束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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厄介な女にばかり目を付けられるな、キミは

 

 

 射撃場で銃声が立て続けに鳴り響いている。8組の生徒達が射撃訓練に勤しんでいるからだ。内蔵されている弾を撃ち尽くしたら他の者と交代して、弾を装填する作業を繰り返している。

 その最中、若菜はと言うと。

 

「…………」

 

 少し離れた位置にある狙撃銃用の射撃スペース。地面に伏せた状態で撃つ為に射撃地点にマットが敷かれている。その場所でSVChを横這いで構え——。

 

「ヒット」

 

 射撃場で訓練している故かサプレッサーを付けていない為、甲高い銃声が響く。放たれた銃弾は人型の的の心臓部に当たる箇所に命中していた。

 

「ヒット。ヒット」

 

 続けて2射、3射目の銃弾も見事狙いの箇所に命中。スポッターのフィウが命中した事を若菜に伝える。

 

「ヒット。ヒット……。10発中、10発命中。お見事です」

 

「やっぱ、スポッターが居ると助かるな。まぁ、狙撃なんてモノは元々スポッターが居ないと話にならんが」

 

 顔を起こした若菜は視線を向けずに空のマガジンを外し新たなマガジンに取り替えて装填フィウにそう言う。オリエンテーションの時は止むを得ずスポッター無しで狙撃した。

 正直な所、アレは結構なマグレな点が否めなかった。あの時は距離は然程遠くなく間抜けな兵士が占めていた事が要因と言える。フィウの警告通り運が悪ければ燐芽を撃ち殺していても可笑しくは無かった。

 

「……若菜さんは悪天候時と夜間狙撃の訓練を実行する様に伽羅さんから通達されています」

 

 訓練も重要ではあるが実戦で機能しなければ話にならない。故により実戦に近い訓練を行うのは当然である。

 

「OK。日取りの調整をしておく。その時はまたスポッターを頼むわ」

 

「……はい。お任せ下さい。次の訓練時にはボルトアクション式の銃を使用しましょう。必要であれば改造をしておいて下さい」

 

「了解した」

 

 若菜はISでの戦闘スタイルの都合上、狙撃銃を使う機会は殆ど無いのだが伽羅の提唱する教練カリキュラムの都合上、若菜には狙撃の訓練が重点的に組まれている。

 

「…………………」

 

「ん?」

 

 若菜の隣に1人の少女が立っていた。頭を動かし視線を其方に向けて見上げる。あの物騒極まりない発言を伽羅にぶつけた学者然の雰囲気を抱く少女だ。確か鶴喰と言ったか?

 

「……こうして直に話をするのは初めてですね。鶴喰 永世です」

 

「俺は自己紹介は済ませたから知っているだろ。それで、どうした?」

 

 普通に考えれば伽羅が言っていた通り、何かを聞きに来たと考えるのが自然。

 

「貴方の射撃風景を閲覧させてください。現段階で貴方が私にとって1番の『教材』ですから」

 

 これは、また変人な奴が現れたモノだと若菜は心の中で呟いた。いや、よくよく考えずとも自分の周りには変な奴ばっかりだ。今更、1人くらい増えた所で然程、変わりはすまい。

 

「一応、IS学園(ここ)には世界最強殿も居られるが?」

 

 少し興味を惹いた為に鎌を掛けてみた。IS学園には『世界最強』と言う『閲覧』するに打ってつけの『教材』がある。戦闘能力と言う点に於いては他に居まい。

 

「非効率です。かの教師を『教材』と見做すには余りにも不充分。現時点に至るまで彼女の手解きを受けた者達が『ISライセンス試験』に挑むも誰1人として合格出来ず堕ちた。……貴方がそんな提案をするのはナンセンスです」

 

 永世はそう切り捨てた。確かに今日に至るまでのIS学園の教育課程では束博士の提示した試験に敵わなかったのも事実。

 

「成程。何が欲しい(・・・・・)?」

 

「拳銃、小銃、散弾銃、軽機関銃、一通り閲覧させてください。後は自分で学習(・・)します。狙撃に関しては今、見させて貰いました」

 

 永世はそう答えた。どうやら……かなり厄介そうな奴に目を付けられたようだ。

 どうしてこう面倒臭い女の子ばかりに目を付けられるのか、随分と変な星の名の下に生まれたらしい。

 

「分かった。伽羅さんから聞かれたら教えてやれと言われているからな」

 

 若菜は永世の要請を受諾。身を起こしてSVChをフィウに預けて、8組の生徒達が今も射撃訓練を行っているスペースへと移動する。

 

「おや、篠崎さん。彼方で狙撃銃の訓練をしていたのでは?」

 

 P226を片手に射撃スペースの空いている箇所に行くと防弾ガラスの隣に丁度、順番になって前に出た久里から声を掛けられる。

 

「手本を見せて欲しいと言われたからな。それに、久しぶりに拳銃の射撃精度の誤差修正もしておく必要があるんでな」

 

 後方の少し離れた位置に永世とフィウが立って見ている。

 

「……ならば、せっかくなので御教授願うとしますかね。時間は有限、って言うっすよね?」

 

 久里も隣で若菜の射撃訓練を見学するつもりらしい。案外、特等席での見学となるか。

 

「構わない。参考になるかは別問題ではあるがな。シノア、準備OKだ。何時もやってる奴で頼む」

 

 現在、射撃場の的の再設定と言ったシステム面を制御しているのはシノアである。ホルダーにP226を納めて準備を終わらせる。

 

『分かりました。若菜君がやるのなら……うーん、そうだなぁ。レベル3が良いよね?』

 

「ああ。いつでも来い」

 

 腕を回しつつ少し体操をする若菜。先程まで、先程まで横這いで居たから体を解しておく。

 

『1st,Round、開始‼︎』

 

 不意打ち気味に放たれたその言葉の直後、開始音が響いた直後、量子展開で複数の円形の的が展開。同時に若菜はP226を抜いて早撃ちで発砲。次々と的を撃ち抜いて行く。

 

『2nd,Round、開始‼︎』

 

 間髪入れずに異なる位置に更に小さい的が量子展開で顕現。今度は上下左右に移動している的まで現れる。

 

『Final Round、開始‼︎』

 

 最後のRoundとなりまた異なる位置に、更に小さな握り拳程度の大きさ的が展開される。も勿論、移動しているが今度は不規則であった。

 途中で弾切れとなるも速やかにマガジンを入れ替え、発砲。全ての的を撃ち抜いたと思いきや、若菜は背後に振り向いて発砲。放たれた弾丸は永世とフィウの間を通過しその後方に展開された的に命中した。

 

『終了です‼︎ 結果はターゲット30に対してヒット29です』

 

 使用された的は結果発表の様に眼前に再展開される。撃ち漏らした的は移動していたタイプの的だった。

 

「……及第点か。あーくそ、右側にブレてやがんな」

 

 的を確認すると何れも中心部から右側にズレて当たっているのが分かる。

 

「ブレを修正しないと行けませんね。姿勢矯正から始めた方が宜しいかと」

 

「あー、座り仕事が多かったツケが今来たのか……。逆に今、発覚してくれて助かったな。現場で誤射る事が発覚するのはマズい」

 

 結果に若菜は満足はしなかった。万が一の場合、誤射してしまっては目も当てられないからである。

 

「い、いきなり背後に……鶴喰さん達へ向けて撃つから何事かと思いましたよ……‼︎」

 

 拳銃の射撃訓練を終えた若菜に対して久里はやや引き攣った顔でそう訊ねる。

 

「安全圏など何処にも無いって言う俺からのメッセージだ。……特にストライカー(IS操縦者)は論理ガン無視の職種だからな」

 

 久里の言葉に対して若菜はそう返し場所を開けた。撃ち終えたら後続の者に譲る、それは若菜達も例外では無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

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