葉県の海岸線付近に使い捨て前提(緊急時に速やかに置き捨てて離脱出来るよう)の家を建てたのだ。

 この家にはIS関連のモノは一切置かず、日用品しか置かない事にしておいた。IS関連や私物関連は全て航宙艦の方へと移しておいたのだ。

 

「うん。どうせIS学園に居てもくだらない事しかする事無いんだから、そんなつまらない茶番を演じるよりももっと実用的な事をした方が良いしね。お土産頼まないとね〜」

 

「……はい。ブリテンのお菓子は絶品であると有名ですからね」

 

 





 知らない間にUAが増えていた……。
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