東方冒険録   作:らずべる

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大変長い間お待たせ致しました。鈴風です。
……最早待っている人がいるのかどうか怪しい頃ですが…。
今回、地の文を増やそうと頑張った結果、前回までに比べてかなり文の雰囲気が変わってしまいました。
気にしないでいただければ幸いです。
それでは本編へどうぞ。

主な登場人物
鈴風波音(すずかぜ はのん):外の世界から幻想郷に観光に来た人間。波を操る程度の能力を持つ。
菖蒲(あやめ):波音のお気に入りの上海人形。何故か物を食べる。
風波霰(かざなみ あられ):波音の曽祖母の半妖。地底に住んでいる。


第七章 旧都 前編

睦月十一日巳二時 博麗神社

 

正月を終えたあたりの幻想郷。

その博麗神社の縁側で霊夢と波音はビスケットを食べながらお茶を啜っていた。

時刻はまだ昼前で、冬の冷たい風が晴れた空を吹き抜けていく。

 

「ようやく、地底に行くことにしたのね」

 

波音の横でお茶を啜っていた霊夢が、おもむろに波音に話しかける。

 

「えぇ。地底にお呼ばれしてからそろそろ一ヶ月経ちますし、準備も出来ましたから」

 

波音はそう返事を返し、ビスケットをまた一つ手に取った。

 

「地底になにをしに行くのです?」

 

突然聞こえてきた声に驚いた2人が鳥居の方を見ると、人里の方から中華服のような物を着た一人の女性がやってきた。

そして、その女性は波音の前に立つと、説教をするように話を続けた。

 

「……あら?貴女普通の人間でしょう?

ただの人間が地底に行くのは危険すぎです。

一体何をしようとしているのですか?」

 

「華仙さん、こんにちは」

 

「あら華仙じゃない、この子が波音よ。

……あと波音には妖怪の血が通っているから唯の人間じゃないわよ、少しだけどね。

それに、地底に行くのは霰とかいう波音のご先祖様に会いに行くからだし」

 

「あぁ、貴女が波音さんですね。こんにちは。それで……霰…ですか……」

 

霊夢が霰の話をすると女性、華仙は何か心当たりがあるのかなにやらぶつぶつと考え始めた。

 

「あら?貴女霰とかいう奴のこと知ってるの?」

 

「あぁいえ、名前をどこかで聞いた気がしただけです。まぁ信頼できる妖怪がいるのであれば大丈夫でしょうか……」

 

「まぁ、波音のことだから大丈夫よ」

 

「それでは、そろそろ行ってきますね」

 

霊夢と華仙が話し合っているうちにいつの間にか準備を終えたのか、波音は霊夢の横に立っていた。

首元には灰色のマフラーが巻かれている。

人形の菖蒲は波音の鞄に入って頭だけ出している。

 

「……仕方ありませんね、くれぐれも騒動は起こさないようにしてくださいね」

 

「了解です、行ってきますね」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 

 

「……あんたもそんなとこに突っ立ってないで波音が持ってきてくれたビスケット、食べれば?」

 

霊夢は波音が降りていった里の方角を見つめてる華仙にお茶を勧めると、ビスケットを咥えた。

 

同時刻 間欠泉上空

 

地底にある核融合施設、そこでは一匹の八咫烏によって核融合の実験が行われており、その恩恵として地上の間欠泉からは温泉が吹き出していた。

ーー数時間前までは……

 

「あれ?」

 

間欠泉の上空を飛んでいる魔理沙の足元に点在する温泉は、いつも立ち込めているはずの湯気がなく、それで霞んで見えるはずの温泉は魔理沙の目にはっきりと映っていた。

違和感を覚えた魔理沙は急降下して温泉に手をつけると、その想定外の冷たさに思わず声を上げる。

 

「冷たっ⁉︎」

 

誰かが故意に温泉を冷ましているか、熱源の八咫烏がサボっているに違いない。

そう予測した魔理沙は再び箒に跨ると、地底の入り口に向けて飛び去っていった。

 

 

数十分後 魔法の森

 

魔法の森を波音と菖蒲が移動していく。

波音達の周りには変わったキノコや不思議な気を放つ木々で埋め尽くされていて、一歩歩むごとに迷い込んできた人間を嘲笑うような木々のざわめきが波音達を包み込む。

そんな普通の人間は立ち入らないような森の中、波音達は……

 

文字通り迷っていた。

 

「そういえば、地底への入り口ってどこにあるんだろう……」

 

森の中を見渡しながらそう呟く波音に菖蒲は首を振って返事をする。

 

「しっかり霊夢さんに場所を聞いておくべきだったね。

……あれ?」

 

そんなことを言いながら森の中を歩いていた波音は、向こうの方で誰かが倒れているのを見つけた。

 

「何があったんですか?レティさん」

 

「貴女は……?」

 

波音が駆け寄って人、いや妖怪、レティ・ホワイトロックの肩を叩くと、レティは気を取り戻し、ゆっくりと起き上がって波音の方を見た。

 

「波音、っていいます」

 

「波音さんね、助けてくれてありがとう。

……それで、何があったのかだけど……さっき魔理沙がやってきてね。私を見つけるなり襲ってきたのよ」

 

「魔理沙さんが?何かあったんでしょうか?」

 

「さぁ?温泉がどうこう言ってたわよ。冷たくなったとかなんとか……」

 

「温泉……ですか?あ、そうだレティさん」

 

レティと話していてふと思い出した波音はレティに地底への行き方を聞くことにした。

 

「地底?あっちよ。

あんなところに何しに行くの?」

 

「ご先祖様がいるらしいので」

 

「ふーん、確か魔理沙もそっちの方角に向かったから貴女も気をつけてね」

 

波音はレティの応急手当てを終えると、レティが指差した方角に歩いて行った。

 

 

そのまた数十分後 地底への大穴

 

地底へと続くその大穴の近くは怨霊達が大量に湧いており、妖怪でさえもあまり近づけないようなところになりかけていた。

辺り一面に存在する怨霊達のせいか、ただでさえ寒いその空気はより冷え込んでいる。

波音達は襲い掛かってくる怨霊達を追い払いながらその穴へと向かっていた。

 

「ここが入り口ね。…それにしてもこの辺りは幽霊が多いわね。簡単に倒せるからいいんだけれど」

 

そう呟いて波音は溜息を吐いた。

 

「……地底はもっと多いのよね…」

 

一通り怨霊を倒し終えると、波音達はゆっくりとホバリングしながら地底へと降りていった。

 

 

睦月十一日午一時 地底 穴の底

 

地底の怨霊は思ったよりも多くなく、その大穴の底は穴から注ぐ光によって小さな花畑となっていた。

 

波音達はゆっくりと地底に着地するとあたりを見渡した。

 

「ここが地底ね。思ったより過ごしやすいところなのかしら」

 

「そうだね。でも、あんた達人間にはそうでもないんじゃないかな」

 

後ろから突然聞こえてきた声と菖蒲からの警告に振り向くと、暗がりからいきなり弾幕が飛んできて波音は避けきれずに被弾してしまった。

 

「っ…誰?」

 

波音が声を上げるとそこの暗がりから一人の妖怪がやってきた。

少々イラついているようにも見えるその少女は波音に向かって再び弾幕を飛ばしてきた。

 

「一体人間が何を考えて降りてきたんだか…キスメ!」

 

少女がその名前を叫ぶと、弾幕を避けた直後の波音の頭上目掛けて、桶に乗った少女が物凄い速さで落下してきた。

その少女の手には草刈り鎌のような物を持っており、その攻撃を喰らえばただでは済まないだろう。

波音は冷静にその攻撃を避けると、鞄の中から杖を取り出して構えた。

 

「黒谷ヤマメに…釣瓶落としは載っていなかったわね」

 

「何ぶつぶつ言ってるのさ!キスメ!とっとと仕留めるよ!」

 

「魔理沙にコテンパンにやられた恨みを返す時!」

 

魔理沙の名前が出てきたことに気づいて波音がヤマメ達をよく見ると、ヤマメ達の頬や足には新しい擦り傷がちらほらと残っていた……

 

「とりあえず、風邪の対策はしとかないとね」

 

そう呟いた波音は鞄からマスクを取り出すとさっと装着した。

いつの間にか目の前まで迫ってきていた弾幕をなんとか避けると、波音は"波符「反射の型」"を発動して、弾幕を放った。

菖蒲は飛んでくる弾幕を撃ち落としながら波音を守っている。

 

「長引くと私がもたないし、さっさと終わらせてしまいましょう。

熱符「ヒートヘイズ」!」

 

波音がスペルカードを宣言すると辺りに熱を持った弾幕が現れて不規則に動き始めた。

 

「こんなもん避けるのは造作無いね。こっちも行くよ!

罠符「キャプチャーウェブ」!」

ヤマメがスペルカードを展開すると波音のすぐ横に糸のように連なった弾幕が出現し、すぐにばらけて襲い掛かってきた。

 

 

……釣瓶落としがいない?

 

 

飛んできた弾幕を避けたり跳ね返したりしながら戦っている波音がふと上を見上げると、また頭上から、今度は弾幕と一緒にキスメが落下してきていた。

 

「あっぶない!」

 

それをなんとか避け切った波音はヤマメ達から少し離れて体制を整える。

 

「あーもう!動きは遅いくせに一向に当たりやしない!

毒符「樺黄小町」!」

 

「そっちもそろそろ当たってくれないかなぁ……

光符「シャイニングブレイズ」!」

 

お互いがスペルカードを展開し、大量の光弾が辺りを飛び交う。

波音もそろそろ霊力が尽きかけているのか辺りに展開している反射板にもヒビが生じ始めている。

 

「油断してると危ないわよ」

 

ヤマメの弾幕に集中してると上からキスメが降ってきた。

 

「それは貴女も同じね。菖蒲!」

 

それを躱した波音が菖蒲の名前を呼ぶ。

呼ばれた菖蒲はいつの間に待機していたのか、キスメの真上で構えていたナイフを振り下ろし、キスメの桶に結ばれているその綱を切断した。

 

「えっ⁉︎」

 

綱が切れたキスメは桶ごと地面まで落下する。

 

「キスメ!」

 

地面に叩きつけられてのびてるキスメに気をとられていたヤマメは波音がスペルカードを取り出したことに気づくのが少し、遅れた。

 

「風符「煙火大竜巻」!」

 

そう宣言して波音は新しいスペルカードを展開する。

するとキスメとヤマメのちょうど真ん中ぐらいから弾幕の渦が現れて、躱し損ねたヤマメ達を巻き込んでいった。

 

「これで私の勝ち、ね」

 

 

 

 

 

 

「あーもう!今日はついてない!」

 

しばらくして起き上がったヤマメはふてくされたように頬を膨らませている。

 

「さっき魔理沙って言っていたけど…やっぱり魔理沙さん来てるの?」

 

「ああ、そうさ! なんか八咫烏がサボってるだとかなんとか言ってたよ」

 

「八咫烏……?空さんかな?」

 

「多分、そうだろうね!」

 

波音はヤマメと会話を終えると、未だふてくされているヤマメに別れを告げて旧都の方に向かっていった。

 

第七章 旧都 後編に続く




ここまで読んで下さり有難うございます。

次回あたりに波音の挿絵でも載せようかとか思っていた時期もあったんですけど、多分無理。時間的にも画力的にも。
後編はもう完成しているので明後日くらいに投稿します。

それでは、また次回。
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