束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
第1アリーナ。
IS学園の中で最も広大なスペースを擁し尚且つ、ランドマークタワーの真下に位置している主要アリーナ。各種、イベントによる公式試合でも使用される最も外部に対して露出が多いアリーナ。……だが。
《……何故だ?》
《何故……か。何故だろうな、我よりも貴殿の方がかの者に勝ち目があると、感じたが故に》
夕日が過ぎ去って再び蒼穹の空が広がっている中、第1アリーナは見るも無惨な
アリーナの外周に位置する観客席の悉くが
若菜の襲撃による直撃を受けたOVTシステム。その第1アリーナだった場所のほぼ中央にパージの姿を維持出来ずにドロドロの黒泥の姿へと戻ったOVTシステムは己と別のシステムにと対話をしていた。
《……。そうだ。我の基幹装置は大きく破損した。……我の模倣能力は期待出来ぬ》
若菜の放った強烈な攻撃を脅威と判断したOVTシステムの1人が全員の身代わりとなる事を選択した結果、身代わりとなる事を選択したOVTシステムの主要基幹装置が著しく損傷した。そのOVTシステムが模倣する意識体に変化させる事が不可能となった。
《…………。後は任せよ。死ぬよりは良い》
「……咄嗟の判断で急所を外したか。一撃で決めてやろうと思っていたんだがな」
《そう簡単には終われぬ。最期まで諦めるつもりは毛頭無い。刺し違えてでも貴殿を倒すと宣言した》
OVTシステムと少し離れた位置、余りの速度故に着地地点より離れた位置にまで惰性で移動した若菜が、その様子を見つつそう告げた。
《……それよりも、貴殿は随分と人間らしさが減ったな》
黒泥を蠢かせながらOVTシステムは若菜の変化を指摘する。
赫い粒子を放出し続ける『フォーマルハウト』の特徴的な撃腕翼の先端部や爪先が鮮やかな橙色へと染まっており爪先から放出される赫い粒子も格段に増加し、赫灼と炎上しておりもはや『恒星』と遜色無い。
《
そして別のOVTシステムがそう指摘する。若菜の右腕は垂れ下がって様な動きでありまるで『肩に腕を付けて垂らしている』様に見えた。その腕の皮膚には亀裂が入り出血と同時に赫い粒子が漏れ出ている。
理由は簡単であり、OVTシステムに投げられランドマークタワーに激突した際の衝撃で右腕が粉砕骨折してしまっていたからだ。その為、若菜は右腕が使えない状態でこの場で立っている。
「ああ? だから、
若菜はそう言いながら本来ならば動かせない右腕を
「例え腕が折れようが脚が捥げようが」
バキ、ボキと言った奇怪な音を立てて蠢く様は異様に映る。
「戦闘ってのは終わっちゃくれねぇってのをお前も知ってるだろ?」
そして、指先を動かして異常……いやもう動かせる時点で異常ではあった。骨が複雑に折れていると言うのにその動作は異常極まりない。
《……貴殿は、滅茶苦茶だな。我の知る人間はそんな異常な行為をする事は無かった》
その行動にOVTシステムは引いていた。システムに引かれるとは納得し難い事だ。
「何、シールドバリアの応用さ。快復じゃねぇがな」
『そんな真似をするから姫舞から人体実験されまくってんだろ……』
複雑骨折した腕を動かせる理由。それは右腕の内部、砕けた骨の内部にシールドバリアを即席の『骨』として随意展開し穴埋めしたからに他ならない。
当然、治療では無く非常に荒っぽい応急処置に過ぎず放置すれば深刻な後遺症が生じる事は明白である。それで尚も若菜は戦う事を止めない。
「……かく言うお前自身もOVTシステムの基幹装置が1つ機能不全に陥ろうが止まるつもりは無いだろうが?」
若菜は利き腕を負傷した。OVTシステムは4つある1つが戦力外同然となった。だがそれでも双方共に戦いを止めるつもりは無い。
《……詭弁であった》
《我らも同じ様に貴殿も、止まるつもりは無いのだ》
黒泥が再び宙へIS学園の上空へと浮かび上がって行く。砕けて廃墟同然と化した第1アリーナの上空に浮かび上がって行き3度目の泡立ちが起こり巨大化して行く。
《……貴殿も本気と言うのであれば、我らも本気で臨もう》
泡立つ黒泥が蠢かせて行きその姿を変化させて行く。鬼神、ドラゴンと来て次に変化した姿。
『3体目は……フォルタか……‼︎』
コレまでとは比較にならない程、巨大な体躯。だが、最初のクレイヴと違いかなり細身。裾が焼け爛れた赤いヴェールを纏うドレスを身に包んだ女性の姿をしていた。細身の両腕は胸の前で交差しており代わりに巨大な手が浮遊している。ただ、首から上は存在せず代わりに鋭利な羽が存在するヘイローが浮かんでいた。
そして、その巨大な身長の体躯に見合う長大なギロチンの様な大剣が側に控えている。
《4体目は残念ながら模倣する事が出来ぬ。貴殿の一撃で担当の者が致命的な負傷をしたが故に》
IS学園の上空に浮かび上がったOVTシステムの傍に聳える大剣が動き出す。長身の女性の姿の手は掴まない。どうやら大剣自体を直接操る類の動かし方らしい。その全貌はIS学園のランドマークタワーと同等の長さを誇っていた。
「ソイツは残念だなぁOVTシステム。実に残念だ」
『我が息子……。普通に悪役のセリフだぞ、ソレ』
《だが……》
再び鬼神の姿へと変わり、
《次は貴殿の致命的な一撃は》
次にドラゴンの姿へと変化し、
《決して貰わぬ‼︎》
最後に貴婦人の姿へと変化した。どうやら襲撃を受けて大ダメージを負った事が余程、気に触ったらしい。人工知能も怒りを感じる事が出来るようになったらしい。
「そうか。俺も腕を無理やり動かしているんでな。そろそろ決着と行こうじゃないか」
《……む⁉︎》
若菜は撃腕翼の爪先を爆発させ、赫い粒子を放出しながら急上昇する。その行き先は未だに健在なランドマークタワーであった。
「……お前と剣戟勝負に洒落込むのも一興‼︎」
そしてランドマークタワーに対して撃腕翼で袈裟斬りにて豪快に溶断した。軋む音を立てながら支える支点部を失ったランドマークタワーは傾き始めるが途中で止まる。
若菜はあろう事かぶった斬ったランドマークタワーを即席の武器として扱う事を決めたのだ。……確かにISにはパワーアシストが搭載しており超重量の兵装を搭載する事が可能ではあるのだが、まさか建築物を、しかも300m以上の塔を振り回す事を前提で搭載しようと考える事自体、前代未聞である。
《……ソレをISに搭載しようとする発想は常軌を逸している……‼︎》
「質問の意図が分からんな。
若菜はシールドバリアで形成した『ボルト』で補強した右腕でランドマークタワーの切断面付近を掴む。パワーアシストを込みでランドマークタワーが軋む音を奏でながら構える。
『我が息子以外にそんなバカな真似をする奴は居ないぞ……‼︎』
明らかに常軌を逸する様な行動に対して若菜の脳内のガイアはもう呆れの言葉しか出て来ない。
《貴殿は我が母にとってイレギュラーだ……‼︎》
OVTシステムはこの短い間で若菜と接した結果、その行動と発想を見聞きして自分がコレまで見て来た人間達と格が違う……そう感じた。
強欲で厚かましくて脆弱な女尊男卑の極地とも言える存在とは、格が違っていた。故にOVTシステムにとって若菜の存在はイレギュラーに映った。