そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを 作:アリマリア
よく来てくれた。
残念だが617とのイチャイチャシーンなど今回は存在しない。
騙して悪いが、依頼中なんでな。読んでもらおう。
【……敵性反応、なし。617、戦闘は終了だ。お疲れ様】
メインシステム、通常モード起動。
AC内に響くCOMのシステムボイスを聞き、接続していた各感覚のリンクが緩くなっていくのを感じながら、617は操縦桿を握る手から少しだけ力を抜いた。
アーキバスのパーツ、資源の輸送機を襲撃した、ルビコニアンのMTやAC。
617が撃破した彼らは、非常に威勢よく突撃してきたが……。
……結果から言えば、評価できるのは威勢だけだった。
『悪いが、その物資は俺たちがもらう! 今日も子供たちを食わせねばならんのだ!』
そう勢い込んで来たはいいが。
MTの9割は、ナインによる超遠距離索敵と垂直ミサイルの誘導で、戦闘に入る前に破壊されてしまったし。
這う這うの体で敵性ACの前に辿り着いたMTとACも、617の駆るAC「scav617MG」の圧倒的な機動力の前に、一方的に狩られた。
ナインのアドバイス通り、常に旋回して後ろに回り込もうとする617の動きに、MTのパイロットたちはまともに反応することができなかったし……。
ウォルターにも褒められた617の機体捌きを前にして、殆どジャンクにも等しいFCSはまともに機能せず、巨大なバズーカを二丁握っただけの歪なアセンのACは、何もできずに爆散。
『おのれ、星外企業の走狗が! いずれ俺たちルビコニアンの恨みを知る時が──』
そんな言葉とノイズだけを残して、襲撃者の一団は壊滅したのだった。
結果としては、圧勝。
「scav617MG」のAPは10%も減少しないまま、襲撃者たちは撃退されたのだ。
次なる戦闘に向けて両手のハンドガンをリロードする617の耳に、輸送ヘリからの通信が届く。
『……奴らにも奴らの事情があるのだろうが、俺たちにも俺たちの都合がある。
パーツと物資を基地に届ける。それが俺たちの業務であり、義務だ。
そして傭兵617、お前にとっては、俺たちの護衛こそが仕事だろう。最後まで付き合ってもらうぞ』
『了解しました、617は異論ありません。航行の再開を』
奇襲への警戒のためにその場に着陸していた輸送ヘリが、そのプロペラを再び回し始める。
617はそれを確認した後、そのヘリの後を追うようにACを動かそうとして……。
メインシステム、戦闘モード起動。
唐突に響いた、そのシステムボイスを聞いた。
「え」
思わず掠れた呟きを漏らす617を他所に……。
AC「scav617MG」がその右肩に具える垂直ミサイルが、彼女の意思を伴わず機能。
そのハッチが開き、12発のミサイルが、一斉にポッドの中から飛び出していく。
『!? 傭兵617!? 何を……』
輸送ヘリのパイロットが驚きに顔をしかめ、617もまた目を瞬かせる中。
【迎撃開始】
ナインの言葉と共に飛んだミサイルは過たず、
マルチロックされていた3発のそれを、過たず迎撃。
空にプラズマの花火を咲かせ、一行を唖然とさせた。
『!? なんだこれは!? 襲撃なのか!?』
輸送ヘリパイロットが戸惑いに声を上げるのに対し……。
617は、落ち着いた様子で、一度まぶたを閉じる。
そして、再び開かれたそれは、赤に染まり。
固いはずの表情筋は、僅かに、不快の色に染まっていた。
『落ち着いて。襲撃じゃないし……今のでもう、あんたたちへ向く危険はなくなったと思っていい。
警戒はしてもいいけど、過度は無駄だ。さっさと基地に行こう』
617の体を通して、ナインがパイロットと話す。
そちらを詮索しないと言った通り、彼は傭兵の口調や雰囲気が変わったことに何かを言うことはなく。
ただ、今起こったことについて、困惑の声を漏らす。
『それは、しかし……』
パイロットの躊躇に対してナインは、基本的に快活な彼にしては珍しく、冷たく吐き捨てる。
『実弾じゃなくてプラズマで、敵を倒し終わって油断した瞬間にこれだよ。
それに……語り口からして、アンタら、第14基地じゃなくて第12基地の所属なんじゃない?
あんたらの危惧は当たってたってことでしょ。気分悪いけどさ』
『……そういうことか』
『そういうことだろうね、十中八九。そっちも苦労するね、ホント』
『……そう、だな。だが、これも仕事だ』
……彼はただ、そのプラズマミサイルがどこから来たのか、何を意味するのかの凡そを理解し。
苦々しく、首肯する他なかった。
そうして、改めて離陸したヘリは、そのまま第14基地へと歩みを進め。
ナインに促された617は、ACを動かしてその後を追う。
『ナイン……617は、現状を理解できません。判断材料が乏しい状態にあります』
【そこに関して、今は気にしなくていい。……想定していた通りに事を進めよう】
* * *
それから、20分前後。
一行は、アーキバスの擁する第14調査補給基地へと到着した。
外壁に近付けば、すぐさま駐屯しているMTが2機、輸送ヘリへと近づいてくる。
どうやら彼らは秘匿回線でいくつかやり取りをしたらしく、しばらく617を待たせた後、ヘリパイロットが再び話しかけて来た。
『ここまで来れば危険はない。任務はここで完了だ、傭兵617。ご苦労だったな。
第14基地副長にも連絡を入れた。お前の望み通り、報酬は速やかに支払われるはずだ。
改めて、襲撃からの護衛に感謝する。お前がいなければ、俺たちはまず全員でここまで辿り着くことはできなかっただろう』
『617は仕事をしただけに過ぎません、適切な報酬が頂けるのならば、それ以上のものは必要ありません』
『なるほど、傭兵らしいな。……いいや、考えれば企業に使われる俺たちも、そうは変わらんか』
どこか自嘲気味な笑いを漏らし、パイロットは通信を切断した。
617は、改めて通信が繋がっていないことを確認し、ナインに声をかける。
『ナイン』
617の呼びかけの意図を悟り、ナインは瞬時にコーラルネットワークから彼女の口座にアクセス。
そこにあった数字がそこそこ増えていることを確認した。
【よし、COAMは支払われている。
……確かにすぐに振り込めとは要求したが、この性急に過ぎるスピードに適切な額面……いや、特別加算付きか。ふっ、余程報復が怖いらしい。
……まぁ、もう、手遅れなんだが】
やれ、と。
続くナインの言葉に応じ、AC「scav617MG」の戦闘モードが、再起動する。
唐突に、AC「scav617MG」が、その両手に握るハンドガンでMTを撃ち抜いた。
「!?」
「何!?」
唐突に隣でMTが爆散し、ローカルのオープン回線で戸惑いの声を上げるもう1機のMTと輸送ヘリのパイロット。
しかし、617はそれらの声を一切気にすることなく、もう片方のMTにアサルトブーストで迫り、勢いそのままその機体を蹴り飛ばす。
時速500km近い爆速の金属塊は簡単にMTの装甲をひしゃげさせ、中にいたであろう人間ごと、ものの一瞬でスクラップへと変貌させる。
……そして、そこで、輸送ヘリのパイロットはようやく気付く。
いつの間にか、AC「scav617MG」の友軍識別タグが、外れていることに。
『っ、応答しろ傭兵617! 貴様は何をしている!? 何故!?』
輸送ヘリパイロットの、焦った言葉に。
617は、平然と返答を投げ返した。
『617は現在、ミッションをこなしています』
『貴様のミッションは俺たち輸送機の護衛だろう!』
『いいえ、そのミッションは先程終了しました。617は
『っ、貴様……ベイラムに買収されたか!』
苦々しく呻くパイロット。
617はこれといった反応を見せないまま、ヘリに向かって、両手に持つ……AC基準で見れば小さく、けれど人の視点から見ればあまりにも巨大なハンドガンを向けた。
依頼人→ハメる気満々
ナイン→ハメる気満々
617→真面目にミッション受けて真面目に裏切る
アーキバスパイロット→ただただ真面目に任務こなしてる