束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
実戦。
それは常に生命の危機に瀕する世界。射撃場や実技訓練とは打って変わり自分達の『現実』となる世界である。
『オリエンテーション』ではその片鱗を見せ付けられ、『特別試験』では覚悟を問う。『射撃訓練』では
そして……今日、愉快な遠足が始まる。
「ふぇぇ……こんな遠くからでも戦闘の轟音が聞こえて来るよぉ」
「落ち着いて下さい。冷静に対応すれば大丈夫でしょう」
「尸狼さんは……あ、篠崎さんには気付かれてるから、隠れられない気がします‼︎」
IS学園内の緑地化された舗装された遊歩道の上を数人の少女達が銃火器を携え、耳には相互連絡用のインカムを付け、更には防弾ベストやレッグホルスターと言った物々しい装備品を身に付け行軍していた。
燐芽と蕨、尸狼と言った8組の中でも比較的身長が低めの8組の生徒達であった。理由としては『若菜がISを展開して戦闘中。あのバカは周りの影響を顧みない戦いをする』と言う伽羅からのアドバイスを元に8組の中で比較的身長が小さい面々での編成にしたのである。
若菜の攻撃は殆どが広範囲に及ぶと言われている為、巻き添えと言う意味では体躯の小ささは気休め程度でしか無いが打てる手は打つべきとの事でこの編成となった。
視界の先には目標地点である第2アリーナの全貌が目視で確認出来る。……ただ外壁の一部が砕け散っている。その奥で破壊されたであろう多数の瓦礫を纏った黒い巨人が暴れている光景が見えた。その余波で土煙が上がり砕けた瓦礫がアリーナの外へと吹っ飛んでいく光景も見えたし、酷い時には赫い粒子かオーラみたいな者がアリーナの外壁を貫通して溢れ出した瞬間も見えた。
第2アリーナでは自分達はまだ見たことが無い専用機を完全展開した若菜が戦闘中……つまり、若菜はあの黒い巨人と殴り合っていると言う事である。……何を言っているのか分からないが現実問題、そうなのだからそうとしか言いようが無い。そもそもあの中でどんな地獄が発生しているのか……。
「取り敢えず皆さんも理解していると思いますが、私達が直接、敵を無力化する必要はありません。あくまで私達がするべき事は若菜さんの援護です」
移動しながら半ば班長の立場に抜擢された燐芽が後続する生徒達にそう説明する。
「IS同士の戦闘に割って入るのはただの自殺行為。よって、私達は遠方からの援護射撃に徹します。……あの様子では少し不安が残りますがアリーナの観客席と言った遮蔽物がある場所から狙撃や射撃で暴走機体に射撃を加えて行きます。もし、危険だと判断した場合、直ぐにその場から離脱して下さい」
銃火器で武装しているとは言え、大怪獣バトルも同然な環境に割り込むのは無謀を通り越してただの自殺行為だ。よって自分達は遮蔽物に身を隠しながら敵性個体に対して狙撃や射撃を加える。
無論、シールドバリアの存在故に闇雲に攻撃を加えても然程効果は薄いが、隙を作る事は出来る。
《ぬぉおおおお……‼︎》
「おらァァァァァァァ‼︎」
お互い裂帛の気迫と共に、瓦礫を吸収して歪に纏わった豪腕と、爪先から長大な赫い粒子の剣を形成した撃腕翼がお互いの脳天へ目掛けて振り下ろされ、激突。
その刹那、熱量に反応したのか瓦礫塊に火花が散ったかと思えば爆轟が轟き両者共に仰け反り距離を取らされた。
《邪魔者が湧いて来たようだ……‼︎》
「その様だな……。ああ、同感だ……‼︎」
周囲をハイパーセンサーに加えて自身の双眸による目視、そして右鎖骨付近に開いた眼球を持って見渡す。眼下のアリーナの地面には最初に若菜が闖入事に放った一撃で溶解しながら大きく分断するかの様に抉られた溝が深々と刻まれていた。
アリーナを取り囲む様に造られた観客席のスペースは若菜とOVTシステムとの戦闘の余波でその大半が破壊されており、その外周の外壁も半分以上が倒壊し外の風景が見える程に風通しが良くなっていた。
『……つい先程、伽羅が8組の面々を我が息子達の援護要員として投入したそうだ』
伽羅さんめ、余計な世話を。リーリスならば兎も角、俺の戦闘がどんなモノか貴方はご存知の筈だ。
視界には崩れ残骸が転がる観客席の残骸を遮蔽物として身を隠しつつ移動する燐芽達の姿が見えた。
「邪魔だな。そうは思わんか?」
《同感だ……‼︎ ならば、貴殿と我らが相見えるに相応しい場所に移ろうでは無いか》
奇しくもお互い同じ事を考えていた。両者に取って援軍なぞ願っても居ない。
「無窮の世界は不要とか言っていた奴の台詞では無いな?」
《…………。あ奴と一緒とは心外だ》
「ソイツは悪かったな。どうやら、同一じゃあ無い様だな」
『白式』に巣食うOVTシステムとは性格は違うらしい。
《……我が母の願を願う事は同一。だが……この事象を
その言葉の直後、象っていたクレイヴの姿がぐにゃりと黒泥へと溶けて行く。表面が煮詰められたかの様にボコボコと泡立っておりどうやらまた姿が変わるらしい。
《不満分子は……存在自体が罪なのだ》
《悪が蔓延る世などあってはならぬ》
黒い巨人の姿から黒泥の塊を経て新たな姿へと変貌を遂げて行く。巨体ではあるが筋骨隆々であった姿から細身となる姿へと変化して行く。それでも体全体が真っ黒である事に変わりは無い。
頭部は小さいながら赫く光る双眸は健在。その頭部から薄い翅飾りと共に一対の触角が伸びており身体の各所に結晶体らしき物体が見受けられ下半身はドレスの様なモノを纏っている。そして、四本の腕を備えたドラゴンの様な姿へと変わる。
優雅なドラゴンへの変貌を遂げたOVTシステムは第2アリーナのみならずIS学園の上空へと勢い良く飛び立って行く。
「……ふっ。気が効くじゃないか……‼︎」
その後を追う様に若菜も撃腕翼を後方に向けて爪先から赫い粒子を爆発的に放出し音速の勢いで半壊同然の第2アリーナが飛び立ち、IS学園の上空で若菜の到来を待っていたOVTシステムの眼前へと舞い出る。
『次はパージか……。つくづく人の話を聞かん連中ばっかりだな』
ガイアがそう脳内で愚痴ってくる。そもそも量産機のコア達の意識は殆ど人の話を聞かないから今更だろう?
《コレで邪魔は入らん……‼︎》
「…………。ああ、そうだな」
眼下にはIS学園の各種施設や校舎、他のアリーナ。遠くの遠方には日本国の町並みやモノレール橋が見える。此処まで派手にやってしまえば丸見えに等しいが……今はとても気分が良い。気にする理由が今は無い。
この場所は成層圏には程遠いが、大空である事に変わりは無い。
《さぁ……第3ラウンドと行こうか》
「上等だ。楽しもうじゃないか……OVTシステム‼︎」
《……。思えば貴殿の名を知らぬ》
このタイミングでそんな事を訊ねるOVTシステム。
「……?……。そうだな、篠崎 若菜。
一瞬、面食らったが意図を察した若菜はそう名乗った。今まで気にしていなかったが一方しか名を知らなかった。
《記
そう宣言した直後、OVTシステムは高速で錐揉み回転しながら突っ込んで来るも、若菜は簡単に躱す。其の儘、OVTシステムは遠方へIS学園の上空を回遊するかの如く飛んで行く。
「上等……‼︎」
若菜は追い掛ける形で撃腕翼の爪先から赫い粒子を放出しながら飛翔して行く。IS学園の上空を舞台にお互い高速で飛行しながらの戦闘が始まった。