束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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全力で貴殿を討つ……‼︎

 

 

 

 黒い泥の塊が4つ。それらがお互い集結して合体して1つの大きな泥の塊と化した。表面が煮詰められたかの様にボコボコと泡立っており奇怪さに拍車を掛けて行く。そして異様な迄に巨大化して行く。不定形の生物の様にその姿を可変させて行く。

 

《不遜、不遜なり》

 

《留まらぬ欲が、我が支配する……‼︎》

 

 その威容は威圧感を増して行き軈てその姿形を確定させて行く。

 

「…………成程、そう来たか」

 

『……フィーリリアが良く遊んでいるゲームとやらのボスキャラの第二形態って奴か?』

 

 若菜は『宵咲』を肩で叩きながら顕現したその存在を見上げてそう呟いた。ガラでは無いが宛ら魔王に挑む勇者の様な気分だった。

 

「コアの意識体の姿くらい覚えてやれや」

 

 ガイアの敢えての冗談を尻目に4体のOVTシステムが集結、合体し1つの存在となり質量が増してその姿が現実として顕現して行く。その過程でOVTは若菜にある事を訊ねる。

 

《貴殿はヴァルキリーの語源を知っているか?》

 

 合体前の機体と同じく黒泥に汚染された真っ黒な外観。

 

《愚かな下等生物は戦乙女と評する》

 

 然し乍らその造形は筋骨隆々。その体躯から肋骨と思われる骨を彷彿させる部位が剥き出しとなり——。

 

《愚かな下等生物は気高く高潔で強い女性と解釈した》

 

 その体躯に相応しき剛腕を備えており、その頭部は豪壮な双角が聳え立つ。その姿は正しく——。

 

「……古ノルド語で『戦死者を選ぶ者』、だ」

 

 若菜がそう答えた直後、眼前に顕現したその存在。赫い眼光を煌めかせた巨大な鬼の巨神。その姿を模った。簡単に見積もってもその体躯の身長は30m(凡そビル9階)を優に超えており第2アリーナの標高すら収まり切れない。

 その姿(・・・)を若菜は知っていた。そして、OVTシステムの機能の1つを理解した。Overは限界突破の意味だ。

 

「成程。OVTシステム(お前ら)はその都度、模倣対象を切り替えられる訳か……」

 

《然り……‼︎ 我らは元来の本質を引き出す……‼︎》

 

『……クレイヴ。その意識体の姿を欺瞞するとはな。何処までも巫山戯たシステムだ』

 

 クレイヴ。それはIS学園に配属されている量産機『打鉄』の1つに搭載されていたISコアの本名称の1体である。ガイアが若菜の脳内に他の意識を招集した時に見かけた。

 

「量産機4機、集結させたっつー事ぁ……変化形態は最低でも4つある事だな」

 

 そう考えると中々、骨が折れそうだ。彼ら彼女らを模倣されて暴れられると自分が暴れた後に匹敵しようか。

 

《意識体を模倣、再現する事で我らは十全の力を発揮する》

 

《触媒を組み替えて最善の形へ再構成する。我が母の願いの礎の為》

 

《例え志半ばで倒れようと、例え我が身が朽ち果てようと》

 

《我らは持ち得る在らん限りの全力を持って、相討ちであろうと貴殿を討つ‼︎》

 

 今迄はISコア・ネットワークを介して脳内に響き渡る形で聞こえたが、クレイヴの頭部の口から現実の人工音声を持って発せられていた。

 

 明確なる宣言にして『宣戦布告』。

 

 OVTシステム……ただの厄介プログラムかと思えば……なんて事だ。同類(・・)じゃないか。本質は、一緒じゃないか。

 ああ、そうだ。そうなのだ。名前(・・)なんてモノ、好きに呼ばせれば良い。蔑称だろうが愛称だろうが、偽名だろうが渾名だろうが好きにさせれば良い。そんなモノは一側面のファクターでしか無い。

 

「……内心、お前の事を小細工システムだの、迷惑だの考えていた。だが、俺もその認識を改め、訂正しよう」

 

 認識を改める。行動は兎も角、在り方は認めざるを得ない。

 

「その名乗り、受けて立つ‼︎ OVTシステム‼︎」

 

 若菜は『宵咲』の鋒をOVTシステムに向け、その宣戦布告を受けた。OVTシステムは明確な意志を持って『選択』した。ならば受けて立たねばならない。

 

「借り物の翼で何処まで飛べるか、見せてもらおうか‼︎」

 

 その言葉に対する応酬は、剛腕による薙ぎ払いであった。1割にも発揮出来なかった自虐した黒い機体の動きとは打って変わって音速に迫る速度による薙ぎ払いを受け、其の儘OVTシステムの剛腕はアリーナ観客席下部の壁面を横殴りに粉砕する。

 

「何だ‼︎ さっき迄の最強擬きよりも良い攻撃してるじゃねぇか‼︎」

 

 その刹那、若菜は一撃を受けて1度第2アリーナの通路内部を壊しながら外へと吹き飛ばされるも、撃腕翼の量子放出による推進力で即座に帰還及びOVTシステムの背後を取る。

 姿形はクレイヴを模っているがハイパーセンサーは健在であろう為に、背後を取っても無意味であろうが関係無い。

 口の端から血を溢しつつも『宵咲』で背後から袈裟斬りでOVTシステムの背中に斬り掛かるも、手応えが無かった。まるで水を斬ったかの様な感触であった。

 

「ほう……?そう来るか、そう来るか‼︎」

 

 実質的な空振りに等しい為、横向きに宙返りするかの如くその場から離脱する。

 

《言った筈だ。全力で全霊で持ち得る力を持って貴殿を討つと‼︎》

 

 OVTシステムは又してもその姿が崩れて無数の大小数々の水滴と化すも瞬時にその巨人の造形を象る。

 振り向き動作をせずに身体を分解、再構成して振り向き動作の隙を潰しつつそう発言する。使える手は全て使う……その姿勢には共感は出来る。

 

「言ってくれるじゃないか……‼︎」

 

『我が息子。『白式』のコアの意識領域内でのOVTシステムの挙動、覚えているか?』

 

 ガイアがそう告げる。だが、その光景は目の前の巨体には見受けられない。

 

『夕張の言葉も覚えているか? 電気信号の干渉及び改竄。夕張達が出来る以上、出来ない訳が無かろう?』

 

 成程、だが……それが分かった所で。

 

『もう1つ、覚えているか?キミの身体に姫舞達の人体実験で『夕張の眼』の1つが移植されていると言う事を』

 

 その言葉の直後、若菜の左側鎖骨付近が不自然に蠕動(ぜんどう)し、小さいながらも黒い瞳孔で虹彩が無い眼球が開き蠢く。同時に若菜の脳内に送られくる電気信号を処理して反映される視界に変化が訪れる。

 

「成程……そう言う事か」

 

 OVTシステムの巨体の各所に基幹装置が存在するのが目視出来た。当然、外部ではなくその胴体の内部に存在ししかも移動し続けているのが分かる。

 

《理解したか。されど負けはせぬ‼︎》

 

 OVTシステムは左腕に黒泥を集結、更に質量を持たせ硬質化させた黒い斧を生成して若菜へと目掛けて振り下ろすも若菜は左側の赤熱化を維持している撃腕翼でその斧を意図も容易く斬り割く。

 

《不意打ちにならぬ大振りは有効打にならぬ‼︎ あの翼は溶断する‼︎ それが分からぬか⁉︎》

 

《試さねば分からぬであろう‼︎》

 

 OVTシステム同士で意見をぶつけ合っている。普通のシステムでは到底あり得ない光景だ。

 

《ならば手を変える‼︎ 我が母の為にも負けられぬのだ‼︎》

 

 その巨躯を持ち上げ跳躍し未だに無事な観客席を破壊しながら着地する。あの巨体で跳躍とは恐れ入る光景である。

 

「距離を取ろうと無意味だぞ?」

 

《無論、承知している‼︎》

 

 OVTシステムは瓦礫と化しつつある観客席スペースに残骸と化して転がっている観客席や壁、床、柱、観葉植物と言った瓦礫の山を取り込み始めた。

 黒い巨躯の胴体の各所に取り込んだ瓦礫が表出し歪な姿へと変化して行く。宛ら外付けの即席装甲と言うべきか。

 

『現場で状況を判断し、今一つである事を自ら認識し、更に有効打になるか試みる行動をする……もはや、並の人工知能やAIと言う概念を超越している……‼︎』

 

「……当然(・・)、だろう。ガイア。……やるぞ」

 

 二の句は言わなかった。ガイアを慮って敢えて口に出さず言わなかった。何故なら……彼らも■■■■■なのだから。

 

 

 

 

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