束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
半壊同然のIS学園の上空。巨大な貴婦人の姿を成したOVTシステムと、学園のランドマークタワーを強引に得物として担いだ若菜が双方共に正面切って対峙している。
お互い、ある意味大ダメージを負っており本来であれば戦闘続行するべきではない。だが、両者共に引き退るつもりは無い。
《我自身、此処まで貴殿に対して梃子摺るとは想定していなかった》
《最強の名を欲しいままにした兵装、インフィニット・ストラトス……。その戦闘は長くても数十分で決着が着いていた。そう、今までは》
《……我が母もこの点は盲点であったであろう。貴殿との戦闘は実に学ぶべき点が多かった》
浮かぶ右手で大剣を掴みそう続ける。首元に浮かぶヘイローが赫い目の役割を果たしているのか赫く明滅している。
「ハッ‼︎ お前の母は
『そう言う台詞は得物をちゃんとした奴にしてから言え‼︎ シュール過ぎるだろ‼︎』
若菜はぶった斬ったランドマークタワーを構えて居る為に絵面としては中々酷い。色んな意味で無茶苦茶である。
「……ランドマークタワーと呼ぶのも長いな。マスタワーとでも呼ぶか」
『話を聞けよ、我が息子‼︎』
ガイアの苦情を聞き流して若菜は即席で用意した(ぶった斬ったとも言う)ランドマークタワーに対してマスタワーと言う銘を与えた。質量の塔、そのまんまである。
《……貴殿、存外とネーミングセンスが酷いのだな》
『おい、我が息子‼︎ OVTシステムにすらドン引きされているぞ⁉︎』
若菜のネーミングセンスの酷さにOVTシステムすら引いていた。システムにすら引かれる程、酷いネーミングセンスか?と抗議したい若菜ではあるが流石にこの点に関してはガイアもOVTシステムと同意見と言う事自体が忌々しく思うも同意せざるを得なかった。
「……御託はもう充分だろう?」
半ばヤケになりつつ意識を切り替えて若菜は布告する。
《そうだな……。いざ》
「勝負‼︎」
その宣言と同時に大剣とマスタワーが鎬を削るが如く轟音を響かせながらお互いの攻撃が相殺される。大型の武装同時による激突、その轟音はIS学園のみならず周辺にも響き渡る。
『その……マスタワーが過積載過ぎる‼︎ キミの得意の高速機動は難しい……と言うかその前にキミの腕が砕け散る‼︎』
そもそも建築物を担いで高速で飛び回る方が可笑しいとも言えるのだが……。それ故に若菜の機動力が著しく低下している。
「高速移動?今は必要無いだろう?」
《然り。逃げも隠れもしない》
OVTシステムが大剣を構える。その斬撃に合わせて若菜もマスタワーを振るい両者共に一撃を相殺。と同時に若菜は続けて逆袈裟斬りにマスタワーを振り上げてOVTシステムの胴体に叩き込む。
《ぐぬッ……⁉︎ やはり質量が大きいと避けるのも一苦労か……‼︎》
マスタワー自体、巨大故に雑に振るっても流動体の内部で動き回る基幹装置に被撃する。範囲がエゲツなさ過ぎるからだ。一撃を受けOVTシステムは仰け反り少し距離を取る。
「おいおい、本来の十八番の『零落白夜』は如何した? 元々は世界最強の模倣をするシステムだったろう?」
《フッ、冗談は止せ。貴殿に対して『零落白夜』は全くの無意味。理由はただ1つ、貴殿はシールドバリアを防御として
「……気付いていたか」
《貴殿も既に把握していようが『零落白夜』自体に殺傷能力は無い。質量の存在に対して何の効果を示さぬ。あの
「そうかい……。随分とやさぐれているな」
若菜はシールドバリアを防御では無く攻撃の支点や補強に使用している為、本来の機体や搭乗者を守る用途には一切使用しない傾向がある。つまり、自身に迫り来る攻撃に対して自身の操縦センスと身体能力のみで対応しなければならない。
ピーキーの中でも殊更酷いレベルでのピーキー仕様。実質、生身でISとの戦闘に興じて居るのと同義である。
《だが、出し惜しみはせぬ……‼︎ 貴殿に対して失礼に当たる‼︎》
OVTシステムの周囲に瓦礫群の代わりに画鋲を思わせる鋭利な飛び道具が量子展開されそれらが一斉に飛来して来る。
「邪魔だな、オイ‼︎」
飛来してくる画鋲の群に対してマスタワーを横殴りで振り回して纏めて殴り払う。だが、武器と呼ぶには余りにも巨大、その為に動作が大振りとなり動作後の隙も大きくなる。そして利き腕でありマスタワーを掴んでいる右腕はシールドバリアで内部を補強しているとは言え、かなり無理矢理に動かしている……。故に如何しても神経伝達にも支障を来たし緩慢となる……‼︎
《良いのか? それは……耐え切れぬ……‼︎》
《かの出力に我の基幹装置も持たぬも承知の上》
《我が母の機体、機体名『FOMALHAUT』……その主砲の再現すると言うのか……⁉︎》
マスタワーを振り切った先に見えた先には貴婦人の姿からドラゴンの姿へと変化したOVTの姿が見えた。だが細部に変化が存在していた、その口部に真赭の粒子が燻っているのが見えており何かしらの補助装備が追加されていた。
「ッ‼︎」
《何方が致命傷を先に当てれるか……‼︎ その一言に尽きる。エネルギー急速充填開始。出力、80、90、100、限界突破》
『我が息子、拙いぞ‼︎』
《緊急弁全閉鎖、リミッター全解放。『擬装・対惑星主砲VERZICHT(*1)』最大出力……‼︎》
眩い迄の真赭の光が溢れ出す。赫い光を放つ恒星がまた1つ現れた。その光の強さとその名称から今正に、偽りと言えど惑星を穿つ為の主砲が放たれようとしていた。
ガイアは悟る。回避は間に合わない、と。
《外しはしない……。これで決める……‼︎》
その台詞の直後、若菜へ目掛けて最大出力の真赭の光の奔流が放たれる。一筋の光の筋がIS学園の上空から地平線の彼方にまで伸びて行き再び、その光に覆われた世界は一時的な夕日に彩られた。
その光はOVTシステムから見れば自身の産みの親である母の機体の再現と言う意味では正しく劣化であり紛い物に過ぎないが偽りと言えど用途は同一。惑星を砕く事は叶わずとも小惑星程度ならば粉砕する事は造作も無い威力を誇って居る。
《……後は……任せた。お前達ならば、きっと成し遂げられる……‼︎》
ドラゴンの姿が黒泥となって崩れ落ち再び貴婦人の姿を成す。リミッターを解放して最大出力で放った代償としてドラゴンの模倣を維持していたOVTシステムは沈黙した。
その言葉を聞きながら同時に前方を確認する。主砲が通った痕には何一つ残されていなかった。若菜の姿は影も形も其処には存在していなかった。ハイパーセンサーにも反応は確認されない。
その代わりに確認出来た事、それはIS学園島の東の海岸線近くには若菜が武器として扱っていたマスタワーこと、学園のランドマークタワーが上下反転の状態で斜めに突き刺さっている光景が見えた。