束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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その日までにどれだけ準備出来るか、って事ですよ

 

 

 

 

 か、考えろ‼︎ この状況を打破する方法を‼︎

 若菜は思考をフル回転させる。側から見ればバカに思えるかも知れないが、姫舞を前にすれば誰でもこんな状況に陥る。

 

『いや、我が息子。……もう手遅れ気味な気がするぞ』

 

 こ、此処で問題だ‼︎ この状況をどうやって切り抜けるか? 3択‐ひとつだけ選びなさい。

 

①何も策が浮かばない。現実は無情である。

②合理的な理性が告げる。慈悲は無い。

③予測可能回避不能。現実は非情である。

 

 おいコラ、ちょっと待て⁉︎ (ろく)な選択肢が1つも無ぇ⁉︎ 選択肢がある様に見せ掛けて全部一緒って鬼畜が過ぎんだろうが⁉︎

 

「弟くん♪ 前にも言ったよね? お姉ちゃんからは逃げられないって♪」

 

「ッ⁉︎ ちょ、ガチで、心臓(・・)掴むの止めッ⁉︎ 筋、筋に爪が、食い込んで、あ゛⁉︎ 今、何か穴が開いた気が⁉︎ つーか、脊髄も掴んで無いか⁉︎ しかも丁寧に両手両足の筋肉への伝達方面ばっか殺ってねぇか⁉︎」

 

 姫舞が恐れられる理由。それは医療機関の長であるが故に人体の構造を熟知している事。そして、拡張領域の扱い方(・・・)が特異的(彼女に限らず一部のストライカーはISの各種機能の扱い方が『変』ではあるのだが)なのも相待って、彼女と相対した瞬間に勝ち目は無い。

 

 その理由はただ1つ。

 姫舞は拡張領域を介して相手の身体の凡ゆる部位を内部から直接触る事が出来る程に緻密かつ精密な計算が出来る。それこそ鼓動を続ける心臓を直接触り握り尚且つ傷を付けない様に脅す事が出来る。姫舞は文字通り物理的に命を握る事が出来るのだ。

 心臓は生命を有する全ての存在の最重要器官。損傷すればその未来は潰えると言っても過言では無い。故に彼女には誰も逆らえないのである。難点と言えば1人1人、身体の構造が微妙に異なる為、其々の構造を把握しなければならないのだが、毎日の様に誰かしらで人体実験している為にエストレヤの殆どの人物の身体の中身を把握している為、その難点が問題点となっていない。

 

「はいはーい。一名様、実験室へご案内でーす♪ いやぁ、若菜さんの実験機会は何ヶ月振りですかね〜」

 

「大丈夫大丈夫♪ お姉ちゃんに全部任せてね〜」

 

「何処から何処までグルなんだよ⁉︎ 幾らなんでも俺1人を追い詰めるのに罠張り過ぎんだろ⁉︎ こう言うのはリーリスかレーキュのクソバカ相手にやれやァァァァァァァ‼︎‼︎」

 

 ケーニヒスベルクと姫舞に左右から抱えられる形で事態に納得出来ない若菜は研究室の奥の(勝手に改造して造られた)実験室へと連行されて行った。

 

「若菜くん、ごめんなさい‼︎」

 

「……若菜さん。どうか、ご武運を」

 

 その後ろ姿をシノアとフィウはただ見送る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が以前、ぶっ壊した高速空路の件は納得するが……。ウィキ姫と雷狐っ娘が起こした騒動と? 小夜が逃した料理による2次被害と?ストーリーが壊した器物破損?それから夕張や病姉妹が起こした棟の爆破案件?ロランのバカが起こした布教活動の2次被害による訴訟案件?トドメにセシリアとラウラによる戦争被害による補填案件?そして最後に色んな連中がやらかしたその他諸々を?俺が、身体で、お支払い?

 おい誰だ⁉︎ 余計な入れ知恵した奴は⁉︎ 俺を何だと思ってやが、のうおあァァァァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎ 覚えてやがれよォォォォォォォォ‼︎⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレ?若菜が居ないけど……」

 

「あ、あはは……。若菜君は体調不良で早退しました」

 

「……は、はい。明日には復帰すると思われます」

 

 昼休みが終わり午後の授業が始まる時、若菜の姿は無かった。ケーニヒスベルクと姫舞による人体実験の影響で完全にダウンした為、早退せざるを得なかったとの事。

 

「ふぅん、なら仕方ないなぁ。明日には復活するでしょうから放っておきましょうか。それじゃあ、授業を始めるわ。訓練も大事だけど学力も大切。疎かにする訳には行かないわ」

 

 との事で、今日の午後からの授業。科目は数学の授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい♡暴れないの〜♪」

 

「ちょっと待て⁉︎ 電動ドリルまでは遺憾ながら認めるが、ソレはアウトだろ⁉︎ 夕張の奴、何ちゅうモンを置いて行きやがった‼︎」

 

「大丈夫大丈夫。何かあっても完璧に直してあげるから♪ 超安全安心だよ〜」

 

「姫姉の『安全』と『安心』は紛れもない『危険』信号だっつーの‼︎⁉︎ 夕張の奴、何個、自分の目玉を置いて行きやがった⁉︎ 待て待て待て待て待て⁉︎ 待って‼︎ 待って下さい⁉︎ ソレ、マジで入れる気か⁉︎ ソレ、メッチャ頭が痛くなるんだが⁉︎」

 

「若菜さん。以前の健康診断をすっぽかしていましたよね?この際だから一緒にやっちゃいましょう」

 

「うん。一石二鳥でお得だね♪ 弟くん、変な所が熔解してないかちゃんと観てあげなきゃね☆」

 

「そりゃ『健康診断』と書いて『じんたいじっけん』と訳しているからだろーがッ‼︎ 健康診断の内容を再履修して来いよ⁉︎」

 

「ん?お姉ちゃんは医療機関のトップ♡ お姉ちゃんがルール、つまりお姉ちゃんの行動は全て合法‼︎」

 

「ああ、そうだよ‼︎ 分かっていたよ、コンチクショォォォォォォォォオオオオオオオ‼︎‼︎ アァァァ、もうどうにでもなりやがれェェェェェェェェ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ。箒もセシリアも教え方が間違ってると思うんだよなぁ」

 

 その日の放課後。本校舎の廊下を一夏はトボトボと言った形で歩いていた。専用機『白式』を手にした一夏。クラス代表対抗トーナメントがある為、その日に向けて訓練を行なっていた、のだが……。

 箒は教え方が擬音語や直感に基づいた脳筋戦法。対するセシリアは理路整然とした内容で一夏の頭じゃとても付いて行けない教え方であった。

 その為、どちらに頼んでも余り訓練にならないと言う悩みが付き纏っている。更には鈴音と揉めて怒らせてしまい(理由は一夏には分からない)、負けられない状態になっている。

 

『そうだ。俺と同じ男子の若菜って奴に教えて貰おう‼︎』

 

 自分と同じ男性操縦者である篠崎 若菜にISの事を教えて貰うと言う発想に至った。若菜は篠ノ之 箒の姉、篠ノ之 束の養子の息子と言う関係から、自分よりもISの事を理解していても不思議では無い。確か8組だった筈。

 それにIS学園では数少ない同じ男子。自分もクラス代表だから彼も8組のクラス代表になっているだろう事は容易に想像出来る。と言うかそうじゃなきゃ可笑しいだろと言う感情もある。

 そうと決まれば善は急げとの事で、早速8組の教室へと向かっていた。途中、他のクラスの生徒達に押し掛けられもしたが、『用事があるから』と言って断りを入れて通して貰い目的の教室へと到着した。

 

「此処、だな」

 

 8組の教室は最後の番号と言う事で1組と真反対の位置にある。他のクラスの生徒達の壁がある為に来るだけでも大変だ……。教室の扉を開けて顔を覗いてみる。教室の中の生徒達は疎だった。

 

「……おい。誰か来ているぞ?」

 

「アレは、織斑 千冬の弟さんでは?」

 

「……何のご用、でしょうか?」

 

 何人かが自分の姿を認めて顔を此方に向けて来た。な、何と言うか8組って雰囲気が他のクラスと違うな……。他のクラスだとわーっと集まって囃し立てて来るのに……妙に落ち着いてる。

 

「どもども、1組の織斑サンが8組(ウチ)に何か用っスか?」

 

 そんな中で黒髪でちょっとアンダーな雰囲気が漂う女子生徒(1組じゃ先ず見ない不良っぽい印象)が声を掛けて来た。

 

「えーと、篠崎 若菜って人居る?」

 

「あの人っスか? 体調不良で早退しましたよ」

 

 え⁉︎ マジか。体調不良で早退って何があったんだよ……?

 

「……何処の寮部屋か知ってるかな? 同じ男性操縦者同士だからさ。見舞いくらいは行っておきたいからさ」

 

「いや、知らないっスね」

 

 どうやら目の前の不良娘さんは若菜の寮部屋を知らないらしい……。

 

「言伝くらいならば聞いておきますよ」

 

 おお、それは助かる。なんか、見た目は不良っぽいけど話が通じる相手で助かった。

 

「実は若菜にISの事について教えて欲しいんだ。アイツ、束さんの身内だから俺よりも詳しい筈なんだ」

 

「……織斑サン。普通、教師に訊ねますよね、ソレは。何で、8組にまで来るのかちょっと理解出来ないっスね」

 

 不良娘、黒糖 久里は正論を返した。頼る相手を間違えていないか?と。しかし、若菜がISの事に詳しい事は敢えて(・・・)否定しなかった。

 

「えーと、やっぱ男同士なら気兼ねなくやれる気がするからさ……」

 

「……ふむ。まぁ、異性が相手よりも同性の方が頼り易いって面があるんですかね。男同士だと」

 

 久里はそう納得した。異性相手に頼むのは少し抵抗を抱きがちな年頃なのかも知れない。

 

「でもまぁ篠崎さんも然程、暇とは言えない立場の人なんで……聞きたい事の要点を纏めた方が良いっすね。自主訓練するのにもアリーナの使用時間も限られているみたいなんで……アレコレ聞いちゃ時間が幾らあっても足りないっスね」

 

 確かに……‼︎ クラス代表となれば色々、やらなきゃ行けない事もあるもんな……その点、俺も理解出来る。それと訓練の時、箒やセシリアはアレコレ言ってきて分からない点が多すぎる。そうこうしている間に使用時間が終わっている事も多かった。

 

「織斑サンの機体のコンセプトとか戦法とか要点をメモに纏めて置いた方が良いっスよ。そのメモを事前に若菜さんが見ればどう言う訓練内容を組めば良いか絞り込める筈っスよ。幾らかの候補を擁立させれると言う点で」

 

 おお、不良っぽいけど何て的確なアドバイスだ‼︎ 確かに試行錯誤とは言うけどある程度、内容が絞られていれば練習し易いからな‼︎

 

 久里にアドバイスを貰った一夏は紙とペンを借りてその紙に要点……『白式』の武装や主な特徴の要点を箇条書きで纏める。千冬からの聞き齧りの情報ではあるが、これらの内容から最適な指導方法が見つかる筈だ。そのメモを折り畳んだ状態で久里に渡した。

 

「じゃあ、宜しく頼むよ」

 

「……あー、言い忘れていたっスけど。必ずしも篠崎さんが受けてくれるとは限らないっスよ」

 

「折角の男子同士だから仲良くしたいんだ……。女ばっかりの学校だから精神的に肩身が狭いんだよ……‼︎ 多分、若菜も似た様な感じなんだろ?」

 

「さぁ? 本人の事は本人しか知らないもんですからね。取り敢えず渡しはします。ただ、彼がどう言う反応を返すかまでは保障は出来ませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何と言うか……随分と能天気な方でしたね」

 

「……馬鹿と言ってやれよ。専用機の情報なんて、そう大っぴらに他人に教える奴がいるかよ」

 

「……取り敢えずこの情報が正確かどうかはまだ判断出来ませんね。参考程度に留めましょう」

 

 一夏が帰った後、久里達は顔を突き合わせて会議する。つい先程、1組のクラス代表の一夏が8組に現れるのは流石に予想外だったが、久里の咄嗟の判断で上手く言い包めて一夏の専用機の情報を得る事に成功した。

 一応、以前のクラス代表の模擬戦の試合は見ていたが、後方での伽羅と若菜の物騒な会話の方に意識が持って行かれていた。

 

「完全近接オンリー。武装は『雪片弍型』のみ……それで単一仕様能力は『零落白夜』、と……確か単一仕様能力って」

 

「ISコアと搭乗者が完全に同調した時に発生する特殊能力……と参考書に書いていましたね」

 

「天瓦先生は、一次移行って言っていたが……何か別の理由があるのか?」

 

「……其処の点は篠崎さんに訊ねてからにしましょう。近接オンリーならば距離を取って制圧するのが1番、無難でしょうな」

 

「距離を取り続ける事も重要だ。相手も自分も動くんだ……距離感を見誤るとマズいぞ」

 

「其処の点も含めて訓練をしなければなりませんね。黒糖さんのみならず私達もいずれは達しなければならないのですから。天瓦先生はそのつもりでしょうから」

 

「ああ……。それもそうだな……‼︎ 漸く楽しくなって来たか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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