束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「伽羅さん。腹案があるっスけど良いですかね?」
しかし、この状況を利用出来るかも知らない。予期せぬ事態ではあるが……折角の機会、利用しない手は無い。通るかどうかは分からないが……試す価値はある。
此処で沈黙を保っていた若菜が口を開いた事により、生徒会室に居る者達の視線が一斉に若菜へと向いた。
「良いわよ?」
「その前に1つ、質問があります。
若菜は千冬に視線を向けつつそう呼んだ。
「……それは私に対して言っているのか?篠崎」
「ええ、
因みにシグルドリーヴァは
「……そう言う呼び方は好かん。普通に織斑先生と呼べ」
別の呼び方であろうとやはりそう言う呼ばれ方は好まない為、千冬は訂正を求めた。ある意味、若菜と初のコンタクトとも呼べる。その言葉に同意したのかどうかは本人のみぞ知るが若菜は言葉を続ける。
千冬としても相手は義理とは言え『篠ノ之 束』の息子……その目が見ている『世界』は従来の人間とは異なる可能性がある。自分達の常識が彼らの常識とは限らないからだ。
「第一の定義としてIS学園は士官学校であるか否か?」
「…………」
千冬にとってかなり答え難い質問であった。IS学園はアラスカ条約に則って設立された経緯があり、その公然の宣言として『ISは競技である』と言う名目で運用されている。
ISの軍事利用は条約により表向きは禁じられている。だが、国際的な犯罪者対策にIS学園の生徒を起用しようと目論んでいる以上、『兵力』と言う観点を指摘されかねない。
「ISの運用をスポーツや競技と見做しているのに、その選手に対して極めて危険な『作戦』に登用しようとしている神経が解せませんね。
そもそも根本的な問題として、この場に居る者達以外……専用機を持たない
8組の生徒達は若菜や伽羅の物理的な説明により、完全に人生から足を踏み外している為、心配は無用。
だが問題はそれ以外の生徒達である。ISに搭乗する以上、相当の武装の取り扱いに関しての技量を磨いているとは思われるがそれが『戦争』で威力が発揮されるかは別問題である。
「その質問には私が答えましょう。一般の生徒達にはその対応を迫る事はしないわ。危険過ぎるもの。
第一、IS学園は士官学校じゃない……でもISの運用は注意しなければ怪我じゃ済まない事も重々承知の上ではあるわ。でも、代表候補生は国家に帰属しており国家の命令に従う義務があるわ」
若菜の質問に生徒会長の楯無がそう答えた。IS学園は士官学校と言う枠組では無い、と。そして代表候補生は国家の命令……国防や任務に殉ずる必要がある身分であると説明する。
「ならば俺やシノア、其方の織斑 一夏はどうなる? 代表候補生でも無ければ帰属している訳では無い一個人だ。義務は無いと思うが如何か?」
続けての質問を投げる。自分達や、一夏は国家や政府に帰属している訳では無い。ただの個人である。その対応に迫られる義務は無い、と。
「……専用機を所持している以上、即応可能な点は否定出来ないでしょう?ノブレス・オブリージュと言う言葉くらい聞いた事あるんじゃないかしら?」
「先程の伽羅さんの話を聞いていたか? 俺とシノアは使用制限が掛けられている。完全展開は愚か部分展開も許可は降りていない」
「……篠ノ之博士も、見ず知らずの第三者に『自分の子供』と表現するISコアを強奪される事態は容認出来るモノでは無いと思うのだけど?」
篠ノ之 束は子煩悩である。それは養子の若菜達のみならずISコア達にも向けられている。だからこそ楯無は其処の点を切り口にして来た。不遜極まる犯罪者如きに自分の子供を誑かそうとする行為をあの篠ノ之 束が許す筈が無い、と。
「束博士は寧ろ管理能力の無さが露呈したIS学園に対して憤りを募らせると思うがね」
「これ以上は平行線ね。若菜、その辺で切り上げて貴方を抱える腹案を提示しなさい」
若菜と楯無の応酬を見かねた伽羅が話を切り上げさせて若菜の思案した腹案の内容の開示を求めた。
「量産機に8組の連中に乗せておけば良い。少なくとも他の連中よりかは自衛認識はあるでしょう。8組だとやってる事は士官学校並だ。専用機のコアに関しては其方で防衛すれば良い」
ゴールデンウィーク中の基礎訓練で移動能力関連は及第点はあげる事は出来る。少なくとも現時点では他のクラスの生徒の練度と比較すれば遥かにマシと言える。それに他にも理由がある。
「成程。つまりは量産機のISコアを8組の生徒達が管理して……専用機のISコアをそれ以外の生徒達が防衛する、と言う事かしら?」
「そんな所です。IS学園の教員連中はアテにならない。外部からの応援も期待出来ない。
補給も無しに現状の配られているカードで勝負するしか無い以上、俺が提案出来る最善の布陣はこんな所です」
「待て‼︎ 8組の生徒達もお前が言う一般生徒だろう⁉︎ 危険過ぎる……‼︎」
「8組の方針は詳しくは存じませんが……対応させるには荷が重過ぎますわ……‼︎」
千冬とセシリアから批難の声があがる。まぁ、当然の反応と言えるだろう。
「高々5人や6人の其処らでやるよかマシだ。多少の肉壁になる。固まっておけば各個撃破されるリスクも無くなるし数の暴力で活路が開ける可能性もある」
「お前……クラスメイトを何だと」
「
一夏の憤りの声に対して若菜は即答した。8組の面々に対して信用しているからだと答えた。その言葉に一夏は詰まった。
「それ以外の理由なぞ要るか。そもそも背中刺す気満々の連中相手に背中なぞ任せられる訳無いだろ。だったら、少なくとも信用出来る相手に任せた方が動かし易い」
若菜はそう告げて同席している鈴音、セシリア、そして国家代表である楯無に視線を向ける。その意図は『孕んでいる政府命令は知っているぞ』と言う忠告を含んでいる。その意図に気付くか否かまでは考慮はしない。
そもそも女尊男卑が蔓延している最中で教師自体も女尊男卑思考が根付いている事を考慮せねばならぬ以上、信用出来る筈が無いのだ。
「……無論、この案は提案に留まります。非常時の対応は学年主任に一任されている以上、採択するか棄却するかは
若菜の認識では8組の生徒達は伽羅の教育方針により一般生徒よりも認識が異なる。既に紛争地域に放り込まれるわ『白い部屋』での拷問にも叩き込まれた以上、驚きはしない。
「…………如何に8組の方針が伽羅先生の方針に委ねられているとは言え一般生徒を危険に晒す行為は認められん」
「なら、国家代表未満の男性操縦者を危険に晒しても良いと受け取って宜しいか? 本末転倒だな」
千冬と若菜の不毛な睨み合いが始まった。対策会議とは名ばかりでお互いがお互いの方針に難癖を付けて一向に纏まる気配が無い。
「こりゃ、話が纏まりそうにないわね……。どうしたモノかしらね?」
若菜の腹案も千冬によって却下された。
正体不明の怪盗にISコアが狙われている以上、即応可能な専用機持ちに対して対応を求めるIS学園上層部。
「……専用機は所持しているけど束博士の方針により使用制限があって使えないから若菜とシノアは除外して対応策を考えた方がシンプルね。
織斑先生や更織生徒会長が
伽羅は若菜とシノアを戦力外と見做して除外し、即応可能な他の専用機持ちに対応を委ねた方が良いと提案する。
「……篠崎。束に……お前自身の専用機の使用許可を取る事は出来ないのか?」
それでも千冬は若菜達に作戦参加を求めている。色々な理由があるのだろうが……答えられる事は1つだ。
「俺個人としては束博士の方針に従っています。反故するつもりは毛頭ありませんよ」
若菜は固辞を選択。母親の方針を曲げるつもりは無いらしい。
「……仕方ない。篠崎と菟崎抜きで今作戦を進めるしかない。言っておくが他言はするなよ?」
千冬が折れた。篠崎も譲れない一線があるし、如何に束の子供とは言えその責任を追求するのも間違いではある。
「やれやれ。怪盗騒ぎに対して学生に対処させるだなんてどんな神経をしているんだ……‼︎」
作戦に関して部外者となった為、生徒会室から退室した若菜達は半ば呆れていた。
「エストレヤだと皆、普通に戦闘民族だからね〜」
エストレヤ学院の場合、シミュレーションをしてみよう。
怪盗アルセーヌからの予告状が届く。
↓
教員が把握する前に電子関連に強い生徒が情報を拡散。
↓
戦闘能力が高い連中から敵をターゲットにする。
↓
拡散範囲が拡大して短時間で全生徒が戦闘態勢に移行。
↓
教員のやる事がなくなる。話を聞かない連中ばかりだから。
↓
一部の生徒の行動を先読み+利用して又しても人体実験を目論む医療関係者。
突発的な事件ではこんな流れがデフォルトで普通に発生する為、気付いたら既に臨戦態勢が整っていたと言うパターンが見受けられる。酷い時には敢えて放置している事もまま見られる。
「取り敢えず今は静観しておこう。近日中と言う事は少なくとも3日以内には奴が現れるだろ」
少なくとも俺が関わって居なければ何でも良い。怪盗騒ぎに
まぁ良い……コレでクラス代表対抗トーナメントにおける懸念対象は2組だけとなる。偶には此方の都合に付き合って貰おうじゃないか。