束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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製作者が歪んでいると作品もこうも歪むのか

 

 

 

 

《遍く全ては我が力に平伏すのみ》

 

 声が煩わしい。いい加減な事しか言わないであろうから無視しよう。しかし、どうするべきか?

 

 『白式』のコア意識は嘶いた直後、龍の姿らしく横殴りの高圧レーザーを放出して来るも、若菜は身を翻して躱し、接近して肉薄する。

 

『我が息子‼︎ 長女の意識体からVTシステムを切り離すんだ‼︎』

 

『最初、お姉様の各所に機械らしきモノが現れました‼︎ その箇所を攻撃して破壊、或いは剥離させれば解放出来るかも知れません‼︎』

 

 全身が黒化して場所は分かり辛いが流線的な体躯の一部が不自然に盛り上がっている箇所が見受けられた。ガイアが言うにはアレがVTシステムの基幹装置と予想される。

 

「試す価値はあるな‼︎」

 

 撃槍翼の爪先からの放出量を増大、更に加速し流星の如く突っ込む。

 

《神の如き存在、何人も触れるに能わず》

 

 その様子を黙って見るほど甘くは無く(とぐろ)を巻くが如く素早く身体をくねらせて猛加速した突撃を躱され其の儘、雲海の下へと突っ込む。

 

《神の翼。下等生物如きに追い付ける筈が無い》

 

 若菜が再び雲海から飛び出す頃には『白式』のコア意識体は颶風を纏いながらかなり距離を取っていた。行動自体が正に『女尊男卑』の思考其の物だ。

 

『『白式』の機体はキミ程では無いが機動力がウリの性能調整だ。搭乗者がボンクラではあるがコア意識の感覚だと強ち侮れんぞ』

 

「ほう……?借り物の翼で何処まで飛べるか見せてみろよ、VTシステムッ‼︎」

 

《弱者は神の力の前では等しく無力。万物が我が力の前に平伏すのみ》

 

 『白式』のコア意識体は大きく距離を取りながら射程外から遠距離攻撃で迎え撃つつもりの様だ。現に雲海から暴風が渦巻き複数の竜巻が発生しており、列を成して前進する。現実では複数の竜巻などこうして規則正しく前進する事などお目に掛かる事はほぼ無いだろう。

 

『お兄様。お姉様の身体が加速して遠くへ飛んで行きます‼︎ 正面から相手する気は無さそうですね……』

 

『VTシステム其の物が女尊男卑……いいや、女性権利団体の願望其の物だな‼︎ 言動や行動が正しくソレだ‼︎ 崇拝と言う概念はかくも恐ろしいモノだ……‼︎』

 

 ンなモン、邪教徒連中の所為で飽きる程思い知っているわ‼︎ コレだから宗教絡みは心底面倒臭いんだよ‼︎

 遠距離から自分は高みの見物……何時もの手だ。つーかシステム自体も女尊男卑思考とかワケ分かんねぇよ‼︎

 

「見るにも堪えんし、莫迦共の思考には付き合い切れん。一気に仕掛ける‼︎」

 

『娘よ、手を貸せ‼︎ ボクも長女の苦しむ姿はこれ以上、見たくは無いぞ‼︎』

 

『勿論です、お母様‼︎ 『ブルー・ティアーズ』の機体の管理権限を実行‼︎ ISコア・ネットワークを介して『ブルー・ティアーズ』の全てのシールドエネルギーをお兄様の『フォーマルハウト』へ譲渡致します‼︎』

 

 撃腕翼に赫い量子を瞬時に集束させる。更に『ブルー・ティアーズ』のシールドエネルギーをISコア・ネットワークを介してエネルギー変換した後に若菜へ過剰供給。

 撃腕翼の隅々から溢れ出る程の過剰エネルギーを一気に放出、暴力的で爆発的な加速を伴い赫い軌跡を引きながら飛翔。

 前方に形成された竜巻を斬り裂き、『白式』の意識体の尾の根元付近に付着していたVTシステムの基幹装置の1つを貫き容易く打ち砕いた。

 

《異常、発生……⁉︎ 馬鹿な……。この、至高の存在が、認知……出来ない…………速度、……だ……と……⁉︎》

 

《あり得ない……‼︎ そのような速度、下等生物如きが耐えられる重力負荷では無い‼︎》

 

《常軌を逸する……‼︎ 何故、下等生物如きが扱うと言うのか⁉︎ 何故、世界最強の護りを打ち砕ける⁉︎》

 

 VTシステムは困惑の声を上げている。随分と人間臭い人工知能である。だが、煩わしい声の1つが砕けたのは確かである。声の発生源はあの基幹装置らしい。

 

『妾■■■■■ッ‼︎ ■■■■■止■■■■ッ‼︎』

 

 別の声が轟き渡る。煩わしい声では無い。最初は識別出来なかったが一部分だけではあるが聞き取れた。

 

『お兄様、効果があります‼︎』

 

『我が息子‼︎ この調子でVTシステムを全て破壊しろ‼︎ さすれば長女は解放される‼︎』

 

 残る箇所は背中の部分と顎下の部分の2箇所。全て砕けばVTシステムは機能停止する筈である。

 

《許し難い……‼︎ 神である我が神体に傷を負わすなど不届の極致》

 

《想定外の損傷を確認した。敵対対象の脅威度をCランクからSSSランクへ再計算》

 

《掌握完了。現刻を持ってこの領域は我らが手中に収まる》

 

《されど如何なる存在も、我が至高の存在であるインフィニット・ストラトスに抗う事は敵わない》

 

 その時、成層圏を形成する領域が激しく震動を引き起こす。成層圏を模した世界がガラスの罅割れの如く割れ始めて行く。

 

「ん、何だ⁉︎」

 

『不味いな。長女が決死の抵抗をしていたんだが限界に達した。コアの意識領域が完全にVTシステムに掌握されてしまった』

 

 既にこの意識領域は敵の陣地に等しい。その癖、即ち『白式』の意識領域の主はVTシステムへと改変された事を意味している。

 

『これ以上、滞在するのはお兄様にとって極めて危険です。お姉様の事もありますが……此の儘ではお兄様も……‼︎』

 

『……何が起こるか全く予測出来ない。意識領域の改変に巻き込まれれば……元の肉体に戻れない可能性もある‼︎』

 

 全く持って迷惑千万甚しいシステムだ。何処の誰だ、こんな迷惑極まりないプログラムを造った馬鹿は⁉︎

 

「……チッ。こうなった以上は、逃げるが勝ちだ‼︎」

 

 流石に状況が悪い。三十六計逃げるに如かず。爆発的な加速を伴い若菜は『白式』の意識領域から離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ‼︎ チッ……予想以上に大事になって来やがったな」

 

 現実世界。第6アリーナの観客席。本来の肉体へと意識が戻った若菜は頭に手を当てながらそう呻く。時刻はもう直ぐ昼休憩の時間が終わりである事を示している。

 

『VTシステム……いや、OVTシステムか。想像以上に厄介だな……。よもやコアの深層、コア意識にすら干渉してくるとはな』

 

「『白式』にVTシステムが搭載されている……か」

 

 単純な話。『白式』を分解してOVTシステム自体を切除するのが1番簡単かつ確実な方法と言える。……だが。

 

「此方から干渉する理由が無い」

 

『そうだな。所有者は織斑 一夏。織斑と言う事はどう考えても政府絡みの案件となるだろうからな』

 

 仮に『白式』にOVTシステムが搭載されていると主張しても、情報源は何処から?となって来る。そうなると政治的問題が関与して来て面倒臭い事になる。そもそも地球人から見てISコアの自我意識は眉唾物と言う認識が強い。

 強硬策も無い訳では無いが……極力、穏便な方向で進めたい。

 

「……そもそもOVTシステムとか言ったか? 名称からVTシステムの発展系って奴だろうな……何処の誰だ?そんなシステム造った奴は?」

 

『情報が無さ過ぎる……。ファーストコンタクトと言ったが……アレでは手出し出来ないな』

 

「何らかの手を講ずる必要があるな。ただ、今は何も策が浮かばない。……その、『白式』のコアの事も気掛かりだが、コレばかりは直ぐには動け無さそうだ」

 

『……分かっている。引き続き情報を集めて手段を模索しよう。今は8組の人間達の訓練に注視するべきだろう』

 

「ああ、場合によっては……少々、荷が重いかも知れないが黒糖に協力して貰う必要があるかもな。そう言う意味ではゴールデンウィーク中の訓練に関して手は抜けないな」

 

 そう語ると、アリーナの方に戻って来た8組の生徒達の姿が見えた。

 

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