そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 ⑨がパチモンなのは、まぁいいでしょう。
 肝であるストーリーが欠片もないのも、まぁいいでしょう。
 正直ミッションではクソの役にも立たないようなトレーニングも、まぁいいでしょう。
 虚無すぎるマイチェントレーニングの嵐も、まぁいいでしょう。
 対戦環境が良バランスなのは、とても良いでしょう。

 だが⑨登場時に「9」を流さなかったスウィンバーン! 駆除以外の選択肢などない……!!





評価を訊くと大体言葉を濁される9作目

 

 

 

 ……あれからの話をしよう。

 現在「独立傭兵リンクス」や「リンクスオペレーター」という名で活動している彼女と彼が、ルビコン1で封鎖機構の強襲部隊を迎撃した時からだ。

 

 グリッド15でコーラルのリソースの半分近くを用い、破壊の限りを尽くして封鎖機構を全滅させしめたナインと、彼の力と彼女の決断によって命を救われたパッチ。

 2人が次に取り組んだのは、当然と言うべきか、事後処理だった。

 

 封鎖機構を管理するAIシステムは、徹底的だ。

 封鎖への脅威と認識した617が生きていると知れば、何度でも勢力を送り込んでくるだろう。

 今回の襲撃で戦力が足りないと理解すれば、次は高火力のHCや複数の強襲艦隊、特務機体の群れを向かわせてくるかもしれない。

 

 たとえ617がルビコン3に密航したりこのグリッドを去ったりしたとしても、草の根を分け人の命を絶ってでも痕跡を探し出そうとするだろう。

 このグリッドを完全に平らにするまで、人情も容赦もなく、作業のように破壊活動を行うに違いない。

 彼らには、「封鎖による秩序を守る」という大きな大きな大義名分があるのだ。判断をシステムに依存していることもあり、人の命を奪うことに躊躇などあるはずもない。

 

 その無駄な犠牲を回避する手段は、ただ1つ。

 「独立傭兵617」が、今回の戦いで死ぬことだ。

 

 勿論、強化人間C4-617が死ぬ、ということではない。世間的にそう思われればいいだけだ。

 「彼の危険因子は、尊い犠牲を払うことで排除された。封鎖による秩序は保たれたのだ」……と、システムを欺瞞するために。

 

 ……これが、ナインがパッチに語った「パッチの負担する偽装工作」の内容だ。

 

「ガキのくせに……てめぇはホント、気遣いしいだな」

『一度やったら最後まで責任を取るべきだろ。その方が後腐れがない』

 

 

 

 「独立傭兵617」の死を偽装するのは、そこまで難しいことではない。

 ルビコン1において、617はその体をパッチ以外に晒したことはない。

 多くの人にとっての独立傭兵617のイメージは、銀髪薄幸美少女ではなく、その愛機「scav617MG」で固まっているのだ。

 であれば、617ではなく、「scav617MG」が斃れれば、それでいい。

 

 ナインとパッチは綿密な打ち合わせと根回しの末、AC「scav617MG」のヘッド以外の外装パーツと武装を破壊し、戦場の中心に放棄することを決めた。

 

 独立傭兵にとって、その愛機が破壊され戦場に転がっていることは、生命的な意味でも職業的な意味でも、実質的な死を意味する。

 ナインによって通信を妨害されていた封鎖機構は、戦闘当時の記録を保有していない。

 情報を集めるためにこの戦場の状況を見に来れば……どう判断するかは、自明だろう。

 

【……617。君にとってはウォルターから与えられた大切な機体、そして仲間から受け継いだ武装だ。それを捨てることが遺憾であるのは、理解する。

 だが……今は、俺の我がままを聞いてくれないか】

『……構いません。ウォルターもハウンズの皆もきっと、それでいいと言ってくれると……そう思います』

 

 617は、少し言い淀みこそしたものの、その決断を肯定した。

 

 彼女にとって愛機「scav617MG」は、共に駆けてきたパートナーだ。

 ウォルターの下、ハウンズたちと訓練を積み、いくつかの仕事をこなしてきた日々、彼女の隣には常に、そのACがあった。

 だからこそ、そのパーツの大半が失われることに、思うところがないわけではなかったが……。

 

『617は……これから、ウォルターとおにいさまと、それに新しいハウンズと一緒に、生きていきますから』

 

 彼女は、生きている。

 ウォルターによって与えられ、ナインによって守られた命を、確かに胸の内に抱えている。

 

 それを自覚できるからこそ、617は過去をその背から下ろし、未来へと歩み出すことを選んだ。

 

 

 

 ……同時、当然ながら。

 617とナインからすれば、自衛手段兼商売道具であるACを失うわけにもいかない。

 ルビコン3に密航するにしろ、そちらでウォルターと再会するまでに生計を立てるにしろ、ACは必須だ。

 「scav617MG」を捨てるのならば、新たなACが必要となる。

 

 しかし、なんとグリッド15には都合の良いことに、もう一台ACがあったのだ。

 

 そう、パッチの愛機「ハンサム」である。

 

「そうなるよなぁ! うんまぁ、命と商売道具全部に比べりゃあ安くついたもんだぜ、ハッハッハ!

 ……ってそう思わねぇと大赤すぎて頭痛がすげぇよクソがぁ!」

 

 パッチは頭を抱えこそしたものの、すぐに自らのACパーツを617に譲ることを了承。

 またそれだけではなく、3点まで価格の制限なくACパーツを購入し、617に供与することを決めた。

 

「ま、あんだけやってもらって何もしねぇのは商売人の沽券に関わるからなぁ……。

 ……ん? なんだ青い方、てめぇにそんな表情似合わねぇぞ? 気にするんだったら、強ぇてめぇらに媚びを売る俺なりの生存戦略とでも思っとけ」

 

 半ばやけっぱちになり、唇を尖らせて強がるパッチに、ナインは【やっぱコイツロリコンで617のこと狙っとるんちゃうか】などと見当違いな考えを持っていたが……。

 それはさておき。

 

 アセンブルに関しては、617に意見を求めても『どのような機体でも構いません。アセンブルについての知識は617にありませんので、おにいさまにお任せします』とのこと。

 ナインはどんな機体にするか、少しばかり悩んだが……。

 AC「scav617MG」から引っこ抜いて来たヘッドパーツとジェネレーター、AC「ハンサム」からの流用パーツ、そして新たに購入したマシンガンとパルスブレード、軽量機用二脚を選んだ。

 

 完成したのは、大きく破損したヘッドパーツ以外は「scav617MG」とは似ても似つかない、軽量二脚。

 「scav617MG」という名前も捨て去り、正真正銘、全く別の機体になったと言っていいだろう。

 

『頭パーツは変えなくていいのかよ? 俺の使ってくれてもいいんだぞ、ガキが遠慮とかすんな?』

『壊れかけのAH-J-124 BASHO(バショー)とか今のとそう変わんないからね。ハッキリ言えばヘッドパーツはスキャン性能以外いらんし、あっち行ってなんとかするわ』

『そうかよ? まぁヘッドは拘るAC乗りも多いって話だ、てめぇがそれでいいってんならいいんだがよ』

 

 

 

 そんなこんなで、AC「scav617MG」は自作自演の大破状態で戦場に転がされ。

 617とナインは、新たなACを手に入れた。

 

 しかし、彼女たちが手に入れたのは、それだけではなく……。

 

【……ルビコン3での身分証!? こんなのまで用意できるのか!?

 まぁそりゃ蛇の道は蛇、密航のブローカーなんてしてるくらいだし、手広くやってるんだろうが……!】

 

 ブローカーから、ルビコン3での身分までもらってしまった。

 

 なんでもこれは「パッチを助けてくれたお礼」とのこと。

 パッチはこの辺りでも一等の成功者であり、商人たちを取りまとめている筆頭の立場でもある。

 ブローカーは直接の繋がりこそないが、それでもパッチが死ねば商売は相当にやりづらくなっていただろう、という話だった。

 

 その上、ブローカーはパッチからある程度の事情を聞いて、617が相当以上に高い実力を持っていることを悟っていた。

 「ここで恩を売ればいつか得があるかもしれないという打算込みだ」、と。ブローカーはパッチによく似た、商人らしい表情で笑った。

 

 棚からぼた餅、ブローカーから身分証。

 ナインは現地でなんとか確保する予定だったこれが手に入ったことを喜びながら、617と共に受信した身分証を確認し……。

 

 

 

 登録番号:Rb31

 識別名:リンクス・ウィズ・カラー

 ランク:--/--

 所属:独立

 ライセンス失効まで7日13時間6分10秒

 

 

 

 その表記に。

 617は意味を理解できず、「こういうものか」と内心首を傾げ。

 ナインは……絶句していた。

 

【……なんと因果な、名前……いや、レイヴンがいるんだ、別におかしくはないが……首輪付き(ウィズ・カラー)のリンクスとは、なんとも……】

『ナイン?』

【あ、617……いや、すまん、なんでもない。ちょっと懐古厨になりかけたわ。

 改めて、独立傭兵リンクス・ウィズ・カラー。これが君の、ルビコンでの名義になる。

 君が自称する名前や他人からの呼称も、基本は「独立傭兵リンクス」になるだろう。意識的に慣らしておけ】

『了解しました』

 

 一応は落ち着いたものの……。

 「首輪付きのリンクス」という名。それはナインにとって特別なもので。

 

 だからこそ、彼はどこか、いたずらっぽく笑った。

 

【それから、機体名も変える必要があるな。以前のものでは出自を辿られる。

 だから、そう。君に殊更の拘りがないのなら、俺から提案なんだが……。】

 

 

 

 そうして、独立傭兵617は、愛機「scav617MG」と共にルビコン1で死んだ。

 

 そしてそれから僅か前後して……。

 

『お別れか。……ま、良い頃合いかね』

「ああ。……言っちゃなんだが、俺みたいな木っ端がルビコン3に行ったところで、てめぇらの弱点になるのが関の山だ。

 俺はあくまで商人で、てめぇは何かしらの目的があるらしい傭兵。本来は深く交わることなんてねぇ、こうなるのが自然なのさ」

『パッチ……』

「ったく、そんな顔すんじゃねぇよ青いの。生きて別れる時ぁな、笑顔で別れるのが商人流ってヤツだ。

 ……ま、お互い生きてんだ。縁がありゃあまた会うこともあるかもな!」

 

 そんな会話を残して。

 

 独立傭兵リンクス・ウィズ・カラーが、AC「フォーアンサー」と共に、ルビコン3に密航を果たしたのだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そして、それから1か月。

 617は、ナインがウォルターを探すのを待ち、何度かミッションをこなしながら……。

 毎日の如く、ナインからしごかれていた。

 

 

 

 ルビコン3にて稼働している傭兵支援システム・オールマインドの供する仮想空間。

 組み上げたACパーツの操作性や取り回しを確認したり、再現データとして作られたテスターACと戦うことのできる、通称「テストルーム」にて。

 

 617は、AC「フォーアンサー」のコックピットで、強く操縦桿を握りしめた。

 

 網膜上に映し出された仮想インターフェース、その各所に忙しなく視線を走らせ……。

 視界の中に飛び込んできた、こちらに迫る機影に、反応する。

 

 両手のマシンガンはリロード中、ミサイルもポッドへの換装中。

 ブレードをハンガーして使うには時間が足らず……。

 何より、AC「フォーアンサー」の左右から、ミサイルが迫って来ている。

 

 仕方なく、右前方にクイックブーストを噴かし、相手とすれ違うように切り抜けて時間を稼ごうとして……。

 

「っ!?」

 

 凄まじい爆風と突き刺さる断片に装甲を削られ、「フォーアンサー」のACSの負荷が大きく溜まる。

 

【それ2回連続だ、読みやすい! 思考停止してきてるぞ!】

 

 恐らくはマニュアルエイムにしていたのだろう、ギリギリ自分を巻き込まない直下にグレネードを放った相手からの声に、617は自省する。

 

 既にトレーニングの時間は3時間を超え、617の集中力は低減してきている。

 彼女のサポーターでもあり師匠でもある声は、追い詰められた時にこそ自らの直すべき悪癖が現れるのだと言っていたが……どうやらそれは正しかったらしい。

 

 

 

『以後、留意します!』

 

 そう言って、リロードを終えた両手のマシンガンを向ける……が。

 

 右上方へと跳ね、かと思いきやクイックブーストで左に切り返し、時にアサルトブーストで距離を詰めて来て、かと思えば距離を取り……。

 不規則かつ機敏に動く敵性ACに対して、FCSの照準補正は追いつかない。

 

 だが、マシンガンは本来、弾幕によって面の攻撃で相手を制圧するもの。

 本来ならば、それでも問題はないはずだったが……。

 

【そのマシンガンの性能保証射程は130m弱! 有効射程は250m! その位置じゃACSは貫けないぞ!】

 

 命中した弾丸も、相手の生きる傾斜装甲、ACSの姿勢制御によって弾かれる。

 

 敵性ACはこまめに位置関係を調整しているが、基本的な距離感は……ACのスキャンによると、300m。

 主兵装の適性距離が120m前後のAC「フォーアンサー」にとって、この距離は大きく不利だ。

 

【さぁ、どうする617!】

『距離を詰めます!』

 

 アサルトブーストを起動。

 617は一気に詰め寄ろうと、ブースターを噴かすが……。

 

 それも、相手は読んでいたのだろう。

 クイックターンで素早く反転、こちらもまたアサルトブーストで、上空へと逃れるように飛び去る。

 

【そうすれば当然こちらは逃げる! ブースターの性能はこちらが上だ!】

『機体重量はこちらの方が軽量、EN効率も良い。詰め切ります!』

 

 じりじりと、彼我の距離が縮まっていく。

 250……200……150。

 そこまで来て、617は両手のマシンガンを撃ち始め……。

 

 その音を聞いて、相手もアクションを取る。

 後ろへと向けていたブースターの方向を一気に転換、前面へと向け……。

 

 ブォンッ!! 

 

 空気を裂くような凄まじい轟音と共に、後ろ方向へとクイックブースト。

 敵性ACは、これまでとは逆に、「フォーアンサー」との距離を詰める。

 

「っ!?」

 

 その想定外に過ぎる動きに、617の思考は一瞬漂白され……。

 

【終わりだ】

 

 敵性ACに粒子が集まり、解き放たれ。

 

 残APが僅かだった「フォーアンサー」は、スタッガーに陥るより早く、爆散した。

 

 

 

 視界が、暗転。

 

 再び目を開けた617の視界に入ってきたのは……。

 APが全開状態、武装の残段数もマックスの「フォーアンサー」のステータス。

 

 当たり前だ。今のはあくまで疑似戦闘プログラム。

 ACに接続しCOM上に仮想COMを構成、操作入力やメインカメラ出力、各種数値を偽装して、擬似的に戦闘することを可能とするもの。

 つまるところ、旧世代にあったVRなどの延長線上、仮想現実的な戦い。

 本当に殺し合っているわけではないのだ。

 

【……シミュレーション終了。うん、こうして戦ってみると、だいぶ課題が見えてきたな。

 さて、そちらの感想はどうだ、617】

 

 先程のシミュレーションでの対戦相手であるナインに訊かれ……。

 617は気持ち、視線を下に落とした。

 

『……やはり、617とおにいさまとの間には、隔絶した差があるように思います』

【うん、まぁそれは否定しないかな。

 ぶっちゃけてしまうと、今の君がどんな機体を使おうが、逆に俺がどんな機体を使おうが、君が俺を倒すのは無理だろう】

『…………』

 

 617がハンドラー・ウォルターから受け取った「生きる意味」は、戦うことだ。

 「たいせつな人」に代わり、自らの強さを証明し、敵を殺すこと。

 それこそが、彼女の生き方。

 

 そんな617にとって、「たいせつなひと」であるナインよりも自らが弱いことは、大きな問題だった。

 自分が弱ければ、戦いを代替する意味がない。自分に価値が生まれないのだから。

 

 だからこそ、617は必死に強くなろうとする。

 おにいさまに追いつき、追い越し、いつか彼を守れる存在になるために。

 

 

 

 そして、617にイレギュラーの可能性を感じるナインもまた、彼女のことを育てようとしていた。

 

【……だが、その差を埋める近道は、ある。

 なんだと思う? ヒントは、ハークラーと俺の動きの違いだ】

 

 先ほど、ナインが仮想COMをハッキングして構築した敵性ACデータは、アリーナに登録されていたハークラーの機体、AC「ストレングス」。

 彼はハークラーと同じ機体を使い……けれど、ハークラーとは違って617を圧倒した。

 

 勿論、ナインの操作技術はハークラーよりも高いはずだが……。

 今回、彼は本気を出してはいなかった。

 

 確かにハークラーよりはずっと厄介な動きではあったが、それでもあの日617が見た「本気のおにいさま」には到底及ばない。

 617のトレーニングに配慮した、あくまでも並みのAC程度の動きで収めていた。

 

 その上で、617が圧倒された理由は……。

 

『……相手に合わせた戦法、あるいは、戦術?』

 

 ポツリと漏らした617の視界の端、赤い光が嬉しそうにきらりと光る。

 

【そう、大正解。今回の差はひとえに、戦術の違いだ。

 ACに積める武装は4種類。多いように聞こえるが、たったの4種とも言える。

 それだけでは、あらゆる場面で絶対的に有利になる、なんて万能の機体は作れない。必ずどこかかに穴が生まれるし、それを塞ごうとすればただ器用貧乏な機体になるだけだ。

 その上で、現在の君の機体「フォーアンサー」の弱点は……】

『……距離間。相手が遠距離にいると不利、ですか』

【そうなるね。ちゃんと理解できてるようで何よりだ】

 

 AC「フォーアンサー」の武装は、両手に短距離向けの軽マシンガン、左肩に近接武器のパルスブレード。

 右肩のミサイルを除き、4つの内3つが近距離戦闘向けのものだ。

 本領を発揮するのは、彼我の距離が150mを切った時になる。

 ……逆に言えば、相対距離が250mを越えたりすれば、「フォーアンサー」は大きく弱体化するだろう。

 

 ACのパーツに詳しい者がこの機体を見れば、当然、可能な限り距離を取ろうとしてくるだろう。

 そしてそれを詰めようとすれば、どうしても617側から行動を起こさねばならず……。

 相手にはその一手分、行動の余白が生まれる。

 そこで先程のように急激な行動の変化やアクションを起こされれば、617には対応できなくなる。

 

『…………』

 

 考え込んだ617に、ナインは諭すように言った。

 

【俺のように、相手の機体に合わせて立ち回りを変える者は多くない。AC戦は自機の強さを押し付けて勝つことが基本だからだ。

 だが、恐らくはヴェスパーの最上位や、それこそルビコン3の動乱の鍵となるような例外的(イレギュラー)な人物は、そうしてくるだろう。

 だからこそ、考えておけ。どうすればそんな相手に対応できるか。どうすれば……殺せるか。

 それが君のAC操作技術を、更に上へと引き上げてくれるはずだ】

『了解しました』

 

 

 

 そろそろ疲れただろうということで、その日のトレーニングは、そこで終了。

 ナインが構築した教習項目の内、617がこなしたのは以下の通り。

 

 マガジン管理、最終審査(レベル5)及第点()

 ミサイル管理、応用テスト(レベル4)及第点()

 アサルトアーマー管理、応用テスト(レベル4)及第点()

 機体管理、総合試行(レベル3)落第点()

 回避機動、最終審査(レベル5)満点()

 スタッガー追撃、応用テスト(レベル4)及第点()

 判断力、総合試行(レベル3)及第点()

 総合力、総合試行(レベル3)落第点()

 

 そして……。

 ナインブレイク、基礎段階(レベル1)、失敗。

 

 

 







 情報ログ:ナインブレイカー

 ────────────

 ナインがオールマインドのサーバーをハッキングして行う、戦闘技能教習プログラム。
 その電子戦能力を存分に用い、ドローンに軽MTから重MT、登録されたランカーACに、果ては戦闘ログから特務機体をすら再現し、それらとの戦闘を通して機体制御技能の向上を図る。
 オールマインドが提供する公式のプログラムと違い、シミュレートデータは蓄積されず、完全に破棄される。

 最終目的は、「本気のナインを打倒できる状態になること」。
 その審査の名は、OVERALL:SINGLE……あるいはナインブレイク。
 今のところ、617はこの初期段階、レベル1(低ランカーの機体を用いた手加減状態)を突破できていない。

 オールマインドはサーバーがハッキングされていることに気付いてこそいるが、対処もできず出処もわからず、現状全傭兵に警告を出すだけで泣き寝入りしている。
 オールマインドは、全てのハッキング行為を行わない傭兵のためにあります。


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