束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
《エリちゃん砲》による砲撃が始まってから25時間。眼下の大地は砲撃により地形が変わり果てて原形を失っていた。
「あー……
地球時間で丸一日、完全展開し軍事衛星の砲撃に晒されていた若菜。そろそろ集中力や精神的に厳しくなって来た。流石に若菜と言えど光の洪水を無傷で切り抜けるのは無理であった為に各所に被弾しており皮膚が焼け爛れていた。中には内臓や骨にも達している箇所も見受けられる。
『我が息子、西南西、8秒後にデカいのが来るぞ‼︎』
「チィ‼︎」
立て続けに撃ち続ければ内蔵エネルギーも尽きて来る。最初の方はもうやり過ぎレベルの密度であったが24時間が経過した頃には砲撃の量は格段に減少していた。
それからは一撃で沈めるつもりの砲撃へと切り替えた模様で、ガイアの宣告通りに8秒後にエネルギー砲撃が飛来、頭のギリギリを通過し躱した。
「……身体バッキバキで流石にもうヤベェんだけど」
地球人のアホ共は『ISに搭乗している時はシールドバリアや絶対防御があるから無敵‼︎』とか叫んでいそうだが、休み無く24時間以上ぶっ続けで展開し尚且つ戦闘状態を維持し続けた者は早々居ない。良くて1時間程度だろう。
それ程迄に戦闘行為と言うのは心体共に消耗を強いるのだ。永遠に戦い続けられる者は一握りの本当の意味での狂人だけである。邪教徒とか。
『寧ろ良く耐えれているな。バイタルは最早、危険域だ。今すぐに斃れても不思議では無いぞ』
精神的にも体力的にも動き続けられる状態では無い。若菜は超人じゃないからだ。
『やぁ、若菜』
その時、秘匿通信で聞き覚えのある声が聞こえて来た。
『ロランツィーネ……‼︎ 諍いに付き合ってやれる元気は無ぇぞ……‼︎』
此処に来てクレイジーナイトの登場。この調子で会話が成立出来そうに無いバカの相手は流石に拷問が過ぎる。新手の拷問かよ。
『実に助かった。ヒメも大変御満悦だよ』
『は?何の話だ?』
また、何時もの調子で邪教勧誘かと考えていたがいきなりお礼を言われた。何の話だ。
『……? ああ、君は何も聞いていないのか。『エリちゃん砲爆撃ラッシュ』の代役、感謝しているよ。今回は大盛況だよ』
『何だ、その如何にも頭が悪そうなイベントの名前は……‼︎ まさか、さっきまでの衛星砲撃の雨霰の事を指しているんじゃ無かろうな……?』
『ん?そうだけど? いやぁ、《エリちゃん砲》の残存エネルギーを一度全部吐き出して新しいエネルギーを補充するタイミングで行われる我がブリテンの弩級名物風物詩でね。
ド派手な光の雨が大空を彩ると言う光景は他の惑星国家やエストレヤでは見られない光景だから観光資源や新規入信者獲得に非常に重要でね』
『……余計に頭が痛くなって来たからもう喋るな、バカ』
流石に疲労が溜まって来ている為に舌鋒も鈍い。その上に頭痛を催す内容を聞かされれば余計に悪化しそうだ。
が、相手は人の話を聞かないロランツィーネ。若菜の抗議は当たり前の様に無視される。
『……ただ最近だと狙う的役が1時間程度で消息を断ってしまい味気ない展開になっちゃって、ボクらも困っていたんだよ』
『おいコラ、ソレは絶対に衛星砲の砲撃で跡形も無く消し飛ばされてるよな? さも当たり前の様に流して良い問題じゃねぇだろ』
『流石に宇宙空間に向けて乱射しまくるのも問題だからね』
『…………』
何を言っても無駄だと察した為に聞き流す事に全力を尽くす事にした。もう此処まで来れば大凡、見当が付いた。
『つまり、俺はまた嵌められたのか。俺が口が滑る事も想定内だったって言うのかよ……』
『まぁ終局的に言っちゃえばそうだね。裏取引が
発端だけど、お祭りを成功させたい意図もあったし君なら完走出来るだろうとの事でトントン拍子で話が纏ったんだ。女王陛下もノリノリで撃ちまくっていたしね』
止めろよ。自分の女王を止める努力しろよ、あ、無理だわ。
『で、今度は誰が噛んでやがるんだ?』
『その対価にヒメの『赫絲』が欲しいらしくてね。伽羅先生とケーニヒスベルクと夕張、後Dr.レーキュや
あ、終わったわ。もはや正気を疑う企みを構築してんだろーな。あの人なら『死もまた救いの一種よ』とか平然と言い放って来そう……。
と言うか
『……今後の展開読めて来たわ。伽羅さんは絶対、善意のつもりで画策して来そうなんだが』
『はは、あの人は手を抜かないからね。それで、君はコレからどうするつもりだい?』
問答無用で秘匿通信を切った。今はあのバカの声を聞く元気は無い。
『ガイア。シノア達が何処の宿泊施設を選んだのか調べてくれ。流石に疲れた……』
『……分かった分かった。流石にもう、祭りの中で街中を歩き回る余力は無さそうだな。ブリテンに来てホテルでぶっ倒れっぱなしってのは中々、酷いオチだと思わないか?』
『…………こんな展開、俺も予想してねぇよ。いや、口が滑ったから自業自得か』
その後、シノア達が選んだ宿泊施設に行き其の儘寝た。更に丸1日中、寝ていた為に『ワルプルギス』の祭を楽しむ余裕もなく帰星する事になった。その間、シノア達は祭を楽しんでいたそうな。……解せぬ。
「ふふ、ごめんなさいね。若菜。貴方が道化役を演じてくれたお陰で次の特別授業に必要な備品をウィキッド姫から仕入れる事が出来たわ」
エストレヤにてシノア達が買っていたお土産を手に藍里のアトリエに寄って要件を済ませた後、会議に出席していた束一行と合流し地球へ帰る為の航宙艦に乗船。其処で諸悪の根源とも言える伽羅からお礼を言われた。
「……あのおチビ姫から貰うってんなら、態々俺を嵌める必要は無かったと思うんですがね? 素直にお菓子なりエストレヤの三つ星のケーキを献上するなりすれば早い話だと言うのに」
航宙艦内にある談話室。未だに疲れが取れないのか長ソファにて寝転がっている若菜が近くのソファに座る伽羅に対して不満げな口調でそう言う。
「……あのウィキッド姫は気難しい性格な上に警戒心がもの凄く強い。それに普段から『人体実験』してるツケが回っちゃってね。凄く警戒されて途方に暮れていたんだよ。お菓子で釣っても反応が鈍くなっちゃったからね〜。
オマケにDr.レーキュがサンプル採取と称してお昼寝中だったウィキッド姫の巻き角の一部を削った所為で余計に話を聞いてくれなくなっちゃった」
「あの手この手で実験をするからでしょう。人質取ったり、脅迫したり、拉致したり……」
「でも、束博士との『契約』を履行する為にもウィキッド姫が体内で生成する『赫絲』が必要不可欠。確実性を高める為にも如何しても必要……だから、1番使い易い若菜を使ってあのイカれた『ワルプルギス』のメインイベントで王女殿下を喜ばせるのが1番、確実にゲット出来る手段だったのよ」
結果、伽羅達のその目論見は的中した。その結果、ウィキッド姫は大変満足したらしく、目的のブツを手中に収める事に成功したとの事。
「確実性っつー事は、無くても『出来る』んでしょう?」
「あるに越した事は無いわ。そうでしょう?」
「その所為で俺は骨折り損の草臥儲けを演ずる羽目になったんですよ。俺は何しにブリテンに行ったんだよ……単純に女王陛下に殺されかけただけじゃねぇか」
事の真相を聞いて若菜は恨み言を告げる。とまぁ、邪教徒の群団に襲撃を喰らわなかっただけ儲け物かと前向きに捉える事にした。
「でも最近はご無沙汰だったでしょう?オリエンテーションの時じゃ物足りない。ギリギリの環境を思い出すリハビリにはなったでしょ?」
「……伽羅さんのそう言う所が嫌いなんですよね」
その言葉に若菜はそう返すしか無かった。伽羅の目論見はソレだけでは無かったと言う事実に。
「さてと、『特別試験』の進捗は如何かしらね?」
伽羅は手元に小型の空間投影ウィンドウを展開して詳細を確認する。
「あら、3日目で脱落者が3名出たみたいね」
「推測は出来ますが詳細は知らないんで何もコメントはしませんよ」
「2人が精神崩壊。1人が無音と孤独に耐え切れずに発狂して壁に頭を打ち続けての失血死……ね」
『特別試験』で不合格者が3名に達した。この時点で正気を保っていた20名が合格となったとの事。
「コレで少しは使い物になるであろう者が選別されたわ」
「狂気的な教育方法だと多方面から文句を言われそうですね……」
「……うーん、そうかな? 何はともあれ、漸く……ISの訓練に移る事が出来るよ。あーあ、誰かさんの所為でこんな回りくどい手間を掛けなきゃ行けなくなったからね」
「それは俺の所為ですか? オリエンテーションで全員生還させた事を根に持っていたんですか?」
その報復も兼ねて今回の件て嵌めて来たのか?物理的にも釘を刺して来やがった……‼︎
「うん、そうだよ? 本当はオリエンテーションで10人位、死んでくれたらもう少し早くISの訓練に取り掛かる事が出来たのにね〜。
若菜って本当に残酷だよね〜。惨たらしい未来がある事を承知で敢えて死なせずに生かしておくなんてさ」
「開き直られた挙句に外道扱いされてる⁉︎」