束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
射撃場による射撃の基礎訓練は午前の時間を全部使って行われた。IS学園の備え付けられている銃火器を一通り触り扱いの基礎を学んで行く。
『このクラスの代表は貴方よ。黒糖さん。クラス代表対抗トーナメントまでに若菜達を含めたあの子達に対してどう言う采配を振るうか、見せて貰うわ』
黒糖は伽羅からそう言われた。クラス代表対抗トーナメントはあくまで生徒各位が主役のイベント。決して『クラス代表』だけが活躍を求められている訳では無い事を改めて伝えられる。
「……篠崎さん。参謀役をお願い出来ませんか?」
射撃訓練を終えてからの昼休み。8組の教室。普通ならば大食堂で昼食なり、弁当を持ち込んでの昼食を摂るのだが久里の声で昼食を摂る前に『作戦会議』が開かれた。
「ほう、それはまたどうして?」
「……敢えて聞く事ですか。適任、と言えば納得してくれますか?」
若菜は試すように答えると、久里は簡潔に答えた。若菜も伽羅も自分達を試してくるような言動が多い。ちゃんと見てくれている証拠とも言えるが……やはり若菜達からは若干、壁を感じる。
「まぁ、
「……黒幕なら舞台裏に引っ込んでて欲しいかな?」
シノアから突っ込まれるも若菜は特段、気にした様子は見られなかった。普通の感性……と言うか自分が言うと可笑しく感じるが、普通ならば『希少・男性・話題性』の三段活用で全面的に喧伝しようとするだろう。
現に織斑 一夏を擁する1組は一夏をクラス代表に持ち上げてその存在を喧伝して回っている。そりゃもう、新聞部まで巻き込んで盛大に触れ回っているのだから呆れる他に無い行動力だ。
「黒糖さん。それで、どう言う動きをするのですか?」
「……篠崎さん。今朝に挙げてくれた策略。丸パクリしても良いですか?」
「俺が8組の
勿論、献策した内容に変更したい点は変えても構わない。アレはあくまで俺ならそうすると言う例題に過ぎない」
若菜は遠慮は無用と答えた。参謀役を請け負ってくれた以上、遠慮する必要は無い。
そう答えてくれた為に久里は若菜が立てた策略を大いに参考する事にした。
「先ず私達には情報が足りませんね。主に他クラスの動向の情報が。各クラスの代表や、そのクラスの方針が」
8組は独自方針により半ば独立した教育方針が採択されている。その為、同学年の横の繋がりが希薄だ。
「そもそも専用機持ちが誰なのかも詳しく判明していません。分かっているのは1組の織斑さんとオルコットさん。他にも専用機持ちの方が居られても不思議ではありません」
専用機持ちならば、クラス代表に持ち上げられている可能性が高い。相手は国家が擁し専門の訓練を受けており、元々一般人である久里が相手取るには小細工が必要だ。正面から挑んで勝てる相手じゃない。
それこそ使える手段(ダーティーな手段含む)を駆使する他に無い。正々堂々と言うのは実力が拮抗していなければ成立しない強者の言葉であるが故に。
「手始めに各クラスの動向を探りましょう。主にクラス代表の情報ですね。戦闘スタイル……が得られるのであれば御の字ですが、流石に其処は難しいでしょうか?」
久里は若菜に質問を投げてみた。クラス内会話で流石に戦術関連の話は早々に出てこないだろう。
疑問点があればまず訊ねる。頼り過ぎは良くないと言われたがどうしようもない時は頼ろう。
「リスクはあるが、手が無い訳では無い」
「例えば……?」
「5月に入れば他のクラスのIS実技訓練の授業が開始される。先ずターゲットの属するクラスの授業日程の時間割の情報が必要だ。その情報を元に実技訓練中の様子をバレない様に偵察する。まぁ、一言で言えばスニーキング・ミッションだな」
若菜の口から中々、危ない単語が飛び出して来た。スニーキング・ミッションなど……日常会話では先ず出て来ない単語だ。
「スニーキング……隠密行動。スパイみたいな?」
「……まぁ厳密には違うけど。実行者は必然的に8組の授業を欠席する事になるが、まぁ伽羅さんには『偵察作戦中』とでも言えば特に気にしないだろ。座学なら後で補習組むだろうし。
偵察要員をサポートの為に監視カメラの妨害工作等も行う必要はあるが……まぁ、出来ない事は無い」
妨害工作とか、言っている事が完全に秘密組織や特殊部隊の発言のソレである。篠ノ之博士の身内って相当ヤバい人種しか居ないのかと考えたくなる。
「……さ、流石に私達にはまだ早い気がします、はい。取り敢えず、各クラスの代表の情報を集める事を第一目標にしますね」
流石に授業中に探り込むのはまだ自分達には早いとして見送る形にした。
兎も角、クラス代表の情報を探る要員として1クラスに付き、2人専門の生徒を割り振って充てる事にした。まさか8組が真面目に敵情視察を行っているとは他のクラスは考えていないだろう(今年の1学年の殆どが浮かれていると言われている為)。
タイミングとしては昼休みや放課後になるだろうか。各自限の休憩時間のタイミングも時間は少ないが拾える情報はあるかも知れないが、其処は各人の都合に任せる事にした。
「次、篠崎さん。菟篠さん、えーとセレスティェリアさん。私にISの操縦技術等をレクチャーしてくれませんかね?」
敵性個体の情報を集めるのも重要だが、肝心の自分が戦力外では話にならないだろう。
「ああ、構わないよ。と言うか5月の頭辺りにゴールデンウィークがあったろ?」
「え、ええ……。そうですね」
日本の5月と言えばゴールデンウィークと呼ばれる祝日が連続する大型連休が存在している。此処、IS学園でもゴールデンウィーク中は一般的な高校と同じく休業となっている。
「休みの日にまで自主訓練する様な向上心がある奴は専用機持ち以外、ほぼ居ない。
伽羅さんの事だから日曜は兎も角、それ以外の祝日は休日返上上等で1日丸ごとISの実技訓練の予定をブチ込むさ。……逆を言えば、一日中ISに搭乗して気が済むまで実技訓練出来る事を意味している」
「「「!」」」
過大規模校同然のIS学園。
数が非常に限られているISの数に対して1回の実技訓練授業で一般生徒がISに乗れる時間はもはや雀の涙と言って良い。酷い時はただただ見ているだけで終わる事もままある。
そして自主訓練としてのアリーナの予約は兎も角、肝心のISの機体の予約は空きが無い事がザラであり、尚且つ上級生優先で基本的に予約が組める日は平日限定。
更に整備科の協力も必要とあれば普通に半年待ちに加えて実際に使用できる時間も長くて50分とかなり短い。対して専用機持ちはアリーナの予約だけで済む。
もう此処まで来ればIS学園から見て一般生徒は学生納付金目当ての金づる程度の存在でしか無いのかも知れない。或いは単なる賑やかし?
「お母様の事前調査によると専用機持ち以外の1人に割り当てられた訓練時間は多く見積もっても1日で15分あれば、多い方……だそうです」
「それで上達出来るとはとても思えませんね」
そう考えると丸一日占有出来ると言うのはまたとない機会と言える。このチャンスを逃す程、愚かなつもりの人間は8組には居なかろう?
「だからその点は黒糖のみならず、全員に対して言っているからな。伽羅さんは本気だ。故に君達も全力で挑むんだ。何、骨くらいは埋葬してやる」
「とても冗談や比喩には聞こえませんよ……‼︎」
久里の実技訓練に関しての心配は解消された。その次、物騒な学者キャラの永世が若菜に視線を向けて口を開いた。
「……他のクラス代表を伽羅先生の許容範囲内に収まる様にトーナメント当日までに出場出来ないレベルに追い込むならば貴方ならばどうしますか?」
どれだけ抹消したいのか……ある意味、恐怖を感じた。
「勝ちに行くのか?」
「勿論です。やるからには勝ちます。黒糖さんが『クラス代表』ならば
恐らく永世が『クラス代表』になった場合でも相手が専用機持ちだろうが暫定代表候補生だろうが勝つ為の策を構築するだろう。今、自分が動くべき内容を理解している。それで極力可能性が高い方法を考案する。……どちらかと言うと物騒な戦略が好みの様だ。
「違わない。どうせならば勝ちたいな。んで、鶴喰。キミの質問だが……
「あるの⁉︎」
若菜の返答に8組の1人が驚いた。口には出さなかったが久里や燐芽も目は驚いていた。伽羅の提示した条件を潜り抜けた上で他のクラス代表を妨害する策略が。
「……若菜さん、それは……まさか」
「ああ。どうせやるなら、ってワケだ。直接妨害して行動不能にするのはマズいが……
「マジですか。そんなご都合主義染みた作戦があるんですか⁉︎」
「先に言っておくが上手く行く保証は無いし、そもそも
「……黒糖さん。私は篠崎さんの『策』に興味があります。如何でしょう?」
永世は若菜を『教材』と見ている。どう言う策を講ずるのかその一点に興味を持っていた。
「分かりました。私も出場する以上は無様な姿を伽羅先生に見せる訳には行きませんからね。篠崎さん、お願い出来ますか?」
「趣味と実益って奴だ。引き受けた。……あー、流石に人手が欲しい。何人か、手を貸してくれると有り難い」
「分かりました。今はこんな所ですかね。今日の放課後から行動開始と行きましょう‼︎」
「…………ッ‼︎⁉︎」
「あれ、若菜君。どうしたの?」
「いや……形容し難い寒気を感じただけだ……‼︎ 何故だろう……確かな恐怖が迫って来ているような……?」
「……若菜さんが終始ビビる相手は1人しか居ませんね」
「まさか……
8組の方針は概ね決まった。今日の午後の授業は一般科目の座学。放課後になり8組の生徒達は各人、行動を開始した。
「……ふんふんふ〜ん。お姉ちゃん、頑張っちゃうぞ〜♪ あ、現場拠点としてケーニヒスベルクちゃんに研究所の一部、間借りしようっと♪」