ウマ娘〜想いを背負って繋いで〜   作:にゃんころもち(黒糖)

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オリキャラ出ます。


9話〜新入生〜

 

 4月。

 舞う桜が新入生を祝福するのはトレセン学園も同じだった。

 

 途中編入もそれなりにある学園だが、やはり入学式は特別なのだ。

 

 ブラックタイドの妹であるディープインパクト。

 その他にもスズカフェニックス、アドマイヤジャパン、カネヒキリ達が入学。

 

 将来レースで活躍する事を夢見ながら制服を纏い、トレセン学園の一員としてその道を歩み出す。

 

 そんな入学式から数日。

 新入生の話題はやはり……

 

 

 

「ねぇねぇ! 今度の皐月賞は誰が勝つかな!」

 

 4月18日に行われる皐月賞。

 自分達もいつか走りたいと願う。

 取りたい目標。

 クラシック三冠のひとつ。

 

 ハーツクライ、ブラックタイド、ダイワメジャーが今の所出る事を表明している。

 先輩が走るGⅠレースだ。

 注目するなという方が無理だ。

 

 それと同じように桜花賞や春の天皇賞(春天)も話題に上がっている。

 

 それでもやはりなのだろう。

 クラシック三冠に対する注目度は高い。

 

 ちなみにだが、間近に迫った桜花賞にはスイープトウショウ、ダンスインザムードが出走する予定である。

 また春天はゼンノロブロイ、ネオユニヴァース、ナリタセンチュリーが出走する事となっている。

 

「ねぇねぇ! コースで先輩達が練習しているって! 見に行こうよ!」

 

「え、邪魔にならないかな」

 

「邪魔にならないように見れば平気よ平気」

 

「だよね。行こう行こう!」

 

 と盛り上がる新入生達。

 そんな彼女達が向かったコースでは……

 

 

 

「凄い……」

 

 目の前を駆け抜けたネオユニヴァースの姿に、新入生達は思わずそうこぼしていた。

 ネオユニヴァースだけではない。

 スイープトウショウやゼンノロブロイも練習で走っている。

 

 そんな彼女達のタイムを計るトレーナーの顔は真剣。

 走っている彼女達の顔も真剣だ。

 そんな空気に間近で触れる新入生達。

 

 いつかは自分達もあんな風になれるのだろうかと思いつつ、ネオユニヴァース達のトレーニングを見ている。

 

 そんな時だった。

 

「っあ〜……寝み」

 

 欠伸を隠す事なくしつつ、ジャージ姿のウマ娘が姿を現した。

 

「うそ……あの人って」

 

「今度皐月賞出るって言う」

 

 そのウマ娘と言うのはダイワメジャーだった。

 ダイワスカーレットの姉であり、妹と同じ明るい茶の髪を持っている。

 ただし妹が長いツインテールなのに対しダイワメジャーは短めにしており、結んでもいない。

 

 そんな彼女だが、デビュー戦の際にパドックでおもむろに横になって寝そうになるなどかなりマイペース。

 ちなみに戦績だが4戦1勝。

 他にも2着3着4着を一度ずつ取っている。

 

 そんな彼女だが伸びをしつつ階段を降りると軽く準備運動をしてコースに入り、軽く流すと言うように走り出す。

 が、その走りは流すと言うには速かった。

 

 本番の走りと言うには速さが足りないが、ウォーミングアップと言うには速い。

 そんな走りをしていた。

 

 そんな彼女もトレーナーの姿を見付けたらスピードを落とし、駆け寄る。

 そのままトレーナーが持って来てくれた飲み物を口にすると、飲み物と共に持って来てくれた靴に履き替える。

 それは先ほどまで履いていた物より、靴の裏に付いている蹄鉄が重い物。

 徐々に重い物に変えていき、脚を鍛えるのだ。

 

 重い靴に履き替えて走り出すダイワメジャーだが、先ほどとほとんど変わらない走りをして見せている。

 ある程度重さに慣れたら次の重さに変えていく。

 それを繰り返しながら走るダイワメジャー。

 

 それなりの重さになった所から若干速度が落ちはしたが、難なく走り抜けている。

 

 その様子に新入生達は言葉を失っている。

 彼女達も重い靴でのトレーニングをした事はある。

 おそらくだがそれをした事の無いウマ娘はいないだろう。

 そう言えるぐらいメジャーなトレーニング方法だ。

 だが、それを履いて普段と変わらない走りをできるかと言われたら別だ。

 

 最初は遅いが徐々に慣らして速度を上げていけばできるだろう。

 だがダイワメジャーはその慣らしを一本目の中で行ない、途中からはもう普通に走っている。

 

 そんなコースに次に姿を現したのは黒髪のウマ娘。

 

「あっ、ハーツクライ先輩だ」

 

「かっこいい……」

 

 皐月賞に向け、トレーニングをしに来たハーツクライ。

 文三と共に来た彼女は彼と少し話してからコースを走り出す。

 

 そんな姿に新入生達は

 

「かっこいい……」

 

 と呟いている。

 イケメン系の顔に背も高いハーツ。

 レースを中継で見たりしていた新入生の中には、すでに彼女に夢中な者もいた。

 そんな彼女達に見られながら練習をするハーツ。

 そんなハーツを見る文三。

 

(……ふむ)

 

 腕を組みながら見る。

 ちょうど彼女がコースを1周し終わると手招きをする。

 

「どうした。フォームでも崩れてたか?」

 

 駆け寄るや肩を軽くすくめて言うハーツ。

 そんな彼女に文三は

 

「今日のトレーニングだが、室内に変える」

 

「はぁ? 急にどうしたんだよ」

 

 訳が分からないと言った様子のハーツ。

 今は調子が良いんだから走らせろと言っているようでもある。

 そんな彼女に文三は言う。

 

「集中できていねぇだろ。見ていて分かったぞ」

 

「っ……いや、あれは」

 

「皐月はもう今月だ。時間もそんなに余裕があるわけじゃない。集中できないトレーニングより集中できるトレーニングだ。分かったら行け」

 

「……分かったよ」

 

 納得いかないという顔をしつつも指示に従い、コースを去るハーツ。

 そんな彼女を見て、来たばっかりなのにもう終わりなのかと不思議そうな新入生達。

 なかには1周走って具合が分かるなんて凄いと盛り上がっている者もいる。

 

 だがそんな事が理由では無い。

 

 

 

(そろそろ限界か……)

 

 室内のトレーニングルームに移り、ランニングマシーンで走るハーツを見ながら思う文三。

 

 限界、と言うのはトレーニングに関してだ。

 実は文三が担当するウマ娘はハーツの他にもいたりする。

 屈腱炎の発症により、たった8戦で一線を退いたダンスインザダーク。

 ちなみにだがこのダンスインザダークは、先ほど言った桜花賞に出る予定のダンスインザムードの姉である。

 4月4日(先日)行われた、芝1600mのGⅢレースであるダービー卿チャレンジトロフィーにて7着を取ったユートピア。

 GⅡレースの阪神大賞典で1着、春の天皇賞で3着、宝塚記念で6着を取った後に足を故障して休養に入り、4月から再始動したダイタクバートラム。

 デビューに向けてトレーニング中のローゼンクロイツ。

 他にも一人いるが、レース中に脚の腱が断裂するという大怪我を負って現役を引退した子もいる。

 

 この5人が現在文三が担当しているウマ娘であり、ハーツとチームを組んでいる。

 が、ハーツが彼女達と練習した事は無い。

 

 これはハーツの性格が関係している。

 一言で言うならば彼女はかなり繊細なのだ。

 神経質なレベルのそれは、先ほどの練習での集中にも響いていた。

 環境の変化、周囲からの注目。

 全てが彼女にとって雑音になってしまう。

 

(この前のレースで慣れてくれればと思ったんだがな……)

 

 GⅢレースであるきさらぎ賞で重賞の空気に慣れてくれれば思っていた。

 が、次走るGⅠに対する注目度はそれ以上だった。

 そもそも注目される事は分かっていた。

 だから鳴らすためにきさらぎを走らせたのだ。

 

 だがその注目は文三にとっては想定内でも、ハーツにとっては想像以上だった。

 

 故に文三は考えた。

 予定を早めて先輩と会わせてトレーニングをさせてみるか、と。

 他にも自分にはできない相談も、同じウマ娘にならしやすいだろうと考えたのだ。

 

 さらに言うなら既に彼の元には新入生の見学希望届も来ている。

 それも4人も希望者がいるのだ。

 

 ハーツにもチームの後輩ができるかもしれない。

 そうなった際に、後輩に頼られて集中できませんでしたとなっては大変だ。

 一応、アルティマトゥーレやファルカタリア、デルタブルースと練習をする事はあるが、時間が合った時とかなので必ず一緒にするわけではない。

 

 誰かと練習する事には慣れていても、チームとして長時間する事にはまだ慣れていないだろう。

 

 そういう点を踏まえて文三は、ハーツにチームでのトレーニングをさせるかと考えるのだった。

 

(にしても……)

 

 持っていた書類を見て思う。

 そこに記されているのは文三のチームを見学したい、体験したいという規模者の名前。

 ロジック、ローズキングダム、スリープレスナイト、クラレントの4名のウマ娘を思い出す。

 

 皆、それぞれ夢を抱いた、希望に満ちたキラキラとした顔をしている。

 

(……みんな、無事に現役を終えて欲しいんだけどなぁ)

 

 思い出すのは自分のチームのメンバーの一人。

 先ほど言った、レース中に脚の腱が断裂するという大怪我を負ったウマ娘。

 その名前はダイタクリーヴァ。

 ダイタクヘリオスとダイタクバートラムの親戚である。

 

 そんな彼女の戦績は19戦7勝。

 スプリングステークスやシンザン記念、そして京都金杯を2連覇という記録がある。

 ダービーではエアシャカールにクビ差で負けて2着。

 同年のマイルチャンピオンシップではアグネスデジタルに半バ身差で破れて2着。

 翌年の京都金杯ではアグネスデジタルにリベンジを果たす翌レース後に左足を骨折。

 療養し、秋に復帰するもレースで好成績を出せずに年を越し、翌年に京都金杯で勝利を収めて連覇する。

 

 そして同年6月に行われた宝塚記念にて18着にハナ差での17着。

 そしてレース中に屈腱を断裂していた事が判明し、そのレース人生に幕を下ろした。

 

 その後屈腱の再建手術を受け、日常生活を送れるまでには回復。

 リハビリを乗り越え、歩けるようにはなったがレースに通用する脚は失ってしまった。

 

 その事もあり一時は退学を考えた事もあったが、怪我をしたウマ娘のケアサポート方面に進んでみてはどうか、学園を去るにはまだ選択肢は多く残っていると文三に言われて踏みとどまった経歴を持つ。

 

(皐月もだが、バートラムとクロイツの方も見てやらねぇとだしなぁ……)

 

 そう思いながら文三はハーツに声をかける。

 

「おいハーツ。ちょっと良いか? お前に会わせたいやつらがいるんだ。トレーニングが終わったらすぐ帰らないで、少し待っててくれ」

 

「……おう。分かった」

 

 文三の真剣な様子に頷くハーツなのだった。

 

 

 

 その頃、コースを走るブラックタイドを見る黒髪のウマ娘がいた。

 ウェーブのかかったミディアムヘアは前髪が長めで目元にかかっている。

 その髪の内側と左前髪の一部に明るい金色の髪。

 

 そんな彼女の名前はハヤテエンペライザ。

 右耳に、6とSを組み合わせたデザインの耳飾りを着けている。

 

 露わになっている左目はジッとブラックタイドを見ている。

 トレーニングはどんな事をするのかではなく、ただただその走る姿を見ている。

 が、ふとその視線が揺れる。

 揺れた先。

 視線が移った先にいたのはブラックタイドの妹のディープインパクト。

 

「……一緒に、走りたい」

 

 そんな彼女を見てボソリと。

 風に掻き消えるほどか細い声で呟く。

 その時だった。

 

「……!?」

 

 彼女は驚き、一歩下がった。

 果たして何を見たのか。

 それは

 

 

 

「えぇ。えぇ。私も早く走りたいです。もちろん、あなたとも」

 

 ハヤテの言葉が聞こえたわけじゃない。

 だが、意思は伝わった。

 そう言うようにディープは彼女の方を振り返り、そう呟き返していた。

 

 そんな彼女の姉であるブラックタイドはちょうど走り込みを終えようと、走るスピードを落としていた。

 そしてそのままディープの前で止まり、息を整えてコースから出ようとする。

 

「……タイド姉様?」

 

 出ようとしてふと立ち止まった相手に首を傾げるディープ。

 視線の先にいる姉は、どこか左足を気にしている様子だが

 

「……いや、なんでもない」

 

 そう言ってコースを出たのだった。

 

 

 

 そして4月11日。

 阪神レース場で行われた桜花賞はダンスインザムードの勝利で幕を下ろした。

 

 

 

 そして翌週の17日。

 デルタブルースは福島レース場にいた。

 

(今日こそ、勝つ!)

 

 6回目のレース。

 ここで必ず勝つ。

 そう、気合を入れて彼女はターフに立った。




お読み下さり、ありがとうございます。

オリキャラのハヤテちゃん。
知り合いが作ってくれましたキャラに、とある競走馬の要素を加えて生まれました。
半分モデルになった馬的に、多分書くのがすごく楽しい子になりそうな予感です。
感謝!

そしてあの子が入学。
書きたい事がいっぱい過ぎて大渋滞ですが、まずは皐月賞。
始まります。

次回もお楽しみに。
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