束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

93 / 146
此の儘、勝ちを譲らないでくれ……‼︎

 

 

 

 

《……我は確信を持って言える》

 

《篠崎 若菜は死んでいない》

 

 OVTシステムはそう呟く。星を穿つ砲撃を放ったがそれで若菜が蒸発したとは考えない。考えていない。……何故かその事実を嬉しく思う感情が浮かんでいた。

 

《量子変換。よもや自らを量子変換で拡張領域内に放り込むなど……‼︎》

 

 砲撃が直撃する直前、若菜の身体が光の量子と化して消滅したのが見えた。

 

《彼との邂逅は驚かされてばかりだ。我らの既知を悉く塗り替えてくれる。この先、彼を超える存在は現れないだろう》

 

《自らを量子変換して拡張領域内に避難。……それは、ただの自殺行為だ。下等生物如きではその発想に至る事は無い》

 

《何か企んでいる筈。ただの自滅行為とは考えられない》

 

 だからこそ、OVTシステムは若菜が死亡したとは考えない。

 若菜の存在はOVTシステムから見て、行動が無茶苦茶で『常識』と呼ばれる概念を鼻で笑う様にして常軌を逸しており、想定や想像の上を行く存在として映っていた。

 脅威であると判断した手前、同時に理解(・・)してくれる存在であった。

 

《……躊躇っているのだろうか?》

 

 ふと唐突にその感情が浮かんだ。

 

《……我は彼との邂逅を楽しいと感じているのだろうか?》

 

 得物を交え合い、言葉のやり取りを経て、そんな感情が浮かび上がる。今、思えばOVTシステムに対して母以外で初めて対等(・・)の存在として見てくれた。

 

《……篠崎 若菜。この程度で終わる筈が無いだろう?》

 

《我は……まだ此処に居るぞ……‼︎ 拡張領域内で死んで我に勝ちを譲るなんて真似はしないでくれ……‼︎》

 

 この時間はまだ終わらせたくない。終わりたくないと叫ぶ事は傲慢なのだろうか?

 

《いや、来るぞ……‼︎》

 

 若菜が再び現れる事を期待していたOVTシステム。ハイパーセンサーに反応を感知して頭を上げた。だが、反応が3つ存在していた。

 

「……近くで見ると本当に大きいですわ‼︎」

 

「あの武装だけでもランドマークタワー並の長さがあるじゃない……‼︎」

 

「他にも形態があるかも知れないわ‼︎ 2人とも充分に気を付けてちょうだい‼︎」

 

 部外者であった。

 3機のIS。青い機体『ブルー・ティアーズ」に搭乗したセシリア・オルコット。マゼンダの機体『甲龍』に搭乗した凰 鈴音。そして水色の機体『霧纏の淑女』に搭乗した更識 楯無。以上、3人のIS操縦者がOVTシステムの目視可能な範囲内に現れた。だが、若菜ではない事に憤りを覚えた。

 

「篠崎って奴、メチャクチャ遠くに飛ばされたんじゃない⁉︎」

 

「その安否が心配ですわね……。あの砲撃に直撃していなければ良いのですが……‼︎」

 

「彼の事も心配になるけれど……今は目の前の脅威が最優先事項よ‼︎」

 

 グチャグチャと煩わしい、そう感じた。心など無いのに、その『心』と言う概念の奥底から目の前の3匹の生物を見ると苛立ちと共に悍ましさを感じられる。

 

《下等生物に用は無い……‼︎》

 

 若菜は例外中の例外。それ以外は一貫して下等生物の域を超越出来ていない。女だからと言う理由では無い……その驕りが見えたからだ。

 

「コイツ……喋るの⁉︎」

 

「既存のISの機体コンセプトを逸脱していますわ……‼︎ 如何言う理論で」

 

「搭乗者が居るのならば話が変わる‼︎ 巨大ISの搭乗者に告ぐわ‼︎ 今すぐに武装解除しなさい‼︎ さもないと武力行使する事になるわ‼︎」

 

 邪魔だ。その一言に尽きた。

 此処に若菜が居ればきっと同じ事を言ったであろう。

 

《お前達の様な下等生物に……我らの時間を邪魔立てをするな……‼︎》

 

 OVTシステムは若菜が再び到来する前に目の前の3機のISを滅する必要があると判断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「若菜君、無茶し過ぎ」

 

 目覚めは後頭部に伝わる温もりと、上から降り掛かる声と共にあった。

 

「ぐっ……‼︎」

 

「若菜君。貴方は今、腕の殆どが粉砕骨折状態だよ。無理に動かすと凄い痛い筈ですから安静にしていて下さい」

 

 目を開けると視界の先には多量の返り血を浴びて尚も笑みを浮かべているシノアの顔があった。所謂、膝枕と言う体勢の様だ。

 木々の木の葉も視界に入っている事から、恐らくはIS学園島内の自然保護区の森林地帯なのだろう。他にも腕や脚、胴体にも包帯が巻かれているのを感触で感じる。腕の骨折ばかりに気が向いていた為に他の負傷箇所には気が回っていなかったらしい。

 

『状況を説明しよう。キミはOVTシステムの致命的な砲撃が直撃する直前、シノアの随意変換によりシノア『アルフェルグ』の拡張領域を介して彼女の眼前に量子展開されたのだよ。あの時は本気で焦ったぞ……。つくづく、彼女の感知範囲の広さには驚かされるな』

 

 つまる所、姫舞の逆の行為をシノアは行ったと言う事である。簡単に言えば若菜はシノアからは逃げられないと言う事である。

 

「……それよりも、随分と血腥(ちなまぐさ)いな……‼︎」

 

 頭を動かした先に見えた光景は凄惨たる環境が広がっていた。夥しい血が周辺に撒き散らされ、その上に死骸、死体、死屍が多数転がっている。文字通り屍山血河の様な光景が広がっていた。

 何も多数の血によって汚れているが迷彩服をその身に纏いタクティカルベルトや防弾ベストと言った物々しい装備を身に着けている事から軍人か特殊部隊と思われる。

 だが、視界に映るソレらは悉くが悲惨な結末を迎えていた。

 

『目覚めの光景としては余りにも酷過ぎるな。彼女はアレか?猟奇趣味なのか?』

 

 ギロチンで斬首され綺麗な断面図を残して首から上が無い死体。逆に無理矢理斬り刻んだ酷い切れ味の断面図の首無し死体。

 強い圧力が掛けられ四肢が弾け飛び判別不可の死体。抉る様な穴を開けられ穴だらけとなった死体。そして、最も多いのは串刺しにされた死体。それら死体が転がる場所の中央にてシノアは若菜に対して膝枕をしていると言う猟奇的な状況であった。

 生存している者は1人しておらず、その何れもシノアの手によって惨殺されたのである。

 

「……恐らくアメリカの特殊部隊。若菜君を狙っていた見たいだったから、虐殺しました」

 

 OVTシステムの混乱に乗じて実力行使に及んだらしい。だが、悲運にもシノアに見つかり拷問された挙句に殺された模様。南無三……。

 

「そうか。アメリカは相変わらずだな……」

 

 若菜は左腕を使って上体を起こす。右腕に再びシールドバリアで仮想骨を再構成して埋めて補強する。ソレ以外にも色々な所の骨が折れている……其処にも同じ様に補強しておく。

 

「若菜君。行くの?」

 

「まだ決着は着いて居ないからな……‼︎」

 

 シノアが若菜の身を案じてくれているのは痛い程に分かっている。だが、ソレでも引き退る訳には行かないのも事実。

 

「止めても無駄なのは分かってます。でも、次に無茶したら……」

 

「無茶したら?」

 

両腕両脚を切断して、私無しで生きられない身体にします♪

 

 暗い笑みを浮かべながら死刑宣告して来た。その笑顔は普通に怖い‼︎

 

『……我が息子。本当にヤバい女ばかりに好かれているな、キミ。彼女……明らかに病みの兆候が見られるぞ……‼︎』

 

「冗談冗談♪ ただ、若菜君を誑かす虫は駆除をしておかないとね♪」

 

 とても冗談に聞こえない……‼︎

 

「……。行ってくる、奴と決着を付けてくる。奴もそれを望んでいる」

 

「私も行きます。ただ、若菜君の邪魔はしないから」

 

「……ああ、分かった」

 

 若菜は『フォーマルハウト』を展開し、再び撃腕翼を炎上させて急発進させ飛び上がる。その後に続く様にシノアも『アルフェルグ』を展開させ撃楯翼を広げて上空へと跳躍して途中から錐揉み回転しながら更に飛び上がって行った。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。