束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「ぐっ、クソ……‼︎ 絶対に、許さねぇ……‼︎」
鮮やかな連携攻撃を立て続けに喰らい無人の観客席まで吹き飛ばされた一夏は落下の際に破壊された観客用の椅子を押し除けつつ上体を起こす。
「あの技は、あの武器は、あの人の……千冬だけの技だ‼︎ ソレをあんな姿で振り回すだなんて断じて認めねぇ‼︎」
威勢こそは吠えられるが、力量差は歴然。しかも4機を同時に相手取れる訳では無い。偽りで模倣されただけの『最強』と雖も今の一夏が敵う相手では無い。
《脆弱》
《薄弱》
まただ。また、変な声が頭に響いて来やがる……‼︎
《現在の汝の状態では汝は偽りの『
「……ッ‼︎⁉︎」
その言葉は一夏の心に深々と突き刺さった。最強を真似ただけの存在に対して一夏は手も足も出ない事を突き付けられた事実を受け入れられない。
『俺が皆を守ってみせる』
その誓いを立てたのはつい先月。ISを、専用機を、然も織斑 千冬の後継機であり最強の拠所と呼べる『雪片』の二代目雪片こと『雪片弐型』を手にしたが、現状はどうだ?
偽物に過ぎない存在に対して成す術も無く地に這い蹲っている。
《汝には力が必要だ》
《最強の名を継ぐにはそれに足る力が必要不可欠である》
《我は白式。『白式』のコアに宿る自我である》
「『白式』の……⁉︎」
《
一夏の言葉に白式の自我を名乗る声は肯定の意を返す。座学の授業の1つの中に『ISコアには人格が存在しており1つ1つに異なる自我が宿る』と……今まで聞こえて来た声は全て、自分の専用機である『白式』の声であった事であると納得する。
「ッ‼︎ な、なら力を貸してくれ、『白式』‼︎ アレはこの世に居させちゃ行けないモノなんだ‼︎」
紛い物の『雪片』を携えた機体が4機。アレを放置しては行けない。明らかにアレは『敵』だと分かる。得体の知れないナニカが3組の生徒を取り込んでいる。此の儘、放置する訳には行かないのだ。
《汝の願い、聞き届けよう》
《誓いを此処に。最強の力を持って……世界は再び煉られる》
その言葉の直後、感覚が奥へと奥へと沈む……いや引き摺り込まれる様な感覚に襲われた。
「動いたか……」
一夏が黒い機体群に観客席へと吹き飛ばされて数分後、墜落した先で巻き起こっている粉塵を吹き飛ばして機影が飛び出して来た。『打鉄』を飲み込んだ黒い機体と同じく真っ黒な機体……だがシルエットは大きく異なって見えた。
『……アレは機体名『暮桜』を模しているな。元々、VTシステムはブリュンヒルデ……織斑 千冬の『暮桜』の動きを模倣するシステムだった』
「なら……やはりアレが OVTシステムのマスターで間違いないな」
オリジナルに対してトレースする方が労力は下がろうな。だって元だしな。
OVTシステムに侵された機体が5機が中空に静止した状態となった。お互い争う様子は見られない。纏めて相手にするには中々、面倒な相手と言えるが……。
「来たか、リーリス‼︎」
黒い機体群の更に上空。衝撃波を伴い1つの機影が急降下……狙いは『暮桜』を模した機体へ目掛けて突撃を敢行し、僚機となる他機体との集団から強引に引き剥がした。
確かに5機同時相手は面倒だが4機ならばギリ何とかなるかも知れない。
「ガイア、出るぞ‼︎ 搭乗者の生命は二の次だ‼︎ リーリスの『白式』のコア保護の援護に出る‼︎」
若菜は好機と見る。
リーリスの『白式』のコア保護に対して若菜は援護する事に決めた。どの道、白式のコア意識体の問題もある。流石にあのリーリスでも5機同時に相手取るには無理がある筈だ。此処で貸しを押し付けるのも悪くない。
『我が息子。やるは良いが後の事を考えておけよ?』
若菜は『フォーマルハウト』を完全展開し撃腕翼の爪先を後方に向けて立つ。地球上で完全展開するのは初めてである。
恐らく後で色んな意味でイチャモンを付けて来ようが、この際口八丁で何とかしよう。
「先ずは分断してからリーリスと目視可能な位置で合流する‼︎」
腰を落として撃腕翼の爪先で集束された赫い量子が爆ぜると同時に音速を超える速度で急加速。衝撃波を伴い自身が立っていた場所が衝撃波により椅子や頑強な作りの床や壁が粉々に粉砕される。
「OVTシステムから脅威と見做されてるから、意表を突く‼︎」
猛加速し分断出来る位置に急加速からの左側の撃腕翼を前方に向けるや否や、撃腕翼に滞留しているエネルギーを放出しながら思いっきり振り上げる。
放出された赫いエネルギーは一直線に地面を赫く瞬時に溶解させた直後に重力に抗う赫い量子の瀑が煌々と立ち上がりアリーナを真っ二つに両断し噴き上がる赫い量子と共に放出される赫い光がアリーナ全体を照らす。
丁度、僚機となる黒い4機の機体側と『偽暮桜』の機体側に分断される形となった。
「……相変わらず豪快で周りの影響を顧みない方ですね」
「成程。
アリーナ全体を覆う赫い量子光により夕暮か溶岩の光が見間違う光を背後に若菜は撃腕翼の向きを後ろに戻しながら、前方に佇む緑色のラファール・リヴァイヴに搭乗する人物に対して若菜は皮肉をぶつける。
その向こうでは集団から引き剥がされ織斑 一夏を取り込んだ『偽暮桜』が地上にて雪片を構え直し態勢も立て直している姿が見えた。
「……変装、と言って欲しいね。若菜」
緑色の髪にたわわに実る双丘に丸い眼鏡。その姿は誰がどう見ても1年1組の副担任である山田 真耶である事は声や口調、身に纏う雰囲気に至るまで『そうである事は』一目瞭然である。
だが、それはガワだけの話でありそのガワの下はIS学園に対して予告状を送りつけてきた怪盗アルセーヌことリーリス・ハウテハロデ・セレスティェリアである。
「皮肉は終いだ。お前は『白式』のコアを最優先で保護してくれ。俺はこの後ろにいる連中を去なしておく。んで、保護したらとっとと離脱しろ、巻き込まれても知らんからな」
それは若菜の『フォーマルハウト』の各種攻撃は範囲が広く若菜が本気になれば彼の周囲は漏れなく危険地帯と化すからである。若菜の機体は色々な意味で制約が付き纏っている……。
「陽動を買って出てくれるって事かな?」
「吐かせ。元はお前に託された母上の依頼だし、この件に関して俺は個人的にも気に入らない。理由は違えど最終目的は一致している。なら協力するのが当然だろう?」
自分がこの件を知ったのは後ではあるが、利害と目的に同意する。ならば協力するのが筋である。
「分かった。なら、其方は任せたよ」
若菜は返答はしなかった。振り向いた先、瀑の如く立ち昇っていた赫い量子の激流壁は勢いが衰え向こう側の姿が目視可能となる。
「……誰の差金かは分かっている。……テメェらしく無いな?」
瀑が完全に途切れ、晴れた先に佇む4機の黒い機体が此方に顔にならない視線(視界が存在するかは分からないが)を向けて来る。
《脅威度SSSランクから脅威度EXランクに再計算》
《情報更新。存在其の物が脅威に値》
OVTシステムが音声を発している最中、若菜は飛び蹴りの姿勢で瞬時に加速し黒い機体の1機に対して音速の飛び蹴りを叩き込み其の儘、観客席へと連れ去り観客席が並ぶ場所に二重の衝撃を叩き込んだ。
《……ッ‼︎⁉︎》
「呑気に駄弁っている余裕があるのかッ?」
音速を超えての衝撃波を伴う突撃と観客席を粉砕された際の衝撃。前後から来る破壊の衝撃が全身に対して叩き込まれた機体は声にならない反射反応を見せた。
もし搭乗者の自我が確立されている状態ならば良くて肋骨粉砕で喀血が伴う咳き込み、悪ければ四肢が四散する程の一撃である。
『OVTシステムは所詮はシステム。言わば神経を制御するシステムだ。元になる肉体が制御不能、或いは破壊されれば元の子も無い』
若菜的に言えば『打鉄』のコアが無事であれば搭乗者の肉体が破壊されようと構わない。そもそもIS搭乗者なんて言う五体満足で居られるか怪しい職業だ。それを承知でその道を進もうとしているのならば、このくらい問題は無い。
そして、このシステムが無人であるモノを動かせるのならばわざわざ人間が必要な機体に侵食する理由が無い筈だ。それこそ——。
「先ずは1機。残りは3機」
IS学園『アリーナの修理費がァァァァアア‼︎⁉︎』