束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
『ブリテン』の海に面した港町の1つ、オーレリーク。広大な海洋に面しており、反対側の大陸との通商の要所ともなる地域であり、『ブリテン』の首府、『アスタルテ』へのアクセスも良好と言う立地。
降下地点と見做すならば好条件の場所とも言える。海岸線に沿って白い壁にオレンジ色の屋根の民家が立ち並んでいる。ブリテンの街並みは地球で言う所のイングランドやイタリアと言った西洋建築風が多い。
「夜だと言うのに港町も賑わっているっスね〜」
港町の街並みはオレンジ色の篝火で照らされており、案の定、魔女や魔術師を彷彿させる格好をした住民達が行き交っている。ブリテンでは夜の時間も昼の時間も長い為、夜間だと言うのに多くの人が出歩いている。いや、『ワルプルギス』の期間中と言うのもあるのかも知れない。
「……まぁ、何処の町もワルプルギスで賑わっている事だろうよ。触らぬ神に祟りなし、だ」
『……我が息子からすれば、この惑星ブリテンの住民全員が邪教徒みたいなモノだからな』
人々が行き交い何事も無い光景に見えるが、その実……ブリテン国民は全員が邪教徒と言っても遜色ない連中である。普通の住民に見えるが、『見えるだけ』であり、豹変した場合は手が付けられないのだ。
例え一般の『市民』であろうと。
港町のオーレリークを抜けてブリテンにも存在するIS用の高速空路のターミナルへと向かう。ブリテンは自然が多く環境保護の為に極力、環境破壊をしない方針となっており、ブリテン内では平時における対流圏下部での水平飛行は禁止されている。
ブリテンの高速空路はかなり曲がりくねった空路である事が多い為、操縦技術が問われる。後、ついでに事故率も相応に高い。
「……エストレヤは機能性を重視して居るけどブリテンだとオシャレ感あるよね」
「最新技術を取り入れながらも文化的に準拠したデザインが尊重されるからな」
搭乗口のピット内も暖色系の照明で照らされており、また異なる趣を感じさせた。ピット内には待つ為のベンチや自販機も備わっている。ピット内には先客は居ないために待ち時間は発生しなかった。ピット内に表示されて居る空間投影ウィンドウの案内に従って、カタパルトの方へと向かう。
「4人、同時に出ても問題無さそうだな」
若菜達は再び完全展開しカタパルトに脚部をセットして射出体勢を整える。空間投影ウィンドウが『通行可能』と表記された直後に、カタパルトが起動して勢い良く射出。高速空路へと飛び込んで行く。
「取り敢えず『ロイヤルパレス』に到着したら宿を探すか」
「うん、その後に散策しよう♪」
「いや、普通に考えたら招待状の送り主に挨拶しに行くのが先でしょ」
ユリエが招待状の送り主に顔を出すのが先だと提言する。
「……
『あ、馬鹿‼︎』
その台詞の途中で高速空路から見える夜空にてそれこそ宇宙から無数の光が明光した事をハイパーセンサーで確認する。
完全に忘れていた。ブリテンを治める女王陛下はもはや地獄耳と表現出来ないレベルの直感の持ち主である事を。
「……あ、やべ。口が滑った‼︎ 衛星砲が降って来る‼︎」
『飛行する速度を上げろ、我が息子‼︎ あんなの立て続けに浴びれば例えキミでもタダでは済まんぞ‼︎』
その言葉の直後、ブリテンの周辺に浮かんでいる多数の《エリちゃん砲》から一点集中の光の奔流が若菜へ目掛け、その刹那、一瞬の煌めきと共に上空から多数の高出力エネルギーによる砲撃が流星群の如く降り注ぐ。
若菜はすぐに撃腕翼の爪先から赫い量子を放出させ急加速させ、瀑の如きエネルギー砲撃をギリギリで回避。更に立て続けに降り注いで来る為に立ち止まる余裕は一切無い。
その威力たるや超硬度を誇る高速空路のパイプラインを一撃で貫通、熔解させる程であり、更には視認する事すら難しい程の超高速で飛翔する若菜に対して明らかに殺意全開で正確に狙って来る。
『毎度毎度思うが、ブリテンの女王はどんだけエイム力が高いんだ⁉︎ 『フォーマルハウト』は現行のISの中でもトップクラスの飛行能力を有するのだぞ⁉︎ ソレ対して照準を、然も1度にバラバラに配置されている人工衛星砲を4桁単位で合わせて来るだなんて……常識の埒外だぞ⁉︎』
『俺に聞くな‼︎』
後方では放たれたエネルギー砲撃により焼き尽くされた高速空路の成れの果てが見える……。悉くが赤熱化の末に焼け爛れ熔解してその姿を消して逝く。
当然ながら他の利用客も平然と巻き添えにしており、容赦が見られない。あ、邪教徒なら《エリちゃん砲》の砲撃の直撃喰らっても10秒後位には何事も無く復活しているから無問題か。
『シノア、ユリエ、フィーリリア‼︎ 済まん‼︎ 別ルートで合流しよう‼︎』
『うん、分かった‼︎ 五体満足で合流しましょう‼︎』
3人は無事である事を確認してから、高速空路の天井を突き破って上空へと飛び立つ。それに合わせて《エリちゃん砲》の砲撃の軌道も変わるが、突然その砲撃が止まった。
「アレ全部、俺を狙ってんのかよ……‼︎」
夜の時間帯のブリテン上空に浮上した若菜。
地球の様に光害により星空が見えないなんて事は無く、星空の如く無数の光源が浮かぶ夜空が見える。
夜空に散りばめられた無数とも呼べる光の粒が視界全体、ハイパーセンサーを含め360度の視界全てを覆い尽くして居る。
星空……星座を構成する恒星が放つ光では無い。あれらは全て《エリちゃん砲》の砲口にエネルギーを集束される際に発する光であった。砲撃が止まった理由は、エネルギーを集束させていたからの様である。
『こりゃ女王の気が済むまで耐えるか、あの《エリちゃん砲》の内蔵エネルギーが枯渇するまで耐えるしか無いな』
少なくともあの女王の気が収まる事は期待しない方が良いだろう。そう言うお方だし。
「ガイアさんや。《エリちゃん砲》とやらが何基あるのかご存知で?」
若菜の目測では10,000はあると予想を立てていた。
『正確な数は把握しては居ないがこのブリテンの周りを公転しているモノは約54,000基程か?』
ソレらが1人に対して差し向ける数かと嘆きたくなる。ソレら全ての内蔵エネルギーが枯渇するまで躱し続けろと言うのか。一撃でも貰えば立て続けに喰らい続ける事となる。
《エリちゃん砲》の軌道と惑星規模の射角の関係で1度に狙われないだけマシではあるが、休みなく立て続けに狙われる事になる為に返って超長期的な耐久戦を強いられる事に変わりは無い。
「……100
その幼女は冬休みの工作と称してエストレヤ学院に陸海空宇宙対応型小型の機動要塞を提出した事があったらしい。然も、実用性があるとの事。
「…………」
ともあれ《エリちゃん砲》とやらもそのウィキッド姫の造った代物である以上、希望的観測は捨てるべきである。あの凝り性がそんな有情的な措置を施す筈が無い。
「其方がその気ならば掛かって来いやァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎ この惑星国家の電気代ガス代水道代エネルギー代が記録的な高騰をしようが知った事かァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎」
若菜、半ばヤケクソになって叫んだ。
その威勢ある咆哮に応えるが如く、宇宙空間に浮かぶ無数の眩耀が一際強く燦爛と煌めき——。
夜の時間帯のブリテンの大地に黄金に煌めく白夜が訪れ、眩耀の流星群が降り注いだ。
ブリテン内での禁止事項リスト(ブリテン憲法)
・ブリテン圏内で女王陛下に対して不敬な物言いをする事はとても恐ろしい行為です。口に出さずとも思考する行為も決して認められません。
・ウィキ姫に対して不敬な行為は絶対にしないで下さい。ましてや項にある(物理的に存在する)逆鱗に触る行為は極めて危険な行為です。
好奇心からウィキ姫の逆鱗に触った者は後日、悉く消息を絶っています。
禁止リストに関しては好評があれば継続するかも……。