束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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駆除すべき害獣め……‼︎

 

 

 

 取り敢えず先ずは1機……。 OVTシステムが搭乗者の身体保護機能やシールドバリアの有無の考慮をしているかどうかは確認のしようが無い上に余裕も無い。……まぁ、コアが無事であれば搭乗者の背骨が砕けようが知った事では無い。

 

『流石に一撃で1機を沈めれば完全に注意は此方に向く』

 

 先手必勝で4機の内、1機を沈めた。一撃で最強を宣う存在を粉砕する奴を放置した状態では偽暮桜の援護には回れまい。

 そうすればリーリスも其方に意識を割かずとも動き易くはなる。最もちょっとした弾みで横槍が飛び交う恐れはあるが。

 

「……如何かしたか?まさか最強を象っている癖に怖気付いた訳じゃあ無かろうな?」

 

 無機質な黒い機体相手に挑発。本来であれば全くの無意味な行為だ。だが、OVTシステムはやたらと人間臭いアルゴリズムが組まれている。実際に図星を突かれたような反応を僅かに示していた。

 

「そんなんじゃあ、俺を殺すには遠いぞ?」

 

 刹那、若菜は黒い機体の眼前へと肉薄していた。音を置き去りする程の速度で肉薄、伸長させ下部が赤熱化した大剣の様に変形させた右側の撃腕翼を大上段から叩き込む。

 だが、最初の不意打ちを受けてから臨戦態勢に入っていた黒い機体は雪片を構えて受け流しの構えを取り、甲高い金属音と共に火花が散ると同時に雪片の刀身自体も熱されて行き煙を上げながら赤熱化し始めて行く。

 

《バカな……⁉︎ 最強の力が……⁉︎》

 

《有り得ぬ、有り得ぬ‼︎》

 

《……か、下等生物如きがその温度に耐え切れる筈が無い‼︎》

 

 その現実が受け入れ難いのかOVTシステムによる驚愕の声が公開通信を介して若菜の脳内に響き渡るや否や、速やかに距離を取った。

 

 撃腕翼は最初の強襲時における超が付く程に猛加速した際に生じる断熱圧縮により超高温と化しており、撃腕翼に触れた金属は場合によっては溶断されてしまう。流石に触れた瞬間に溶解とまでは行かないが、コレが人体に振るわれるとなると話が別である。

 如何に多種多様の衝撃から搭乗者の身体を保護するシールドバリアや絶対防御と言えど摂氏温度1,000℃を軽く超える超高温の撃腕翼に対して防ぎようが無い。

 

 若菜の『フォーマルハウト』は移動する際、殆どが瞬間移動や超音速による飛行が殆どの為、必然的に断熱圧縮により撃腕翼が超高温化しており、それを物理的武装として振り回す……。

 それは地球上の常識では余りにも危険極まりない為、危険であるとして束により使用制限が設けられていた。

 

 

 

 

 

《しかし、如何に得物が長大と言えど間合は我らが領分》

 

 撃腕翼は危険であると判断。

 OVTシステムの分析では確かに撃腕翼を用いた高速飛行からの突進や得物の如く振るう行為は正に脅威に値する。だが、その得物に対して若菜自身は非武装に思われる。巨大な腕に恐れる事無く懐に飛び込めば活路はある。逆に距離を取れば反応速度を上回る速度で肉薄からの突進により粉砕され、撃腕翼の攻撃に晒される。

 撃腕翼はその図体に相応しく大振りな分、至近距離では死角が生じると分析。ならば肉薄してからの格闘戦ならば此方に分がある。

 

 撃腕翼の一撃を退けた機体が後退すると同時に後方に控えていた別の機体が瞬時加速で『雪片』を居合の構えにて若菜へと肉薄する。

 対する若菜は撃腕翼を伸ばし切っており、反対側の撃腕翼は姿勢を制御する為、後方に向いている。即ちこの瞬間、明確なる『隙』が生じている。

 

 煌めくは一閃の抜刀。

 

 紛い物とは言えど、一振りの太刀で頂点に登り詰めた達人の剣閃を、捉える事など不可——。

 

遅過ぎる(・・・・)。居合の速度にしちゃ、余りにも遅い。小夜の方が5倍速い」

 

《何……だと……⁉︎ 何だ、その武装は……⁉︎》

 

 抜かれた雪片の刃は、両刃が挟み込む形で抑え込まれ受け止められていた。

 特徴的な柄、否……その持ち手からして洋鋏の形状した得物として使用するにはかなり特異的と言える。黒い本体に桜色の両刃の刀身を持つ大きな鋏。

 若菜は片手で持ち手を挟み込む様に持って黒い機体の持つ『雪片』と拮抗している。

 

「見ての通り、大鋏だが?」

 

《そのような玩具に……‼︎ 最強が止められるものか……‼︎》

 

 世にも珍しい太刀と大鋏による鍔迫り合い。

 

「玩具呼ばわりとは失敬だな? ちゃんと『宵咲』と言う銘があるんだよ」

 

 鍔迫り合いの拮抗を破ったのは若菜。手首を捻り黒い機体の持つ『雪片』の向きを変え其の儘、『雪片』をあらぬ方向へと放り投げると同時に左手を振り下ろす。

 

《なっ……⁉︎》

 

 左手を振り下ろす途中、左手には既に『宵咲』が握られていた。IS操縦技術の中で有名な高等技術の一種である『高速切替』を用い姿勢による隙を潰しての袈裟斬りの一撃が黒い機体に叩き込まれる。

 

「嘆息している暇、あるのか?」

 

 前傾姿勢で尚もフリーであった左側の撃腕翼が閉じた状態で伸長され長大な槍と化した一撃にて動揺した黒い機体を貫通させ串刺しにした。取り込まれた搭乗者の身体や生命に関して一切の配慮が見られない無慈悲な一撃を。

 

《その体勢で攻撃に移れるか⁉︎》

 

 侵食した搭乗者の肉体が貫通される一撃を喰らってもOVTシステム自体にはダメージは入らない。だが、明らかに左側が前傾姿勢として姿勢が傾いている状態でこの攻撃は無理がある。

 

「思考の差異、とでも答えてやる‼︎」

 

 シールドバリア。

 本来の想定では外部からの耐衝撃としての身を守る為のエネルギー性質の防御機構。女尊男卑の者共はその存在故に絶対的な優位性を誇り傷が付かないが故に最強の兵器として宣うに至る最大の要因。

 だが、若菜はソレを防御として使わず攻撃の基点として用いた。

 

 即ちシールドバリアを『地面』と見做して足裏に遠隔で随意展開する事である。

 

 移動、打撃、斬撃、射撃etc……。人間が元来、行動する際には殆どの場合、足裏で地面を蹴ると言う行為を行う。

 戦闘における地面と足裏の関係は浅いモノでは無い。

 

 例えば打撃や斬撃と言うのは、足裏が地面にしっかりと設置していれば反力を其処で堪える事が出来る。『構え』と言うのは足裏にも関係がある。攻撃する際に姿勢を保ち堪える力が無ければ威力は大幅に減衰してしまう。

 

 打撃や斬撃をすると言う事は、相手を押すと言う事になる。当然、押せば反力が此方にも伝わり相手が硬ければ押し返されてしまうだろう。だが足を付け、正しく踏み込めば武器と膂力の全てを叩き込めるし、自身が押し返される事は無いだろう。

 

 しかし、コレが空中で行うとなると容易い話では無くなる。放たれる銃撃による銃弾と同じで、踏み堪える事が出来ず相手の防御力が此方の突進力を上回れば跳ね返されてしまう。故に空中では速度に頼り振るう力を増大させる必要が生じる為、大振りなモノになりやすい。

 

 だが、空中では反力を堪え受け流せる状態、そしてその角度が自在となれば、元来不可能な姿勢からでも反撃や一撃を繰り出す事が可能となる。

 

《……ッ‼︎ 無茶苦茶な奴め……‼︎》

 

「ありがとよ、褒め言葉だ」

 

 黒い機体を串刺しにした状態で撃腕翼を振り回し遠隔で『壁』として随意展開したシールドバリアへと叩き付け自身が展開したバリア諸共粉砕し、眼下のアリーナの観客席へと投げ捨てる。

 

「おい、律儀に出待ちすんな。さっきやってみせた惚れ惚れする連携プレーは何処行った?」

 

 2機撃破。残るは2機、片方は万全の状態だが片方は『雪片』の刀身が赤熱化した撃腕翼の一撃で刃毀れを起こしている。

 

《……やはり世界最強程度(・・)の模倣では貴殿の相手にならぬか》

 

《所詮は紛い物……素体が素体では1割も引き出せはしないようだ》

 

  OVTシステムが神妙にそう告げる。取り込む対象が余りにも脆弱な個体であった為に想定の1割すらも発現出来なかった事を告白した。だからどうしたと言いたいが。

 

「……ほう。奥の手でもあるとでも言うのか? 猿真似と侵食以外にも取り柄があるとでも?」

 

《……貴殿を下等生物と侮っていた事を訂正し、詫びよう》

 

《貴殿は……我が母にとって災害(Disaster)であり駆除すべき害獣だ‼︎》

 

 

 

 

 

 黒い機体が再び黒い泥へと崩れ落ちて行く。先程、撃墜した2機も同様に黒い泥へと溶解して行き、再び浮上して行く。

 

『……我が息子、気を付けろ。何か企んでいるぞ』

 

「ソレよりもリーリスはどうした?」

 

 ハイパーセンサーで確認するもリーリス本人と『偽暮桜』の姿は確認出来ない。戦闘しながら移動したのだろうか?

 

『……移動したのだろう。彼方は彼に任せておけば良い。今は目の前の事象に専念するべきだ』

 

 黒い泥の塊が4つ。それらがお互い集結して合体して1つの大きな泥の塊と化した。表面が煮詰められたかの様にボコボコと泡立っており奇怪さに拍車を掛けて行く。そして異様な迄に巨大化して行く。

 

「…………成程、そう来たか」

 

『……フィーリリアが良く遊んでいるゲームとやらのボスキャラの第二形態って奴か?』

 

 若菜は『宵咲』を肩で叩きながら顕現したその存在を見上げてそう呟いた。ガラでは無いが宛ら魔王に挑む勇者の様な気分だった。

 

 

 

 

 

 

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