ウマ娘〜想いを背負って繋いで〜   作:にゃんころもち(黒糖)

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32話〜まずはサブトレからのスタート〜

 

 ジャパンカップも無事に終わり、ウイニングライブも大盛り上がりとなった。

 その後日、海外から来たウマ娘達は思い思いに観光地に足を運んで楽しみ、故郷へと帰って行った。

 

 そんななかの一人。

 リュヌドールは帰りの機内で浮かない顔をしていた。

 

(ハーツクライさん。調子悪そうだったな……)

 

 憧れた相手と走れる。

 それがとても嬉しかったリュヌドール。

 中継で見た日本ダービーでの最後の直線。

 先頭を走るキングカメハメハに、文字通り襲いかかる勢いで駆け上がる姿に心を奪われた。

 

 だが、先日のジャパンカップでは違った。

 伸びなかった最後。

 結果は10着。

 あの日、憧れるきっかけとなった走りからは程遠い走りだった。

 

 だが

 

(きっとまた、あの走りを見せてくれる。きっとそうに違いない……)

 

 そう信じ、確信しながら、窓の外の景色を見る。

 

(また日本に来たいな……)

 

 窓の外の景色。

 日本の景色が、少しずつ遠のいていった。

 

 

 

 それから数日後の事。

 

「うん。良いタイムだね」

 

 文乃はデビューを控えたディープの様子に頷いていた。

 その言葉に、もう一本走って来ると言って走り出すディープ。

 走るのが大好きで楽しそうに走る彼女の姿はみるみる小さくなっていく。

 

(夢は三冠、か……)

 

 以前ディープから聞いた夢。

 クラシック三冠制覇。

 しかもただの三冠ではなく、無敗の三冠ウマ娘になる事。

 そう自身たっぷりに話していたディープ。

 

 ウマ娘でそれを夢にする子は多い。

 無敗の三冠ウマ娘を夢とする子も多い。

 

 だがバ場との相性、得意な距離、レース場との相性、出走するライバルとの相性からその夢を諦める子も多い。

 

 まず立ちはだかるのはバ場だ。

 クラシック三冠レースはいずれも芝のレース。

 ダートが得意で芝は苦手ですではまず勝てない。

 なかには芝もダートも走れるという者もいるが、全員が全員そうというわけではない。

 

 それをクリアしたら次は距離適性。

 2000mの皐月賞。

 2400mのダービー。

 3000mの菊花賞。

 最長で1000mも差があるのだ。

 当然必要なスタミナも変わってくる。

 

 そしてレース場との相性。

 皐月賞を回避したキングカメハメハは、中山レース場との相性が悪いという理由だった。

 

 それを乗り越えた先に待っているのが共に出走するライバルの存在。

 最大の難所はやはりそこだろう。

 いくらバ場に対応できても、全ての距離に対応できても、レース場との相性が良くても、共に走るライバルが自分より強ければ叶わない。

 皐月賞を取ったダイワメジャーが、ダービーでキングカメハメハに敵わなかったように。

 

 そして一番大事なのは体だ。

 故障せず、病にかからずレースに出る。

 それがスタートラインだ。

 実際過去にはトウカイテイオーは無敗で皐月賞とダービーを制覇したが怪我で菊花賞に出走できず、無敗の二冠となってしまった。

 故に、体も重要なのだ。

 

 それでも、クラシック3戦全てに出たハーツクライとコスモバルクはその夢を叶えられなかった。

 皐月はダイワメジャーが。

 ダービーはキングカメハメハが。

 そして菊花賞はデルタブルースが。

 それぞれ制覇した。

 

 もちろん、全員勝つ気で走っている。

 負けて良いと思って走る者はいないだろう。

 

 その中でもディープは

 

(楽しみながら走っている……)

 

 そう。

 レースを楽しんでいるのだ。

 これは重要な事だ。

 何事も楽しんで取り組む方がモチベーションは上がるだろう。

 それに関して彼女は満点だった。

 むしろ、文乃が言わない限りずっと走り続ける。

 疲労すら心地良いと言うように、ただただ走り続ける。

 

(この子はどんなレースをするんだろうか……)

 

 と、今から楽しみな文乃だった。

 

 

 

「ハァァァァァッ!」

 

 12月12日。

 ハーツは練習用コースで走り込みをしていた。

 気合いもあり、速度も出ている。

 良い調子での走り。

 

 はたから見れば、だが。

 

「師匠〜! 良いタイム出てるッスよー!」

 

 と、タイム計測をしていたワンアンドオンリーが言うが

 

「……いや」

 

 体操服の襟を掴み、顎を伝う汗を拭うと再び走り出すハーツ。

 

「あっ、師匠〜ッ!?」

 

 まだ走るのかと思いつつ、慌ててタイムを測り出すオンリー。

 

「ッ! ラァァァァァッ!!」

 

 前を走っていた子を追い抜くハーツ。

 GⅠ勝利こそまだだが重賞1勝。

 2着と3着を1回ずつ取った彼女の走りは、追い抜いた子を圧倒させた。

 

 が

 

(まだ、まだだ……)

 

 ハーツは満足しない。

 どれほど良いタイムが出ても。

 どれほど良い走りをできても。

 

(これは……あの時の走りじゃない)

 

 あの日。

 ダービーの最後の直線。

 そこで見せた末脚。

 上がり3ハロンにて、1着を取ったキングの35秒4を超える34秒3というタイム。

 上がり1位を叩き出した走り。

 あの時の走りができないのだ。

 

(あの走りができたら、オレはきっと勝てる……)

 

 諦めたはずなのに消えてくれないキングの幻。

 それを追い越し、今度こそ消してみせる。

 振り切ってみせる。

 その一心で

 

「アァァァァァァァッ!!」

 

 彼女は走り続けた。

 

 

 

 昼。

 流石に練習を切り上げ、休憩する事にしたハーツ。

 

(まだ……こんなんじゃ勝てない)

 

 だが頭の中はレースの事でいっぱいだった。

 

(バートラムはこの前のレースで勝った……オレだって。オレだって)

 

 12月4日に行われたステイヤーズステークス。

 それに出たバートラムは2着に3バ身差つけての勝利を手にしていた。

 

 その勝利に、同じチームのメンバーとして喜んだハーツ。

 だが、5月の京都新聞杯以来勝ちがないハーツは焦りを感じていた。

 

 自分が勝てない。

 11月にデビューしたローゼンクロイツも2戦目の未勝利戦で勝利し、続く京都ステークスでも勝った。

 

 仲の良いユートピアも10月のマイルチャンピオンシップで勝った。

 

 チームの中で自分が勝てない。

 自分だけが勝てていない。

 

(どうすればもっと速く走れる? どうすれば勝てる?)

 

 タイムを測る際、オンリーに撮影してもらっていた動画を見るハーツ。

 フォームに乱れは特に見られない。

 いつも通り走れているはずだ。

 

(オレは、ここが限界なのか?)

 

 思わずそう思ってしまう。

 これ以上伸びないのではないか。

 限界点ではないのか。

 

 分かっている。

 デビューしても勝てないウマ娘がいる事も。

 そもそもデビューできない子だっている事も。

 

 デビューできない子、勝てない子からしたら自分は良い方なのだろう。

 デビューして勝てているのだから。

 それでも夢見てしまう。

 上を目指したくなってしまう。

 

 なにより

 

(……クソッ。分かってんだよ)

 

 走らないのか、と言うように前に立って自分を見ている幻影。

 あの日、追い付けなかった背中。

 追い付く前に。

 追い越す前に。

 冠を置いた王。

 

 追い付くのは諦めたはずだった。

 

 でも、できなかった。

 ジャパンカップでも自身の前を走った幻影。

 

 キングが引退したため直接対決で勝つ事はできないが、擬似的に追い越す方法はある。

 それは、東京レース場2400mでレコードを出す事。

 簡単に言えば、キングカメハメハが日本ダービーで出した2分23秒3の記録を、ダービーと同じ東京レース場で行われる芝の距離2400mのレースでレコードを出す。

 そうする事でキングを超える。

 そのレースもダービーと同じGⅠでだ。

 

 ジャパンカップの後からそう考えるようになった。

 でも、あの日ダービーで行った走りをできないでいたハーツ。

 

 次のチャンスは来年のジャパンカップだろう。

 前回と同じように、来年も世界の強豪が海を超えてやって来るだろう。

 そこで芝2400の記録を塗り替えれば、キングを超えたと言って良いだろう。

 

 一度は諦めながらも幻影を追いかけてしまったハーツが、今度こそその幻影を振り払うために行き着いた答えだった。

 

 だから。

 だからこそ。

 今のままでは勝てないと分かってしまう。

 そう思ってしまう。

 

 だからもっと強くなるために。

 もっと速く走れるようになるために。

 トレーニングをしてしまう。

 たとえ疲労で体が悲鳴をあげても。

 勝ちたいという願いが体を突き動かしてしまう。

 

(先輩のフォームを参考にするか?)

 

 偉大な記録を持つ先輩の走る姿を参考に、自身のフォームを改善すれば記録が良くなるかもしれない。

 そう思うハーツには、先程オンリーが言った良いタイムが出ているという言葉は届いていなかった。

 

 次に予定しているのは有マ記念。

 ファンによる人気投票によって出走するメンバーが決まる。

 強いだけでは出られない。

 ファンと共に走るレース。

 

 それの投票に、ハーツの名前があったのだ。

 それも、このまま行けば出られる順位にだ。

 

(これで勝ったらオレは……)

 

 キングカメハメハが苦手とした中山レース場で行われるレース。

 だが

 

(いや違うな……)

 

 それで勝ってもキングを超えた事にはならない。

 

(来年のジャパンカップ……そこで必ず勝つ。そして)

 

 超えてやる。

 そう思った時だった。

 

「あの〜、少しよろしいですか?」

 

「……ん?」

 

 後ろから話しかけられ、振り返るハーツ。

 そこにいたのはスーツ姿の男性だった。

 

「道に迷ってしまいまして。事務室まで案内していただけないでしょうか」

 

「あ、あぁ……良いけど」

 

 そう返しながら立ち上がり、事務室まで案内するハーツなのだった。

 

 

 

「って事があってよ」

 

 と、部室に戻ったハーツは先程道案内をした事をユートピアに話していた。

 

「そっか。それはまぁ……大変、ではないか」

 

「まぁな。でも迷う人もいるんだな」

 

「ここも広いからね」

 

 と返すユートピア。

 

「にしても何しに来たんだろうな」

 

 とパイプ椅子に座り、水を飲むハーツにユートピアは続ける。

 

「……痩せたね」

 

 と。

 

「そうか?」

 

「うん。線が細くなったと思う。ううん、細くなったよ」

 

 現にハーツの体重は菊花賞から減っており、体の線が細くなっていた。

 

「ちゃんと食べてる?」

 

「あ、あぁ……まぁ、食べてはいるよ」

 

 そう言うハーツだが食べる量は減っていた。

 さらにメンタル面も不調。

 キングの幻影を振り払うための過度なトレーニング。

 体重は増えるどころか維持もできずに減っていっていた。

 

「……まぁ、ちゃんと食べるよ」

 

 と気まずそうに返しつつ、水を飲むハーツ。

 と、そこへ

 

「おう、いたのか」

 

 文三が戻って来た。

 

「んだよ。いたら悪いのか?」

 

「いや、最近は走ってばっかだったからな。久し振りだなって思っただけだ」

 

「まぁ、確かにハーツは最近ここにいる時間より走っている時間の方が長かったもんね」

 

「……フン」

 

 文三とユートピアの言葉に鼻を鳴らすハーツ。

 そんな彼女をみて苦笑いすると、文三は

 

「ちょっと今からお客さん来」

 

 来る、と言い切る前にハーツとユートピアは部屋を綺麗に片付け、なんとこれから来るお客さん用にお茶まで淹れていたのだ。

 さらに文三が出すであろうお菓子のお皿まで用意されていた。

 

「……お前らにはやらんぞ」

 

 が、あくまで出すのは客に。

 ハーツ達には出さないぞと文三が言うと

 

「ハァ〜無いわ〜」

 

「全く我々の気持ちを少しは考えて欲しいですわ〜」

 

 と、淹れたばかりのお茶を飲みながらグレる二人。

 ちなみにだがユートピアが文三のお茶を飲み、ハーツが客に淹れたお茶を飲んでいる。

 

「あのなぁ。これから来る人はウチでサブトレやりたいって言ってくれた人なんだよ。ようは面接だ。なんならお前らも話すか?」

 

「でもお菓子出ないんだろ?」

 

「出ないな」

 

「じゃあ良いや」

 

「私もパス」

 

「あのなぁ……はぁ」

 

 と肩を落とす文三。

 そしてちょうどその時だった。

 部屋のドアがノックされた。

 

「開いてるよ」

 

 と返すとドアノブが回り、尋ね人が姿を見せる。

 スーツを着た男性。

 髪は短めで清潔感があり、柔らかい笑みの持ち主だった。

 そんな彼を見てハーツは

 

「あ、あんたさっきの!」

 

 道案内した相手だった事に驚き、思わず指をさしてしまうのだった。

 

 

 

「まさかすでに知り合いだったとは……えっと」

 

「私の名前ですね。私は、アルフォンス・オルメル・ブランと言います。フランスから来ました」

 

「アルフォンスさん。ずいぶんと日本語が上手なんですね。いやはや、私としては助かります」

 

「そういやトレーナーはフランス語話せんの?」

 

「おーぅ……一応昔、フランスに行った事はあったからちょっとだけな」

 

「トレーナーになる前に研修に行ったんだっけ?」

 

「おう。もうだいぶ前の事だからなぁ……いろんな人にお世話になったけど、元気かなぁ」

 

「トレーナー。戻って来てください」

 

「おっといけねぇ」

 

 ユートピアに言われ、アルフォンスに意識を戻す文三。

 

「じゃあ、始めるか」

 

「はい! よろしくお願いします」

 

 こうしてアルフォンスの面接が始まった。

 その結果は……

 

 

 

「んじゃあ来週から頼むよ」

 

「はい!」

 

 サブトレーナーとして採用決定。

 早速来週からお願いする事になった。

 日本に来る前からフランスでトレーナーとして活動していた事もあり、即戦力としての採用となった。

 

 

 

 そして12月19日。

 日曜朝の9時。

 

「おはようございます!」

 

 アルフォンス。

 文三のチームにサブトレーナーとして正式に参加。

 おろしたてのジャージ姿で気合いバッチリの彼に文三は

 

「じゃあまずはリーヴァ、ダーク!」

 

 二人を呼んで

 

「まずはこの二人からいろいろ聞いてくれ」

 

 と、ダイタクリーヴァとダンスインザダークを紹介するのだった。

 

 

 

「という訳でドリンクとかは各々で好みが分かれているから間違えないように」

 

「は、はい!」

 

「そんな硬くならなくても。慣れるまでは私達も一緒に作るから大丈夫だよ」

 

「ありがとうございます」

 

 二人の説明を受けながらメモを取るアルフォンス。

 ウマ娘個人個人でもちろん好みが違う。

 甘い系が好きな子もいれば酸味が強いのを好む子もいる。

 1回にたくさん飲む子もいれば、飲む量は少ないが回数が多い子もいる。

 1本走る度に飲む子もいれば、何本か走ってから飲む子もいる。

 なので各ウマ娘のドリンクの減り具合も違う。

 

 そういった事も把握し、サポートしなくてはならないのだ。

 一応、リーヴァとダークが慣れるまではサポートに入るので間違える事は無いだろう。

 それにアルフォンスもフランスではトレーナーをしていたため、この手の作業には慣れている。

 なんとかなるだろう。

 

 そう思っていた。

 

 

 

(えっと……こっちはこの粉末を小さじ2杯入れて、こっちは小さじ2杯と半分……)

 

 現在、文三のチームにはハーツやユートピアの他にダイタクバートラムとローゼンクロイツ。

 デビュー前ではクラレント、スリープレスナイト、リーチザクラウン、ローズキングダム、ロジック、ワンアンドオンリーがいる。

 合計で10人。

 つまりドリンクの好みも10通り。

 

 単純に甘い系が好きならまだ作りやすいので良いが、甘酸っぱいのが好きなタイプだったり、トレーニングに応じて変わるタイプもいる。

 その日の天気や気温、湿度で変わる子もいる。

 そういうのをいきなりやらせるのは大変だろうとまだデビュー前で余裕のある子達のドリンクを頼まれたアルフォンス。

 渡されたメモを見つつ、ボトルを確認して粉末を入れたりするアルフォンス。

 

「こ、これで良しのはず……」

 

 助かったのはメモに細かく書かれていた事だ。

 メモ通りにワンアンドオンリーのドリンクを作り終えたアルフォンス。

 そんな彼を見ながらハーツ達のドリンクを手際良く作っていくリーヴァ達。

 

 そして作り終えたドリンクをそれぞれタイミングを見て渡す。

 

「ありがとうございますッス! いただきますッス!」

 

 アルフォンスから受け取ったドリンクを早速飲むオンリー。

 グビグビグビ〜ッと飲んでいくオンリー。

 その飲みっぷりはそのままジュースのCMに使えそうなほど良い。

 そして

 

「プハァ〜ッ!」

 

 飲み干して

 

「これ師匠のお気に入りの味ッスね!」

 

 なんとハーツのドリンクだった。

 

「え!? ちゃんとオンリーさんのを作ったはずなんですけど」

 

「うん。オンリーちゃんのを私もお願いしたはずだけど……」

 

「まぁ隣に置いてあったし、取り違えちゃったんじゃない?」

 

 とアルフォンスをフォローするリーヴァとダーク。

 だが、となるとオンリーが飲むはずだったドリンクの行き先はどこに……

 

「……おい」

 

 と考えた時、アルフォンスの後ろから低い声がかけられた。

 その低さに、恐る恐る振り返るアルフォンス。

 そこに立っていたのは

 

「これ、オレのじゃねぇぞ」

 

 オンリーのボトルを持ったハーツクライだった。

 中身を飲んだのだろう。

 ボトルの蓋が開いている。

 自分用のドリンクだと思って飲んだら違う味だった事もあり、その顔はかなり不機嫌そうである。

 が

 

「……まぁ、良いか」

 

 今日のドリンク担当がアルフォンスだった事から、初めてで間違えたのだろうと判断。

 実際は取り違えの可能性もあるのだが、それを追求してドリンクが出て来る訳ではないので

 

「喉乾いたから早めに頼む」

 

 そう言って一旦休憩に入るのだった。

 

 

 

 

 

 ハーツが休憩に入った頃。

 奈瀬文乃は阪神レース場にいた。

 担当するウマ娘がデビューするのだ。

 出走するのは担当含め9人。

 皆この日のためにトレーニングをして来た。

 トレーナーと共に。

 チームの仲間と共に。

 

 そんな彼女達が今回走るのは芝2000m。

 

 ターフの上に姿を現す9人のウマ娘。

 1枠1番ランドフラッグ。

 2枠2番コンゴウリキシオー。

 3枠3番テイエムカイブツ。

 5枠5番タイペルラ。

 6枠6番コンバットマニア。

 7枠7番アキノセイハ。

 8枠8番パルテアンショット。

 9枠9番ヒカルゼット。

 

 そして4枠4番。

 そこに文乃が担当するウマ娘はいた。

 

 鹿毛色の長い髪と同色の尾。

 青い瞳を持った、おとなしそうな印象のウマ娘。

 初めてのレース。

 今までは見る側だったが、見られる側に。

 走る側になる事が楽しみという様子の彼女。

 

 だがそんな彼女も、ゲート後部が閉められると雰囲気が変わる。

 

 早く走りたい。

 走りたい。

 走って。

 走って。

 走って走って走って。

 走りたい。

 

 そんな空気を纏っている。

 

 そんな彼女を見て文乃は小さく呟く。

 

「さぁ、行って来い」

 

 と。

 それが聞こえたのかは分からない。

 ただそのタイミングで、ゲートの中の彼女は文乃の方へ視線を向ける。

 

 4枠4番。

 そこにいる彼女の名前。

 

 それは、ディープインパクト。

 

 彼女のデビュー戦が、幕を開ける。




お読みくださり、ありがとうございます。

やっとここまで来れました……

彼のモデルは、もちろんあの人です。

ハーツ達世代のクラシックシーズンもいよいよ大詰め。
そして次の世代が……

次回も、お楽しみに!
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