束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
444番星港。
「若菜君。何番?」
「3番出発ゲートだな」
星港ロビー上部に浮かぶ大型空間ウィンドウ。其処には運航スケジュールが表記されている。3番出発ゲートの項目には『ブリテン・ストライカー』と表記されていた。
エストレヤや惑星国家群ではIS操縦者は『ストライカー』と呼ばれている。
星港の運航スケジュールに行先と一緒にストライカーの表記がある時はそれはストライカー専用の量子トンネルを発生させる事を示している。航宙艦の場合は行先だけの表記される。
「時間的に間に合うな」
総合受付にて通過チケットを購入し3番出発ゲートへと向かう。此処まで来れば、もう大丈夫だろう。
「……朝っぱらから運動は堪えるっスよ〜」
「ゲームばっかしているからよ。偶には運動しなさい」
「絶対天敵とかじゃ無いと動きたく無いっスね」
フィーリリアの言葉に対してユリエは呆れる。フィーリリは必要な時しか動こうとしない。本人曰く全力を出す為に余計な運動はしない主義……との事だが、専ら働きたくないだけな気がする。
「あ、皆。彼処を見て、沢山集まってる‼︎」
「……アレ全員、ブリテンへ行くのね。やっぱり国全体が盛り上がるお祭りだから観光客が多く来るのね」
シノアが声をあげた。
其方へと視線を向けると3番と表記された空間投影ウィンドウの小区画ゲートの前に多数の者達が集まっているのが見えた。カップルや家族連れも見受けられる。
その何れも魔女や魔術師を彷彿させる装いに身を包んでいる。大方、『G☆D』で見繕った衣装だろう。
中には有翼的な翼や、尻尾を持つ者も見える。黒ミサかサバトの会場に見える。最も壁面ガラスから見える宇宙空間がそんな雰囲気をぶっ壊している為に黒ミサ的な印象は薄れている。
そして、地球人からは考えられないだろうが彼処に集まっている者達は男女問わず全員が
当然ながら若菜達の知った事では無いが。
「……取り敢えず、そろそろ着替えた方が良いだろ。出来る限り邪教徒の連中と揉め事を起こしたくない」
「大概、向こうからやって来るでしょ」
3番出発ゲートへ歩きながら若菜達の身体の周囲に光の量子が沸々と湧き上がり身に纏っていた衣服の代わりに先程のブティックで購入したローブが展開される。
ISの拡張領域から武装や機体を量子変換で展開する様に衣服の類も量子変換で直ぐに着替える事が出来る為、更衣室と言う概念が薄い(無い訳ではないが)。
若菜はスタンダードな如何にも魔術師と言った黒いローブ(相変わらずフード付きの奴を選んでいる)で、シノアは白魔女なのか白いローブに白い三角帽子。ユリエは如何にも魔女らしい黒色のローブ、フィーリリアは暗い紫色と此方も魔女っぽい、と言うか皆、魔女を彷彿させる衣装だから当然か。
『おい、我が息子。女の子達がオメカシしているのだから一声くらいかけろ、愚か者』
ガイアさん。何故、俺の脳内に居る貴方も魔女っぽい格好になっているんですか?
「お。皆、魔女っぽいな」
「そう言うアンタは如何にも不真面目な不良魔術学校の学生って趣ね。前を留めずに着ているから尚更、それっぽい」
対するユリエからは魔術学院の不良学生だと言われてしまった。まぁ、キッチリ着るのは性に合わないし多少、だらしないのは自覚はある。コレでも模範生のつもりなんだけどなぁ。
「本当は若菜君が仕立てた衣装が好みだけど、時間が無いから仕方ないね」
「……ブティック専門の裁縫師やデザイナー各位が泣くぞ」
シノアの何気ないコメントに若菜は呆れつつ宥めておく。彼女達は少々、デリカシーが無い部分があるのでフォローするのは大概、自分だ。
『間も無く3番出発ゲートにて『ブリテン』行きの量子トンネルが開通します。通過予定の利用客の皆様は3番出発ゲート準備フロアへお越し下さい。
出発待機ロビー側の準備フロアゲートが閉まりますと準備フロアは無酸素状態となりますので、必ずISを展開して待機する様にお願い申し上げます。尚、事故防止の為に各人、一定の距離を取ってからの量子展開をお願い申し上げます』
開通予定の時刻が迫ってきた時、出発待機ロビー内に案内アナウンスが流れた。同時に3番出発ゲートの準備フロアである小区画フロアへの扉が開かれ、魔女や魔術師の格好した者達がゾロゾロと移動を開始する。
「……やっぱり皆、個性ある装備だね」
「俺らが言うか、ソレ?」
準備フロア内に入った人から他の人と距離を取ってから量子変換で自身の機体を展開し、出発準備を完了させる。その何もが特色ある機体に登場しており、カラーリングも様々であり、各種の装備関連も個性が溢れている。今回は戦闘行為では無く移動なので、武装関連は
機動力を重視して防御は随意防御に任せていると思われる人や防衛を重視して装甲が厚めの人も居る。
一言で言えば1人1人が個性豊かな『専用機』に搭乗している光景が広がっていた。それも100人のストライカーが、である。
地球人がこの光景を見れば泡を噴いて卒倒するんじゃ無かろうか。まぁ、どうでも良い話だが。
「んじゃ俺らも展開しますか、と」
『位置取りと速度に気を付けろよ、我が息子。キミの『フォーマルハウト』は移動速度が桁違いだ。間違って他のストライカーを巻き込むんじゃ無いぞ?
キミの体当たりは衝撃がエグ過ぎてシールドバリア貫通+絶対防御粉砕+αの断熱圧縮が付随すれば、並のストライカーじゃ耐え切れない必殺の一撃になるんだからな』
ガイアの忠告を他所に若菜は量子展開で自身の機体である『フォーマルハウト』を展開し、銀翼の撃腕翼を広げる。その近くではシノア達も各々の専用機を展開し出発準備を完了させる。
『間も無く出発待機ロビー側のゲートが封鎖されます。封鎖されますと準備フロアは宇宙空間と同じ環境になります』
そのアナウンスの後、入って来た側の扉が閉められて封鎖され、無音の世界へと切り替わる。
『各種通信、感度良好です』
『此方も問題無いわ』
『リリアさんもOKっス』
3人からISコア・ネットワークを通じての通信による音声が脳内に響き渡る。
『俺も問題無い』
自分も通信感度に異常がない事を通達する。無音である為に聴覚による声は届かない。
『『ブリテン』行きの量子トンネル、開通。どうか、良き旅を』
前方の出発ゲートが解放され、広大な宇宙空間の存在が視界に広がる。その前方に渦巻く歪みの穴、量子トンネルが展開される。
ゲートが解放されるや否や、順番に飛び立ち量子トンネルの方角へと飛翔して行く。
『我が息子、ボク達も行こうか‼︎』
『ああ』
前方に居た者達が飛び出した後、最後尾に居た若菜達の番となり、準備フロアから宇宙空間へと飛び出した。先発した者達の後へ続く様に自分達も量子トンネルの穴へと飛び込んだ。