束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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呉越同舟ほど、机上論は無いよね

 

 

 

「……それで、今年の試験結果は散々たる結果と言う訳なのか? 束」

 

 3月の中旬頃。

 殆どの学校が入学試験と、卒業式等を終えた時期。場合によっては既に春休みに突入している頃合。

 此処、IS学園でもこの時期は春休みとなっており、その学園の職員室にて、1人残っていた教師がある人物への通話をしていた。

 黒いレディーススーツを身に包んだ長身の女性、織斑 千冬であった。世界最強の名を得た人物である。

 

『久し振りに連絡して来たと思ったら、そんな事を聞きたいの?ちーちゃん』

 

 通話の相手は篠ノ之 束であった。お互い、知り合いであるが千冬としては束の変化に関して1番、驚いている自負がある。昔の束はそれはもう、人間関係で一際強い問題を抱えていた。

 それが、今となっては孤児を引き取り子煩悩な母親になっていたのだから驚くなと言うのが無理があった。最も、興味が無いモノに対しては冷徹な所は変わっては居ないが。

 

「……お前がISライセンス制度を世界に叩き付けたからな。学園としてはその試験対策を講ざらずを得ないんだ」

 

 ライセンス制度の導入により、今迄の様に単純にIS学園を卒業してもIS操縦者になれない。

 IS学園では特例措置によりIS学園の生徒はライセンスが無くともIS学園内の管轄下のみであればISの搭乗は許可される。

 つまり、3年間はライセンスが無くとも搭乗が可能……。因みにIS学園は留年は無いので、必ず3年以内にその資格は喪失となる。

 ライセンスを取得出来なければ、以降はISに搭乗する事が出来ない。

 

『ふーん、それで?』

 

「IS学園出身では合格者が1人も出ていない。本人の対策不足と言われればそれまでだが、余りにも合格者が少な過ぎる事に関して上層部……IS委員会が異議を申し立てて五月蝿いんだ」

 

 千冬が束に連絡した理由。それはインフィニット・ストラトスライセンス取得試験に関する内容であった。

 束が導入させたライセンス制度。そのライセンス取得に関しての試験の合否判定が非常に厳しい事で有名だ。オックスフォードやハーバードの入学試験並かそれ以上の難易度だと冗談抜きで言われている。

 日本国内だけでも受験者が7、8万人に対して合格者が1人や2人が精々と言う有様であり、規模を世界に広げれば代表候補生、国家代表ですら容赦無く不合格を突きつけられ、操縦者の資格を失い落伍した。

 IS学園の教師も制度の導入時にライセンス取得の為に試験に望んだが合格者はたったの1人だけであった。

 そして、非常に高い倍率を誇るIS学園に入学し在学中、卒業年にライセンス試験を受けたIS学園出身者の合格率は驚く事勿れ、0人であった。

 その為、IS操縦者の資格を得られず内定取り消しを言い渡され、卒業後に路頭を迷う事になったのである。

 

『IS学園に関してはちーちゃん達の教育の結果じゃないかな?

 それに試験と言うのは適格か不適格か見定める為に存在している事はちーちゃんも良く分かっている筈だよ。通過儀礼や合格して当然の試験は試験とは言えないよ』

 

 通話越しに聞こえてくる束の声は何時もと調子は変わらない。そして、束は千冬達の教え方に問題があったのでは?と疑問をぶつけて来る。

 

「……其処を言われると辛いな」

 

『合格者が少ない?試験が難しい? そんなの当たり前じゃない。

 試験が簡単じゃ、試験の意味が無くなる。難しいからこそ資格やライセンス、免許の意味がある。馬鹿に扱わすのが危険だから資格やライセンスが存在するんだよ。

 私は別に君ら、人間が嫌いだから試験内容を難しくしている訳じゃない。単純に、インフィニット・ストラトスを扱うに相応しくないから不合格になっただけだ。束さんの子供達を託すに値しない、それだけの話だよ』

 

 束の目的は一貫してブレていない。

 ブレたのは世界の方である。事実、世界の方は本来の目的から逸れて『女尊男卑』や『国防』、『娯楽』、『象徴』だの、束の本来の目的とは逸脱した使い方をしている。

 対する束は今現在も初志貫徹し続けている。インフィニット・ストラトスは篠ノ之 束が発明してその目的の為に存在し、動いている。

 

「……その言葉をそっくり上層部に伝えればまた騒がしくするだろうな」

 

『知った事か』

 

 千冬は頭を抑え、生じる偏頭痛に苛まれながら、この話は平行線を辿るだろうなと言う事で切り上げた。千冬視点、束は義理と言えど子持ちとなった事で性格がかなり丸くなったが、それでも辛辣かつ容赦無く、そして頑固だ。

 1つ気になる事があった為に話題を変える事にした。

 

「……先月、私の弟である一夏が男性操縦者として発覚したが」

 

『他に見つからなかったんでしょ?』

 

「……束。お前に義理の息子が居た筈だ」

 

『その必要は無かったよ。なんで、そんな事を聞くのかな?』

 

 束は千冬の言葉を先回りして封殺しに掛かる。それでも聞きたい事を訊ねる。

 

「……お前の息子は男性操縦者では無いのか?」

 

 あの束が養子として引き込んだのだ。もしかしたら?と言う思惑がある。

 そもそも束は人格に難があるが突き詰めれば好き嫌いがハッキリしている性格だ。興味が無い存在に関しては完全に無視する始末だ。その束が興味を抱く要因は限られている。

 束はISの開発者だ。誰にも言わないだけでISを動かせる主要因を本当は知っているかも知れない。

 

『ちーちゃん。束さんを失望させないで欲しいな? ちーちゃんが自分の弟が大事なように、束さんも自分の子供が大事だよ』

 

「…………」

 

 答える義理は無い。それが束の返答であった。

 願わくば同年代の他の男子が居れば自身の弟である一夏の精神的に余裕が生まれるやも知れないかと考えたが、そう簡単には納得はしてくれない。その相手が束ならば尚更。

 

『この話。去年もしたよね? 娘達をIS学園に入学させないか?って。束さんが集めた娘だから、適性はあるだろうってさ。

 権益の為に当人の意思を無視したやり方だと、その結末は悲惨になりかねない事を学習しろよ。もう、大人だろ。

 この際、ハッキリ言わせて貰うけど、お前らさぁ……憧れを利用して人間の子供(・・・・・)の将来をメチャクチャにするの、良い加減にしたら?

 ちーちゃんはさっき、ISライセンスの取得に関してIS学園出身者は1人も居ないと嘆いていたけど、数は凄く少ないけれど合格者はちゃんと居るよ』

 

 通信越しの束の口調は厳しいモノであった。

 

『それと、IS学園の進学率や就職率は、この地球上の全ての高等学校以上の中で1番のビリなのを分かっている? 女尊男卑思想を野放しにして来たからどんな企業もIS学園卒業生に対して見向きしないのを分かり切っているだろ。

 どんな教育過程を組んだら、そんな酷い結果が生まれるんだよ。結果だけ見れば実績が酷過ぎて草も生えない。その事実に対して見て見ぬフリや『改善していく』と言われても説得力がまるで見えないんだよ。抱負を語るのは勝手だけど、確実に実行する姿勢を見せろよ』

 

「……ああ。そうだな。……言われたくは無いが」

 

『事実だろ。正直に言わせて貰うけどさ、束さんから見て、IS学園は専門学校の真似事、いいや酷い飯事にしか見えない。

 インフィニット・ストラトスの操縦者を養成する? その結果、養成されたのは無駄に意識高い系を伴った女尊男卑のクソガキだ。何処に出しても恥ずかしいまでの身体が大きくなったガキンチョだよ。

 そんな連中をISを乗せると本人が怪我するならば兎も角、ただ二次被害を広げるだけだ。そんな事も分からなくなったの?』

 

「……分かっている。分かってはいるんだ……‼︎」

 

 千冬本人、束の言う言葉は最もであり反論の余地は一切無い事も自覚している。だが、教師と言う立場上、言葉を選ばなければならない。単純に突き付ければ良いと言う訳ではない。

 

『後、ちーちゃんの為に言っておくけど。……IS学園の存在意義ってあるの?』

 

「」

 

 その言葉に千冬は言葉を繋げる事は出来ない。今、まさにその不安が脳裏に過ったからだ。

 

『IS学園出身者はライセンスも取得出来る実績が見出せない。寧ろ民間人の方が確率が高いまである。その癖に一般企業関連の就職内定率は0に近い。

 考え得る限り能力があっても使えない人材しか輩出出来ない無駄金喰らい国立学校を維持するよりも、国で養成した方が安上がりじゃない?』

 

 ぐうの音も言えない。

 紛れもなく事実であり現実だ。ライセンスも取得出来ない、かと言ってIS業界以外の企業や職種に関してはIS学園出身者と言う事で良い顔はされない。故にそんな意見が出て来るのも時間の問題と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜、どうしてこう、皆単純に宇宙へ行こうって思考回路が出来ないのかなぁ」

 

「母上。全員が全員、そんな簡単に行動を起こせる立場じゃないんですよ」

 

 リビングにて、ぐでぇ〜と言う形で伸びている束を見て若菜はその言葉に対して呆れていた。つい先程まで、束は知人だと言う人間と電話で通話していた。ただ、話の内容は良い雰囲気とは言い難い内容だった事が察せられる。

 

「はいは〜い。分かってるよ〜」

 

「はいは一回で充分です、母上」

 

 ライセンス試験の合否判定は概ね終了した。その結果、合格者はたった1人であった。いいや、1人でも居れば健闘したと言えるだろうか。

 

「わーくん。気分転換に皆でエストレヤに行こう‼︎」

 

 先程まで伸びていたのに、束は急に頭を上げてそう言い出した。本当に唐突だな、この人。

 

「行くのは構いませんが、日取を決めてからにして下さい。先方にも予定と言うモノがあるんですから」

 

「予定は未定‼︎」

 

「じゃあ、明日の夕飯のオムライスの予定は中止にしますね。元々、未定でしたので」

 

「うわぁぁん‼︎ 前言撤回にするからぁぁ‼︎ それだけは止めてェェェェ‼︎」

 

 子供か。この人は。

 

「取り敢えず、今週は自分もシノア達も終業式まで学校がありますので……土曜日以降にしましょう。母上「じゃあ土曜日‼︎」……分かりました。エストレヤの方にもその日程で通達しておきます」

 

 勿論、その段取りを組むのは若菜である。まぁ、苦労性とは言うが仕方ないのは仕方ない。

 

「うん‼︎ いやぁ、地球人よりも話が分かるからね。彼方の人達って」

 

「まぁ、最も生命の危険度は段違いですけどね。まぁ、人の事を言えなくなって来たのが面映い限りです」

 

「……地球もそれ位の脅威を前にすれば団結出来ると思う?」

 

「世界の呉越同舟ですか?危機が迫れば軋轢とか不和は無くなるとお思いですか?往時の不和と軋轢は、一時は鳴りは潜めても消えはしません。大体、何処かで噴出しますよ」

 

 

 

 

 

 

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