東方冒険録   作:らずべる

14 / 17
遅くなってしまい申し訳ありません!鈴風です。
リアルの方で忙しいとはいえ三ヶ月以上空いてしまうとは…
とにかく今回は人間の里 後編です。
人里はほとんど出てきませんがそこのあたりは気にしないでください笑
それでは、本編へどうぞ。



第六章 人間の里 後編

師走十四日午四時 人間の里 大通り

 

「さて、そろそろ帰りましょうか」

 

そう言って波音(はのん)は大通りを歩きだした。

時間もお昼時を過ぎて通りを歩く人も多くなってきている。

 

「太子様、今度はどこにいくのじゃ?」

 

向こうから聞こえた明るい声に波音がそっちの方を見ると、飛鳥時代のような服を着た三人組が歩いてきている。

若干一名は幽霊らしくふよふよと浮いていた。

 

「あの人たちは確か…仙人だったかしら?確か豊聡耳神子とかいう…」

 

「お主、太子様のことを知っておるのか!

見たところ外の人のようだが」

 

波音が呟いていると先程の白服の少女が駆け寄ってきた。

…ものすごく嬉しそうである。

 

「えぇ、まぁ名前は存じ上げておりますが…

貴女は確か…物部布都さんだったかしら?」

 

「おお、合っておるぞ我も有名になったものじゃのう」

 

白服の少女、布都は一人で納得して嬉しそうである。

 

「五月蝿い」

 

「うへぁっ!」

 

ふよふよと浮かんでいた幽霊の少女が呟いたかと思うと突然布都がバチッという音と共に飛び上がった。

どうやら彼女の雷が落ちたようである、といっても静電気程度だったが。

 

「今度は落とすよ」

 

「…」

 

「はじめまして、蘇我屠自古さん」

 

「あら、私のことも知ってたのね」

 

「ええ、まぁ」

 

「あら、嬉しいわね、それじゃあ私たちはこれを引っ張って帰るから、貴女も気をつけて帰りなさいな」

 

「えっ、あ、はい」

 

「こら~屠自古離せ~」

 

そういいながら屠自古は布都の襟を掴むとそのまま引っ張って去ってしまった。

 

「…帰る予定だったからよかったけどあの子は…貴女もすみませんね、お名前は?…そう、鈴風波音さんっていうのね。それではお気をつけて」

 

その場に残されていた神子は呆れたように呟いた後、波音と少し話をすると屠自古の後を走りながら追いかけていった。

そして波音達は暴れる布都に雷が落ちていくのを眺めながら人里の外に向かった。

 

 

師走十四日未一時 魔法の森

 

波音達は人里を抜け、博麗神社に向けて森の中を歩いていた。

菖蒲(あやめ)は既に鞄から抜け出して波音の肩の上にいる。

 

「あれ?あの人って…」

 

波音が目の前から歩いてくる少女を見て呟く。

少女も波音に気がついたらしく波音の目の前で止まった。

 

「あら、その人形、私が神社に持っていったものよね?」

 

「ええ。霊夢さんからそう聞きました」

 

「なるほど、貴女が鈴風波音さんね」

 

「ええ。初めまして」

 

波音が挨拶をすると菖蒲がふよふよとアリスの方に飛んでいった。

嬉しそうである。

 

「え…」

 

そんな菖蒲の様子を見てアリスが固まった。

 

「ねぇ、貴女。今この人形を操っていたりはしていないわよね?」

 

「ええ、特になにもしてませんよ?どうかしました?」

 

波音の返答を聞いてアリスはなにやらぶつぶつと呟いていたが顔をあげると波音に話しかけた。

 

「ちょっと私の家まで来てくれないかしら。その人形を調べてみたいのだけれど」

 

「ええ、別に構いませんよ」

 

そう言って波音は菖蒲を捕まえるとアリスの後についていった。

 

 

師走十四日未一と半時 アリスの家

 

「はい、紅茶よ」

 

波音たちがアリスの家に上がると、アリスが紅茶を持ってきた。

 

「ありがとうございます」

 

菖蒲はテーブルの上にちょこんと座りクッキーを食べている。

 

「…さて、早速だけど少しこの子の事を調べさせてもらっても大丈夫かしら?大丈夫よ、魔法で調べるだけだから傷付けたりしないわ」

 

「菖蒲は大丈夫?」

 

波音の問いかけに菖蒲がうなずく。

 

「それじゃ、少し失礼するわね」

 

そう言ってアリスが指を動かすと魔法で出来た糸のようなものが菖蒲に張り付いた。

 

「少し動けなくなるけど我慢してね」

 

そう言ってアリスは指を動かし続ける。

 

「調べてる間に少しこの子について説明するわね」

 

相変わらず指を動かし続けながらアリスが波音に話しかけた。

 

「お願いします」

 

「まず、この子は私が普段から連れている上海人形と同じ行動を命令に入れてあるわ」

 

「その中に結界が壊されたら知らせること、そして貴女を護衛することを追加してあるの」

 

「それでこの際重要なのは命令以外のことは基本的に出来ないということよ」

 

「人形たちは少しだけど自我を持っていて自分の意思でどの行動をするかの選択は出来るの。でも命令以外のことは出来ない」

 

「そうなんですか?私が来たときから今のような感じだったのだけど」

 

アリスが淹れてくれた紅茶を飲みながら波音が相づちを打つ。

 

「結界の影響もあるのかしらね。まぁとにかく普通の人形は物を食べたり私に会ったことで喜んで飛び回ったりはしないのよ」

 

「てっきりそういうものだと思ってましたけど異常だったんですね」

 

「…さて、終わったわ。とりあえず結論から言うけどこの子は生きているといっても過言ではないわ」

 

「生きている?」

 

そう言って波音はようやく動けるようになった菖蒲を膝の上に置いた。

 

「ええ、魔法使いが捨食の術と拾虫の術を手に入れると自らの魔力を生命力として活動するようになるのは知ってる?」

 

「ええ、本で読みました」

 

「私の人形たちは動くのに必要最低限の魔力を与えてやることで動いているのよ」

 

「私も魔力で生きているから多くを分け与えることは出来ないのよ。だから人形たちは命令以外の余分な行動に魔力を回せないのよ」

 

「その点、この子は私が与えた魔力の何倍もの魔力を保有しているのよ。もはや人間一人が生活できるレベルでね」

 

「魔力が多いとどうなるんですか?」

 

「簡単に言えば命令の遂行に必要ない余分な所に魔力を回せるようになるわ。例えば食べたものを燃やして消費するとか、より多くの行動パターンを取るとかね」

 

アリスはここまで言って一息つくと紅茶を一口飲んだ。

いつの間にか菖蒲は眠ってしまっている。

 

「たしか貴女の能力、流れも操れるのよね?」

 

「ええ、まぁ一応…」

 

「多分それが無意識的に働いてこの子の魔力を増やしていたのね。今みたいに抱えている時とかに」

 

「そうだったんですか」

 

そう言って波音は眠っている菖蒲の頭を撫でた。

 

「そうね…これだけ魔力があるのなら軽い弾幕位なら自分の力だけで放てそうね」

 

「菖蒲が弾幕を?」

 

「そう。少し弄らせてもらうわね」

 

再びアリスが指を動かすと魔力の糸がまた菖蒲に張り付き、暫くして戻って行った。

 

「はい、出来たわよ。これで貴女を守るときに弾幕も放てるようになったわ。少しコツを掴むのに時間がかかるかもしれないけどね」

 

アリスがそう言うとさっき起きた菖蒲が手を合わせて菖蒲より大きな弾幕を作り出した。

 

「ちょ、ちょっと出力高過ぎ!おさえて、おさえて」

 

驚いたアリスがストップを掛け、菖蒲は弾幕を菖蒲の頭サイズまで縮めた。

 

「それで、そのまま放てば弾幕として使えるわ…『ガシャーン!』あ…」

 

アリスがそう言った瞬間菖蒲が弾幕を放ってしまい正面にあった窓ガラスが割れて散らばった。

 

「ああぁっ!アリスさんすみません!」

 

「大丈夫よ、気を付けなかった私もわるいし」

 

そう言ってアリス、波音、菖蒲の三人はガラスを拾い始めた。

 

「よし。後の細かいのは人形に任せておきましょう。誤爆は私もよくやったから慣れているわ。波音ちゃんも菖蒲ちゃんもありがとね。」

 

そう言ってアリスが指を動かすと、何処からか箒や雑巾などを持った人形たちが現れて掃除を始めた。

 

「さて、私が話したかったことも話終わっちゃったし神社まで送ってあげましょうか?」

 

「いえ、大丈夫です。道は覚えてますから。お茶、ごちそうさまでした」

 

「菖蒲ちゃんのことで何かあったらいつでも来てね。私に出来ることがあればやってあげるわ」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って菖蒲を抱き抱えると、波音達はアリスの家を後にした。

 

 

師走十四日羊二時 霧の湖

 

「確か蛮奇さんこっちに来るって言ってたよね」

 

そう呟いて波音が凍りついている湖の方に向かうと視界の先の方に蛮奇がうろたえているのが見えた。

 

「あら、蛮奇さんどうしたんですか?」

 

「あら波音さん。わかさぎ姫に会いに来たのだけれども湖が凍ってしまって出れなくなっちゃってるのよ」

 

波音の問いに対し蛮奇は少し驚いたように返答した。

よくよく見ると凍りついた湖のそこでわかさぎ姫もうろたえているのが見える。

 

「どうやらあの氷精が分厚くしたらしくてね」

 

そう言って蛮奇が指差した方を見ると氷精、チルノが色々と凍らせていた。

 

「この辺りだけやたら寒いのはチルノのせいだったのね。

まぁ、あれは放っておいて氷を割るのを優先しましょうか。

光符『シャイニングブレイズ』!」

 

「そうね、うろたえていても仕方がないしやってみましょう。

飛頭『フライングヘッド』!」

 

波音と蛮奇が段幕を打ち始めるとわかさぎ姫もスペルカードを取り出して加勢してきた。

氷の方を見ると少しひび割れているのがわかった。

 

「ほんっとに分厚いわねこの氷。

後であの氷精は倒しておくとして…これでどうかしら?

眼光『ヘルレイズ』!」

 

軽く悪態を吐きながら蛮奇がスペルカードを追加すると、ヒビの入っていた氷はガラガラと崩れ落ち、しばらくして頭を擦りながらわかさぎ姫が上がってきた。

 

「わかさぎちゃん大丈夫?」

 

「大丈夫、氷が当たっただけ。

いや~湖の外に出れて助かったよ。ありがとね、蛮奇ちゃん…と貴女は?」

 

「鈴風波音です。よろしくお願いしますね」

 

「よろしくね、波音ちゃん」

 

「それで、貴女はこれからどこいくのかしら?」

 

蛮奇が波音に疑問を投げ掛けた。

 

「私はもう帰りますよ。これも帰り道ですから」

 

「そう、それじゃまたね。気をつけて帰りなさいよ」

 

「ばいば~い」

 

蛮奇とわかさぎ姫に見送られて波音達は湖を離れ、神社に向かった。

 

 

師走十四日申一時 博麗神社

 

「あら、お帰り。貴女にお客さんが来てるわよ」

 

波音達が神社の階段を登り終えると奥から出てきた霊夢に声をかけられた。

霊夢の後ろには猫耳の少女がついている。

 

「火焔猫…燐さんでしたっけ?」

 

「おや、噂に聞いていた通りあたいの名前を知っているんだねぇ」

 

少女、燐は驚いたようにそう言うと波音の前に立った。

 

「さて、あたいはあんたへの伝言を頼まれているのさ。

えっと…『待ちくたびれたから早く地底においでよ』ってさ。」

 

「ちょっと、それいったの勇儀じゃないでしょうね」

 

波音と燐の横で話を聞いていた霊夢が口を挟んだ。

 

「違うよ、勇儀さんじゃなくて霰さんさ。何でもあんたのひいばあちゃんらしいじゃあないか。

なるべく早めに会いに行った方がいいと思うよ」

 

「そうですね、じゃあ来月位にお訪ねしますと伝えてくれますか?」

 

「来月だね。わかった、伝えとくよ。

それじゃあたいはもう地底に帰るとするね。

じゃあね~」

 

「…魔理沙ほどじゃないけどあの子も騒がしいわね。

さて、貴女も、戻ってきたってことはもう帰るんでしょう。

ついてきなさい」

 

「あ、ありがとうございます」

 

しばらくして波音達は外の世界に帰って行った。

 

「あの子も台風みたいな子よね…」

 

霊夢は誰もいなくなった神社でポツリと呟いて境内の掃除を始めた。

 

第七章 旧都 前編に続く




ここまで読んでくださりありがとうございます。
次は最終章となる七章です。
が、次回の流れがまだ決まっていないためより間が空いてしまうかもしれません…
何としてもこの物語は最後まで進めていく気ですのでまだ暫くの間お付き合いいただければ幸いです。
それでは第七章でお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告