東方冒険録   作:らずべる

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とりあえず今回で最終回です!鈴風です。
山もなくオチもないような話ですが、最後まで見てくれたら幸いです。
それでは本編へどうぞ!

主な登場人物
鈴風波音(すずかぜ はのん):外の世界から観光に来た変人。波を操る程度の能力。
菖蒲(あやめ):波音お気に入りの上海人形。少し自我がある。
風波霰(かざなみ あられ):波音の曽祖母の半妖。地底にいる。


第七章 旧都 後編

先程から数分後 旧都

 

地底であるのにもかかわらず、そこでは雪が降り続いていた。

首元を冷たい風が吹き抜けていき、波音の頬をヒリヒリと冷やしていく。

道を行く波音達は都を彷徨う妖怪達に、時に不思議そうに、時に獲物として見られているが、彼女は気にしていないようだ。

菖蒲は全力で警戒しながら鞄の中に隠れている。

 

「霰さんって何処に住んでいるんだろう……」

 

あたりをキョロキョロ見回しながら波音が歩いていると、向こうの団子屋に萃香ともう一人、一本角の鬼が寛いでいるのが見えた。

波音がそっちに近づいていくと、萃香が気付いて声をかけてきた。

 

「お?波音じゃないか!こんなとこまでよく来れたねぇ」

 

「萃香さんに勇儀さん、こんにちは」

 

萃香たちに接触したことで、獲物のように波音たちのことを見ていた妖怪達がざわつく。

 

「ん?こいつがあんたの言っていた波音って奴かい?

……それはそうとしてなんで地底にまでやって来たんだ?あの紅白や白黒でもない限り、人間風情がやすやすと訪れられるようなところじゃあないはずだが?」

 

「私のひいおばあちゃんの霰さんから呼ばれたんです。どこにいるかわかりますか?」

 

波音がそのことを言ったとたん、辺りの空気が凍りついた。

勇儀は手に持っていた団子を落としかけている。

 

「えっ…………?あ、霰のひ孫ぉ⁉︎……あははははっ…あいつに子孫がいたのかい!こりゃあ初耳だ!

わざわざここまで来てくれたあんたにゃあ悪いが、今霰は地霊殿の鴉を止めに行ってるよ」

 

「空さん?」

 

「うん、そうだよ。なんかまた暴れ出したみたいでさ」

 

「とりあえず私は、地霊殿に向かえばいいんでしょうか?」

 

「あー、そうだねぇ、それがいいんじゃないかな?地霊殿はあっち」

 

そう言って萃香は串だけになった団子を、おそらく地霊殿があるであろう方向に向けた。

波音達は萃香達にお礼を言うと、萃香が示してくれた方向に歩き出した。

 

 

これまた数分後 地霊殿前

 

地底の中央に構えている地霊殿は犬猫や鳥などの他に、馬や鹿、はてはオカピやアルマジロのような日本ではあまり見かけることのない動物達の霊までちらほらと見かけることが出来た。

地霊殿の前に着いたはいいもののどのようにすれば良いのかわからず、波音が迷っていると、地霊殿の方から燐がやってきているのが見えた。

燐は波音に気づくと何かを運んでいたのか、布が被せられた手押し車を置いて波音の方に近づいてきた。

 

「おや?波音、来てたんだ。あたいの方から迎えに行くべきだったかな?

…っと、ここに来たってことは霰さんのことだろう?

さとり様のとこまで連れてってあげるよ」

 

そう言って、燐は波音を連れて地霊殿の中に入っていく。

あとには手押し車だけが放置されていた。

 

 

地霊殿

 

地霊殿の中はどこか不思議な雰囲気を醸し出しており、そこには驚くほど人影がない。

燐は波音をさとりの部屋まで連れていくと、扉の向こうにいるであろうさとりに波音を連れてきた旨を伝え、中からの応答を確認して、中に入っていった。

 

無駄に広いその部屋の中で、さとりは波音をソファーに勧めると反対側に座り、話し始める。

さとりのメイドでもやっているのか、一匹の小さな化け狸がクッキーを持ってきて机の上に乗せた。

 

「はじめまして、鈴風波音さん」

 

「さとりさん、はじめまして」

 

「…あら、貴女、私のことを知っているのに恐れないのね。

……まぁ、いいわ。それで、貴女は霰がどこにいるか聞きに来たのね?

あの方は今うちのペットを止めに行っていてね…」

 

「多分まだ地下センターの方にいると思うよ。

地下センターはあっち」

 

「ありがとうございます。……あ、そうだ、あまり上質なものではありませんが、紅茶どうぞ」

 

一通り話を終えた波音は、思い出したように鞄から紅茶の葉を出すとさとりに手渡した。

受け取ったさとりは怪訝な顔をしている。

 

「教えてもらったお礼と挨拶の代わりです」

 

「本音、ね……有難く、受け取っておくわ」

 

「それでは、そろそろ霰さんの所に向かいますね」

 

「あら、もう行くのね。燐、送ってあげて」

 

 

波音が燐と一緒に館の外まで行ったのを確認すると、さとりは溜息を吐いた。

 

「……私の能力を知っていながらも怖がらない上に、ましてや手土産まで持ってくるとはね……外の人間はそうなのかしら?」

 

誰もいない空間に疑問を投げ捨てたさとりは、再び机に向かうと、書類作業を始めた。

 

 

睦月十一日未二時 核融合地下センター

 

守矢神社の神々が管理しているはずの地下センターは霜が降りてしまうほどに冷え込んでいた。

普段は辺りを覆っているはずの有毒ガスもほぼ沈静化されており、普通に通ることができる。

地下センターのドアを開けた波音はその冷気に二、三回咳き込んだ。

 

「あら?誰かしら?」

 

どうやら、先客がいたらしい。

靄の中から淡い水色の髪をした女性がやってきて、波音の所まで来ると波音のことをしげしげと眺めている。

 

「えっと……霰さん……ですか?……鈴風波音です」

 

「あら!貴女が波音ちゃんね。初めまして。ご察しの通り、私が風波霰よ。貴女のひいおばあちゃんね」

 

「と、いうことはこの寒さって…」

 

「あー……そこに倒れてる空ちゃんの暴走を止めてくれってさとりちゃんに頼まれてねぇ……やりすぎちゃった♪」

 

霰が指差した方を見るとあちこち凍りかけている空が倒れていた。

 

「今融合炉は止めてもらってるし特に被害はないと思うんだけど……あぁ、地上では温泉が冷めているかもね」

 

「お前の仕業かぁ‼︎」

 

霰がそこまで言ったところで、いきなり地下センターのドアが開き、かなりの厚着をしている魔理沙が入ってきた。

寒がりなのかそこまでの厚着をしてきながらも、地下センターの寒さに凍えている。

 

「おっ、波音もいるのか。…ってことはそいつが霰って奴か?」

 

「ええ、そうよ。貴女のことは勇儀からよく聞くわ、霧雨魔理沙ちゃん」

 

「ちゃんって……」

 

「で、波音ちゃん」

 

ちゃん付けされた魔理沙の嘆き声はどこ吹く風、といったような様子で霰が波音に声を掛けた。

 

「せっかく地底まで来てくれたんだから一緒に観光しましょ。魔理沙ちゃんも一緒にいかが?」

 

「えっ…と……冷めちゃってる温泉は…」

 

「暫くしたらここも動き出すだろうから大丈夫でしょ。さ、行きましょう?」

 

そういった霰は波音達を引っ張るように地下センターを出て行った。

後に放置された空は守矢神社の人達に助けられたとか。

 

 

睦月十一日未四時 旧都

 

しんしんと雪が降り続け、頬が痛くなるほどの寒波が波音達を襲っている。

先ほど通った時は波音達を獲物を見るような目で見ていた妖怪達は、霰と一緒にいるのを見て、今度は怪訝な顔で波音達を眺めている。

波音達は霰に振り回されながら、霰の行きつけのお店やら素敵な景色が見られる所やらをまわっていった。

途中から勇儀や萃香も混ざってきて、鬼含む妖怪三人と人間二人というなんとも不思議な組み合わせになっていた。

恐らく、周りの妖怪達には波音と魔理沙は、さながら狼に引っ張り回される野兎のように見えていたに違いない。

……最も、二人とも恐怖などは微塵も感じておらず、地底観光を楽しんでいるようであったが。

 

まぁ、なにはともあれ暫くの間霰さん達と一緒に地底観光を楽しんだ私は、地上ではそろそろ日も落ちようかという頃に幻想郷から帰っていった。

私の曽祖母にも会うことができたし、今日はとても有意義な日になったと思う。』

 

 

……ここまで書いて、波音は鉛筆を持つ手を下ろした。

つい先程まで書き続けていた日記帳のページがもうない。

波音はその日記帳、『東方冒険録』を閉じると本棚にしまい、軽く息を吐いた。

 

「……さて、明日はどこに行きましょうか」

 

ーーこの話は、私が幻想郷を訪れ、冒険した記録である。

 

東方冒険録 完

 




最後まで見てくださった方々、本当にありがとうございます。鈴風です。
さて、今回でとりあえずこの物語は終わりになります。
元々続きを書こうとは思っていたのですが、思った以上に設定に穴が多いのと、今後オリキャラがかなり増えてしまうため、ここで終わりということになります。
これからの活動といたしましては、今年受験生でしてね。
勉強の合間合間に短編小説でも書いて上げるかもしれません。
感想、指摘、誤字脱字等ございましたら遠慮なくどうぞ。

それでは、また会う時まで。
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