そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 一度生まれた神ゲーの二次創作は、簡単には尽きない。
 投稿の時間だ、621。





Chapter0
そこんとこオリ主は違うぜ。ルビコンの恵みでナマがイッとるからな。パチパチ弾けて脳みそ幸せだぜ


 

 

 

 端的に表現すれば、そこは惨憺たる戦場だった。

 

 てらてらと流れる血と油が、引きちぎられた金属片を残し、地面へと沁み込んでいく。

 そんな不浄の大地の上には、元は人型だったのだろうと思われる巨大な機械の残骸が、その右半身を消し飛ばされた状態で無造作に転がり。

 あるいはもう一機の機影は、両腕と上半身を別の場所へとやって、下半身だけが屈するように膝を突き。

 

 傑作機と呼ばれた機体さえ、中にいた頭脳を執拗に貫かれ、機能停止して炎上。

 人の叡智の結晶だったのだろう主砲もまた、膨大なエネルギーの奔流に呑まれ焼け焦げて。

 それを要していた基地は、その機能をほぼ完全に喪失している。

 

 惑星封鎖機構が所有する、封鎖拠点ISB2260-2。

 そう呼ばれていた駐屯基地は、今、壊滅の憂き目にあっていたのだった。

 

 

 

 ……そして、今。

 この戦場でただ一人……いいや、ただ一機、最後まで働いていた兵士が、ついにその動きを止める。

 

 RaD製、中量二脚型、宇宙空間探査用AC。

 事情を知る者はそう呼ぶだろう、巨大な人型機械。

 

 本来戦闘には向かないだろうソレに大豊製の『DF-GA-08 HU-BEN』(重機関銃)を積み込み武装を図ったものこそが、この基地で動く最後の機体だ。

 

 けれどそれも、今や左腕を肘の先から失い、ヘッドパーツはその前半分を破壊され、全身の装甲板がぼろぼろに露出している。

 中破にすら収まらない、大破状態。あるいは、ジャンク寸前と呼んでいいかもしれない惨状だった。

 

 

 

 では、改めて。

 今膝を突き、力尽きんとするこの機体……AC名「scav617MG」は、押し寄せる敵からこの基地を守らんとした勇士であろうか。

 

 否。

 むしろ、逆だ。

 

 そのACは、たったの三機のACでこの基地に侵入を図った、無法者たちの一員であり。

 配備された傑作機や、ACすら一瞬で鉄屑に変えるはずの主砲を、犠牲となった他二機と共に討ち取り……。

 そのまま、この基地を守らんとした人々を殺戮し尽くした、「わるもの」だった。

 

 けれど、あるいは因果応報とでも言おうか。

 あるいは、至極当然の結末とでも言おうか。

 

 どれだけパイロットが精鋭であろうと、多勢に無勢。

 平和を守らんと立ち向かった者たちの抵抗は、決して無駄にならず……。

 多くを殺した殺戮者は今、力尽きる。

 

 

 

 それは世界基準で、なおかつ短期的に見れば、ハッピーエンドではないにしろバッドエンドでもない、ビターエンドだっただろう。

 善なる者が打ち勝つことはなくとも、決死の抵抗として放った一矢は確かに届き、悪が倒れるのだから。

 

 ……ただし。

 

 この世界では、往々にそうであるように。

 わるものには、わるものなりに、事を起こした事情と理由があるのだが。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「うぉる、たー」

 

 AC「scav617MG」のコックピット。

 その中で、一人の少女が、枯れた声を絞り出す。

 

 色が抜けてなお輝く、セミロングの銀の髪。

 表情と情緒が薄く、けれどだからこそ際立つ、淡く儚げに整った顔貌。

 簡素なパイロットスーツに包まれた、発育の良くない小さな体。

 

 ……この基地を守っていた惑星封鎖機構の者たちが見れば、驚かざるを得なかっただろう。

 こんなに小さい、こんなにも無力そうな子供に、自分たちは皆殺しにされたのか、と。

 

「うぉるたー」

 

 たどたどしい呟き。

 合成音声による発話システムに依存していた少女にとって、自らの喉から声を出す行為は不慣れで、少なからぬ痛みを伴うものだった。

 

 けれど、それでも。

 少女は……「強化人間C4-617」と呼ばれる、人の名ではなく番号で管理される少女は。

 最後に、それだけは、自分の言葉で聞きたかったのだ。

 

「わたしは、あなたの、いぬに、なれました、か?」

 

 

 

 走馬灯のように、少女の脳内にこれまでの過去が流れ去る。

 

 自分たちを。

 その人生を買い叩かれ、脳や体を「改良されて」、ACという機械のパーツの一つとなった、改造人間を。

 

 少女を買い取った主人は、愛してくれた。

 

 不器用で、わかりにくい愛情だったけれど、それでも。

 ただの消耗品として使い潰すのではなく、命と尊厳ある犬として飼い。

 そうして、自分の役に立てと、役目をくれた。

 ただ無意味に終わるだけだったはずの人生に、生きる意味を与えてくれた。

 

 それが、少女たちの、焦げついていたはずの大脳辺縁系を、強く揺さぶった。

 

 「自分たちは愛されている」。

 その自覚があったからこそ、自分たちは、「ハウンズ」と呼ばれたわたしたちは、頑張れたのだと。

 改めて、C4-617は、そう回顧する。

 

 ハンドラー・ウォルターという主人は、自分たちを愛してくれた。

 だから、どんな命令も疑うことなく遂行できた。

 

 それが一般的に見て善であれ悪であれ、構わない。

 そのための手段が人助けであれ殺戮であれ、構わない。

 

 だって、あの優しいハンドラー・ウォルターのやることだ。

 それはきっと、私たちのような誰かを救い、愛するための行動に決まってるから。

 

 

 

 飼い主のために。ハンドラーのために。ご主人のために。

 言葉こそ違えど、皆、彼のことを父の様に慕い、尽くしてきた。

 

 その最果てこそが、この戦場。

 彼の飼い犬として、新たな飼い犬にバトンを繋ぐための、意義ある戦いだ。

 

 ……生存は不可能にも近い作戦を前に、死を拒む者など、ハウンズには一人もいなかった。

 買われた直後のように、それを恐れるだけの脳がなかったのではなく……。

 誰もが自らの意志で、最期まで飼い主の役に立つことを望んでいた。

 

 

 

 そんなハウンズの中で、C4-617は、比較的情緒が薄いままだった。

 618のように跳ねっ返りが強くもならなかったし、619のように敢えて感情を封じ込める必要もなかったし、620のように飼い主に慕情を抱くこともなかった。

 他の猟犬に比べれば、617が感情を取り戻す時期は遅かった。

 

 けれど、それでも。

 

「わたしは、ぶひんじゃなくて……あなたのこに、なれましたか?」

 

 死の迫るこの瞬間。

 彼女は確かに……今は名前も失った少女が、かつて持っていたはずの感情を、僅かに取り戻していた。

 

 

 

 * *  *

 

 

 

 ……少女の最期の問いが、灰の雲が蓋をする戦場に消えていく。

 

 それに答える者は、いない。

 彼女たちのハンドラーは、決して外せない用事のために、奥歯を割れんばかりに噛み締めながら席を外していたし……。

 仮に彼がいたとしても、彼との間を繋ぐ通信機能は、ミッション終了の報告と共にAC「scav617MG」から失われた。

 今、彼女の愛機は、COMすらまともに応答しない状態。復旧など望むべくもない。

 

 この戦場にいるのは、もはやC4-617だけ。

 619も、620も、ハウンズたちの敵も、皆死んで、いなくなった。

 全ての戦いが終わった戦場は寒々しい程の静けさに包まれ、617の言葉に答えられる存在はどこにもいない。

 

 だからこそ、少女が最期に発した言葉を聞き届ける者などいるはずもなく。

 彼女の意識はそのまま途絶えて、突然の襲撃に対応して駆けつけた惑星封鎖機構の応援部隊によって、その命を奪われる────

 

 

 

 

 

 ────はず、だった。

 

 

 

 

 

 

 少女の意識が散逸する、その瞬間。

 

 世界のどこかで、あるいはどこかしらの違う世界で……。

 

【────美しいと、思いませんか?】

 

 赤色が、解き放たれた。

 

 

 

 それは惑星を呑み込み、周辺星系に広がり、銀河系全体にすら伝播し、それでもなお止まることなく……。

 ありとあらゆる世界、その可能性、未来から過去に渡って、広がっていく。

 

 無論、物理的距離ならばともかく、観念的距離を超越することは困難だ。それを為す過程で、その赤色の殆どが失われたが……。

 ほんの一部残ったソレは、上位的世界にあった名もなき人間の精神を巻き込み、その流れの中に散逸させつつも、けれど確かに保存して。

 

 ……そうして、ほんの小指の先程の赤色が、この世界にも流れ付き。

 その群知能に基づき、偶然に近くにいた死にかけの少女の脳深部管理デバイスの中にあった同族、つまりはコーラルとの合流を果たして。

 質量が、ギリギリで閾値に到達。中に冷凍保存されていた思考の展開、再現が行われる。

 

 

 

 その、結果。

 

 少女の青かった目に、まるで毛細血管のように、赤い何かが広がり……。

 その脳内に、幻聴が、響き渡る。

 

【……何から何まで、本当に、心の底から意味がわからないけど】

【これって……AC世界の戦場にいる、死にかけの少女の体に憑依転生……ってコト!?】

 

 とはいえ、だ。

 いくらおかしな幻聴が聞こえようと、彼女の身体と精神に限界が迫っていることは確かで、彼女が気絶するという未来は変えられない。

 

 ……が、しかし。

 あるいは、その先の未来ならば、変わるかもしれない。

 

 

 

 C4-617が意識を取り落とす……その、瞬間。

 

 ふと。

 彼女は、自身の指先が、自分ではない誰かの意思によって動くのを感じた。

 

【こっちはゲームでは遊んでも、実際に操作すんのは初めてなんだけどなぁ! いきなりこんな死地に死に体で放り出されるのはハードモードすぎない!?】

【あーでも、クソ、やってやるっての! こんな可愛い子を見捨てて死なすのは心苦しすぎるだろうがよぉ!】

【おーい、こっちの声聞こえてるか! あんたには休息が必要だ、安全地帯への退避はこっちでやるから、そっちは一旦意識落として休んでな!】

 

 少女は、その内より響く言葉に……。

 より正確には、その言葉の中にあった、飼い主から与えられたものと似た温かな感情……善意と呼ばれるそれに、心底安堵し。

 

 ぷつりと、その意識は、途絶えた。

 

 

 

 

 

 

【……あー、えーと、この感じはAC6だよな。改めて、直前にやってたゲームの世界に転生とか信じられない……いや信じるしかないけど】

 

【んで機体が……うわAP283でガト残弾なしとかボロッボロだなオイ。他のパーツはパージ済みっぽいし左腕千切れてるし、よくここまで戦ったわこんな小さい子が】

 

【てか待て、壊れまくってて一瞬わかんなかったけど、この見覚えしかないフレーム、「Loader 4」……?!

 ……いや、違うか、武装が違う。ブッタも持ってないし、ガトなんて持ってなかったし……あればヘリ戦かなり楽だっただろうけども】

 

【ん? これ……知識と記憶? この女の子の?

 なんで俺こんなの見れるの、怖……憑依って意味わからんな改めて】

 

【……は?

 第四世代、旧型の強化人間……C4-617?】

 

【……マジで銀髪薄幸系美少女なのかよハウンズ!?

 んでもってこれストーリートレーラーの後!?】

 

【てか617以外全員もう逝ってるぅ!? やべぇ殺せねぇ絶対この子だけは守らんと罪悪感で俺が死ぬ!!】

 

【があああああ、オイ黙ってねえでCOM起きろボケどこ触ったらええんじゃ! あ、なんか再起動させられる……え、なんで? なんか機体そのものにアクセスできるんだけど俺、何これ怖い】

 

【いや理解も原因究明も後回し!

 今はとにかくはよ逃げんと封鎖機構が来る! 流石にAP283のルビコン神拳でエクドロモイ複数とかは無理があるわ!】

 

【取り敢えず、この子の記憶と知識漁って操作技術覚えて……いや覚える暇ないわ、動かし方だけでいいからざっとコピーするしかねぇ!】

 

【よっしCOM再起動! 追跡してくる機体反応探る……のはなんか俺ができそうだから、周辺の地形サーチして隠れられる場所探す……のも俺ができそうだな、俺すげぇ!

 じゃあ、医者! それからACの機体修理できる業者を探せ! その間にそこらに転がってるジャンクパーツ拾ってれば、金は作れるとして……足りるかこれ!? ごす、この子にお小遣い持たせたりしてない!?】

 

【というかそもそもここどこ!? ルビコンじゃないよね!?

 俺この世界じゃルビコン以外のこと全然知らないしツテとかもないんですけどどうすればいいの!?】

 

【ごすずん回収しに来てくれるか!? いや戦死判定取られてる!? 確かトレーラーだと反応ロストしてたような気がするけど!】

 

【ああもう、やるべきことも考えなきゃいけないことも多すぎるわ!

 でもとにかく、617は殺させねぇ! 今はそれだけに集中しろ俺!! いつ敵が来てもおかしくないんだから!】

 

【……よし、行くぞ!

 メインシステム、戦闘モード再起動ッ!!】

 

 

 







 生(ナマ)が逝(イ)ッとる系転生者。
コーラル君(仮)の元の体は次元を超えたコーラルの奔流に呑まれて、人間としては死亡しています。
 今ここにいるのは、コーラルによって拡張された新たなヒトの形。人の可能性厨のオマちゃん大興奮。

 本作における【】の中は、当人たちにしか聞こえないコーラルの声です。



 しばらくは毎日投降する予定ですので、良ければお楽しみください。 

 それと、軽く調べたらすんごい主題の似た作品があって、パクリみたいになってしまって申し訳ないのですが、流石に転生コーラルって部分は被ってないと思うので続行します。
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