束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「午後からはいよいよ、武装を取り扱って貰うわ」
午後の時間。午前中と同じく全員にISに搭乗しての訓練に取り掛かる。
「貴方達の殆どが今日、初めて近接武装を手に取る機会になるでしょう。銃火器は教練が早いと言うメリットはあるけれど、日本刀や槍と言った近接武装は得手不得手が大きく反映されるわ」
銃火器も得手不得手がある様に近接武装も得手不得手が現れる。それでも銃火器の方がまた扱いが簡単とも言える為に先に銃火器の訓練を組み込んだ。近接武装による殴り合いと言うのは相応に危険であるからだ。
「ISじゃあ、日本刀は世界最強が活躍したが故に人気を集めているけれど……扱いが難しい武器である事を自覚するように。知識の無い者が扱えば攻撃可能な状態を維持する事も難しいわ。槍も言わずもがなって所ね。銃火器ならば距離を取り狙えば良いけれど、近接武装の場合は『間合い』の把握が必要になるわ」
伽羅は話を続ける。
「打鉄は近接仕様。対するラファールは遠隔仕様だけど、逆張り構成も出来なくは無いわ。まだ何方の戦術が噛み合うかまだ分かって居ないでしょうからね。射撃訓練の時と同じ様に一通り、触れてみなさい」
近接武装も射撃武装と同じく全員に一通り触らせて最低限、扱える様にする。扱える様になったら戦えるよう、活きるよう、その武装の威力を発揮出来る訓練を積む。勿論、得手不得手は出て来る。その中で得意な武装を見つける事も必要と言える。
「全てに言える事だけど、しっかり持ち、ちゃんと扱えるようになるまで訓練する。じゃないと怪我じゃ済まないわよ」
各人の体格や性格、性質によって適性のある武装は大きく異なる。
例えば若菜の場合は高速機動が主体で突撃して対象を地形諸共、粉砕する事が多い。生身では狙撃銃を主体としている。使う機会が少ないが癖の強い近接武装も備えている。
「講義は終了。後は習うよりも慣れなさい」
各人に武装が配られてそれらを用いて扱い方を学んで行く。まだ、機動からの攻撃に映る行為は難しい為に先ずは1つずつ習得して行く。
日本刀や槍、バタフライナイフと言った量産機では搭載頻度が高いモノから、薙刀やハルバード、身の丈程ある大剣、大型ハンマーやノコギリ、果てはチェーンソーと言った変わり種まで触らせた。
「……今日は此処までとしましょう。明日、今日の訓練を繰り返すからそのつもりで来なさい」
日が沈み夜の時間に差し込みつつある時間となり伽羅は訓練終了を告げる。正直な所、他のクラスでの1つの学期分の訓練を1日で行なって居たんじゃないのかと思う程の訓練量と言えた。
IS学園では本校舎内の大食堂。IS学園の生徒達は自炊するか大食堂で食事を取る。休日でも勿論、利用可能である。
現在時刻は午後8時頃、夕食の時間帯は過ぎていた為、大食堂内には遅めの夕食を取りに来た8組の面々しかいなかったら。
「……な、中々ハードな訓練でしたね」
「お前は身体が細いから、見ていて不安になったいたぞ……。ISのパワーアシストが無ければ持ち上げるのがやっとの様に見えたぜ?」
「……蕨は、出来るだけ安全圏から戦いたいなぁ」
「取り敢えず、皆さん。扱い易い得物は決まりましたかね?」
大食堂の大テーブルの一角にて、黒糖 久里は同席している面々に対して言葉を交わしながら夕食として注文したカレーを口に運んでいた。
「……俺か?殺し合うならば斬り合いたいね。日本刀かその辺を主体するさ。後はISの制御だな」
吉祥寺 紫苑。狼気質で我が道を征く性格。その性格からか灰色髪もあって如何にもキツい印象を周囲に与える。現代版、女侍と言った所か。
「……わ、蕨は遠距離から援護主体が良いなぁ……。銃で撃ってれば、まだ安心だしぃ……‼︎」
天草 蕨。8組の中では燐芽と並ぶ程の低身長(最も燐芽の方が異常な程に細いが)。日和見主義で、如何して8組で未だに生存出来ているのか不明。あの特別試験を合格出来た時点で何か可笑しい気がする。
2人とも、他クラスの情報を探って貰っているメンバーである。
「……私はまだ決めかねています」
燐芽の場合は体格の兼ね合いから軽量級の武装の中から選ぶ事になりそうだ。ISのパワーアシストがあるとは言え、武装が大きいと振り回される事も起こり得る。
「……そう言うアンタはどうするんだ?」
「近接武装と遠距離武装の両方を熟せるようにしたいですね。片方だけに専念すると言う案もありますが……やはり、苦手でもある程度は使い熟せる程度にはなっておきたい」
久里は中間択を選択した。どの距離でも対応出来る様に訓練する事を指標に定めた。
「……ふん。まぁ、まだ最初だしな。途中でやり方を洗練させれば良いだろ」
紫苑は脚を組み、久里の判断を品定めするかの様な目で見る。8組の面々はお互いどの様な裏があるのかは詮索はしない。
ただ1つ言えるのは、お互いがお互い何かしらの狂っている事を自覚している事だけである。
「まぁ……戦闘訓練なら俺も交ぜろよ。強くなるんならその土俵に居る奴に扱かれるのが1番だからな」
久里は若菜に戦闘訓練の協力を打診して居た。その訓練に紫苑も交ざる気の様である。性格がヤバそうな永世も断り無しに来そうではある。と言うか来る、確実に。
「……最もその状況を天瓦先生が利用して来そうですけど」
「あ、あり得そうだよぉ……」
確かにそんな面白そうな『展開』を伽羅が見逃すとは思えない。その状況を利用して又しても理不尽を仕掛けてくるかも知れない。……最もそれくらいしなけりゃやってられないと言う現実もある。
「どもども〜、新聞部の黛 薫子で〜す。話題持ち切りの2人目の取材に来たわ‼︎」
その時、大食堂に朗らかに響き渡る声が聞こえた。その声に紫苑は
「……うーん、今日も居ないかぁ。あ、貴方達って8組の生徒よね? 4月の内で10人くらい自主退学したって事で結構、異例な展開になってるし、2人目の篠崎君の事とか有る事無い事根掘り葉掘り聞きたいわ‼︎ 他にも8組は他のクラスと教育内容が違うって事でその辺も根掘り葉掘り」
自分達が8組の生徒だと気付いて近付くや否や捲し立てるかの様な口調で黛 薫子はメモを片手に迫り来る。どうしてマスコミと言う連中はウザい人間が多いのか。
「黙れ。その眼鏡を叩き切るぞ」
薫子の態度が気に入らなかったのか紫苑が如何にも霜刃の如き殺意が籠った目で一瞥しつつそう答えた。
「……っ‼︎」
その眼光を向けられて居ない筈の蕨も萎縮していた。見た目からして引っ込み思案の様に見えるし、彼女でなくても今の紫苑の目付きの悪さには冷や汗を流してしまうだろう。
「余計な詮索はしない事だ。その木っ葉みたいな命が惜しかったらな」
「え、えーと……じょ、冗談よね?」
「試して見るか? 一寸進みゃあ、テメェは肉片だ」
紫苑は食器の一種であるナイフを薫子の眼鏡の縁に当ててそう挑発した。眼鏡越しで見る紫苑の目は本気である事を物語っている。
8組は4月の時点で10人が自主退学を決断している異例の環境。専用機持ちと思われる生徒は件の2人目とその姉妹の菟篠 シノア。それ以外は一般人だと思われて居た。……だが、目の前の吉祥寺 紫苑は民間人とは思えない凄みを見せている。
「……え、えーと。ちょ、ちょっと……お暇させて貰うわね、あはは……‼︎」
紫苑の殺気に怖気付いたのか、薫子は持ち前の押しの強さを発揮出来ずに退散する事を選択せざるを得なかった。