束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「それでは状況を説明するわ」
一方、その頃。8組の教室。
若菜達が教室を離れて生徒会室にて機密作戦の説明から離脱して以降、8組の生徒達は射撃場にて自主訓練に励んでいた。そんな折に伽羅が8組の生徒達の前に帰還し、8組教室に集合させた後に唐突に状況説明を始めたのだ。
もう無茶苦茶な指令に関しては今更感が拭えない為に誰1人として文句は言わなかった。
「現在、若菜がOVTシステムに侵食された量産機群と第2アリーナにて交戦中。それ以外だと現場に駆け付けた山田先生が同様にOVTシステムに侵食された男性操縦者、織斑 一夏の機体『白式』と移動しながら交戦中。
貴方達には若菜と山田先生の支援及び援護を行なって貰うわ。
もう何人かは察していると思うけどコレは訓練では無い、文字通り貴方達の現実の片鱗に過ぎない」
余りにも到達な状況説明。だが、各種訓練から何れは訪れる事は予見はされていた。始まりはいつだって唐突に訪れる。わざわざ予告なんてモノはしてくれないのだ。
「天瓦先生、OVTシステムとは何ですか?」
その証拠にクラス代表を務める黒糖 久里が開口一番に根幹部分に質問を投げ付ける。
「その前にそのシステムの元となるVTシステムの説明から必要になるわね。VTシステムとはヴァルキリー・トレース・システムの略称。過去のモンド・グロッソ優勝者の戦闘方法をデータ化し再現、実行するプログラムシステム。
束博士から見れば『不細工なシロモノ』と断言される程の欠陥システム。何故なら搭載された機体の搭乗者に対して肉体に掛かる負荷が甚大であり、生命の保障が為されない欠陥品。当然、システムが起動中は搭乗者の意思は無視されプログラムに則った行動が優先される。
OVTシステムはその発展、或いは強化系と思われるわ。その詳細は不明よ」
「経緯は?」
続いて金子 燐芽が発生経緯を訊ねる。
「第2アリーナにて3組が4機の『打鉄』を使用しての実技訓練中。『打鉄』に秘密裏に搭載されていた『OVTシステム』が起動、暴走。
同時に特例措置で3組への実技訓練に一時的に参加していた織斑 一夏の『白式』にも搭載されていたらしく、呼応する形で発動、暴走したわ」
現在、『白式』と真耶は第2アリーナ外に出て交戦区域を移動しながら交戦中。現在、無人の第3アリーナに縺れ込み戦闘継続中との事。
「『何故』、『このタイミングで』、『トリガー』は全て不明。ただ発生した事は現実よ。そして、若菜がその場所で内偵活動をしていた理由は……まぁ、其処は良いでしょう。本人のみぞ知る事でしょうから」
若菜がその場に居合わせていたかについてはご丁寧に『どうでも良い』と切り捨てた。参謀役が現場に出てはならないと言う決まりは無い。
「オレ達が対処する理由は?」
次に吉祥寺 紫苑が自分達が動く理由を聞く。
「簡単な事よ。貴方達に訓練では無く実際の作戦行動に慣れさせるのと、IS学園に『貸し』を作る為よ」
8組とそれ以外の1〜7組は隔絶された差が生じつつある。教育課程、練度、そして理念に至るまで……IS学園内に『異なる集団』へと変異を遂げようとしている。
「後々、煩わしい展開になるのは予想出来る。ならば、先手を取って『手出し出来ない』状況を作っておく。情報戦もそうだけど、将来において交渉面の状況構築も必要な素養の1つ。良く覚えておきなさい」
IS学園よりも先んじて『状況』を制圧、或いは貢献すればIS学園、或いは上層部も手出しが難しくなる。若菜達もそうであるが、8組の生徒達の未来の事も考えて伽羅は今回の件への介入を決断した。
「……成程、面白い話だ。確かに邪魔されるのは鬱陶しいな。此処でデカい借りを作らせるのも悪くないな」
紫苑は口の端を釣り上げて嗤う。学園内と言うのは比較対象にされがちだ。こと、IS学園だと代表候補生や専用機持ちと言う明確な『優位性』が発生している為にクラス単位での比較が発生する。
他のクラス間との状況は異なるが迂闊に手出し出来ない状況を作れば動き易くなるだろう。
「……使用火器類は?」
鶴喰 永世が使用武器についての質問をした。
「本来の想定よりも早いけれど、貴方達の為に携帯装備品を用意したわ。射撃訓練、実技訓練を通して貴方達の身体に適応した使用武器を用意した。各種装備に関しての費用に関しては問題無いわ」
IS学園予算を横領したからと、割と洒落にならない言葉も付随していたが、全員敢えて聞き流した。各人が射撃訓練やISの実技訓練にて1番手に馴染む火器類を用意したとの事。不備があった場合の代替品を用意する余裕は無い為、今回はこの銃火器を手に作戦に臨めと通達。
「OVTシステム搭載機体の搭乗者についてはどうなるのでしょう?」
泳 尸狼が今回の件の要因対象の搭乗者の生死に関して質問する。存在感が無いのだが伽羅はちゃんと認識している。
「現時点では安否不明。生存可能かどうかも不明。場合によっては殺処分も視野に入るわね。最も、OVTシステムが齎す身体的、精神的影響に左右されるから、状況によっては貴方達の手で引導を渡してあげなさい」
殺してあげる事もまた慈悲である。特に自死出来ず苦しみ続けている者に対しては、それが顕著に現れよう。
「斑分けは?」
1番重要な点。誰が何処を担当するのか、天草 蕨が質問を投げる。決して何方が楽なのかを聞いている訳では無い。
「基本的に若菜の方が危険性が高いわ。恐らく随分とハッスルしている事でしょうから。生半可な距離では彼の攻撃の巻き添えを喰らいかねない。そうね……敢えて表現するのなれば『人の形をした災害』ね」
ヒッデェ言われよう。
若菜の専用機は基本的に束から直々に『使用制限』が設けられている。本来、ISは量産型の時点で凄まじい火力、機動力を有しており更に火力や機動力、防御力が高性能な専用機も存在するが、使用制限の措置はされていない。それらに対して若菜の場合は、使用制限が設けられていると言う事は凄まじい能力を擁していると考えられる。
「でも……
だがそれでも、伽羅は若菜が及ぼす周囲への被害を『その程度』扱いであり尚且つ、戦闘環境扱いの認識である。寧ろ若菜が齎す影響力を8組の生徒達の力量を判定する試金石の様に認識している。
「かと言って山田先生の所も、安全とは言い難いわね。搭乗機体が教員アセンの『ラファール』、飛翔する武器庫の異名を持ち、熟練の搭乗者が扱えば大地を燎原と化する戦略爆撃機と化すでしょう。宛ら爆撃の
安全な作戦など存在しない。命を顧みない行動は何時だって危険と隣り合わせなのである。
「……ただ、注意点として量産機の投入は出来ないわ。と言うのもOVTシステムが起動したのは訓練用『打鉄』でありそれ以外は『白式』。
『白式』は兎も角、他の訓練用の機体にも同様のOVTシステムが搭載されていないとは限らない」
「……成程。量産機で加勢しようとしても却って危険を齎す羽目になると言う訳ですな」
連鎖起動でより戦況が混沌と化せばより危険な状況に陥りかねない。それならば生身での援護を優先した方が良いだろう。
「何方の援護をするのかは貴方達各自の判断に委ねるわ。状況説明は以上、教室の後ろに各種、銃火器を配置しておいたわ。それを使用して作戦行動開始。
最後に同伴しているインカムを通じて各自、通信を怠らないように。そして、負傷や継続困難と判断したら速やかに撤退、離脱しなさい。もし、判断に困ったら自分を優先する事、良いわね?」
「「「はいっ‼︎」」」
伽羅の言葉に対して8組の全員が威勢の良い返事を返した。げに恐ろしき事はこの場において誰1人として、危険な作戦に対して尻込みや辞退すると言う概念が浮かんでいない事である。
「良い返事よ、それでは作戦開始」
その激と共に8組の生徒達は教室後ろに置かれたケースから新たに用意された銃火器を手に取り、軽く動作確認を行った後に移動を開始する。後に残されたのは伽羅とシノア、フィウの3人である。
「貴方達は別の作戦を授けるわ」
「「はい」」
「……若菜が裏でコソコソと何かしていた様だけど、それに付随して他の動きが発生している可能性があるわ。使用許可に関しては私から束博士に取り継いでおくわ」
「……分かりました。もう、若菜くんったら、私達に隠れて何をしていたんだろ?」
「この様な事が発生する事、事前に把握していたのかも知れませんね」
「……その辺は若菜本人の身体に聞きなさい。此方は杞憂に終われば良いけれど……私達が言うのもアレだけど今のIS学園には各国からの介入が1番煩わしいの。方法は問わないわ」
「「了解」」