束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
クラス代表対抗トーナメントを控えているIS学園。クラス代表がクラスを代表としてトーナメント形式で試合を進めて行き優勝を争う……。クラス代表対抗トーナメントの日程はゴールデンウィークを跨ぎその更に翌週……つまり3週間後である。
その為、学園内ではその話題で持ちきりとなっていた。何処のクラスが優勝するのかなどで盛り上がっている。さも、自分達は見物人であるかのように振る舞っている。
「さてと……明日からゴールデンウィーク。来週の日曜まで連休となる訳だけど……」
8組の朝のホームルームにて、教壇に立つ伽羅がそう切り出した。
「8組はゴールデンウィーク中はISの実技訓練を行うわ。日曜日以外は全て実技訓練に注ぎ込むからそのつもりでいなさい」
他のクラスは祝日故に何処行くかなどで話題になっているが、8組は違う。
この手の話は事前に若菜から告げられていた為に8組の面々は特に驚きはしなかった。寧ろ望む所である、と言った面持ちで伽羅を見ていた。
「……うふふ、良い顔になって来たわね。まだまだの青二才にしては、悪くないわ。続けるわね。
朝の9時から夜の7時まで丸一日、第6アリーナにて実際に全員、ISに搭乗してのひたすら実技訓練を実施する。
本来ならば余りにも短過ぎるのだけどこの機会を逃さず貴女達全員に歩行、飛行、各種技術を叩き込む」
本来、1年間にのるIS学園生徒1人辺りの累計搭乗時間は20時間も満たない事がザラである。ISの数が少な過ぎるのに対して生徒数が余りにも多過ぎる事が要因である。
「特に黒糖さん。貴女はクラス代表……クラス代表対抗トーナメントを控えている以上、無様な姿は晒せないわよ?」
「はい。ご指導お願いします」
「うん。良い返事よ。そんな貴女達にプレゼントがあるわ。若菜」
「……全く生徒使いが荒いですね、伽羅さん。お陰様で寝不足なんですけど……」
「カフェイン錠剤をダース単位で摂取しなさい」
「心不全で殺すつもりですか?」
若菜は欠伸を噛み殺しかったるそうな態度を崩さずに伽羅の声に反応し、身を起こし適当なやり取りをする。
終わったその直後、各人の座る席の机の上に光の量子が集束されて行き、白い箱がその姿を現す。
白い箱が現れて居ないのはフィウとシノア、そして若菜のみである。
「皆、開けて見なさい」
伽羅の指示の下、生徒達は箱の蓋を外して中を開けて中身を見てみる。その中にはビニール袋で包装されたISスーツであった。それはIS学園指定のISスーツでは無い。
学園指定のISスーツは旧スクール水着に酷似した外見であったが、今回新たに用意されたモノはダイバースーツを彷彿させる全身を覆い尽くすタイプのボディスーツであった。色は紺色で無難なカラーリングと言える。
「宇宙空間は知っての通り極寒と灼熱の世界よ。幾らシールドバリアがあるとは言え素肌を晒すのは極力避けた方が良いわ。……何れは温度訓練を受けて貰うからそのつもりで居なさい」
昨今の普及しているISスーツは見た目に拘り、本来の用途を僅かに残しつつもカジュアル性を全面に押し出したモノを製作して販売している傾向があった。……まぁ、本人の士気高揚の用途は無視出来ない要素なので其処まで強く言う義理は無いのだが。
「ちょっと若菜……何その顔は?」
そしてもう何度目かの若菜の……今回は寝不足を帯びた呆れ顔を向けられた。寝不足故に目つきが非常に悪い。
「……随分と極端な旅行を計画していませんよね?」
「あら?そんなに南極横断旅行がお気に召したのかしら?それともサハラ砂漠横断旅行の方が好きかしら?或いは活火山洞窟探検が良かったかしら?」
実に物騒極まりない旅行である。脱落者は当然、その場に置き去りにされ骸を晒す事になろう。
だが、宇宙空間で活動するにはそれくらいの過酷な環境すら生温いのである。何故ならば宇宙空間では−270℃から100℃以上と言う極端な寒暖差が随時起こり得ているからだ。
IS操縦者になろうならばそれくらいの訓練はあって然るべきだ。
「……個人的には成層圏の観覧ツアーが良いですね」
「却下よ。貴方がそんな真似をすればあちこちに
「ひでぇ」
伽羅に却下されて若菜は悪態を付いた後、不貞寝しようと頬杖を突いて目を閉じた。この状態で午前中の授業をバックレるつもりなのだろう。あの伽羅相手に凄い度胸である。
「はいはい、拗ねないの。……コホン。話が脱線したわね。一応、貴方達に渡したモノは標準型のISスーツよ。不備があったり要望があるならば出来るだけ早めに若菜に言うように」
各個人に合わせてはいるものの実際に着用して不備が出た場合は直ぐに製作者である若菜に報告するように通達された。……最も今は絶賛、不貞寝中であったのだが。
「それじゃあ、授業を始めましょうか」
「あの、篠崎さんは?」
「放っておきなさい。昨日から徹夜させたからね……私とてそれ位の慈悲はあるわ。邪魔しない限り」
「「「…………」」」
時折見せる伽羅の不穏な空気に
結局、若菜は午前中の授業はほぼ不貞寝で過ごした。幸いにも予習の類はする為、遅れはほぼ無い。恐らく伽羅は若菜の行動を予測はして居たのだろう(誠に遺憾だが、若菜の行動は読まれ易いらしい)。
「……それで若菜君の地球上での機体の話はどうなったの?」
「ケーニヒスベルクの奴が、予備パーツの殆どをジャンクにしちまったらしい。
如何にも俺のIS搭乗時の行動内容じゃあ地球上での物質の耐久性を軽く超過するらしくてな……『試行錯誤を繰り返した結果、無理と言う結論に至りました』だとさ」
因みにジャンク品はご機嫌取りの為に全部、ウィキ姫に献上したらしい。ご機嫌を取る方法を間違えている気がするんだが……。
「……結果、脚部装甲を部分展開で一先ず誤魔化す事になった、と」
「苦肉の策とは言うが、やる事は殆ど変わらないな。まぁ……政府や教員の連中が脚部装甲だけ見て違いに気付けるかって話になるがな……」
そもそも展開する機会は早々無いだろう。あるとすれば実技訓練の時くらいか? まぁその辺は伽羅が如何にかする事だろう。
「……。取り敢えず、ケーニヒスベルクが何か要件があるらしい。……気乗りはしないが行ってみるか」
第6アリーナの整備室兼ケーニヒスベルクの研究室。その扉を開けて入室したその時、若菜は目を見開いた。相変わらず際どい格好のケーニヒスベルクと……もう1人の人物が其処に居たからだ。
「……嘘だろ」
緩やかでボリュームのある
容姿的に1番の特徴がその身長であった。何故なら贔屓目に見ても身長は190は確実に越えて居そうな程の高身長なのだ。何処の時代でも早々見ない高身長と言える。
因みに束は身長は165cmでありソレを優に超えている。
最後に……色んな意味でデカい彼女だが、それすらも上回る特徴を有している。それは背中にその身長を包む程の巨大な白い翼(白いシーツが被せて埃除けにしている)を有し頭上には三重のヘイローが浮かんでいる。
宛らその威容は天使か聖母の様である。
御巫 姫舞。
エストレヤ学院……のみならずエストレヤの医療機関全般の長であり他にも様々な研究機関の長を務めている『姉を名乗る狂人』。
エストレヤ学院生徒全般のみならず、若菜達の姉を自称して憚らない。……そして、エストレヤでブッチギリの危険人物。
「あ、弟く〜ん♪ お姉ちゃんが来たよ‼︎」
若菜は此処で思い出す。少し前に、姫舞からヤバいお誘いが来て居た事に。
「ケーニヒスベルク‼︎ テメェ、謀ったな⁉︎」
「さて?何の事でしょうか? 私も姫姉が来星したと知ったのは1分前ですよ?」
目が笑ってやがる‼︎ 絶対に知ってて呼び出したな⁉︎
「お姉ちゃん、折角頑張ってくれた弟くんにお礼したくて待って居られないから地球に来ちゃったよ♪さぁ、一緒に実験室で楽しい事をしようね♪」
両腕と一緒にその翼を広げて抜け落ちた羽を研究室の床に落としつつ聖母の如き笑顔を浮かべながら姫舞が歩み寄って来る。
正直な所、その笑顔を知っている者からすればそれは現実が語れる地獄への片道切符でしか無い。
「……‼︎」
か、考えろ‼︎ この状況を打破する方法を‼︎
こ、此処で問題だ‼︎ この状況をどうやって切り抜けるか? 3択‐ひとつだけ選びなさい
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何も策が浮かばない。現実は無情である
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合理的な理性が告げる。慈悲は無い
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予測可能回避不能。現実は非情である