束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「はーい。皆、遅刻せずに集まれたわね」
IS学園の午後。
午前中には1組のクラス代表を決める模擬戦を終えての自由時間、昼休みを経て午後の授業が始まる時間帯。8組の教室にて、担任教師の伽羅が教壇に立つ。
「授業を始める前に連絡事項があるわ。貴方達の
『将来』では無く『末路』と称する辺り、この人は本当に良い性格をしている。
「……明日。若菜、シノア、フィウの3人を除いた8組の23名に対して特別試験を行うわ」
来たか。昼前に伽羅に呼ばれたと言う夕張と遭遇した事から恐らく、その準備は整っているであろう事は察しては居たが想像以上に手筈は整えていたらしい。
その言葉に対して8組の面々は固唾を飲んで耳を傾ける。今朝の宣言通りならば用心するに越した事は無いからだ。
「この特別試験。合格出来なければ、インフィニット・ストラトスに搭乗する事は決して認められないわ。触れる事すらも許可出来ない。故に不合格者には、追試も無く問答無用でゲームオーバー。退学よ」
「「「ッ‼︎」」」
合格か、不合格か。不合格ならば退学を宣告されると言う現実を前に流石に動揺が走るか。まだ4月だと言うのに落第の危機に直面させられる。これ以上ないプレッシャーと言えよう。
「……そうね。敢えてアドバイスを送るのであれば決して平常心を失わない事よ。冷静でいる事。正気を喪わない事……って、若菜。毎度毎度、そんな目をしないの」
試験に臨む生徒達に向けて伽羅はそうアドバイスを送る。平常心、冷静、そして正気を保てと言う言葉から、試験内容が全く予想出来ない。
最もオリエンテーションの時点で非常に物騒な内容でありそうな予感はするのだが……。
「いやだってさぁ……伽羅さんが態々、アドバイスを送るとか、天変地異の前触れな気がするんですが……。明日はサメの雨が降って来るんですか?」
『我が息子よ……。その例えは流石に正気を疑うぞ……‼︎』
伽羅の温情な対応に若菜は素で驚いていた。明日はサメの雨が降って来るのかと、常人から見れば正気を疑う様な事まで言い放つ始末。
「サメは降らないわよ。若菜、莫迦になったの?」
「知ってますよ、そんな事‼︎ モノの例えですよ、例え‼︎」
「なら代わりに人工衛星なら降って来るわよ。
「は?」
此処で補足。若菜の席は窓際最後列の席である。
伽羅のその発言の直後、轟音と共に8組の教室の窓が土埃と共に粉砕され衝撃共々、窓硝子の破片が教室内に飛び散り、衝撃に当てられ生徒の何人かが吹き飛ばされる。
『……エリちゃん砲2914号、と書かれているな。我が息子よ、またあの狂乱女王を怒らせる真似でもしたのか?』
衝撃に晒されても微動だにしなかった若菜のすぐ隣には断熱圧縮の影響で超高温と化した人工衛星の残骸が煙を吹きながら突き刺さっていた。と言うか打ち上げ過ぎだろ。
ガイアに言われた心当たりなんて……あり過ぎた。と言うか心当たりしか無い。大変、納得し難い現実ではあるが。
「若菜。神経を逆撫でする真似は程々にしないと痛い目を見るわよ」
「……この流れで説教を喰らうのは些か理不尽な気がするんですけど」
伽羅は絶対に分かってて言っているのだろう。大変納得し難い現実だ。後、多分……完全に八つ当たりと逆恨みと不条理が無い混ぜになっているので躱せない、非情な現実なんですが。
「兎も角、教室の風通しが良くなった所で授業を始めましょうか。皆、吹き飛んで倒れていないでさっさと席に着きなさい。窓ガラスの破片は払い落として後で片付けるように。
午後の授業の5時限目は現代国語よ。『羅生門』の心境を読み解いて行きましょう」
この流れで教室の壁が一部吹っ飛んだ状態で授業を始める伽羅のメンタルは凄かった。
「と言う訳で1組のクラス代表は織斑 一夏君に決まりました。あ、1繋がりで縁起が良いですね」
一方、その頃。1年1組では、クラス代表を決める模擬戦を終えて事後処理を完了させた後、結果が生徒達に向けて通達されていた。
「あ、あの〜……俺、確か負けた筈なんですけど……?」
その結果発表に咆哮の如き黄色い歓声を上げて沸き立つ1組の生徒達を尻目に当事者の一夏は恐る恐ると言った形で質問を投げる。
模擬戦の終盤、一夏の専用機『白式』の一次以降が漸く完了した後、『白式』の単一仕様能力『零落白夜』が発現した。
『俺は最高の姉を持ったよ。この力で……俺が皆を守る‼︎』
その零落白夜の極光を手に一夏がセシリアへと突撃。その刃がセシリアへと届く前に一夏の機体のエネルギーが判定基準を下回った事により試合終了し、一夏の負けとなった。
『零落白夜』は自身の機体のエネルギーを消費する能力であるとかつての使い手である千冬から後で教えられ、それが要因で敗北したと言うのが顛末である。
「私は模擬戦で決めろと言った。勝者であるオルコットにその決定権を委ねた結果、オルコットはクラス代表を辞退した。消去法で候補がお前しか居ない。故にお前がクラス代表だ。精々精進するが良い」
千冬からそう説明される。確かにあの時は『模擬戦で決めろ』と言ったが『勝者がクラス代表とする』とは一言も言っていない。
「……コレで各クラスのクラス代表が揃った事になるな。5月にはクラス代表対抗トーナメントがある。無様な姿を晒したくなければトーナメント当日までに備えておけ。恐らく、8組のクラス代表は2人目の男性操縦者だろうからな」
「……‼︎」
千冬の言葉に一夏のみならず男子生徒の存在に沸き立つ生徒達。
一夏は箒とその2人目こと篠崎 若菜が言葉を交わしていた光景を見た事がある(叔母と甥の関係らしい)。あの時は完全に蚊帳の外であったが、あの時見せた箒への態度から性格上、仲良くなれそうな気はした。
やはり女子校同然のIS学園で数少ない男子同士で仲良くなる事に越した事は無いと言える。篠ノ之 束の養子となればISに関して深い見識がある筈。仲を深めて教えて貰う事も不可能では無いだろう。
その後、セシリアがクラス代表時の口論に関する謝罪を行ったのを見届けた後、千冬が気持ちを切り替えるべく手を叩いて意識を切り替えさせ、授業を始める事にした。
「……では、授業を始める‼︎ 各自、参考書の45頁を開け」