そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 視点が621のとこ行ったり617のとこ行ったりして読み辛かったら申し訳ない。
 もうちょっとしたら解決する見込みです。

 それと、今回がchapter1前編の最終話です。





これが「ファンタズマ」だ

 

 

 

『621、仕事の時間だ』

 

『今回は風変りな仕事が入った。

 ルビコンに進駐する企業の1つ、タキガワ・ハーモニクスからの指名依頼だ。

 まずは先方から送られて来たボイスメッセージを確認しろ』

 

『──はじめまして、独立傭兵レイヴン。

 タキガワ・ハーモニクス、兵器開発部クローズレンジ室技術主任、「ナイン・B」と申します。

 これより、今回依頼するミッションの概要を説明させていただきます。

 

 これは弊社タキガワ・ハーモニクスからの秘匿依頼となります。

 我々タキガワ・ハーモニクスは、より多くの傭兵に弊社の技術の粋たるパルス武装を届けるため、日夜新技術の開発とその有用性の証明に努めています。

 貴方には是非、その実験に付き合っていただきたい。

 

 この依頼中に限定し、仮想戦闘シミュレーターにて、我々の新兵装のデータを再現します。

 あなたにはそれを用い、MT、AC、特殊機体と戦闘を行い、我々にデータを供与していただきたい。

 アリーナのトップ、ランク1/Sたるあなたの腕前は確かなものであると我々は確信しています。

 あなたであれば、多少不慣れな武装を使ったとしても、再現データに過ぎない機体程度、そう難しい相手でもないでしょう。

 

 また、この兵装とその試用実験についての情報は、極秘のものとなっています。

 そのため、事前に武装についての情報は提供できず、また依頼受領と共に秘密保持契約を結んでいただき、依頼中のデータについても全面的な秘匿を行います。

 また、事前にもお伝えした通り、この依頼は秘匿依頼となります。傭兵支援システムオールマインド上の業績には加算されないため、この点についてもご注意ください。

 

 我々は「人とコーラルのより良い未来」のため、独立傭兵各位の力になりたいと考えております。

 独立傭兵レイヴン、是非あなたに、この依頼にご協力いただきたく思います』

 

『……メッセージは以上だ。

 タキガワ・ハーモニクスにはアーキバスやベイラムのような大きな野心はないと思っていたが……何かしら含むところがある、ということか。

 とはいえ現状、タキガワの動きからはコーラルへの積極的な干渉は見えない。勢力均衡を維持して販路を広げるのが狙いかもしれん』

 

『この依頼は契約上、俺からのオペレートを行うことができない。お前の判断で依頼をこなすことになるだろう。

 その上、やけに徹底して情報を封鎖していることから、何やらきな臭い動きにも思える。

 報酬は出るが、実績には繋がらない点にも留意すべきだろう。……まぁ、今更お前にこれ以上の実績も必要ないだろうが。

 シミュレーター上で行う以上弾薬費や機体の修繕費は発生しないが、報酬も極めて高額というわけでもない。

 総じて、うまみの少ない依頼となるだろう』

 

『お前の判断次第では、避けることも考えられるが……。

 ……いいだろう。先方には了承の返答をしておく。

 仮想戦闘シミュレーションとはいえ、警戒するに越したことはない。621、無事に戻れ』

 

 

 

 * * *

 

 

 

 これまで3度経験したルビコン3の争乱の中で、見覚えのない依頼。

 そして、依頼者だという「ナイン・B」という名前に、「人とコーラルのより良い未来」と言う言葉。

 

 それを聞いて621は、時が来たことを悟った。

 即ち……改めて連絡すると言っていた、独立傭兵リンクス・ウィズ・カラー専属オペレーター、ナインからの接触である。

 

 タキガワ・ハーモニクスの名前で依頼を送って来たことには驚いたが……。

 恐らくは、ウォルターにバレるわけにはいかないが故の偽装工作だろう。

 そのために報酬まで出しているのだから、余程警戒しているらしい。

 ウォルターや、その背後にいるはずのカーラですら偽装だと察せない情報操作能力は、見事と言う他ないが……それはともかく。

 

 

 

 大好きな人たちを殺して、殺して、殺し続ける地獄。

 誰一人とも共有できないその苦しみを知っていると語る……621の頑張りを、知ってくれる誰か。

 そしてその上で、好きな人を救うという621の身勝手な目的を肯定してくれた相手。

 

 「ナイン」と名乗るその存在は、現在の621にとって、様々な意味での興味の対象だ。

 

 何を考えているのか。何故621のループを知っているのか。何が目的なのか。どんな人なのか。

 それも含めて、とにかく今は、ナインという相手を知らねばならない。

 だってナインは、この繰り返すルビコン3での戦いにおいて、本当の意味で彼女と共に戦ってくれるかもしれない相手なのだから。

 

 そう考えたが故に、621は殆ど即答で、その依頼を受領することをウォルターに伝えた。

 

 ……その胸を、本当に久しぶりに、期待に高鳴らせながら。

 

 協力者になれるかもしれない相手。

 621の全てを知り、その上で寄り添ってくれるかもしれない相手。

 あるいは……自分を、この地獄から救ってくれるかもしれない相手。

 

 それと今から会うのだから、あるいは当然の反応だったのかもしれないが。

 

 

 

 そうして、待つこと数十分。

 

 先方から送られて来た専用のアドレスから、621は愛機「Loader 4」に乗った状態で、オールマインドが運営する仮想戦闘シミュレーターにアクセスする。

 するとすぐさま、彼女の目の前にあったモニターの景色と、ACとリンクした彼女の触感が塗り替わって行く。

 これまでの3周でも数えきれない程体感してきた、シミュレーターに入る際の奇妙な感覚だ。

 

 緊張と不安、そして期待が、心臓を強く脈打たせる。

 そうして、一瞬にも何時間にも感じる時間が経過し、乱れた感覚が再び構築された時……。

 

 

 

 

 

 

『ようこそビジター! 再びお会いできて光栄です……♡

 スロー、スロー、クイッククイックスロー……♡ 素敵なログインですよ、ご友人♡

 私はあなたと上手く協力できるでしょうか? 心配だ……けれどそれより、ずっと楽しみです♡』

 

 

 

 

 

 

 621は目の前に現れたAC「ミルクトゥース」に、両手のショットガンを叩き込んだ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

『いや、すまない。緊張を解すための冗談のつもりだったんだが……どうやらあまり良くなかったか』

「二度としないで」

 

 急性ブルートゥショックを受けた621は、ガチギレ気味にそう返した。

 あの変態はこれまで3度ぶち殺してきたが、それでも未だに慣れないのだ。あまりに変態すぎて。

 

『承った。次はラミーにしよう』

「違う、そうじゃない」

 

 ボッコボコに破壊され、火の手の上がる残骸と化した「ミルクトゥース」は、すうっと消えていき……。

 

『うん、それでは、改めて。

 先日も名乗りはしたが……俺は、リンクス専属オペレーターのナイン。

 よくメッセージに気付き、信じて、依頼を受けてくれた。感謝するよ、C4-621』

 

 そこに新たに、621には見覚えのない、一機のACの姿が浮かび上がる。

 

 赤と黒によって彩られた、軽量二脚のAC。

 アーキバス製のナハトライアーの脚部や、左肩に備え付けられたレーザースライサーからは、どことなく621の戦友の面影を思わせるが……。

 何より彼女の視線を惹き付けたのは、その「⑨」というデカールが貼り付けられたコアパーツだ。

 

「その、コア……!」

『「EL-PC-00 ALBA」。君の戦友であるラスティの将来の乗機、スティールヘイズ・オルトゥスのもの。

 俺が君のことを知っている以上、当然ながらこのパーツも知っているさ。

 まぁ、いつもはフィルメサとの使い分けなんだが……君の前に出す以上、やはりこちらだろうとな』

 

 その言葉に、やはりと、621は確信を深める。

 

 どういうわけかは知らないが、もはや間違いなく、目の前のACは……その中にいる相手は、621が何度も繰り返しているこの戦いを知っている。知ってくれている。

 

 621は、それを理解し、自分が孤独ではないことを確信して、体に熱が籠るような感覚を覚えた。

 

 

 

『さて、それではさっそく話し合い……の前に、まずは前提の確認からいこう。

 強化人間C4-621。君の目的は、ウォルターやカーラ、チャティにラスティ、ミシガン……とにかく、君の親しい人たちを納得の上で生存させ、ハッピーエンドと言える終わり方を迎えること。それでいいか?』

「ん……『納得の上で』?」

 

 621は、通信を通して届くナインの言葉を理解し切れず、疑問符を浮かべる。

 対し、ナインは右腕の人差し指を立てて答えた。

 

『例えば、ただカーラを生かすという結果だけを見れば、その方法は君が思っているよりもずっと簡単だ。

 彼女がACに乗り込む前に拘束し、自殺しないように完全に体の自由を奪ってしまえばいい。チャティもウォルターも制圧すれば、これで目標は達成だろう。

 だが、そういった行為は君や俺の望むところではない。心の底から納得し、自身の決断の上で彼や彼女には幸せに生きて欲しい。……違うか?』

 

 621の中には、とにかく大事な人たちに生きてほしい、という想いばかりがあった。

 それすらできていないのが現状であり、だからこそそれ以上の条件など考えてもいなかった。

 

 だが確かに、言われてみれば、その方がずっと好ましい。

 ウォルターやカーラに、ただ生き残るのではなく、その先の未来で笑っていてほしい。

 その想いは確かに、621の心の奥底にあった。

 

「うん、それがいい。それでいい。

 みんなで、笑ってこの戦いを生き残りたい。それが、私の望み」

『そうか、了解した』

 

 ナインの声は、合成音声ではあるものの、微かに安堵の窺えるもの。

 続けて、彼は言った。

 

『俺の目的と理想も、その先にある。

 君の経験した3つの答え、そのどれでもない、未知の4つ目の答え。

 ……俺は、君やあの子に、そんな未来と、そしてその先を望んでいる』

 

 その言葉は、まるでウォルターが時々するような難解な話し方で、だからこそ621はその全てを理解し切ることはできなかった。

 けれど、間違いないのは……。

 ナインは、621と同じく、ハッピーエンドを目指しているのだろうこと。

 

『同じ答えを求める同志として、俺たちは協力し合えると思う。

 C4-621、改めて、俺と協力関係を結んでくれないか』

 

 その言葉に、621には、2つの選択肢が提示され……。

 

 ……悩むこともなく、すぐさま答えた。

 

「お願い、します。621と一緒に、戦ってください、ナイン」

『了解した。こちらこそ、いつかの日までよろしく頼むよ、621』

 

 

 

 * * *

 

 

 

『さて、色々と話したいことは多いが、それは後に回すとして、だ。

 ひとまず目の前、当面の目標を先に決めてしまおう』

「当面の目標」

 

 オウム返しに言った621に、ナインは尋ねる。

 

『俺たちがまず行わないといけないことは何だと思う?』

「うーん……?」

 

 621は首を傾げた。

 

 実のところ、彼女はこれまでの3周、割と状況に流されてきた。

 ウォルターやエアが取って来る依頼を受け、接触してくる陣営に協力するばかりだったのだ。

 

 自分から行動を起こしたり選択肢を作ることは少なく……。

 だからこそ「これからどうすべきか?」と訊かれると即答はできなかった。

 

 そんな621に対して、ナインは告げる。

 

『俺から見た答えは、「エアとの合流」だ。

 真っ先に考えられる最悪のルートは、オールマインドことオマちゃんがスッラを使い、Cパルス変異波形エアを掌握すること。

 それは即ち、俺たちの知らない間にコーラルリリースが発生する危険を意味するからな』

「…………え? スッラって、そういうのなの?」

『あ、そこからな感じか』

 

 621としては、スッラとオールマインドが繋がっていることまでは理解していたが、何故あそこにスッラがいたのかまでは把握できていなかった。

 というか、どうせ襲い掛かって来るんだろうし全部ぶっ殺せばいいかと、あまりよく考えていなかった、というのが正直なところ。

 3周目の621は割とヤケクソになっていたこともあって、脳筋思考だったのだ。

 

『リリースには、Cパルス変異波形の協力が不可避だ。

 だからこそオマちゃんは、君と同じ「特別な強化人間」であり、また協力者でもあるスッラを、エアを宿らせる目的であそこに遣わせたんだが……そこに君が現れた。

 まずは変異波形を奪う危険性のある君を排除しようとして、結局は返り討ちにあった、という感じだろう』

「……な、なるほど」

 

 ギリギリ理解が追い付いている様子の621の答えに、ナインは理解する。

 

 あ、この621、あんまり深いことは考えたりしないタイプか、と。

 

 ……余計に自分が考える必要性が出て来たことを感じ、彼はない頭を抱えた。

 

 

 

『……うん、よしわかった。じゃあ一旦俺の方から色々と考えを話すから、聞いてくれ。疑問や意見があったら何でも言ってほしい』

 

 器用にヘッドフレームをコクコクと動かす621。

 ナインは少し微笑ましく思いながらも、話を始めた。

 

『先程言ったように、最優先の目標はエアとの合流。これはウォルターが君に依頼するはずのウォッチポイント襲撃を受ければ問題はないだろう。

 先日リンクスとの戦いで、君の優れた力は理解した。今更君が負けるとも思えない』

「……あの、リンクスって、ナインにとってどういう……?」

 

 話が逸れることはわかっても、621はそれを訊かずにはいられなかった。

 

 彼が「専属オペレーター」を名乗る、恐らくは自分と同じように身分を偽った独立傭兵。

 ACの操作精度自体は、ランカー上位程度ではあったが……どうやらナインにとっては621よりも前に「仲間」になったらしい存在だ。

 

 嫉妬とかそういうのでは全然なく、純粋にその正体が気になっての疑問だったが……。

 

『ん……そこに関してはまた後日だ。

 どちらにしろ、いつか君やウォルターに引き合わせなければならないからな、あの子は』

「あの子……女の子?」

『ん? ああ、そうだな。リンクスの性別は女性だが』

「ふーん……」

 

 別に、だから何というわけではないし、そもそも戦闘マシーンである独立傭兵の性別なんてどうでもいい話ではあるし、別段621にとって問題になるわけでもないが……。

 なんとなく、どうしてか、621は面白くなかった。

 

 では、だからと言って男なら面白かったのかと言うと、それも否。

 ぶっちゃけて言えば、ナインが親し気にリンクスのことを語っていた時点で、かなり機嫌を害している。

 未だ子供であるが故の、幼い嫉妬心……なのかもしれない。

 

 

 

 どことなく言葉の温度感が下がったように感じ、ナインは慌てて話を打ち切る。

 

『話を戻すぞ。エアとの合流はいいとして、次に考えるべきはオールマインドの動向だ。

 詳細な理由を話せば長くなるが、考えるに、俺たちにとってのベストは今の……アーキバス、ベイラム、解放戦線、封鎖機構の戦力均衡を保つことだ。

 そういう意味で、可能であればあの武装採掘艦「ストライダー」は残したいんだが……』

「わかった。やる」

 

 要するに、ストライダー護衛ミッションを受けてほしい、という話である。

 ただ、前回の記憶を参照すれば、予定通りの作戦時間に向かっても守り切れないのは明確。

 逆に言えば、30分程前に向かえば、それは十分に為し得る可能性が高いだろう。

 それをナインは621に要請している。

 

 何も言わなくても、それぞれの暗黙の了解から、言いたいことを理解できる。

 それは両者の間に共通した記憶があるが故のことだ。

 それに、先程の不機嫌など一瞬で吹っ飛ばす温かな想いを抱きながら、621は頷いた。

 

『話が早くて助かる。そちらは君に任せよう。……もう把握しているかもしれないが、C兵器の弱点は爆発武装。それをガン積みして、動きの隙さえ見計らえば、君にとっては困難なミッションではないだろう』

「…………」

 

 ぶっちゃけて言えば、前回の周ではまずまず苦労したミッションだったが、621は何も言わなかった。

 せっかくできた協力者に、弱いと、協力する価値なしとは思われたくない、という強がりだ。

 

 ショットガン2丁とスタンニードルランチャー2門で挑んだから苦戦したが、専用のアセンを組んでいけばあそこまでは苦戦しないだろうと自分に言い聞かせながら、こくこくと頷く。

 

『一方で、もう1つのオマちゃん案件こと強制監査妨害だが……こちらは正直どうなるかわからない。前回通り、君の実力を測りに依頼が来る可能性が高いとは思うが、リンクスの存在でそれが崩れることも考えられる。

 こっちは臨機応変に対応することになる。その時、改めて連絡しよう。既にバックドアも作ったことだし、今後は連絡に困ることもない』

 

 

 

「?」

 

 バックドア、と言う言葉の意図を汲みかね、621は首を傾げたが……。

 

 その、次の瞬間。

 

【こういうことだ】

 

 視界に走る一瞬のノイズの後、コックピットの通信ではなく、脳内に声が響いた。

 

【少々気味が悪いかもしれないが……俺は本来、こういうモノでな。人の脳に直接言葉を響かせることができるらしい。

 君のACのCOMに繋がるバックドアは先程作ったし、今後は機体を通して君の思考に言葉を投げかけることもできるだろう。今回はウォルターへの偽装工作に苦慮したが、それもここまで。

 つまりは、次からはこんな仮想戦闘シミュレーションではなく、普通に話したりメールしたりもできる、ということだ。俺の声は君以外には届かないがね】

 

 それを聞き……レイヴンの中で、全てが繋がった。

 

 先程の赤い、とてもよく見慣れたノイズ。

 この、聞こえるというよりは()()()ように感じる、脳内に響く声。

 そして先日から垣間見える、異様に高く思える情報処理能力。

 

 それが指し示す、ナインの正体とは、即ち……。

 

 

 

「ナインは、エアと同じ、へんいはけい?」

 

 

 

【……え? いや、ち】

 

 621の脳内に響く返事は、途中で、唐突に途絶えた。

 

 621がそうなったように……。

 

 ナインの思考の中でも、繋がった。

 

 繋がって、しまった。

 

 

 

【…………コーラル? いや、……『ファンタズマ』、つまりは、俺は、】

「え?」

 

 唐突によくわからない単語を呟くナインに、621は首を傾げたが……。

 ナインは、取り繕うように言葉を返して来る。

 

【いや……何でもない。考えてみれば安直で、当然の答えで……動揺してる自分が恥ずかしいくらいだ。

 だが、すまない、621。俺は今、平静を欠いている。一度、思考を纏める時間が欲しい。

 後で……改めて、連絡する。待たせてしまうことは、申し訳ないが】

「いい、けど」

 

 明らかに余裕がなさそうなナインに621は心配を向けるが、彼はそれにも気付くことなく。 

 

【君と手を取り合えた時点で、今日の目的は完遂したと言って良い。

 依頼は成功した、ということにしておく。評価も最大でな。

 以後はタキガワ名義では依頼もしないだろうが……それでは、また】

 

 ナインはその言葉を最後に、再び走った赤いノイズと共に、621の中から消えていった。

 

「どうしたんだろう……? なにか、まずいこと、言っちゃった? きらわれ、た……?

 い、いや、でも……大丈夫、だよね? 『また』って言ってくれたし……うん、きらわれた、とかじゃない、はず」

 

 状況がよくわからず、621は少し不安そうに眉を寄せ……。

 ひとまずは仮想戦闘シミュレーションを終了させ、ウォルターに思ったより早く依頼が終わったことを報告しに行くのだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 こうして今、ルビコン3においておおよそ最強の存在2つが、同盟を結んだ。

 

 片や例外(イレギュラー)たる強化人間、3度に渡ってルビコン3の覇者となった最強の独立傭兵、C4-621。

 片や彼女の引き起こしたリリースによって生まれた、正しくこの世界にとっての例外(イレギュラー)な単独種、ナイン。

 

 彼女たちの望むところは、それぞれの理想の未来だ。

 ウォルターを筆頭とする、親しい人々を選んで救うこと。

 そして……あるいはその先にある、C4-617やC4-621との飽くなき闘争。

 ある種正反対なようでいて、けれど近くにあるその望みを叶えるために、二者は手を取り合うのだろう。

 

 

 

 ……その上で。

 ナインが自らの正体を悟ったことが、このルビコン3の争乱にどのような影響をもたらすか……。

 

 それは未だ、誰も知り得るところではなかった。

 

 

 







 今回の放出分(chapter1前編)はここまで。
 一回の放出で1chapter終わるかと思っていたがそんなことはなかったぜ!

 chapter1後編から本格的にナインによる原作介入が始まります。
 目指すは陳腐な程のハッピーエンドです。

 ……しかし、全面的にハードなAC世界が、果たしてそれを許すでしょうか。
 ウォルターの意志の強さ、オーバーシアーの役目、ベイラム上層部のアホみたいなプレミ、惑星封鎖機構の戦力逐次投入、アーキバスの一強大勢、陰険眼鏡カタツムリ、よくわからん止まり木、強力なC兵器群、コーラルという戦いの火種、空飛ぶ火薬庫、ガバチャー神オールマインド、負け犬……そして、生まれた最大の火種。
 ありとあらゆる要素が障害として立ち塞がる、スーパーハードモードです。



 次回更新開始日程は……2025年の2月下旬か3月辺りからできるように頑張ります。
 それでは皆様、良いお年を!
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