そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを 作:アリマリア
レイヴン vs. リンクス、決着
レイヴンの名を騙る621の「Loader 4」と、リンクスの名を騙る617の「フォーアンサー」。
それぞれの正体を知らないまま繰り広げられる猟犬たちの戦いは、AC戦としてはかなり長く続いたと言っていいだろう。
621の変幻自在な回避機動と唐突に繰り出される蹴りは、617の思考を翻弄したし。
ナインによって強化されたブースターによって、617は621の放つ銃弾を強引に回避することができた。
互いに攻撃の命中率は決して高くはならず、結果として戦いは長引き……。
……その趨勢を決定的に傾けたのは、彼女たちの経験の差。
一見して均衡しているように見えるそれは、けれど時が経つにつれ、徐々に集中力と体力を擦り減らす617の不利へと傾き。
そして……ついには、終わりが訪れる。
頻繁にクイックブーストを使う「フォーアンサー」の残存ENが半分を切り、「Loader 4」のENがほぼ全開に持ち直した、そのタイミングで……。
唐突に、「Loader 4」がアサルトブーストを起動、一気に距離を詰め始める。
617は反射的に、横合いの建物間の路地へと機体を走らせるが……。
高速で詰め寄る「Loader 4」は、マニュアルエイムを起動。
アサルトブースト中、大きな慣性がかかって難しくなるクイックターンを難なくこなし、綺麗に路地の中へと侵入。
同時、「フォーアンサー」がいるであろう場所に当たりを付け、両手のショットガンを決め撃った。
「っ!」
621の直感は、正しかった。
ショットガンの弾丸の嵐が、面の攻撃として「フォーアンサー」に降り注ぐ。
あまりにも急に放たれた攻撃に、617の対応は一瞬遅れてしまい……。
その上、狭い路地の中では左右へ躱すこともできず、クイックブーストも有効にならない。
放たれた弾丸の多くが、「フォーアンサー」へと撃ち付けられ、そのACSに大きな負荷を与え……。
続けて、「Loader 4」は後ろへのクイックブーストを予期して一歩分多く詰め寄りブーストキック、そこから更に続けてアサルトアーマーを起動した。
「が、うっ!?」
連続する攻撃と衝撃、パルスの奔流に……。
これまでずっと逃げ回りながら戦い、冷却を徹底してきた「フォーアンサー」のACSに、ついに限界が訪れた。
スタッガー。
姿勢を制御するACSが負荷限界を超えて機能停止することによる、完全な無防備状態。
おおよそ3秒の間、傾斜装甲は効かず、あらゆる攻撃から直撃を受けることになり。
2秒弱の間、ACは一切の移動や行動が不可能となる。
……「フォーアンサー」の残APは、先程の連撃によって、4割程にまで削り取られた。
軽量機である「フォーアンサー」の最大APは、決して多くない。
高負荷である代わりに高火力を誇る、「Loader 4」のスタンニードルランチャー……それが2発直撃すれば、4割程度は簡単に消し飛んでしまう程に。
そして元よりそのつもりであった621は、既に、最速のタイミングで両肩の武装を起動している。
『いいぞ、やれ、621!』
「Loader 4」のコックピットに、飼い主の興奮が混ざる言葉が響く。
それを聞きながら、621は勝利を確信した。
多少苦戦はしたが、結局はいつものパターンに持ち込むことができた。
この状態に持ち込んだ以上、もはや敵性ACの撃破は確定した、と。
歴戦の戦士……イレギュラーとすら呼ばれた例外たる傭兵。
彼女の直感は正しい。
もはや敵は回避もできず、この両肩武装を受けきることもできない。
敵機の撃墜は確定した。
この戦いは、彼女の勝利に終わるだろう。
『っ、おにいさま……!』
【ああ、ここまでだな】
……不可解な他者による介入がなければ、だが。
爆音を立てて放たれた、「Loader 4」の主兵装たるスタンニードルランチャー。
放電を伴いながら飛ぶ二本の杭が、スタッガー中の「フォーアンサー」に突き刺さる……その直前。
パンッ!
何かが破裂するような音を立て……。
不可解な赤い光によって、弾かれた。
「……!?」
『何……?』
必殺の一撃が防がれたことによる、ほんの刹那の思考の空白。
その隙に……「フォーアンサー」は、アサルトアーマーを起動する。
「っ!」
咄嗟に後ろにクイックブーストを噴かし、パルスの奔流による被害を最低限に抑えた621。
けれど……彼女のその選択は、「フォーアンサー」に距離を取る隙を与えてしまった。
「フォーアンサー」はクイックターンで反転し、「Loader 4」に背を向け、アサルトブーストで作戦領域の外へと飛び去って行く。
その後を追おうとする621だったが……。
不意に、「Loader 4」の内部に、開いていないはずの通信回線を通し、中性的な声が響いた。
『引かせてもらおう。ここでリンクスを死なせるわけにはいかないのでな。
……しかし、この圧力。やはり4周目といったところか。
コーラルリリースを起こして、なお止まらないか。狂犬か……はたまた、並外れた忠犬か』
「……え」
621の追撃の手が、止まる。
今の声は、独立傭兵リンクスの専属オペレーターと名乗った相手のものだろう。
しかし、今問題なのは、誰が発した言葉かではなく……その内容。
「コーラルリリース」。621が引き起こした、人間世界の悲惨。
それを起こしてなお止まらない、という言葉は、まるで……。
621が「繰り返している」ことを、知っているかのような。
「……まさか」
まさか……本当に、このオペレーターは、知っている?
戦いの前にも、ラスティの言葉を使ったように……621の辿った旅路を知っている?
『どうした、62……』
コックピットに響くウォルターの声が、途中でブツリと途絶える。
本来621とウォルターに操作の主導権があるはずの通信が、外部から妨害される……。
その現象に、621は、覚えがあった。
『通信回線は一時的に切断した。君は致死量に近いコーラルを浴びた直後……では、ないが。
……この言葉に、聞き覚えがあるだろう? なにせ、君の友人の言葉だ』
ある。
当然、ある。
実に三度も、それと非常に似た言葉を聞いた。
まだ出会って間もなく、どこか人間的でない、無感情に言葉を響かせる頃の『彼女』の台詞。
「なんで、それを……」
621が、かろうじてそれを口にすると……。
声は、端的に答えた。
『俺は、知っているからだ。
「レイヴンの火」、「ルビコンの解放者」、そして「コーラルリリース」。
至った結末を、その過程を、こなしたミッションを……君のことを、俺は全て知っている』
621は。
その言葉に、絶句した。
マイナスではなく……プラスの意味で。
ずっと、一人で抱えてきたものを。
何度勝ち進んでも繰り返す地獄を。
誰にも信じてもらえなかったものを、相談できなかったものを、分かち合えなかったものを。
この声は、知っている?
それなら……。
それならば。
『その上で尋ねよう。君の背景、強さの理由を。
独立傭兵レイヴン……いいや、強化人間C4-621。
君は何を望む? この世界で、このルビコン3で、この闘争の中で、君が求める「答え」は何だ?』
それならば……あるいは。
共に、戦えるのではないか。
1周目の頃の、ウォルターのように。
頼り合い、話し合い、補い合って……。
共に、何かを、目指せるのではないか?
何度繰り返しても、621だけでは選べなかった道を……。
自分だけでは救えなかったものを、今度こそ、救えるのではないか?
その声が、本質的には敵であることは、分かっている。
敵性AC「フォーアンサー」のオペレーター。
自分と同じ、出所が不明瞭な、怪しすぎる傭兵の付き人。
信じていいわけがない。
いいわけがない、けれど。
……それでも。
もう、621は……このずっと続く、孤独な戦いに、耐えられそうになかった。
「……大切な人たちを、助けたい。守りたい。
今度こそ、ウォルターが言ってたような……ハッピーエンドが、ほしい」
心の底にあった、願い。
この灰と血に塗れた世界においてあり得難い、非現実的な理想論。
馬鹿にされたっておかしくない、それを……。
『……ああ、良かった。それなら俺たちは協力し合える』
『ハンドラー・ウォルター。エア。シンダー・カーラ。チャティ・スティックにラスティ、ミシガンに……ついでに、あのイグアス坊やも』
『君が、俺が救いたい、救いたかった者たちを、選んで救う』
『そんな陳腐なハッピーエンドを、共に目指そうか』
声は、肯定した。
共に戦おうと、言ってくれた。
……621の手が、操縦桿から、離れた。
戦う意志をなくし……飛び去って行く「フォーアンサー」の背を、見送る。
『ウォルターには、この通信と俺のことは内密にしてくれ。
彼の望みは……もう君にも分かっているだろうが、エアの命と共存し得ない。ハッピーエンドの阻害要素となってしまう。
新たな「答え」のための試みは、彼に知られるわけにはいかない』
エア。
ウォルターの望み。
やはり、知っているのだと、621の胸が高鳴った。
この声は、621のこれまでの戦いを……誰にも知られなかった悲愴な頑張りを、知ってくれている。
この声だけは。
繰り返し、さかしまに取り残された621と、一緒にいてくれる。
『今度、改めて連絡する。オールマインドのサーバーをハッキングするから、そこで……』
「あ、あの!」
『ん?』
それは、殆ど無意識だった。
もうすぐこの声と話せなくなることに強い抵抗感を覚え、まるで引き留めるように声を挙げてしまった。
621は、戦場での彼女にしては非常に珍しく、狼狽し、慌てて話題を探して……。
「……あなたの、名前は?」
そんな疑問で、なんとか場を繋ぐ。
声は、驚いたように一瞬黙り込んだものの……。
くすりと笑って、答えてくれた。
『……そう言えば、名乗ってなかったか。
俺はリンクス・ウィズ・カラー専属オペレーター、ナイン。
君と同じく、そして彼女と共に、新たな可能性を……
本日の傭兵事情
・識別名
Rb31 独立傭兵「リンクス・ウィズ・カラー」
ランク27/F(1↑)
・アセン
『フォーアンサー』
前回から変化なし
・収支
+346,965c
[シュナイダー工業地区防衛]
+0c(ミッション放棄)
[経費]
-15,870c(武装修理費)
-32,982c(外装修理費)
-3,044c(内装修理費)
-35,080c(弾薬費)
-5c(必需品購入)
-1c(防寒着、毛布購入)
-120,000c(次回依頼費用)
──────────────────────
+139,982c(206,983cの赤字)
《ナイン追記》
ひとまず、621の強さが想定内のものでよかった。最悪邪神像とかSランとか来かねなかったし。あの程度なら、まぁ、いざという時には俺が殺せる。AP2,000も削られないだろう。
そのアセンや腕前からしても、ストーリー3周直後って感じだろうな。思えば俺も1周目はジマーマン使ってたなぁ、懐かしい。5周目辺りからは対雑魚とか考えてマシンガンとかハンドガン多めになったけど。
しかし、やはり野良のAC乗りとは次元の違う、良い動きだった。617には……少し酷なことにはなったが、良い経験にもなってくれただろう。
今の俺の仕事の1つは、彼女の育成。この経験をしっかり身に付けさせねば。
人格面に関しても、あの感じならひとまず話し合いもなく殺し合い、なんてことにはなるまい。今度依頼の形式を取って一度話し合ってみるべきだろう。敵ではなく……未来の友として。
……しかし、まさか621まで女性とはね。本当にハウンズ銀髪薄幸美少女概念が現実みを増してきたぞ。
《617追記》
つよすぎる。し、はやすぎる。むり。あたまがいたい。
きたいがはやすぎて、かんがえることが、ついていかない。はきそう。