そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 謎のポエミーオペレーター好き。FAの世界から来たんかコイツ?





見せてもらいましょう。偽りの首輪が、どこまで持つか。

 

 

 

【対象の撃破を確認した。お疲れ様、617。

 レッドガン部隊のMTは、G7ハークラー撃破の報を後方部隊に伝えるためだろう、現在撤退している。

 元より俺たちの仕事は、ハークラーの撃破と解放戦線の防衛だ。これでミッションは完了だ】

 

 メインシステム、通常モード起動。

 

 脳内に響く声と、コックピット内に響くCOMの合成音声に、AC「フォーアンサー」を操る少女、617は操縦桿を握る細い腕の力を緩めた。

 

 ルビコン3において何度目かのミッションは、無事終了。

 勿論、ウォルターに教わった通り、ハウスに帰還するまで警戒を完全に解くことはないが……。

 それでもやはり、聞き慣れてきたナインのミッション終了を告げる声は、彼女の心に微かな安堵をもたらした。

 

『了解しました。今回も万全なオペレートでした。感謝します、おにいさま。

 ……ここからは、撤退、でしょうか』

【ん、しっかり次の行動を考えられてて偉いぞ。

 ただ、撤退は……この感じ、まだだな。先に依頼主である解放戦線とコンタクトを取るべきなんだが、あちらは今救助で忙しいらしい。

 汚染都市はハークラーにだいぶ荒らされたらしいからな。撃破されたMTの中から、まだ生きている者を救出するので手一杯だろう。

 汚染都市の外辺りで落ち着いて待たせてもらいながら……そうだな、先に今回の反省会といくか】

 

 617の脳内サポーターのおにいさま、もといナインはそう言って、本拠地としている彼女の脳深部コーラル管理デバイスの中から極小のコーラルの食指を伸ばし、AC「フォーアンサー」のCOMに接続。

 617の網膜に接続されているインターフェース上に、録画していた先程の戦闘を映し出した。

 

 

 

 今回617とナインが受けたミッションは、一言で表すなら「レッドガン迎撃」だ。

 

 ルビコン解放戦線は戦力的面でこそ企業や封鎖機構に大きく劣っているが、地元と深い繋がりを持っているが故に、諜報面においては他の勢力を上回っている。

 徹底したシステムによる管理が行われている封鎖機構はともかく、ベイラムとアーキバスの両企業にはそれぞれ草を送り込んでいた。

 

 そして、ベイラムに生やした草の一本が、解放戦線への攻撃作戦を掴んだ。

 レッドガンの正規ナンバーまで起用した、汚染市街への攻撃。防がなければ、解放戦線はグリッド135周りの要衝を失うことになる。

 

 これを受けて、解放戦線の実質的な指導者であるミドル・フラットウェルは、2人の独立傭兵を起用して対処することを決定。

 

 片やランク外、解放戦線と懇意にしているので依頼を通しやすい、モンキー・ゴード。

 片やランク28/F、新進気鋭の凄腕でありながら、然るべき報酬さえ払えばどの勢力の依頼も受けると噂の、リンクス・ウィズ・カラー。

 

 当初の計画としては、リンクスを前面に出して敵の主力になるレッドガンACを市街中央まで釣り出し、側面からモンキー・ゴードが奇襲をしかけ、潜んでいたMTによる飽和攻撃と合わせて打倒する予定だった。

 いくら新進気鋭とは言えど、まさか独立傭兵が単騎でレッドガンの正規パイロットに勝てるはずもない……と、解放戦線はそう判断していたわけだ。

 

 しかし、草がもたらした情報よりもいささか早く、敵の主力……G7ハークラーは汚染市街を訪れた。

 これは彼が功を焦った独断専行だったが、結果としてそれが解放戦線の警戒網に穴を開けた。

 

 先んじて汚染市街を訪れ、知己と酒を飲みながら語り合っていたモンキー・ゴードは、咄嗟にACに乗り込みこそしたものの、ハークラーによって撃破され。

 MTに乗り込んだ解放戦線の者たちも、この状況でまともな連携など取れるはずもなく、総崩れとなりかけ……。

 

 そこに、独立傭兵リンクス・ウィズ・カラーが到着した、という流れだ。

 

 解放戦線からすれば、彼女は──顔も見せておらず、声も合成音声であるため、彼らはリンクスが女性であることも知らないだろうが──勝利の女神にも思えるだろう。

 独立傭兵がタイマンでレッドガン正規ナンバーを仕留めるなど想定外。

 

 その圧倒的な戦いは、多くのルビコニアンたちを勇気付け、また畏怖させた。

 

 

 

 ……が。

 それではリンクス・ウィズ・カラー……という名義で活動している617とナイン両名が、今回の作戦での戦いに満足しているかと言えば……。

 

 残念ながら、そうではなかった。

 

【さて、いつもの反省会だ】

 

 ナインは617の戦闘力向上を請け負って以来、ミッション終了後には反省会を行っていた。

 617のAC捌きは、確かな才気を感じるものではあるが、粗削りどころかまだ素材同然の状態だ。

 それをより研磨し、彼の満足のいく状態に育て上げるには、彼女自身に自分に不足したものを自覚してもらうのが一番早いからだ。

 

【そう時間もないし、ひとまず今は君の所感を聞こうかな。

 まずは敵に関して。これまでに相手してきたACとは段違いの相手だったと思うが……どうだった?】

 

 問われ、617は先程の戦闘を思い出す。

 

 何やら飛んでくる唾を感じる程に喚いていた、おかしな人。

 しかし、ナインの言う通り、その操作精度はこれまでに戦った数人のルビコニアン、ルビコン1で戦ったヴェスパーの予備部隊、その誰よりも高かったように思えた。

 

『……ACの動きが……正確な表現が困難ですが、鋭い。それから、射撃精度も高いように思いました。

 また、グレネードランチャーの発射を筆頭に、相手の行動に対応することを強いられるため、こちらが自由に行動することが困難であったように思います』

【だろうな。これまでの相手と違い、今回の相手は強化人間だった。操作や射撃精度に関してはその差だろう。

 グレネードランチャーに関しては、むしろそれでいい。一発が強力な武装はその分、避けさえすれば一切の負傷がないからな。意識を割いてもその分ペイできる。

 グレネードに限らず、大きな攻撃はこれからも注意するように】

『了解しました』

 

 617は、コクリと頷く。

 真面目な応答、その思考もきちんと回っていることを確認して、赤い光はきらりと満足そうに輝いた。

 

 

 

【……では次に、自分の動きについては?】

 

 その質問に対し、617は今度は即答した。

 

『以前に比べ、格段に戦いやすいように思いました。おにいさまに出会う前の617であれば、今回の相手には苦戦は避けられなかったと考えます。

 内、被弾率の軽減に関しては、明確に効果があったように思います。以前と比べ損傷は格段に減少しました。

 マガジンの弾倉の管理とミサイルの発射タイミングは……意識が徹底できてはいない、と考えます。

 アサルトアーマーの冷却時間の管理、ブレードの牽制については、戦闘中には殆ど意識が通いませんでした。

 今後は上記4点を中心にトレーニングが必要なものと思います』

 

 それを聞き、ナインは感心したような声を漏らした。

 

【ほう、流石というか、自己分析は冷静でしっかりしてるな。俺も概ね同意見だ。

 ただ、ブレードの牽制は一旦置いておこう。相手への精神的な揺さぶりや敵側のリロード管理はまだ君には早い。まずは自機の操作精度を極めていく方が変な癖なく育つだろう。

 それと、マシンガンの片手撃ちに関して、今回は状況的に両手でも良かったんだが……まぁこれに関してはそこまで重要というわけでもないか。

 以上を加味して、帰ったら技能向上トレーニング(ナインブレイカー)だ。全レベ全金取るまでやめられないぞ】

『了解しました』

 

 帰ったら長時間のトレーニングと聞かされ、しかし応える617の声は、ほんの僅かに楽し気な色を帯びていた。

 

 当然だ。

 ウォルターに付けられる訓練も、おにいさまに付けられるトレーニングも、変わらない。

 彼女にとっては、大切な人との、かけがえのないコミュニケーションの時間なのだから。

 

 

 

 そんな調子で、ナインと617が戦闘映像を振り返りながらそんなことを話していると。

 

『……聞こえるか、独立傭兵リンクス。こちらルビコン解放戦線だ』

 

 ノイズと共に、通信機の向こうから、今回の依頼主の声が届いた。

 

【詳細な振り返りはまた後だな。617、応答を】

 

 ナインの声に応え、617は通信機のマイクを入れる。

 

『こちら独立傭兵6、リンクスです。そちらの救助は終了したでしょうか』

『ああ、今終了した。被害は……出たが、それでもお前が来たことで、それは最低限に抑えられたと思う。

 改めて感謝する、独立傭兵リンクス。よく要請に応えてくれた』

『構いません。然るべき報酬の支払いをお願いします』

『ああ、我々も金惜しさに虎の尾を踏むつもりはない。急な救援に応えてもらったことも加味し、約束通り色を付けさせてもらおう。

 今後も依頼を回すことがあるかもしれん。是非に、よろしく頼むぞ』

 

 レッドガンを圧倒するだけの力を見せつけたからか、事後の交渉はスムーズだ。

 

 振込みは明日のことになるとのことで、617とナインはそのまま帰路についた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 617とナインが立ち去ってから数十分後、汚染市街。

 

 負傷者をグリッドに運び込むため、解放戦線たちが去ったそこの高台に……。

 今、一機の輸送ヘリが飛んできた。

 

 ヘリは、その内部に一機のACを格納することのできる、独立傭兵の関係者が用いることの多いもの。

 そして実際、今このヘリを飛ばしているのは、とある傭兵のオペレーターだった。

 

『これは……プランから、大きく外れている?

 G7ハークラーは既に撃破され、解放戦線は撤退済み……状況からして、現地の部隊長が私たち以外の誰かに救援を頼んだのね。

 いえ、そもそもどちらにしろ、ハークラーがここに訪れるのには間に合わなかった……計算が合わない。やはり彼女の言葉通り、外部から変数が持ち込まれている?』

 

 オペレーターの困惑の声が、内部に格納されているACに乗る、パイロットの元にまで届く。

 

『────』

 

 それに対し、パイロットたる独立傭兵は何事かを返答し、会話を進めた。

 

 即ち、これから先、どうすべきかの相談を。

 

『ええ、そうね。プランの修正が必要。

 本来であれば、私たちはここでG7ハークラーと戦闘、消耗した状態で封鎖機構の哨戒部隊に当たって撃破される、という流れだったのだけれど……』

『────?』

『それは難しいわね。あなたの実力の一端は封鎖機構に知られている。無傷の状態でたかだか武装ヘリ一機に落とされた……というのは、向こうのシステムからして不自然だと判断されるはず』

『──、────』

『そうね、そうするしかない。

 輸送中の不意を突かれて撃墜……なんて、止まり木を守る翼としては少し格好付かないけれど、構わない?』

『────』

『そう、ありがとう。……私としては、あなたをそんな目に合わせるのは、少し不本意ではあるんだけどね』

 

 輸送機の内部に格納されたAC。

 本来探査用に作られたパーツ、その中でもただ1つ、戦闘向きにカスタムしたヘッドパーツ。

 ミサイルにグレネードキャノン、アサルトライフルと……その機体を象徴する、一撃威力に特化したパイルバンカーを装備したAC。

 

 その名は、「ナイトフォール」。

 ブランチと呼ばれる傭兵集団の内の一人……。

 

 「レイヴン」と呼ばれる、傭兵の愛機として知られるものだ。

 

 

 

 中にいた独立傭兵は、自らの機体から降りつつ……。

 最後に、自らのオペレーターである女性に、1つの願いを告げた。

 

『……ハークラーを倒した傭兵を?

 構わないけれど……あなたがそう言うということは、可能性を感じているの?』

『────』

『そう。……わかったわ、レイヴン。

 この仕事を受けた傭兵を、詳細に調べておく。結果は後ほど送るわね』

 

 

 

 ……そうしてまた1つ、因果は巡る。

 

 あらゆるものが、あらゆる人の想定の外へと。

 

 

 







 原作からの変化点
 ・617生存、転生コーラル付き
 ・アリーナのランクが1つ詰まったことでラミーがランカーギリギリに
 ・レイヴンやブランチに早々に目を付けられる ←New!
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