束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

54 / 146
取り敢えず、準備は済ませておこう

 

 

 翌日午前6時頃。

 若菜達は自宅から中継地点である『ラビットコロニー』へと移動した。宇宙では昼夜の概念は殆ど無いのだが、今現在のラビットコロニーから見える地球は暗く夜の時間帯である事が窺えた。都市部の照明の光が点々と見える。

 

「……うー、夜型人間にとって朝は天敵っスよ〜」

 

「こう言う時があるんだから、その不衛生な生活サイクルを改めなさいよ。肝心な時に寝落ちなんて真似するんじゃないわよ」

 

 ゲーマーなフィーリリアは寝惚け眼を擦りつつ未だに夢現な状態で欠伸を噛み殺している。コイツ、どんだけ夜更かししていたんだ?

 

『ボクの知る限り、午前4時位までやっていたな。その集中力は賞賛に値するよ』

 

 ガイアが脳内から素直にそんな賞賛の言葉を送っている。いや、褒めるにしてもズレていると思うが。

 

「……うーん、そろそろの筈なんだけどな〜」

 

 小区画フロア前にて送迎の羽黒を待つ事、数分。小区画フロアへと続く扉が開かれ、1人の少女が若菜達の前にその姿を晒した。

 

「……皆様。お迎えにあがりました、エストレヤ首長、崩宮 紫閣下の筆頭秘書官が羽黒。参上仕りました」

 

 (しろ)*1)。

 彼女を示す為の一言で言えば『皓い』。半色(*2)の双眸を除けば肌の色も波打つ様なウェーブヘアーも身に纏うドレスも穢れ無き『皓』一色に染まっている。

 だが、そんな事よりも一際目を惹くのがその両腕に該当する部分。

 

 彼女には両腕(・・)は無い。二の腕も(たなごころ)も指も爪先も存在しない。

 代わりにあるのは純白の生物的な一対の翼。肩から先は羽毛を纏う本物の鳥を思わせる翼と化していた。

 そんな腕を持つ為に物を手掴みするのは難しそうだが、拡張領域とシールドバリアの応用を用いれば支障を来す事はまぁ無いと言えるだろう。

 

「束お母様からお聞きしています。束お母様、クロエお姉様、伽羅様、フィウ様はエストレヤへ。

 若菜お兄様、シノアお姉様、ユリエお姉様、フィーリリアお姉様はブリテンへと向かうとの事ですね?」

 

「うん。そうだよ〜、エストレヤまでお願いね〜」

 

「分かりました。お帰りの際には一報をお入れください。……場合によっては、羽黒以外の秘書官がお送りするかも知れませんが、其処の点はご了承を」

 

 

 

 

 

 送迎役の羽黒により、ラビットコロニーから量子トンネルを介して移動。時間にして数分程度でエストレヤの444番星港へと到着した。

 

「さてと、母上。此処で別れましょう。惑星国家間の会議は俺達はお呼びじゃねぇしな」

 

 444番星港の発着ロビーにて若菜はそう切り出した。此処で別行動となるからだ。

 

「あ、日程とか如何しているの?」

 

「その前に惑星国家間の会議の日程こそどうなっているんですか? 其方に合わせますので」

 

「うーん、2、3日の予定らしいよ。絶対天敵とかの議題もあるだろうしね〜。わーくんが以前、目撃した新種の絶対天敵の件も含まれているし」

 

「成程。分かりました、3日後辺りに帰宅する様にしますね」

 

 特に何事(・・)も無ければ遅延とかは発生しない筈である。……ただ、邪教徒の国なので恐らく何かしらのトラブルに巻き込まれそうな気がするのが懸念点か。

 軌道エレベーターに乗り第6層の居住区へと移動する。第1層でも他の星港へ向かう事も可能だが距離的に第6層を通過した方が早い。と言うのも居住区で先に済ませたい事があるからだ。

 

「さてと……」

 

 軌道エレベーターに乗り込み降りている最中に若菜は小型の空間ウィンドウを介してメッセージアプリを開く。今回は個別の連絡先のルーム。相手は勿論、藍里である。最初のメッセージを送った数秒後に新規メッセージが届いた。

 

 

 

 

ヴェルメリオ

 『藍里。少し時間があるか?』

 

シグルドリーヴァ

 『あ、若菜。どうしたの?』

 

ヴェルメリオ

 『今度、シノアのライブ配信での衣装案に関しての意見を聞きたいんだ。一先ず俺達4人分』

 

シグルドリーヴァ

 『衣装案? 良いけど、仕事が立て込んでて今は手が離せないなぁ。2日くらいは無理ね』

 

ヴェルメリオ

 『それは邪魔をした。今からブリテンに向かうからその帰りに直接、君のアトリエに寄らせて貰うよ』

 

シグルドリーヴァ

 『ブリテン?あ、今、ワルプルギスが開催されていたわよね? 私もアイディア発掘の為に行きたかったなぁ』

 

ヴェルメリオ

 『ああ、地球の方でもゴタゴタしてて服を用意する暇が無かったし、と言うかその招待状が来てたの知ったの昨日だからな。行く前に第6層の商業区域のブティックで適当な奴を見繕うつもりだ。……祭りの期間中は魔女か魔術師の格好してないと観光客だろうが邪教徒に襲われた挙句に洗脳しに来るからな。……女王陛下公認だから手に負えん』

 

シグルドリーヴァ

 『帰りに寄ってくれるならお土産お願い出来ない?せめて気分だけでも味わいたいわ』

 

ヴェルメリオ

 『別に構わんよ。取り敢えず、これ以上の邪魔は出来ないから続きは帰ってからにしよう』

 

 

 

 

 

 

 

「……若菜君。どうだった?」

 

「仕事が立て込んでているとよ。3日目の帰りに寄る事にしよう」

 

「それじゃ、先にブティックの方へ行くのね?」

 

 ワルプルギスの期間中は皆、魔女や魔術師を彷彿させる装いをする。魔女や魔術師の仮装はハロウィンを彷彿させるが……まぁ、その点は考慮しても仕方ない。兎も角、その期間中にブリテンに訪れる場合はその様な格好をしなければならない。それは観光客も例外では無い。

 その事実に知らずに訪れた観光客は、邪教徒に拉致されて其の儘、帰る頃には邪教徒へ覚醒していると言う噂が飛び交っているが、概ね事実だ。

 

「ま、そう言う事だ。ほら、リリアもいい加減に目を開けろよ。フラフラしてて危なっかしいだろ」

 

「うへぇ〜。リリアさん、まだ寝たいっスよ〜」

 

 軌道エレベーターが第6層へと到着。量販店と言った商業施設は軌道エレベーター近辺にも存在している。やはり物流観点から軌道エレベーター周辺は立地も良く商業関連の施設が集まりやすい。

 

「取り敢えず、確実性のある店に行こうか。探し回ってる時間が無駄だからな」

 

「確実性って何処の店よ?」

 

「『G☆D』」

 

 それはエストレヤで展開されているファッションブランドの1つである。其処ならば求めている種類の服は見つかるだろう(他にも裁縫の観点から新しい発見が見つかるかも知れないと言う思惑もあった)。

 

 

 

 

 

*1
白と同じ意味

*2
淡い紫色

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。