束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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へ、へるぷみー……

 

 

 

 鹿児島県、鹿児島市市民総合会館本館。

 今日から数時間に及び『インフィニット・ストラトスライセンス試験』の会場と使われる。

 そのライセンス取得の為に、大多数の女性達でごった返していた。自動車免許を取得する人数で溢れ返るかのような混雑具合となっており、玄関から外に至るまで長蛇の列を成しておりその長さは駐車場は愚か会館前の公道にまで達している。

 其れ程までに早朝から多数の受験者が殺到しており受付は既に大パンク状態となっていた。

 

「必要書類の提出をお願いします」

 

「此方が受験番号になります。本試験が終わるまで紛失しないようにご注意下さい。紛失されますと受験資格を失いますのでご注意を」

 

「筆記試験中に途中退出した場合は、辞退と見做され本日以後の試験は無効となります。お手洗い等は待ち時間内に済ませるようにお願い申し上げます」

 

 総合会館の玄関口では試験会場への受付口が設置され、其処で必要書類等の受理及び受験番号の配布、更に注意事項の説明が行われて居た。

 この時、ISライセンス取得の為に、宛ら就職活動と同様に書類選考の為に履歴書(・・・)の提出が求められるのである。

 当然ながら頭を悩ますであろう『志望動機』も書かなければならない。更に嫌らしい事に書類選考と本試験がセットで行われる為、『書類選考をパス出来なかった』と言う言い訳が通じない事である。

 

 受付で受験番号を受け取った受験者はその後、筆記試験が行われる多目的用途で使われる大部屋へと移動する。総合会館なので複数の部屋で同時に行われる。長い机が幾つも設置され受験番号に従った席へと案内され、開始時刻になるまでその場で待機となる。

 ライセンス試験の都合上、時間が切迫しがちな為、人数が揃い次第行われる。試験会場では静かに行動しなければ妨害行為と見做されその時点で本試験を受けられぬまま不合格を通達され、会場を追い出される厳しい措置が取られる。毎年、この形で不合格を言い渡される愚かな人間が一定数現れる。

 

「人数が揃いましたので、只今よりインフィニット・ストラトスのライセンス筆記試験を行います。係員が試験用紙を配布します」

 

 試験時間は50分。誰もが緊張して臨む時間帯である。開始時間がバラバラになりがちなので、その都度終了時間が告知される。

 

 筆記試験が終われば本館の西側へと移動。次に行われるのは技能試験、即ちISに搭乗しての実技試験が行われる。総合会館の1番大きい区画を用いての実技による操縦技術を見定める。

 ご存知の通り、ISコアには限りがある為、筆記試験と違い1度に複数人を対象に試験を行うには限界がある為、長時間の待ち時間が発生する事になる。

 1度に2、3人しか行えない為、結果的に翌日以降にも試験が長引く事になる。

 その為、会館の使用時間超過の場合にのみ、次の日に試験を持ち越す、途中退場が認められ、1日目は筆記試験、2日目に技能試験を受けると言う形式の受験者も多く見られる。

 

 技能試験を終えた後、総合会館の別館に赴く事になり、本試験で最も難題となる『面接』が待っているのだ。ライセンス取得の受験者の中で1番、忌避され、難関と言われているのがこの面接である。

 何故なら、面接官は女性では無く決まって男性で行われる。しかも本場の人事を担当する大企業、中小問わずのIS企業以外の一般企業の人事担当を担う皆様をわざわざお越し頂き行われるのである。この時点で女尊男卑予備軍の受験者は難色を示している。ISとは全く持って無関係な人間が最終関門を務めているのだ、ある意味では当然の反応かも知れない。

 

 そもそも、面接を突破出来るかどうかは面接官の気分や受験者との相性次第とは良く言われるのだが、この面接も例外ではない。

 何故なら、面接官達も本来の業務で忙しい中少ない時間を割いてまでお越し頂く為か、面接官は時間ごとに切り替わる。つまり、あるタイミングで面接官の面々が様変わりする事が発生する事となっている。

 

 面接を終えて漸く試験が終了となる。受験者数が膨大であるが故に合否判定は最低でも2週間は掛かる事になっている。

 然も本試験期間終了日から翌日からと言う計算となる為、結果的に人によっては3週間以上待つ事になる。また、合格者のみ連絡される形式となっており、一般的に4月に入っても連絡が無いと言う事は不合格であると見做される。

 この試験内容に不満を持つ受験者は数多い、時間が掛かる上に合否判定の結果待ちの中でイライラし易い傾向があるから尚更だ。

 

 更にコレがIS学園卒業生直後ともなればその焦燥感はより一層、強まる事になる。IS学園を卒業したから〜と言う選民思想的な優良措置は一切無い。

 何故ならIS企業ではISを扱うが故にテストパイロットの採用の場合、必ずライセンス所持者が必要になる為、この試験に合格しライセンスを取得出来なければ内定取消し、もとい選考の余地すら無くなる。そもそもそれ以前からIS学園の就職率が極めて低い為、そう言う意味でも死活問題だが、其処は当人の問題だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 受験シーズン真っ盛りの最中、若菜は伽羅の車で遠回りして今日の夕飯の買い物を済ませた後に何事もトラブルに見舞われる事は無く、ラビット・ラボラトリーに帰宅して来た。

 

「(゜Д゜)」

 

「母上。何ですか、その顔は?」

 

 帰宅して冷蔵庫に食料品を入れた後、リビングで茫然もかくやと言わんばかりの顔をしている束の顔を見て若菜は呆れて居た。

 その周りにはフル・カスタムの空間投影キーボードと多数の空間投影ウィンドウ。更には超大量と言っても過言では無い、大量の紙媒体の書類が山積みとなりリビングを占有していた。

 

「……あ、若菜君。お帰りなさい」

 

 その様子を見て居たら背後から声が掛けられた。振り向いた先には銀色の長い髪をした少女がいつの間にか立っていた。金色の瞳で日本人離れした容姿であった。

 

「シノア。コレはどう言う事なんだ? 確かにライセンスの選考は膨大っちゃ膨大だけど、母上のあんな顔を見たのは初めてだぞ」

 

「……あはは。実はと言うと書類選考の時点で不合格が決まっちゃっている人が余りにも多過ぎてお母様、失望しちゃっているんです」

 

 菟篠 シノア。

 それが彼女の名前である。若菜を始めとした篠ノ之 束が集めた子供達には全員『篠ノ之』の『篠』の字が当てられている。コレは通字の模倣の一種であり、束は苗字の方に通字として篠ノ之の篠の字を使う事にしたとの事。クロエに関してはこの事を思いつく前に拾ったから例外らしい。

 

「……半数以上が再受験者だからでは?」

 

 受験者に対して不合格理由の開示請求に応じる義務は無い。と言うのも不合格に至る理由は様々ではあるのだが、不合格の中で1番多い理由は束が毛嫌いしている女尊男卑思想である。

 

 筆記、技能の試験を通過しても最後の面接において『ISがあれば女尊男卑として振る舞う事が認められる』と言う魂胆が明け透けになるからだ。そう言う人間は相手が男性になると白地なまでに女尊男卑思想が表面化する。

 だからこそ、面接においては面接官は男性かつ大中小の企業の人事担当の方にお越し頂き本物の採用面接と同等以上の基準を持って選考を行なっている。

 人事担当は人の本質を見抜く玄人、このライセンス試験の面接ではより厳しく見定める事となっている。

 

 そして、不合格理由が女尊男卑関連であった場合、再受験しても必ず落とされる事になっている。束としてもそんな人間に我が子同然のISに触らせる事すら断じて認めたく無いからだ。

 故にその人間は何度受験しても1度たりともライセンスを手にする事が出来ない。勿論、この事実は公表されていないし、当人はその事実に気付くまで何度も受験を繰り返す事だろう。

 

 勿論、単純に筆記試験での点数不足、技能試験での練度不足が主な理由で不合格として落とされた場合、来年以降に再受験し合格出来るチャンスはある。だが、それらは少数派であり、不合格者の大部分が女尊男卑思想や不正行為による不合格が占めているのだ。

 何年経っても人間の愚かで醜い性根は変わらないのかと現在進行形で束は嘆き、あの様な表情を浮かべているのだ。

 

「……わ、わーくん……。しぃーちゃん……て、てつだ、って……‼︎」

 

 余りの酷さ故か、かの大天才である篠ノ之 束が想像だにしない声音で救援を求めて居た。何か口から白い煙……と言うか霊魂出てない⁉︎

 あの世紀の大天才を屠るのは武力でも何でもなく、人間の愚かさだと誰が信じようか⁉︎

 

「は、母上ェ⁉︎ なんか、壊れ掛けのロボットみたいな声音を出してるぅ⁉︎」

 

「…………そ、想像以上のヒドさだったみたい。若菜君、流石に見て居られないお姿だから手伝ってあげよう‼︎」

 

 その後、他の娘も帰って来て手伝う事で束の延命を図る事となった。

 

 

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