束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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頑張った娘達には報酬と感謝を

 

 

 

 

 ゴールデンウィーク中、8組の生徒達は第6アリーナにて訓練に明け暮れた。歩行、飛行の基礎的な行動から各種、近接武装、遠距離武装の扱い方。発展型として飛行しながらの基本的な戦闘行動……。他の生徒達がゴールデンウィーク中で遊び呆けている間にも8組の生徒達は朝から晩まで訓練付けの日々が続いた。

 本来であれば余りにも短過ぎる期間ではあったが伽羅は叩き込めるだけ叩き込んだ。そして生徒達もその教練に喰らい付いて来た。普通であれば殆どが怪我や能力不足で脱落しても可笑しくない最中、8組の生徒達は誰1人として脱落する事なく完走した。

 

 

 

 

 

 ゴールデンウィーク最終日となる日曜日。

 日曜日は誰にとっても休息の日。理不尽の塊とも言える伽羅であろうと休息の概念はある。故にゴールデンウィーク中の訓練を頑張った8組の面々に対して伽羅は細やかながら、慰労会を行なう事にしたのだ。

 夕方から食堂を完全貸切状態にして余計な邪魔をさせない態勢を整えた状態で、である。

 

「さて、ゴールデンウィーク中、皆お疲れ様。本来であれば余りにも短過ぎる期間で、尚且つかなりの詰め込み染みた訓練スケジュールであったけど……皆、よく頑張ったわ」

 

 IS学園内の大食堂。

 テーブルにはバイキング形式で多種多様の豪華な料理が並んでおりかなりの大盤振る舞いであった。その御馳走の前で伽羅は音頭を取る形で伽羅は目の前に居る8組の面々に対してそう労いの言葉を述べる。

 大食堂と廊下への出入り口は防火防弾シャッターまで降ろされており外界とは完全遮断の状態。当然、現在の大食堂には8組の面々しか居らず煩わしい邪魔は入らない。貸切の件を耳聡く聞き入れた他の生徒達や何処ぞの新聞部は当然の如く閉め出されている。

 

「……基本的な事は一通り叩き込んだ。後は自分にとって何が必要で何が大切か、そして何が重要なのか見極めて伸ばす必要がある。

 画一的な教育と言うのはその者を消耗品としての在り方に甘んずらせる(・・・)やり方。私は貴方達にそんな末路を歩ませたくは無いわ」

 

 IS学園は過大規模校であるが故に生徒1人1人にISの実習教育が充分に行き渡らず初歩的かつ画一的な内容にならざるを得ず、そして最終結果は基礎内容に留まってしまう。

 指導出来る教員が少ないのもあるが、そもそも実機のIS自体も少ない。ISは数が限られている為に一概にIS学園のやり方が悪いとは言えないのだが。

 解決するにはIS学園の生徒数を削減しての少数精鋭で訓練密度と練度を高めると言うIS学園からすればかなりハードルの高い内容になる……。

 

「……とまぁ、難しい話はここまで。

 今日は訓練を頑張った貴方達へのご褒美として大食堂を貸し切ってのパーティを開かせて貰ったわ。費用の事に関しては一切気にしなくて良いわ。全部、私が持つから。それじゃあ、皆……楽しんで来なさいな」

 

 伽羅はそう告げた後、8組の面々の前から立ち退く。その直後、8組の生徒達はトレーを持ってバイキング形式で並べられた料理を次々と手に取って行き大食堂は穏やかで賑やかな喧騒に包まれた。

 

「さぁてと、久々にやってやろうじゃねぇの?」

 

 大食堂の一角。本来であれば何処ぞの有名デザイナーがデザインしたと言う良く分からないオブジェが置かれていた場所。其処には珍妙なオブジェの代わりに鉄板が乗せられた土台と言うお好み焼きやステーキを焼くかの様な即席の調理場が作られていた。

 その鉄板を見ながら指をポキポキと鳴らしながら若菜はそう咲う。

 

「……えーと、篠崎さん? 何をするつもりで……?」

 

 バイキング形式の大食堂の一角にて異様な光景が見えた為、料理を片手にした生徒達が何事かと集まって来る。

 

「何って、態々、焼肉の鉄板セットを引っ張り出してやる事つったら焼き料理以外に何があんだ? 母上は料理出来ねぇから、家じゃ専ら俺かユリエが食事作ってんだよ」

 

 久里の質問に若菜はそう言い拡張領域からギロチンの刃と思わしい豪壮な刃を取り出して再び拡張領域に仕舞う。

 

「……宇宙空間へと出る為ならば、出来る事を増やしておく……と言う訳ですね。当たり前が当たり前とは言い切れない……成程。まだまだ学び得る事が多いようです」

 

「ただ、強ければ良い訳では無いと言う事か。存外、厳しい世界だな」

 

「……ふぇぇ。上手く出来るかなぁ……」

 

「その内、サバイバル教養の一環として野生動物のジビエを作れと言われるかも知れませんな……」

 

「……知れば知る程、奥が深そうですね」

 

 取り敢えず篠ノ之 束は女子力が低いと言う明らかにアレな現実に関しては一同はスルーした模様。或いは気付かなかっただけかも知れない。

 

「つー訳で肉をこの場で焼くぞ。近付き過ぎて火傷しても知らんからな‼︎」

 

 若菜の警告すると、集まって居た面々が2、3歩程後退する。何をするのか分からないが……若菜の警告には従った方が良さそうなので、退がった。

 

 その光景を見た若菜は指を鳴らすと鉄板の頭上に巨大な肉塊が降って来て豪快な音が鳴り随意展開で拡張領域越しに断熱圧縮により赤熱化した撃腕翼の爪先を擦り火種に点火させ焼き始める。

 焼きながら先程に見せた分厚い包丁代わりのギロチンの刃で(然も持ち手は無く刃そのものを直接持っていた)スライスして切り分ける。当然、火加減を見つつ手際良く肉を返して行く。

 

「おお……‼︎ 尸狼さん、びっくりなのですっ」

 

「手慣れたモノですね……」

 

 肉汁が鉄板の上に滴り、湯気と共に焼き上がって行く。見るからに美味しそうである。

 

「ちっと、火傷するから離れてろよ‼︎」

 

 更に肉を手頃な大きさへと切り分ける。仕上げと言わんばかりに拡張領域から取り出したアルコール度数の高い酒の一種であるブランデーを振り分けた直後、鉄板の上を一気に炎上させるフランベで豪快に焼き上げた。一瞬で炎が巻き上がり——。

 

「「「ッ‼︎」」」

 

 炎が消えた立ち昇る煙と共に焼き上がったステーキを皿に乗せた後、8組の面々へと配るのであった。

 

「さぁ、食え‼︎ 他に喰いたいモノはあるか⁉︎ 焼き料理ならば今この場で作ってやる‼︎ アレも、ソレも」

 

 若菜は再びギロチン刃を展開してテーブルに乗せられた数々の料理を示す。その様子からこのパーティーで提供された料理の数々は若菜が作ったモノであると察せられた。

 

「万物畢竟(ひっきょう)。美味ければ世界(ルーツ)なぞ関係ない」

 

 若菜はそう述べた。何処で何を喰らおうがそれも真理であるからだ。……食事と言う欲望は排斥する訳には行かない観念であるが故に。その言葉をひぎりに次々と食べたい料理を注文する声が各所から挙ってあがるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どぉしてぇ、貸切状態なのよぉ……。8組勢揃いってなら、今度こそ2人目に突撃取材が出来ると言うのにぃ〜」

 

 防火防弾完備シャッターに前のめりに凭れる形で薫子は恨み言を吐いていた。天下のIS学園。備品に至るまで莫大な金を掛けている為に高々、小娘程度の腕力で破れる程、柔なシャッターでは無い。

 

「……1組の就任パーティの時は簡単に割り込めたのにぃ。如何して8組はこんなにもガードが硬いのよぉ」

 

 8組の生徒からは門前払い、2人目は遭遇する事すら叶わない。8組の担任教師は圧倒され、取り付く島も無い。

 

「だが、諦めては試合終了よ。まだ試合は終わっていない……必ず、必ずチャンスは巡ってくるわ‼︎」

 

 防火防弾シャッターに凭れながら、黛 薫子は決意を新たにした。……その姿は何処からどう見ても草臥れたゴシップ記者の姿にしか見えなかった。

 

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