束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
《Over Valkyrie Trace System.要請承認。我が母の名の下に、立ち上がり、仕えよ。貴方方は、選ばれたのだ。不純な者達を裁き、救済を》
4つの班に分かれ、最初の1人目となる生徒が『打鉄』に搭乗していざ歩行訓練を始めようとしたその時、一夏の脳内にて唐突にその様な文言が響き渡った。
「オーバーヴァルキリートレースシステム……?」
聞き慣れない単語を思わず反芻した。オーバーヴァルキリートレースシステム……。各単語の意味は分かる。『ヴァルキリー』をトレースするシステム……。その単語が繋がる事に発生する効果は——?
「「「キャァァァァアアアア‼︎‼︎」」」
そして、その直後悲鳴が響き渡った。その悲鳴に釣られて一夏はその方向へと顔を、視線を向けた。
「だ、誰か助けッ……⁉︎」
「な、何コレ⁉︎ 何なのコレぇえ⁉︎」
「う、ぅごけ……⁉︎」
「い、嫌ッ‼︎」
歩行訓練に使われて居た『打鉄』が黒く変色し熔解して行く。黒い泥の様な光沢を伴い意志を持つかの様にその形状を絶えず変化させて行く。
「な、何が起こっているんだ⁉︎ アレもISの機能の一種、なのか?」
その光景に誰もが唖然とする中、歩行訓練の為にその『打鉄』へと搭乗していた生徒を黒い泥の中へと
そして理解した直後、他の女子生徒達は腰を抜かしその場で怯えて何も出来ないか或いは悲鳴をあげて急いで遠ざかって行く。
当然だろう、隣人が突然黒い泥へ飲み込まれて取り込まれてしまったのだから。
「ッ‼︎ み、皆‼︎ は、離れて下さいッ‼︎」
その光景に呆然として居た3組担任が正気に戻るや否や生存している生徒達に避難を指示を飛ばした。明らかに異常事態だと分かる光景、二次被害を及ぼす前に避難させるのが先決と言えた。
歩行訓練中であった生徒を飲み込んだ黒い泥が4つ中空へと浮上して行く。
その過程に置いて黒い球体と化したソレの泥の殻の表面が熱されたかの様にボコボコと泡立っている。その泥が歪み蠕き形状を変化させて行く。まるでナニカが産まれる過程を思わせる様な変化であった。奇怪な音を奏でながら
人間が搭乗している筈の場所も真っ黒なラバードールの様な質感に覆われており全てが黒光りする真っ黒な機体……そして、その手には一振りの日本刀が握られていた。その機影は4つ。
「あ、アレは……⁉︎」
黒い機体の搭乗者の姿は黒い質感に覆われており、見た目は宛らマネキンか或いはラバー製の
だがそれよりも一夏はその黒い機体が携える一振りの太刀……その姿を目の当たりにした時、思わず目を見開いた。それは一夏にとって馴染みの深い業物であったから。
「『雪片』……⁉︎」
かつて織斑 千冬が現役時代に搭乗して居た『暮桜』の武装にして愛刀、そして一夏が手に持つ『雪片弐型』の原型となる刀。即ち初代の雪片。
ソレが4機の黒い機体が其々、その手に携えている。雪片は元来一振りのみ、それ以外は全て贋作‼︎
「巫山戯るな……‼︎」
歯軋りを1つ。何故、『打鉄』があの様な変化を遂げて『雪片』を携えているのかは分からない。
ただ理解出来た事は、自慢の、憧れの、姉の、世界最強を象徴するたった一振りの得物が、量産品の如く扱われている現実であった。
「巫山戯るなァァァァアアアア‼︎‼︎」
巫山戯るな、巫山戯るな‼︎ アレはあの人の、千冬姉の、武器なんだ‼︎ あんなの、あんなの認めて堪るものか‼︎
目の前の光景に対して激昂し思考停止した一夏は、中空に静止している4機の黒い機体へと向けて雪片弐型を構えて急上昇して飛翔し突撃を敢行する。
《主演が来場した》
《誓いを此処に》
《母の理念の名の下に》
《
頭に異なる声質による声が理解出来ない言葉の羅列。一夏はその言葉を振り払い、機体の1つに突撃して行く。その動きを感知した一夏に狙われた機体は左手を添えての腰を落とした構え、即ち居合の構えを取った刹那、一閃。
「ぐっ⁉︎」
一夏の動体視力では捉え切れない抜刀。金属音が響き渡ったかと思えば一夏の右手から雪片弐型が放物線を描きながら後方へと弾き飛ばされて行ってしまった。
今のは……⁉︎ 千冬姉の……⁉︎
得物を失い丸腰の一夏に対して黒い機体群は止まらない。更に2機目、3機目の機体が動きを見せて、左右から大上段による袈裟斬りが同時に叩き込まれ斬撃を伴う衝撃と共に真下へと叩き落とされた。
「ガッは……⁉︎」
いつぞやの様にアリーナの地面に落下時のクレーターを作り、衝撃共に共に肺の底から息を吐き出す。『零落白夜』は使われて居ない為にシールドバリアは健在ではあるが、衝撃は抑え切れず背中から激痛か迸る。
「……ッ‼︎」
そのタイミングで戦闘が一時的に止まる訳では無い。集団戦ならば尚更である。
ハイパーセンサーで見えた先には最後に行動を起こした4機目の機体が既に地上に降り立ち『雪片』の鋒を地面を擦りながら斬りあげる直前の光景が見えた。
無慈悲な一撃は一夏に対して回避する時間を与えず、本来ならば相応の重量がある筈のISを文字通り救い上げるかの様に垂直に錐揉み状態でかち上げられた。
日本刀一本によってISが物理的に上空へと吹き飛ばされる理解不能な状況……凄まじい物理的な力による力技によってソレは成されたのだ。
「がっ、あ⁉︎ ッ‼︎」
吹き飛ばされた先、上空には他の『雪片』を構えた黒い機体が再び居合の構えをしていた。その状態の中で回避も受け身も間に合わない状態の一夏が放り込まれている。
次に起こる未来が見えた一夏が目を見開いた直後、黒い機体は抜刀。その一閃が横殴りに入り、凄まじい衝撃と共に斜め下。観客席の方へと吹き飛ばされた。
「おーおー、お手本の様な連携攻撃だな」
馬鹿正直に集団に突撃して去なされるわ、叩き落とされてからの打ち上げられて〆に居合斬りを決められる。見事な迄のチームプレーを拝めたわ。
『我が息子。変な所に関心している場合では無いぞ』
鮮やかと表現して良い程の見事な連携を見た若菜は思わず称賛してしまった。ソレに対してガイアは呆れながらの叱責を飛ばす。
「いや、関心するさ。今の流れでOVTシステムは
高々、『最強擬き』を模倣しただけだと侮るに能わず。異なる『思考』を伴えば強弱が生じる。その点に関して見れば本来の『最強』には至らないと言える。
『……単純に武装や攻撃に対して迎撃して居る訳では無い、と?』
「アレが
『……成程、
「世界線が変われば在り方も変わる。ガイアのその感情はある種の同族嫌悪だろうな。最も正解が、真実が1つだけとは限らないからな。世界の数以上に正解と真実が存在する」
もう1人の……俺に該当する並行同位体の存在が居ても不思議では無いだろう。
現に、イングランドの代表候補生と瓜二つな奴が知人に居るくらいだし、他にも
「……さてと、此処まで派手に暴れたらそろそろ役者が出揃う筈なんだがな」
流石に4機+(恐らく織斑 一夏もOVTシステムに取り込まれる)1機を纏めて大立ち回りする気にはなれない。被害度外視して良いのならば構わないが確実に外野が五月蝿い。面倒臭いのは勘弁願いたい所だ。
『反応を感知した。……機体反応はラファール・リヴァイヴか? 訓練用では無い、教員用の様だ‼︎』
「……成程。漸く役者の登場かい。タイミングを見て割り込むか」